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21話〜レベル90の冒険者

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「冒険者登録をしたいんだけど」

ギルドに入るなりロゼはそう言い放った。

夕方のギルド内は冒険者で賑わっていた、誰もが挑発的なビキニアーマーを着込んだロゼに目が釘付けになっている。

「えーっと、受付はこちらです」

ジュリーが手を上げてロゼに合図を送る。

ロゼは注目されているのに気付いてわざと妖艶にギルド内を歩いていく。

男共の目は遠慮なくロゼを凝視していた。

「初めまして」

ジュリーに向かってロゼが言う。

「はい、登録料に10イマ銀貨を4枚頂きますがよろしいですか?」

「10イマ銀貨? それが無いと出来ないのか?」

ロゼの顔が困ったような表情になる。

 「あっ、それなら私が」

追いついてきたフェイが後ろから銀貨を取り出す。

「フェイさんのお知り合いですかー?」

「はい、えーっと、そうですね。 知り合ったばかりですが」

「あんがとフェイ」

ロゼがフェイを見てにこりと笑う。

「それでは、戦士ですねー」

ロゼの格好を見てフェイが羊皮紙に羽根ペンを走らせる。

「年齢は?」

「300くらいだね」

「長命ですねー、見た目は人間にしか見えないですねー。 少々お待ち下さいねー」

ジュリーが奥へと引っ込んでいく。

「ここで依頼を受けるのか?」

周りを見回しながらロゼがフェイに尋ねる。

「そうです、あそこの大きな掲示板」

フェイが酒場の壁にある沢山の依頼書が貼られたボードを指さす。

そこにはバーンダーバが依頼書を眺める後ろ姿もあった。

「あそこに依頼書が貼ってあるんです」

フェイとロゼが酒場の方を見ていると数人の男がこちらに手を振ってくる。

それに笑顔でロゼは手を振り返している。

「そうか、私の卵を取ってくる依頼もあそこにあったのか?」

「そうですね」

「なるほどな、道理で卵を盗みにくる馬鹿者が絶えんわけだ」

「お待たせしましたー」

フェイがなにかを言う前にジュリーが戻ってきた。

「こちらのプレートに魔力を流し込んで貰えますかー」

ロゼが受け取り、魔力を流し込んでジュリーに見せる。

ジュリーはプレートを見ると笑顔で固まったまま額に脂汗を流しはじめた。

「フェイさん、こちらの方は何者ですか?」

ジュリーがフェイに向けたプレートには【レベル90】と刻印されていた。

「アタイはレッドドラゴンだ、変身魔術トランスフォームで人間の姿に変えている」

「ギルドマスタぁー!」

悲鳴のようなジュリーの声がギルド内に響いた。


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「がはははははっ! 魔族の次はレッドドラゴンか、フェイよ。 お前さんはとんでもない者を連れて来てくれるな」

ギルドマスターが豪快に笑っている。

テーブルを挟んでバーンダーバとロゼの間に座っているフェイが苦笑いを浮かべる。

ジュリーはギルドマスターの隣に立っている、その表情は面白がっているようにも見える。

「それで、アタイは冒険者になれるのかい?」

肘掛に肘をついて頬杖をしながらロゼが聞いた。

「あぁ、構わんさ。 ジュリー、プレートにレッドドラゴンと書いておけ」

『それなら赤い鱗の王ロッソケーニヒと書いておいてはどうだ? その方がハクがつくだろう』

フェムノが余計な事を言い出した。

「ロッソケーニヒ? このねーちゃんが伝説の闘争の龍アグレスドラゴン愛情の龍エロイスドラゴンの第一子なのか?」

「そうだよ、よろしくね」

ロゼがにっこりと微笑む。

ギルドマスターの開いた口が塞がらない。

「卵を取りに行ってなんでドラゴンを連れてくるんだ? しかも王様を・・・」

「それは、なんていうか、成り行きというか・・・」

「まぁいい、ところで、これからは3人でパーティを組むのか?」

「ん、パーティとはなんだ?」

バーンダーバが首を捻る。

「3人以上で依頼を受けるなら冒険者はパーティっていう一括りの扱いになるんだ。 まぁ、要は名前を付けてくれって話だ」

「付けるとなんか良いことあんのかい?」

ロゼは明らかに面倒くさそうだ。

「名が通るようになれば個人的に割のいい依頼がきたりする、それに、個人名よりも不思議と信頼もあるな。 だから、これからも冒険者を続けていくならあった方が便利だ」

『面白そうだ、我が名を考えてやろう。 そうだな、放置された者達ネグレクターズなんてどうだ?』

「嫌に決まってるじゃないですか」
「却下だね」
「うむ」

3人とも即答で断る。

『かはははっ、ダメか』

「がははは、俺は良いと思うがな!」

笑うギルドマスターをジロっとフェイとロゼが睨む。

ジュリーがくすくすと笑っている。

『では無視された奴らイグノァーズは?』

「もうっ、フェムノはなんでそんな発想ばっかりなんですか!」

「全く、アンタにケツがあったら蹴っ飛ばしてやるよ」

ロゼがフェムノをジロっと見る。

「ははは、聖剣のケツか」

バーンダーバが呑気に笑っている。

「それなら勇者のケツを蹴るブレイバーキックアスなんてどうですかー?」

ジュリーが笑いながら話に乗っかる。

「もう、ジュリーさんまで」

フェイも笑い出す。

「・・・いや、アタイはそれでもいいよ」

ロゼがボソリと言う。

「え!? キックアスですか!?」

フェイの声が裏返った。

《かはは、良いユーモアだ。 我もそれでいい》

「えー」

「がははははっ、四天王殿はどうだ?」

ギルドマスターが聞いた。

「ふむ、まぁ、フェイがいいなら構わん」

バーンダーバがチラリとフェイを見る。

「えー、バンも良いんですか?」

「なんなら、この中で1番に勇者のケツを蹴っ飛ばしたいのはあんたじゃないのかい? フェイ」

ロゼに言われてフェイは下唇を出して仏頂面になった。

「分かりました、それでいーですよ」

「がははははっ! 決まりだな! おいジュリー、早速それで書類を書いてやれ!」

「分かりましたー」

ジュリーは笑いながら部屋を出ていった。

フェイはジュリーの後ろ姿をため息混じりに見送った。
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