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7話〜レベル666の冒険者
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「ギルドマスター、少々お時間よろしいですか?」
受付嬢が扉をノックしてから声をかける。
「ジュリーか、入れ」
「失礼します」
受付嬢が扉を小さく開いて顔だけを室内に入れる。
「すみませんギルドマスター、新規の冒険者の登録をしていたのですが、少し問題が・・・」
「お前が処理出来んような問題か? ははは、逆に興味があるな」
「はい、その方をお通ししても?」
「あぁ、通せ」
話が終わり、受付嬢ことジュリーが後ろを振り返りバーンダーバとフェイを扉を大きく開いてギルドマスターのいる部屋へと通す。
中に入るとスキンヘッドの大柄な男がいた、立派な黒い口髭をたくわえている。
厳つい顔がにっと笑った。
「お前達か、うちの優秀な受付嬢を困らしてんのは」
「すまない、そんなつもりは無いのだが・・・」
「んで、どうしたんだ」
「先ずはコレを見てください」
ジュリーが2枚のプレートを差し出した、両方を見比べ、表と裏を見てギルドマスターの顔が歪む。
「お前さん、何者だ・・・」
ギルドマスターの顔に汗が浮かび、緊張感が漂う。
チラリと壁に掛けてある剣に視線を送ったのをバーンダーバは見逃さなかった。
「すまない、敵意は一切無い、私は、エルフと魔族の混血なのだ、そのせいでそのプレートが上手く機能しないのかもしれない」
「魔族だとっ! 勇者が魔王を数年前に倒したばかりだぞ! 次元の大神・オルパターンの制約で魔族は全て魔界へと強制的に転送されたはずだ! なんで現界にいるんだ!」
ギルドマスターは凄まじい速さで壁の剣を取り、鞘から剣を引き抜いた!
「恐らく、私が混血だから魔界と現界の狭間を通れたのだろう。頼む、本当に敵意は無いのだ。 私の剣を渡そう、どうか話を聞いてくれ」
バーンダーバはゆっくりと腰の剣を取り外し、床に置いて離れた。
「その、ギルドマスター、そんなに悪い人には感じません。 入ってきた時から見ていましたが、仲良さそうなカップルにしか見えませんでした」
ジュリーがバーンダーバとフェイを庇ってくれた。
ギルドマスターはジュリー、フェイ、バーンダーバ、そしてまたジュリーと視線を移した。
「ふむ」
そう言ってひとまずは警戒を解いた。
「まぁ、とりあえず話は聞こうか」
ギルドマスターは剣を鞘に戻したが、剣を手から離そうとはしなかった。
「ありがとう、何処から話せばいいか。 先ずは自己紹介をしよう、私はバーンダーバ。 魔王軍では四天王筆頭を任されていた」
「なにっ!?」
ギルドマスターがまた剣を鞘から抜こうとする。
「包み隠さずに話す、どうか、最後まで聞いて欲しい」
バーンダーバは全てを話す事でフェイが自分の味方になってくれた事を思い、ここでも全てを話すことに決めた。
「私は、魔王様の命令で勇者の、現界最強の武器である聖剣を迷宮の奥で護っていた・・・」
======
「ぎゃはははははっ! そんで、魔界を追われたってのか!? 随分とマヌケな四天王筆頭だな!」
現在、バーンダーバの話を聞き終えたギルドマスターはテーブルを叩いて大笑いしている。
「ギ、ギルドマスター。 そんなに笑ったら悪いですよー」
ジュリーも肩を震わせて笑いを堪えていた。
『大ウケだな、バーンダーバよ』
バーンダーバが笑われているのはほとんど途中から話に参加したフェムノのせいだ。
フェムノは自分も勇者に置いてけぼりにされた事は棚に上げて散々にバーンダーバを道化のマヌケ扱いにした。
バーンダーバは若干口を尖らせて不満気な表情をしている。
「ぎゃはははははっ、あー、おかしかった。 ほんで、お前さんは金を稼いで魔界に食料を送りたいと」
ギルドマスターが目に涙を浮かべてバーンダーバの話を要約する。
「あぁ、そういう事なんだが。 私を冒険者にしては貰えないか?」
バーンダーバの頼みを聞いたギルドマスターは腕を組んで目を瞑り、天を仰いで「うーん」と唸った。
