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サイクロプス
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うっすらと辺りが見え始めた。
「ミシェル、ウェイン」
二人の肩を叩いて起こす。
「明け始めたわ、出発しましょう」
二人は殆ど無言で支度を始める。
辺りに魔物の気配はない。
私は一応いつでも使えるようにルシールに巻いている布も外しておいた。
背中から抜きやすいようにしておく。
まぁ基本はミスリルの片手剣を使うつもりだが念の為だ。
それを見たウェインがさっきまで眠そうに半開きだった目を見開いた。
「気にはなってたけど、その大剣魔法剣だったのか」
まじまじと見つめる。
「私の心臓を燃やした剣よ。
言ってなかったっけ?」
そう言えばミシェルには見せたけどウェインには見せてなかったな。
「そうだったのか、ちょっと持ってみてもいいか?」
私はウェインにルシールを手渡した。
「魔力を吸い上げるスピードが早いな。
かなりの名品だ、なんでこんなもんを盗賊なんかが持ってたんだ?」
「さぁ、家に代々伝わる家宝の剣だって自慢してたけど。
名前はルシールとかって言ってたわ」
「まじかっ!」
ルシールと聞いてミシェルとウェインも顔色が変わった。
「なに?どーしたの?」
「それがホントならこれは四大貴族のパスツール家の分家でビルグリーノって貴族がいたんだが、その家の宝剣だ」
「えっ」
さすがにビックリした。
「王がクソだったって話はしただろう?
そのクソ王に自分のやった罪を着せられて追放された貴族なんだ・・・
もう20年以上前の話だけどな」
んー、じゃああのチビの盗賊が貴族だったってこと?
・・・・・まさかぁ
「その盗賊はいくつくらいの奴だった?」
「んー、40才前後ってとこかな」
「年も合うな、追放されたのは当時40才すぎのご夫婦と一人息子で確か10代の後半だったはずだ」
言いながらウェインは私に剣を返す。
「ま、今はそれはいいでしょう。
さっさと出発しましょう」
「そうだな」
準備を済ませて出発した。
30分程で樹海に辿りついた。
遠くで見ても思っていたが、近くで見るとスゴい。
木が以上にデカいのだ。
どれも胴回り4メートルはあろうかという大木が枝をいっぱいに広げて鬱蒼と繁っているので樹海はかなり暗い。
この上、魔族やら魔物やらがうじゃうじゃいると言うのだから不気味なことこの上ない樹海の出来上がりだ。
「スゴい森ね」
「魔族は木を伐らないし、人間もここに魔族が棲んでいるから誰も入って木を伐らない。
その上、魔族の出す瘴気を木が吸ってこんな異様な樹海になったらしい。
嘘か本当か知らないが木人族がいるって聞いたことがある」
「木人族!?
そんなのいんの?見たい見たい!」
「呑気だな、アンタといるとここが魔族の樹海って事を忘れそうになるよ」
ウェインがまた呆れている。
「ロマンの無い奴ね。
木人族やら妖精族って聞いたら会いたくなんのが人情ってもんでしょ?」
「それは時と場合によらないか?」
ん、確かに。
「ちぇー、わかったわよ」
ミシェルが楽しそうにクスクス笑っている。
樹海を進んで行くと時間の感覚が分からなくなってきた。
懐中時計を見ると昼の1時を少し回ったところだった。
「どれくらい進んだかしら?」
「分からないな、少しでも拓けた場所に出たらっ」
前方、デカい影が動いた。
ウェインが固まる。
3メートルはありそうな影が3つ。
「一つ目の巨人だ」
ウェインが小さく呟いた。
馬鹿デカいこん棒を持っている。
「仕留める?」
ウェインが静かに首を横に振る。
「アイツらはデカいだけじゃない、皮膚が恐ろしく固い上にちょっとやそっとの魔法じゃ魔法抵抗される。
出来れば戦闘は避けたいところだな」
ま、私も無駄な殺生はしたくない。
静かに一つ目の巨人をやり過ごすために息を潜めてじっとしていた。
っ!!
後ろに気配を感じて振り返ると一つ目の巨人が巨大なこん棒を振りかざしてミシェルを狙っていた!
私はルシールを抜いて降り下ろされたこん棒を打ち払った!
轟音が響きわたる!
「ほほぅ、よく反応出来たな。
それに小さいのに力もある」
弾き返されたこん棒を弄びながら一つ目の巨人が喋った。
「前にいたのは囮か」
ウェインが悔しそうに言った。
一つ目の巨人は鼻で笑う。
「ここが魔族の樹海と知って入ったのか、知らずに入ったのか。
どっちにしても王都へ向かう者は殺すのが決まりだ」
言った瞬間さっき見ていた3体の一つ目の巨人が現れて襲いかかってきた!
ウェインとミシェルが離されていく!
私は今喋っていた一つ目の巨人に向かってルシールの爆炎を放った!
一つ目の巨人がベラベラ喋っている間に魔力を注いでおいたのだ!
ランピオンが出していたのに比べると少し小さい爆炎が虚をついた一つ目の巨人の顔面にもろに直撃した!
