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19話〜ロゼ

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《吾輩は勇者に加護を与えなければ出られない、良いではないか、あって困る訳では無いのだ》

赤い鱗の王ロッソケーニヒに見られてフェイが体をすくませている。

『フェイよ、コレも人助けだ。 加護の1つや2つ受けておけ』

フェムノが完全に他人事のように言う。

「でも、私は勇者じゃないですし」

《聖剣を持っているのだ、聖剣は勇者の証。 言い逃れは出来ん、さぁ、近くへ来い》

フェイが助けを求めるようにバーンダーバを見る。

「フェイ、ロッソケーニヒは勇者に加護を与えなければ出られない。 頼めないか?」

バーンダーバが申し訳なさそうに言う、それを見てフェイは尚も追い詰められる。

「で、では、バンが加護を受けては?」

《馬鹿者、勇者に与えるべき加護を混血とはいえ魔族になど渡せるものか》

ロッソケーニヒが呆れたように言い放つ。

逃げ場の無くなったフェイは恐る恐るロッソケーニヒの元へと歩み寄った。

「分かりました、お願いします」

《フェイよ、感謝する》

ロッソケーニヒがフェイの額に巨大な爪をそっと当てる。

フェイはギュッと目を瞑った。

《汝に闘争の龍アグレスドラゴン愛情の龍エロイスドラゴンの子・赤い鱗の王ロッソケーニヒが闘争の加護を与える。 魔を打ち払い、光を世に示せ! 加護を受けし彼の者の名はフェイ!!》

カッと辺りが光に包まれた。

閃光が止んだ時、その光の中心にいたのはフェイともう1人の女性。

フェイと同じ赤毛で背がスラリと高い、豊満な体を赤と青で配色された派手なビキニアーマーで包んでいる。

その女性の人差し指はフェイの額に置かれていた。

「あっー、スッとした! ようやっと硬っ苦しい使命から解放されたわ! あんがとね、フェイちゃん」

腰に手を当てて艶めかしくポーズを取るように立つ。

フェイは女性とバーンダーバを交互に「えっ?」という表情で見る。

「じょ、女性だったんですか?」

「男がどーやって子孫残すのさ、女に決まってんじゃん」

先程までの荘厳な雰囲気は欠片も無かった。

「そーですけど、え?」

呆気に取られるフェイの横を通り過ぎてロッソケーニヒはバーンダーバの前に立った。

まるで誘うようにバーンダーバの首に両手を回す。

「それで、アタイを旅に連れってってくれるんだよね?」

妖艶な笑みを浮かべ、ロッソケーニヒが至近距離でバーンダーバを見つめる。

「あー、うむ、そうだが、お主さっきまでと随分、雰囲気が違うな」

バーンダーバはどうしていいやら困った顔になる。

「使命から解放されて気分まで開放的になったのかしらね、それで、魔弓のバーンダーバさん。 アタイとつがい・・・になってくれるんだよね?」

「なっ!?」

フェイが叫んだ。

「どうしてそうなる?」

バーンダーバも困ったような顔になる。

フェイは密着するロッソケーニヒとバーンダーバをなんとなく嫌だと思いつつもなにも言わずに見ていた。

そんなフェイの顔にロッソケーニヒが気付いた。

「なんだい? あんた達、そういう仲なのかい?」

ロッソケーニヒがフェイとバーンダーバを面白そうに見比べる。

「え、いや、そんなんじゃないですよ」

何が(そういう仲)なのか知らないがフェイはすぐに慌てたように否定した。

「・・・ふーん」

ロッソケーニヒは意味ありげに鼻を鳴らした。

バーンダーバに回していた腕を離してフェイに向き直る。

「な、なんですか」

「いやぁ、なんでもないよ」

ロッソケーニヒがニヤリと笑う。

「ロスベール!!」

「はっ、こちらに」

唐突に名を呼ばれたロスベールが身を強ばらせて応える。

「アタイは旅に出る、後のことは任せたよ」

「はっ、仰せのままに」

「それじゃ、行こっか」

あっさりと言うとロッソケーニヒは出口に向かって歩き始めた。

「ロッソケーニヒよ、私が言うのもなんだが、本当に良かったのか?」

「構わないよ、どうせアタイは座ってるだけだったしね。 一族の統治は全部ロスベールがやってたから、それと」

急に振り返りバーンダーバとフェイを見つめた。

「アタイの事はロゼ・・って呼んで貰おうか、もう、ケーニヒはゴメンだよ。 なんの意味も無いのにずっと閉じ込められてたんだ、こんな使命を与えた親父と、アタイをすっぽかした勇者をぶっ殺してやりたい気分だね」

ぷんぷん怒りながらロゼはまた歩き出した。

その後ろ姿を見てフェイとバーンダーバが顔を見合わせる。

ロゼに聞こえないように2人はクスリと笑って後に続いた。
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