「これは簡単な話ではないな、お前さんが金を稼ぎ、食料を大量に魔界へと送るようになれば魔界はまた戦う力を手に入れて現界に攻めて来るかもしれん。 お前さんはそこをどう考える?」
ギルドマスターはバーンダーバの目を真っ直ぐに見つめる。
その目は敵意は無いが試すような鋭さを持っている。
ギルドマスターだけでなく、フェイもジュリーも、フェムノまでバーンダーバの言葉を待っていた。
「それは、考え方が違うと思う。 魔界は今、慢性的な食料不足だ。 食料が無いせいで争いが絶えず、今回の現界への総攻撃も食料不足が原因だ。 確かに、魔族は闘争を好む種族だが、好まない者も多く居る。 私もその一人だ」
ギルドマスターがバーンダーバの話を聞いて「ふむ」と唸り、口髭をいじる。
「ギルドマスターさん、バンは私を助けてくれた時、ベヒーモスを相手に去るように声を掛けました。 私は魔物に話す人を初めて見ました、彼の話に嘘はありません。 彼が戦いが好きじゃないと言うのも私は本当だと思います」
ギルドマスターはフェイに視線を向け、またバーンダーバに視線を戻した。
「今回の戦いでは私のような穏健派の魔族も皆参加した、せめて、そこまで飢える事がなければここまでの総攻撃にはならなかったはずだ」
ギルドマスターはなにも言わずに考え込むように下を向いている。
「頼む、私は魔界を変えたい。 子供達に腹いっぱい食わせてやりたいんだ、大きくなったら現界に攻め入るような大人にするようなマネはしない。 頼む、私に力を貸してほしい」
室内に沈黙が流れる。
「すー、良いだろう。 冒険者登録を許可しよう」
ゆっくりと息を吸い込んでからギルドマスターが言葉を吐き出した。
フェイとバーンダーバが顔を見合わせて笑う。
「これは俺の勝手な判断だ。 つまり、俺は個人的にお前の考えを支持するだけだ。 冒険者ギルド全部がお前を受け入れたわけじゃ無いからな」
「それは、どんな問題があるんだ?」
「他所の冒険者ギルドに行ったら資格が剥奪されるかもしんねぇって事だ、ジュリー、種族の欄にきっちり魔族とエルフのハーフって書いておけ。 隠しても後々為になんねぇだろ」
「はい、分かりました」
「すまない、恩にきる」
「いや、かまわん。 それに、レベルが666じゃあ俺にはどうしようもねぇしな」
ギルドマスターは「ガハハ」っと豪快に笑った。
「ほれ」
ギルドマスターが持っていた冒険者ライセンスであるプレートをバーンダーバに向かって投げる。
バーンダーバは笑顔でそれを受け取った。
受付嬢が扉をノックしてから声をかける。
「ジュリーか、入れ」
「失礼します」
受付嬢が扉を小さく開いて顔だけを室内に入れる。
「すみませんギルドマスター、新規の冒険者の登録をしていたのですが、少し問題が・・・」
「お前が処理出来んような問題か? ははは、逆に興味があるな」
「はい、その方をお通ししても?」
「あぁ、通せ」
話が終わり、受付嬢ことジュリーが後ろを振り返りバーンダーバとフェイを扉を大きく開いてギルドマスターのいる部屋へと通す。
中に入るとスキンヘッドの大柄な男がいた、立派な黒い口髭をたくわえている。
厳つい顔がにっと笑った。
「お前達か、うちの優秀な受付嬢を困らしてんのは」
「すまない、そんなつもりは無いのだが・・・」
「んで、どうしたんだ」
「先ずはコレを見てください」
ジュリーが2枚のプレートを差し出した、両方を見比べ、表と裏を見てギルドマスターの顔が歪む。
「お前さん、何者だ・・・」
ギルドマスターの顔に汗が浮かび、緊張感が漂う。
チラリと壁に掛けてある剣に視線を送ったのをバーンダーバは見逃さなかった。
「すまない、敵意は一切無い、私は、エルフと魔族の混血なのだ、そのせいでそのプレートが上手く機能しないのかもしれない」
「魔族だとっ! 勇者が魔王を数年前に倒したばかりだぞ! 次元の大神・オルパターンの制約で魔族は全て魔界へと強制的に転送されたはずだ! なんで現界にいるんだ!」
ギルドマスターは凄まじい速さで壁の剣を取り、鞘から剣を引き抜いた!
