アリスと魔王の心臓

金城sora

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歩き話し

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「王都へ戻ったらどうされるんですか?」

サースが樹海を歩きながら話しかける。

「そうね・・・   大所帯になったし。
皆で話し合わないとね」

成行なりゆきで元魔族の人達と旅をすることになった。

まぁ、そのまま王都にいたら処刑されるって言われたらほっとけない。

皆、戦えるみたいだし。
ハンターギルドに登録したら生活には困らないかな?

後は樹海を抜けれるかどうかか・・・

「アネイラ、王都にいる間皆の衣食住お願いできるかしら?」

「勿論だ、心配しないでくれ」

「ありがとう、ロザリンドさんと話したら後はすることもないし。
元魔族の人が集まったらすぐに発つわ」

元魔族の王都での風当たりを考えたらそんなにのんびりもしてられないしな。

「俺もロザリンドに会わせてもらえないか?」

「無理だな、お前のような危険人物に会わせるわけにはいかん」

フェムノのお願いをアネイラが有無を言わせずに断る。

「何故だ?   王都ならばお前にも私は敵わない。   その上アリスがいるのだから何かしようにも不可能だろう。
せめてロザリンドに会うか会わないか聞いてくれ」

食い下がるフェムノ

「ロザリンドも知り合いなの?」

「一度だけだが会ったことがある」

「戦ったことがあるってことよね?   会ってなに話すの?」

「いや、戦ったわけじゃない。
俺がノイマンにボコボコにされている時にロザリンドも一緒にいたんだ」

「なんか切ない思いでね、むしろ会いたくないんじゃないの?」

「まぁな・・・   100年以上前の話だ。
別に話したい事があるわけじゃないんだが。
敵としてじゃなく、まぁ味方でもないが。
話が出来るなら面白そうだ」

なんか分かるような分かんないような・・・

「ロザリンドさんが会いたいって言えば良いんじゃない?」

何故か私がフェムノの助け船をアネイラに出してしまった。

「はぁ、分かった。   ロザリンド様に聞くだけ聞いてみよう」

アネイラがあきらめた様に言う。

「ありがとう」

フェムノが満足げな顔をしている。

なんかウザいな・・・

「ノイマンってどんなヤツなの?」

フェムノに聞いてみた。

「ふ、む、   ・・・そうだな。
私から見ても化け物と思うほどに強かった。
なにせ魔王ガーシャル様と互角に戦う程の男だ。
私がかなう筈もない」

魔王と互角!?
どんなだ!

「喋った事はあるの?」

「多少はな、不思議な男だ。
散々俺達と殺しあいをしておきながら魔族を恨んではいなかった」

王都では元魔族というだけで迫害されて処刑までされる。

なのにノイマンは魔族を恨んでなかった・・・

「魔族は人間に恨みでもあるの?」

「ない、恨みも憎しみもない。
ただ俺達は人間と争う為に、この世を混沌とさせるために存在している」

魔族が恨んでないからノイマンも恨みはなかった?

ノイマンも大切な友人を失ってるはず。

恨まずにいられる?

私なら無理だな。

ウェインの指を切られていただけで頭に血が昇ったくらいだ。

なんでノイマンは恨まずにいられたんだろう?

「ノイマンは人造人間ホムンクルスだ、魔族と戦う為に造り出された。
なのに俺達と争うのを好んでいなかったようだ」

そう言ってフッと笑った。

「印象に残っているのは初めて戦って負けたあとだな。
地に伏して見上げる俺を見下ろしながらな、奴は言った。
人間との争い以外に何か楽しみを見つけてみろ。
混沌を望むなら自らの使命から外れて生きてみろとな」

フェムノは空を見上げて喋りながら微笑んでいる。

その顔はとても魔族には見えない。

「その後は会って戦い、負けるたびに俺に聞いてきた。
何か見つかったか?   とな」

そういえばノイマンも何かを探して旅をしてるって言ってたな。

「どこにあるか分からない、もしかしたら無いかも知れない」

私はノイマンの言っていた言葉を口に出して言っていた。

ナニを探してたんだろう・・・

「そうだな、もしかしたら無いかも知れん。
ノイマンに言われてずっと頭に引っ掛かっている。
だが、まだ本気で探してもいない。
この状況にも飽きた、俺はそれをちょうど良い機会かも知れんと思ったんだ。
お前を見てな、ノイマンの言っていた【なにか】を探しに行こうと思った」

「なんで私見てそう思ったの?」

「戦いながらもお前は俺達、魔族を知ろうと質問してきただろう。
今も、お前から私への憎しみは感じられん。
殺伐とした闘争ではなく、あんな風に後腐れなく戦ったのはノイマン以来だ」

ふーん・・・
ノイマン以来か。

なんか悪い気はしないな。

「樹海を出ようと思えば戦いは避けられんしな、お前の力を借りれば抜けられるとも考えた」

なるほどね。

「魔族の裏切り者ってどーなるの?」

「知らんな、聞いたこともない」

笑ってるけど大丈夫なんだろうか・・・

「ノイマンってあんたにとっても特別な人なのね」

「ん?   ノイマンに会ったことがあるのか?」

あっ    しまった。

「実はね、ノイマンに会って王都に来ることにしたの」

なんとなく隠してたけど別にばれても問題はないか。

「そうだったのか、ノイマンは今何処にいるんだ?   何年か前に王都を去ったのは知っている」

死んだのは知らないんだな。

「私が会ったのは此処からずっと南西の山間の田舎村よ。
詳しい事はロザリンドさんに話してからね」

なんだか悪い気もするが・・・

信用出来ないうちはノイマンが死んだことは黙っていよう。

「ふむ、まぁ旅をしていればまた会うこともあるだろう」



ノイマンに言われた探し物の旅か・・・


なんだか少しフェムノが羨ましいな。


話ながら歩いているとようやく眼前の樹海が晴れて王都の壁が見えてきた。
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