アリスと魔王の心臓

金城sora

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ハンターギルド

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「ミシェルさんのお仲間って・・」

「はい、私はウェゲナー家に仕える護衛みたいな立場でして。」

「どーも、話はミシェルから聞いているのかな?」

体をこっちに向けて酒瓶を持ってカウンターに肘をついている。

「いえ、ウェイン様と合流してからお話ししようと思いまして」

「そうか、マスター!そこのテーブル席使っても?」

「構わんよ、注文してくれたらな」

ごりっとした図体ガタイの良い店主が応じた。

「どーも、さっ!座ってくれアリスさん。
ビジネスの話をしよう」

そんだけ酒飲んでビジネスの話が出来るんだろうか?

「アリスさんすみません、ウェイン様はお酒を飲んでいない時がほとんど無いような方なんです・・・
今日はアリスさんとお話しをするから飲まないようにと言っておいたのですが・・・」

私の顔色を読んだミシェルさんが申し訳なさそうに弁解した。

「せっかくなのでお話しは伺います」

ここまで来て話も聞かないっていうのもあれだし・・・

「すみません」

三人でテーブル席に座り、コーヒーを頼んだ。

「見た感じ冒険者みたいだな、自由を愛する俺も冒険者をやってるんだ。
君に依頼したい事があってね、依頼内容は王都ダムトラまでの護衛なんだけど」

まさかの同じ方向・・・

「長旅になるし、魔族の包囲も抜けないといけないから報酬はたんまり支払うぞ」

ん?

「魔族の包囲ってなに?」

「知らないのか?
王都ダムトラはその昔、天秤の大賢者が魔王と戦って見事に魔王を封じ込めた伝説の場所だ。
そして、封印された魔王を復活させないように魔方陣の上に都市を築いた。
それが現・王都ダムトラだ。
そして、魔王を復活させようと魔王配下の高位魔族の五柱が王都ダムトラを包囲するように住み着いた。
奴等は王都に入ると魔方陣の効果で弱体化する。
だから王都には踏み込んでこない。
王都から出ていく人間にも危害は加えない。
だが、王都に入ろうとする人間は容赦なく殺される」

「出るのは良いけど入るのはダメってこと?
どうして?」

「王都の魔王を封印した魔法陣は魔王の力を奪い、そこにいる人間に力を与えるようになっている。
魔法陣の上にいれば、普通の人間でも低位魔族と戦って勝てるくらいに強くなる。
だから、魔族どもは王都の人間が少なくなるようように来るもの拒んで去るもの追わずって訳だ。」

「二人も強いけどそれでも王都まで行けないの?」

「下位魔族ならどーにかなるが、もし中位魔族が出てきたらどうしようもない。」

へー、まぁどっちにしても王都行こうと思ってたし・・・

二人の詳しい話も聞いてみたい。

「ふーん、いーわよ、別に。
私も王都に行こうと思ってたし」

「まじか!良し、報酬は白金貨6枚でどうかな?」

「ぶふっ」

コーヒーを吹いたっ!

「白金貨っ!?金貨じゃなくて?」

「そりゃ、そうだろう。
王都に行くなら間違いなく、下位魔族とは戦闘になる。
下手をしたら中位魔族と戦闘になることもある。
中位魔族はAランクの強さに分類される、これはれっきとしたAランクの依頼になる。
王都への護衛任務は何処のギルドでもAランク指定されてる。
白金貨6枚なら打倒なところだ。
それに君の強さは痛いほど知ってるしな。」

腹を擦って笑っている。

「ウェイン様、アリスさんはまだハンター登録してないそうなんです」

「まじか!その強さで!
今まで魔物と戦闘経験は?」

「あるわけないじゃん」

「そうか・・・
いきなり中位魔族相手に命のやり取りも不味いか・・・」

何やらウェインが思案しだした。

「別に、私も王都に行こうと思ってたし報酬なんていらないわよ?」

「いや、それは関係無い。
貴族ともあろう者が払うと言ったものを払わないんじゃ示しがつかない。
てゆーか、そういう話じゃない。
魔族相手にぶっつけ本番はまずい。
急がば回れだな。
一緒にBランクの討伐依頼を行ってみよう。
それで一度見せてほしい。
魔物や魔族と言えど相手にも命がある。
それを奪えるかも問題だし、命のやり取りになって動けるかどうかっていうのもあるしな」