「恐らく、私が混血だから魔界と現界の狭間を通れたのだろう。頼む、本当に敵意は無いのだ。 私の剣を渡そう、どうか話を聞いてくれ」
バーンダーバはゆっくりと腰の剣を取り外し、床に置いて離れた。
「その、ギルドマスター、そんなに悪い人には感じません。 入ってきた時から見ていましたが、仲良さそうなカップルにしか見えませんでした」
ジュリーがバーンダーバとフェイを庇ってくれた。
ギルドマスターはジュリー、フェイ、バーンダーバ、そしてまたジュリーと視線を移した。
「ふむ」
そう言ってひとまずは警戒を解いた。
「まぁ、とりあえず話は聞こうか」
ギルドマスターは剣を鞘に戻したが、剣を手から離そうとはしなかった。
「ありがとう、何処から話せばいいか。 先ずは自己紹介をしよう、私はバーンダーバ。 魔王軍では四天王筆頭を任されていた」
「なにっ!?」
ギルドマスターがまた剣を鞘から抜こうとする。
「包み隠さずに話す、どうか、最後まで聞いて欲しい」
バーンダーバは全てを話す事でフェイが自分の味方になってくれた事を思い、ここでも全てを話すことに決めた。
「私は、魔王様の命令で勇者の、現界最強の武器である聖剣を迷宮の奥で護っていた・・・」
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「ぎゃはははははっ! そんで、魔界を追われたってのか!? 随分とマヌケな四天王筆頭だな!」
現在、バーンダーバの話を聞き終えたギルドマスターはテーブルを叩いて大笑いしている。
「ギ、ギルドマスター。 そんなに笑ったら悪いですよー」
ジュリーも肩を震わせて笑いを堪えていた。
『大ウケだな、バーンダーバよ』
バーンダーバが笑われているのはほとんど途中から話に参加したフェムノのせいだ。
フェムノは自分も勇者に置いてけぼりにされた事は棚に上げて散々にバーンダーバを道化のマヌケ扱いにした。
バーンダーバは若干口を尖らせて不満気な表情をしている。
「ぎゃはははははっ、あー、おかしかった。 ほんで、お前さんは金を稼いで魔界に食料を送りたいと」
ギルドマスターが目に涙を浮かべてバーンダーバの話を要約する。
「あぁ、そういう事なんだが。 私を冒険者にしては貰えないか?」
バーンダーバの頼みを聞いたギルドマスターは腕を組んで目を瞑り、天を仰いで「うーん」と唸った。
「これは簡単な話ではないな、お前さんが金を稼ぎ、食料を大量に魔界へと送るようになれば魔界はまた戦う力を手に入れて現界に攻めて来るかもしれん。 お前さんはそこをどう考える?」
ギルドマスターはバーンダーバの目を真っ直ぐに見つめる。
その目は敵意は無いが試すような鋭さを持っている。
ギルドマスターだけでなく、フェイもジュリーも、フェムノまでバーンダーバの言葉を待っていた。
「それは、考え方が違うと思う。 魔界は今、慢性的な食料不足だ。 食料が無いせいで争いが絶えず、今回の現界への総攻撃も食料不足が原因だ。 確かに、魔族は闘争を好む種族だが、好まない者も多く居る。 私もその一人だ」
ギルドマスターがバーンダーバの話を聞いて「ふむ」と唸り、口髭をいじる。
「ギルドマスターさん、バンは私を助けてくれた時、ベヒーモスを相手に去るように声を掛けました。 私は魔物に話す人を初めて見ました、彼の話に嘘はありません。 彼が戦いが好きじゃないと言うのも私は本当だと思います」
ギルドマスターはフェイに視線を向け、またバーンダーバに視線を戻した。
「今回の戦いでは私のような穏健派の魔族も皆参加した、せめて、そこまで飢える事がなければここまでの総攻撃にはならなかったはずだ」
ギルドマスターはなにも言わずに考え込むように下を向いている。
「頼む、私は魔界を変えたい。 子供達に腹いっぱい食わせてやりたいんだ、大きくなったら現界に攻め入るような大人にするようなマネはしない。 頼む、私に力を貸してほしい」
室内に沈黙が流れる。
「すー、良いだろう。 冒険者登録を許可しよう」
ゆっくりと息を吸い込んでからギルドマスターが言葉を吐き出した。
フェイとバーンダーバが顔を見合わせて笑う。
「これは俺の勝手な判断だ。 つまり、俺は個人的にお前の考えを支持するだけだ。 冒険者ギルド全部がお前を受け入れたわけじゃ無いからな」
「それは、どんな問題があるんだ?」
「他所の冒険者ギルドに行ったら資格が剥奪されるかもしんねぇって事だ、ジュリー、種族の欄にきっちり魔族とエルフのハーフって書いておけ。 隠しても後々為になんねぇだろ」
「はい、分かりました」
「すまない、恩にきる」
「いや、かまわん。 それに、レベルが666じゃあ俺にはどうしようもねぇしな」
ギルドマスターは「ガハハ」っと豪快に笑った。
「ほれ」
ギルドマスターが持っていた冒険者ライセンスであるプレートをバーンダーバに向かって投げる。
バーンダーバは笑顔でそれを受け取った。
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