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36話〜迷宮攻略
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大商業都市ダイナスバザールと荒野の間にある山の麓にロゼは降り立った。
ロゼが咥えていたバーンダーバをそっと地面に降ろした。
フェイとセルカが駆け寄る。
「バン、バン、しっかりして下さい!」
ぐったりして動かないバーンダーバをフェイが揺さぶる。
そこでフェイは自分に両腕がある事に気づいた。
「私、手が・・・」
「運が良かった、たまたま迷宮の支配者が落とした迷宮の遺物が大霊薬だったんだ。 それがなかったら腕どころか、命もなかったよ」
セルカがフェイの疑問に答えた。
「そうだったんですね」
『フェイ、我に魔力を。 急激な魔力の使用で倒れたのだろう、肉体にも相当負担がかかったハズだ。 魔力の回復は無理だが、肉体の回復はしておいてやろう』
フェイが言われたとおりにする、バーンダーバの顔色が少し良くなったように見えてほっとした。
「にしても、とんでもない威力だったね。 バンの魔力弓は、アタイの親父が負けちまった理由が分かったよ」
『うむ』
ロゼの呟きにフェムノが応える。
フェムノでさえも、バーンダーバの力に驚愕していた。
自分が全力で強化したフェイが手も足も出なかった相手を、バーンダーバはまるで有象無象のように一瞬で仕留めたのだ。
その上、自身では選択肢にも入らなかった壁を貫くという手を取った。
それは、自身よりも遥か上の力をバーンダーバが有しているという事だ。
フェイの傷を治すのにバーンダーバから魔力を流し込まれた時も内側から弾け飛んでしまうんじゃないかという程の魔力が流れ込んできた。
フェムノは自分が強者だという自負がある。
それはロゼも一緒だった、ロゼも例え相手が迷宮の支配者でも余裕で勝てるとふんでいた。
だが、一瞬だが迷宮の支配者の力を感じ取った時、そう簡単に勝てる相手では無いと直感がつげた。
その相手をバーンダーバは今までの魔物と同じように仕留めた。
その上、あの迷宮からとんでもない力技で大穴を開けて脱出までして見せた。
フェムノにロゼ。
現界、魔界を合わせても10指に入る実力者に途方もない力の差をバーンダーバは感じさせた。
バーンダーバが「ううん」と呻いて目を開いた。
「ここはどこだ?」
「あぁ、よかった。 気がついたんですね、ここはダイナスバザールと荒野の間にあった山の麓ですよ」
「そうか、すまない、気を失ったんだな。 世話をかけた」
「あの、バン。 すみませんでした、私のせいでラビリンスレリックであるエリクサーを使ってしまったんですよね。 せっかく、バンの夢が叶ったかもしれないのに」
フェイが俯く。
「なにを言うか」
「バン、アタイも悪かったね。 アタイがフェイに余計な事を言ったばっかりにこんな事になっちまった」
言いかけたバーンダーバの言葉を遮ってロゼが話す。
「俺もだ、迷宮の探索は任せろみたいに言っといて。 フェイがトラップにかかったのは俺の責任だ」
『いや、我がいたのにフェイを死なせてしまうところだった。 すまない』
また反省会が始まる。
「待て待て、皆、なにを言ってる」
バーンダーバが体を起こして3人を見る。
「あんな転移魔法陣は踏むなと言う方が難しい。 今回、あのトラップを踏んだ事は仕方なかった。 あんなもの、誰も責められん」
フェイを見て話す。
「フェムノ、そもそもお主がフェイについていたからこそフェイは生き残れたのだ。それに、フェイとお主がいなければこのパーティはバランスが取れないしな」
フェイの背中のフェムノに話す。
「ロゼ、お主がいなければ迷宮から脱出は不可能だった。 私はお主に運んで貰うことを前提に天井を撃ち抜いたからな」
ロゼを見て話す。
「セルカ、お主がいなければ迷宮で過ごす事すらもままならなかったハズだ」
セルカを見て話す。
「ですが、私のせいでラビリンスレリックを使ってしまいました・・・」
フェイ
言葉にバーンダーバが首を振る。
「元々、今回は迷宮の雰囲気を掴むことが目的だった。 その目的は達成したのだ、あそこでもしもエリクサー以外が出ていたら。 もしもフェイが死んでいたら・・・ また私は何年も自分を責めて彷徨い歩くはめになっていたはずだ。 今回は本当に運が良かった」
バーンダーバは心からホッとしたようにフェイを見た。
全員が顔を見合わせてふっと笑う。
「確かに、運が良かったね。 はぁ、なんか、アタイは大したことしてもないのにどっと疲れたよ」
ロゼが草の上にゴロンと背中をつける。
「そうだな、全く。 にしても迷宮攻略したんだ、歴史に残るような凄い事なのに、なんか全然実感が湧かないな」
セルカもゴロンと横になる。
「私も少し疲れた」
バーンダーバも横になった。
フェイはバーンダーバの横にそっと並んで横になる。
「あの、皆さん」
フェイの声に「ん?」という返事を返す。
「助けて頂いてありがとうございました」
「当然だ、礼を言われるまでもない」
「そうだよ、水臭いね」
「ははっ、フェイがいなくなった時の2人の慌てようを見せたいな。 まー、俺も相当焦ってたけど。 1番テンパってたのはバンだな」