初めて酒場で見かけたときはかなり頭の悪いやつかと思ったけどそうでもないのかな?
飲んだくれの割には頭の回るやつだ。

「雇うかどうかは試験の後ってことね。
いーわよ、面白そうだし。」

「良し、決まりだな。
それじゃあミシェル、アリスさんのハンター登録を手伝ってきてくれ。
俺はここで飲んで待ってることにするよ。」

話してる間も何度か酒瓶を口飲みで傾けていたが見た感じ減ってないような?

「ウェイン様、ほどほどにしておいてくださいね。
では、アリスさん行きましょうか」

ミシェルさんが席を立った。

「えぇ」

酒場兼宿屋兼ハンターギルドか、ハンターにとっては便利な建物だ。

入口を入って正面がハンターギルドの受付、右側が今テーブルについて話していた酒場、左の階段を上がって二階三階部分が宿屋になっているらしい。

中央のギルドのカウンターに行くと女性の受付が座っていた。

「依頼の受理ですか?
達成報告ですか?」

女性は笑顔で聞いてきた。

「いえ、こちらのアリスさんのハンター登録をしたいのですが」

「登録申請ですね。
では、此方の用紙に記入をお願いします」

「この用紙には氏名、年齢、もし身に何かあったときに伝えたい相手、ジョブとその修業期間や、魔道士ならどのクラスの魔法が使えるか。
剣士なら、流派は何処か、免許状を持っているか等を書くのですが。
アリスさんはこの闘都の武闘大会で優勝しているので」

「えっ?あっ!アリス・ヴァンデルフ様!?」

目の前でミシェルさんとやり取りを聞いていた受付嬢が声をあげた

「えぇ、そうです」

受付嬢はさっきまでの営業スマイルでなく、キラキラした羨望の眼差しで私を見上げた。

「試合見ましたっ!勿論今日の決勝戦も見に行きました!
大ファンです!握手してもらえますか?」

凄い勢いで手を差し出して私の手を取りキツく握り締める。

「感激です!あっ、書類は私が書かせていただきますね!」

新しい書類をさっと取り出した。

「剣の流派は我流でございましたね!
もしもの時の通知先だけお聞きしても宜しいですか?」

キラキラの勢いがなんか凄い。

「あー、特にありません」

一瞬、田舎のミーナの顔が浮かんだがいきなり私の悲報が飛んできて泣かせるだけっていうのもなんだかなと思ってやめた。

「そうなんですか、まぁアリス様ならそんなことは無いと思いますしね・・・」

なんか、私を凄い淋しい悲しい人を見るような目で見てくる。

「でももしもの時、私は凄く悲しいですよ」

「あー、えぇ、ありがとう」

やめろっ!なんだコイツ!?どう反応していいかわかんないわっ!

隣のミシェルさんも苦笑いじゃねーか!

「では、武闘大会優勝の功績を踏まえて特別枠としてBランクのハンターとして登録させていただきました!
本来は登録手数料等も頂きますが特別枠なので勿論免除でございます。
ハンターライセンスは30分程で出来上がりますので少々お待ちください。
その間にハンターギルドの施設案内もさせていただきましょうか?」

「あっ、それは私がさせていただきますので、今あるBランクの討伐依頼を見せていただけますか?」

ミシェルさんがキラキラモードの受付嬢さんを半ば制するように入ってきた。

「そうですか・・・
では、今あるBランクの討伐依頼でしたら3件出されております」

そう言って、書類を寄越してくれた。

「ハンターライセンスは出来次第お持ちいたします。
では、何かお困りの際はいつでもお声掛けくださいませ」

受付嬢さんは少し淋しそうだった。
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