出た爆炎の大きさを見てランピオンがかなりの腕だったのが分かる。
アイツよく連発して出してたな。
そんなことを考えていると煙幕の中からこん棒が飛び出してきた!
後ろに飛びのいてすかさず煙幕から出てきた一つ目の巨人に飛閃を飛ばす!
一つ目の巨人は爆炎も飛閃も全く効いていない!
一つ目の巨人がこん棒を振り上げた瞬間に一気に加速して横を通り抜け様に巨大な体の胴をぶった切った!
と思ったが固い金属音たてて刃が入らない!
「速いな、だがそんなもんじゃいくらやっても効かんぞ!」
一つ目の巨人が笑みを浮かべながらこん棒を降り下ろしてくる!
後ろに跳んで距離を空けると後ろからもこん棒が飛んでくる!
避ける分には問題ないけど1発食らったらまずいわね。
ウェインはともかく、ミシェルは早く助けてあげないとヤバいかも。
内心焦りながらも冷静に心を研ぎ澄ませて心現術を練り上げる。
(心現術は極めれば斬れないものは無いと言われています)
ミシェルの言葉を思い出しながらさらに集中していく。
その間も一つ目の巨人の巨大なこん棒が私のスレスレを空を切る!
「どうしたっ!避けてばかりではいつか死ぬぞっ!!もっとあがけっ!!」
そんなことを言いながらいい気になってこん棒を振り回す!
「ガハハハハッ」
一つ目の巨人の下品な笑い声が途中で途切れた。
私を狙っていたもう1体の一つ目の巨人が驚愕して後ずさる。
目の前で同胞が真っ二つにされるのは初めてかな?
私は後ずさる一つ目の巨人に向き直り、踏み込んで両断する。
「がっ」
一つ目の巨人はこん棒を構えるが胴から切り裂かれてうめき声と共に崩れ落ちる。
ミシェルを探すと一つ目の巨人のこん棒を避けながら杖を握って口を動かして呪文を唱えている。
私は駆け出してミシェルを襲っている一つ目の巨人を後ろからバッサリ切り伏せた!
「大丈夫ミシェル?」
杖を構えたまま固まっている。
私が言うとミシェルは倒れてピクリとも動かない一つ目の巨人を見つめたあと、視線を走らせてもう2体の横たわった一つ目の巨人を見て
「うそ、もう仕留めたんですか?」
と呟いた。
「ミシェルのアドバイスのお陰よ」
私はにっこり笑う。
「さっ、ウェインの観戦に行きましょっ!」
私はミシェルと一緒にウェインの方へと向かった。
「ミシェル、ウェイン」
二人の肩を叩いて起こす。
「明け始めたわ、出発しましょう」
二人は殆ど無言で支度を始める。
辺りに魔物の気配はない。
私は一応いつでも使えるようにルシールに巻いている布も外しておいた。
背中から抜きやすいようにしておく。
まぁ基本はミスリルの片手剣を使うつもりだが念の為だ。
それを見たウェインがさっきまで眠そうに半開きだった目を見開いた。
「気にはなってたけど、その大剣魔法剣だったのか」
まじまじと見つめる。
「私の心臓を燃やした剣よ。
言ってなかったっけ?」
そう言えばミシェルには見せたけどウェインには見せてなかったな。
「そうだったのか、ちょっと持ってみてもいいか?」
私はウェインにルシールを手渡した。
「魔力を吸い上げるスピードが早いな。
かなりの名品だ、なんでこんなもんを盗賊なんかが持ってたんだ?」
「さぁ、家に代々伝わる家宝の剣だって自慢してたけど。
名前はルシールとかって言ってたわ」
「まじかっ!」
ルシールと聞いてミシェルとウェインも顔色が変わった。
「なに?どーしたの?」
「それがホントならこれは四大貴族のパスツール家の分家でビルグリーノって貴族がいたんだが、その家の宝剣だ」
「えっ」
さすがにビックリした。
「王がクソだったって話はしただろう?
そのクソ王に自分のやった罪を着せられて追放された貴族なんだ・・・
もう20年以上前の話だけどな」
んー、じゃああのチビの盗賊が貴族だったってこと?
・・・・・まさかぁ
「その盗賊はいくつくらいの奴だった?」
「んー、40才前後ってとこかな」
「年も合うな、追放されたのは当時40才すぎのご夫婦と一人息子で確か10代の後半だったはずだ」
言いながらウェインは私に剣を返す。
「ま、今はそれはいいでしょう。
さっさと出発しましょう」
「そうだな」
準備を済ませて出発した。
30分程で樹海に辿りついた。
遠くで見ても思っていたが、近くで見るとスゴい。
木が以上にデカいのだ。
どれも胴回り4メートルはあろうかという大木が枝をいっぱいに広げて鬱蒼と繁っているので樹海はかなり暗い。
この上、魔族やら魔物やらがうじゃうじゃいると言うのだから不気味なことこの上ない樹海の出来上がりだ。
「スゴい森ね」
「魔族は木を伐らないし、人間もここに魔族が棲んでいるから誰も入って木を伐らない。
その上、魔族の出す瘴気を木が吸ってこんな異様な樹海になったらしい。
嘘か本当か知らないが木人族がいるって聞いたことがある」
「木人族!?