「セルカ、よせ、照れるでないか」
4人はケタケタと笑いながら夜空を眺めていた。
ロゼが咥えていたバーンダーバをそっと地面に降ろした。
フェイとセルカが駆け寄る。
「バン、バン、しっかりして下さい!」
ぐったりして動かないバーンダーバをフェイが揺さぶる。
そこでフェイは自分に両腕がある事に気づいた。
「私、手が・・・」
「運が良かった、たまたま迷宮の支配者が落とした迷宮の遺物が大霊薬だったんだ。 それがなかったら腕どころか、命もなかったよ」
セルカがフェイの疑問に答えた。
「そうだったんですね」
『フェイ、我に魔力を。 急激な魔力の使用で倒れたのだろう、肉体にも相当負担がかかったハズだ。 魔力の回復は無理だが、肉体の回復はしておいてやろう』
フェイが言われたとおりにする、バーンダーバの顔色が少し良くなったように見えてほっとした。
「にしても、とんでもない威力だったね。 バンの魔力弓は、アタイの親父が負けちまった理由が分かったよ」
『うむ』
ロゼの呟きにフェムノが応える。
フェムノでさえも、バーンダーバの力に驚愕していた。
自分が全力で強化したフェイが手も足も出なかった相手を、バーンダーバはまるで有象無象のように一瞬で仕留めたのだ。
その上、自身では選択肢にも入らなかった壁を貫くという手を取った。
それは、自身よりも遥か上の力をバーンダーバが有しているという事だ。
フェイの傷を治すのにバーンダーバから魔力を流し込まれた時も内側から弾け飛んでしまうんじゃないかという程の魔力が流れ込んできた。
フェムノは自分が強者だという自負がある。
それはロゼも一緒だった、ロゼも例え相手が迷宮の支配者でも余裕で勝てるとふんでいた。
だが、一瞬だが迷宮の支配者の力を感じ取った時、そう簡単に勝てる相手では無いと直感がつげた。
その相手をバーンダーバは今までの魔物と同じように仕留めた。
その上、あの迷宮からとんでもない力技で大穴を開けて脱出までして見せた。
フェムノにロゼ。
現界、魔界を合わせても10指に入る実力者に途方もない力の差をバーンダーバは感じさせた。
バーンダーバが「ううん」と呻いて目を開いた。
「ここはどこだ?」
「あぁ、よかった。 気がついたんですね、ここはダイナスバザールと荒野の間にあった山の麓ですよ」
「そうか、すまない、気を失ったんだな。 世話をかけた」
「あの、バン。 すみませんでした、私のせいでラビリンスレリックであるエリクサーを使ってしまったんですよね。 せっかく、バンの夢が叶ったかもしれないのに」
フェイが俯く。
「なにを言うか」
「バン、アタイも悪かったね。 アタイがフェイに余計な事を言ったばっかりにこんな事になっちまった」
言いかけたバーンダーバの言葉を遮ってロゼが話す。
「俺もだ、迷宮の探索は任せろみたいに言っといて。 フェイがトラップにかかったのは俺の責任だ」
『いや、我がいたのにフェイを死なせてしまうところだった。 すまない』
また反省会が始まる。
「待て待て、皆、なにを言ってる」
バーンダーバが体を起こして3人を見る。
「あんな転移魔法陣は踏むなと言う方が難しい。 今回、あのトラップを踏んだ事は仕方なかった。 あんなもの、誰も責められん」
フェイを見て話す。
「フェムノ、そもそもお主がフェイについていたからこそフェイは生き残れたのだ。それに、フェイとお主がいなければこのパーティはバランスが取れないしな」
フェイの背中のフェムノに話す。
「ロゼ、お主がいなければ迷宮から脱出は不可能だった。 私はお主に運んで貰うことを前提に天井を撃ち抜いたからな」
ロゼを見て話す。
「セルカ、お主がいなければ迷宮で過ごす事すらもままならなかったハズだ」
セルカを見て話す。
「ですが、私のせいでラビリンスレリックを使ってしまいました・・・」
フェイ
言葉にバーンダーバが首を振る。
「元々、今回は迷宮の雰囲気を掴むことが目的だった。 その目的は達成したのだ、あそこでもしもエリクサー以外が出ていたら。 もしもフェイが死んでいたら・・・ また私は何年も自分を責めて彷徨い歩くはめになっていたはずだ。 今回は本当に運が良かった」
バーンダーバは心からホッとしたようにフェイを見た。
全員が顔を見合わせてふっと笑う。
「確かに、運が良かったね。 はぁ、なんか、アタイは大したことしてもないのにどっと疲れたよ」
ロゼが草の上にゴロンと背中をつける。
「そうだな、全く。 にしても迷宮攻略したんだ、歴史に残るような凄い事なのに、なんか全然実感が湧かないな」
セルカもゴロンと横になる。
「私も少し疲れた」
バーンダーバも横になった。
フェイはバーンダーバの横にそっと並んで横になる。
「あの、皆さん」
フェイの声に「ん?」という返事を返す。
「助けて頂いてありがとうございました」
「当然だ、礼を言われるまでもない」
「そうだよ、水臭いね」
「ははっ、フェイがいなくなった時の2人の慌てようを見せたいな。 まー、俺も相当焦ってたけど。 1番テンパってたのはバンだな」
「セルカ、よせ、照れるでないか」
4人はケタケタと笑いながら夜空を眺めていた。
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