アリスと魔王の心臓

金城sora

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魔力のコントロール

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馬車はガタゴトと道を進んでいく。

あのあとウェインも岩斬りに挑戦したが出来なかった。

私は馬車のなかに入ってミスリルの片手剣ショートソードに魔力を込める作業に没頭していた。

うーん、魔力が伝わっていく感覚は分かるが、それをコントロールしようとなるとさっぱりわからない。

「全然出来ない、ミシェル何かヒントないの?」

「私も杖を持っていなければ魔力の流れを感じられません。
出来るのは魔法石が吸い寄せる魔力の流れを感じて自分の魔力を杖に向かって押し出せるくらいです」

そーなんだ。

「杖なかったら魔法って使えないの?」

「勿論です。
杖の持ち手にある魔法石に魔力を集中させ、呪文を詠唱して魔力を変換し杖を発射口に魔法を発動させるんです」

「ノイマンはそんなことしてなかったけど?」

「ノイマン様は魔法石など無くても魔力を一瞬で手に集中させられましたから。
あんなことが出来るのはノイマン様の他にノイマン様の姉のロザリンド様と魔族くらいです」

えっ!

「ノイマンって姉がいるの!?」

「えぇ、元々は三人兄妹でした。
一番上のお兄様は魔王との対戦で倒れたそうです」

「そうなんだ、そのロザリンドって人も不老不死なの?」

「いいえ、不老ではありますが。
完全な不老不死はノイマン様しか成功しなかったそうです」

「へー」

魔王とか不老不死とか。

私は一生関係無さそうな話しばっかりなのに・・・

魔王が復活するかもしれない王都に向かっているのに人事に思える。

アタシどーなるんだろ?

左を見ると大きな山が見える。

確か不死山とか言ったっけ?

縁起がいいんだか悪いんだかわかんない名前だな。

私は視線を魔法石に落とした。

今もジワジワと私から魔力を吸い上げている。

「ねぇ、魔力を込めるのって大変だけど。
魔法剣で爆炎を連発って大変?」

ふと思い出した。

ランピオンはルシールを振り回して爆炎を連続で撃ちまくっていた。

「規模にもよりますが、例えば私が先ほど使った魔法でしたら魔力を込めるのに約20秒かかっています。
魔法剣は詠唱の必要はありませんが。
魔力を込める時間は変わらないので連続でとなると、小さな炎を出すならまだしも爆炎となると・・・
私には出来ませんね」

私は馬車に置いていたルシールを包んでいた布を外してミシェルに見せた。

「今言ってたのはこの魔法剣なんだけど。
前にこれを持ってた奴は爆炎をそれこそ連発で出してたわ。
威力はさっきのミシェルの魔法の半分以下だけど」

「アリスさん、これを持っていたのは誰ですか?」

ミシェルは目を見開いている。

「凄い魔法剣ですね」

「私を襲った盗賊が持ってたのよ。
ちなみに私の心臓を焼いたのはこの剣よ」

ミシェルはルシールに填められた魔法石に手を触れる。

「魔力の吸収は普通の魔法石より速いですが、連発して使っていたのなると凄まじい魔力コントロールですね」

あのチビの盗賊、凄かったんだ。

私はまたルシールに布を巻いておいた。



今度、ルシールの爆炎もやってみよう。

そんなことを考えながら、またミスリルの片手剣ショートソードに魔力を込める作業に戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


町についた。

と言ってもかなり小さい。

「久しぶりにベッドで眠れるわね」

「まだ昼だ、食材を買い足したら出発しよう」

「急がば回れって言うじゃない。
ベッドで眠ったら疲れもとれて旅足も速くなるんじゃない?」

う~んと思案するウェイン。

「まぁ、私の雇い主はあんただから、行くって言うなら行くけど」

「よし、今日はここで休んでいこう。
その代わりちょっと付き合ってくれないか?」

「なにを?」

「剣の稽古に」

ウェインは若干バツが悪そうに言った。

「あんたってほんと熱心よね」

私に言われてずっと馬車の外を走っているし。

「じゃあ、宿を決めて食事をとってからやろう」

宿は一軒しかなかった。

古いけど綺麗に掃除されていて食事も美味しかった。

「今からでもいいか?」

「もちろん。
シャワー浴びる前の方がいいしね」

ウェインと出ようとすると

「ねぇ、僕も見てきていい?」

「私も行きたい!」

エレンとエレナがせがんできた。

「私は構わないけど、ウェインは?」

「もちろん、構わないさ」

やったーっと嬉しそうにはしゃぐ子供達。

「二人の邪魔にならないようにね」

ヨーメさんが子供達に釘をさす。

うんっと返事をして私達についてくる。

「ミシェルは?」

「では、私もお供させていただきます」


五人で宿屋の裏手に丁度良さそうな場所があったので移動した。

「先ずは心現術無しで頼む」

適当な枝を拾いながらウェインが言った。

「いーわよ」

私も枝を拾い上げる。


御互いに2メートル程の距離をとって構えた。

「いつでもいーわよ?」

私が声をかけてもウェインはじっと此方を伺ってなかなか動かない。

私はゆっくり左に移動した。

ウェインもそれに合わせて動く。

仕方ない、私から攻めよう。

一歩距離を詰める。

ウェインがそれに合わせて一歩退こうとした瞬間に一気に間合を詰めて上段から降り下ろす!

反応して受けるがこっちはすぐに打った剣を斜めに外して右下から切り上げる!

「うおっ!」

バックステップで避けるが体制が悪い!

一気に踏み込んで片手で左から胴を凪ぎ払った!

「うぐっ!」

ウェインが痛みに呻く

「アリスねーちゃんつえー」

子供達が感嘆の声をあげる。

「ウェイン君、気負い過ぎよ。
体が硬くなりすぎ」

「そうだな、もう一本頼むよ」


そのあと、なん十回と打ち合ったが結局一本もウェインは私から取れなかった。

隣で子供達もミシェルに稽古をつけてもらっている。

素振りに型、受け太刀、撃ち込み。

お遊びの打ち合い。

微笑ましい光景の隣でウェインが汗を流し、息をきらせて私に打ちかかる。

何度目か、私に背後をとられて首筋に枝をおかれ。

「ウェイン君、君は早いし力もあるけどそれに頼りすぎですよ。
力は強弱をつけて、速さは緩急をもっと使わないと。
それに打ち込んだらすぐに相手の打ち込みにくい場所に移動するようにしないと」

私が先生口調で気になったところを指摘する。

「また明日も頼んでいいかな?」

熱心な奴だ。

「良いわよ、私も運動になるしね。
朝一番にしましょう。」



宿に戻る。

久しぶりのシャワーは気持ち良かった。


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