そんなのいんの?見たい見たい!」
「呑気だな、アンタといるとここが魔族の樹海って事を忘れそうになるよ」
ウェインがまた呆れている。
「ロマンの無い奴ね。
木人族やら妖精族って聞いたら会いたくなんのが人情ってもんでしょ?」
「それは時と場合によらないか?」
ん、確かに。
「ちぇー、わかったわよ」
ミシェルが楽しそうにクスクス笑っている。
樹海を進んで行くと時間の感覚が分からなくなってきた。
懐中時計を見ると昼の1時を少し回ったところだった。
「どれくらい進んだかしら?」
「分からないな、少しでも拓けた場所に出たらっ」
前方、デカい影が動いた。
ウェインが固まる。
3メートルはありそうな影が3つ。
「一つ目の巨人だ」
ウェインが小さく呟いた。
馬鹿デカいこん棒を持っている。
「仕留める?」
ウェインが静かに首を横に振る。
「アイツらはデカいだけじゃない、皮膚が恐ろしく固い上にちょっとやそっとの魔法じゃ魔法抵抗される。
出来れば戦闘は避けたいところだな」
ま、私も無駄な殺生はしたくない。
静かに一つ目の巨人をやり過ごすために息を潜めてじっとしていた。
っ!!
後ろに気配を感じて振り返ると一つ目の巨人が巨大なこん棒を振りかざしてミシェルを狙っていた!
私はルシールを抜いて降り下ろされたこん棒を打ち払った!
轟音が響きわたる!
「ほほぅ、よく反応出来たな。
それに小さいのに力もある」
弾き返されたこん棒を弄びながら一つ目の巨人が喋った。
「前にいたのは囮か」
ウェインが悔しそうに言った。
一つ目の巨人は鼻で笑う。
「ここが魔族の樹海と知って入ったのか、知らずに入ったのか。
どっちにしても王都へ向かう者は殺すのが決まりだ」
言った瞬間さっき見ていた3体の一つ目の巨人が現れて襲いかかってきた!
ウェインとミシェルが離されていく!
私は今喋っていた一つ目の巨人に向かってルシールの爆炎を放った!
一つ目の巨人がベラベラ喋っている間に魔力を注いでおいたのだ!
ランピオンが出していたのに比べると少し小さい爆炎が虚をついた一つ目の巨人の顔面にもろに直撃した!
出た爆炎の大きさを見てランピオンがかなりの腕だったのが分かる。
アイツよく連発して出してたな。
そんなことを考えていると煙幕の中からこん棒が飛び出してきた!
後ろに飛びのいてすかさず煙幕から出てきた一つ目の巨人に飛閃を飛ばす!
一つ目の巨人は爆炎も飛閃も全く効いていない!
一つ目の巨人がこん棒を振り上げた瞬間に一気に加速して横を通り抜け様に巨大な体の胴をぶった切った!
と思ったが固い金属音たてて刃が入らない!
「速いな、だがそんなもんじゃいくらやっても効かんぞ!」
一つ目の巨人が笑みを浮かべながらこん棒を降り下ろしてくる!
後ろに跳んで距離を空けると後ろからもこん棒が飛んでくる!
避ける分には問題ないけど1発食らったらまずいわね。
ウェインはともかく、ミシェルは早く助けてあげないとヤバいかも。
内心焦りながらも冷静に心を研ぎ澄ませて心現術を練り上げる。
(心現術は極めれば斬れないものは無いと言われています)
ミシェルの言葉を思い出しながらさらに集中していく。
その間も一つ目の巨人の巨大なこん棒が私のスレスレを空を切る!
「どうしたっ!避けてばかりではいつか死ぬぞっ!!もっとあがけっ!!」
そんなことを言いながらいい気になってこん棒を振り回す!
「ガハハハハッ」
一つ目の巨人の下品な笑い声が途中で途切れた。
私を狙っていたもう1体の一つ目の巨人が驚愕して後ずさる。
目の前で同胞が真っ二つにされるのは初めてかな?
私は後ずさる一つ目の巨人に向き直り、踏み込んで両断する。
「がっ」
一つ目の巨人はこん棒を構えるが胴から切り裂かれてうめき声と共に崩れ落ちる。
ミシェルを探すと一つ目の巨人のこん棒を避けながら杖を握って口を動かして呪文を唱えている。
私は駆け出してミシェルを襲っている一つ目の巨人を後ろからバッサリ切り伏せた!
「大丈夫ミシェル?」
杖を構えたまま固まっている。
私が言うとミシェルは倒れてピクリとも動かない一つ目の巨人を見つめたあと、視線を走らせてもう2体の横たわった一つ目の巨人を見て
「うそ、もう仕留めたんですか?」
と呟いた。
「ミシェルのアドバイスのお陰よ」
私はにっこり笑う。
「さっ、ウェインの観戦に行きましょっ!」
私はミシェルと一緒にウェインの方へと向かった。
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