27 / 27
27、歩む未来
しおりを挟む……半年後。
鏑木奏多はアイドルとしての活動を更に活発にさせ、今や海外でも人気を広めつつあった。
そして今日は関東で有名なイベントホール・飯借メッセでのライブ。
倍率数十倍とも言われるプラチナチケットを手に出来た幸運なファンたちが詰めかける中、当の奏多本人は控え室で恋人との甘い時間を過ごしていた。
……………………
「んっ…♡か、かなたっ…そろそろ、本番っ…んむぅ♡」
「だーめ。もう少し、拓磨を堪能させて」
膝の上に乗せた俺の体を抱き寄せ、その舌先を指先で弄う奏多。
唾液で指が汚れてもお構い無しで、恋人の淫らな姿にうっとりと微笑んでいた。
この変態め…。
「また、っ…勃起したら、どうすんだ…」
「昨夜いっぱい抜いたから平気だよ。…ほら、キスしよ」
「んんっ…!」
そしてトドメをさすようにキスをされたら俺の負け確定。
奏多の舌使いに腰は砕け、マトモな思考が難しくなるほどふにゃふにゃにされてしまう。
「あっ…ふ、ぁあ…んむぅ♡」
「ん♡…ぷはっ…拓磨、エッチな顔してるよ」
「…うるひゃい」
頬を手で挟まれ、ひょっとこみたいな顔になりながらも俺は奏多をキッと睨みつけた。
「そんなことしても可愛いだけだよ」
奏多はくすくすと笑いながら俺の頬にキスを落としたが、その瞬間ドアがコンコンとノックされる。
『鏑木さん、そろそろお願いします』
「あぁ。わかったよ」
「…もうそんな時間か」
俺は口元を軽く拭き、『付き人』として奏多の服の乱れを直す。
自分の服の方が乱れきっていたが、それは二の次だ。
「…これでよし、と。じゃあライブ頑張って来いよ。俺は控え室からモニターで見てるから」
「うん。…ライブが終わったら、続きしようね」
そう言うと、奏多は最後に俺の唇にキスをしてから控え室を後にした。
その表情は先程までの甘いものではなく、ファンの前に立つ『アイドル』のものに瞬時に変わっていて、俺は思わずその変わり身の早さに息を着いた。
「……凄いな、相変わらず」
控え室のドアを閉め、椅子に座ってモニターを眺める。
モニターにはまだ客席しか映っていなかったが、お客さんたちの盛り上がりっぷりに思わず鼻が高くなる。
(最近の奏多は『大人の色気が出てきた』ってネットでも評判だからな…)
SNSを中心に、元々清廉潔白で正統派アイドルだった奏多に『色気』が感じられるようになったという声が上がっている。
多分それは俺の影響もあるのだろうが…少しだけ、モヤッとする。
「…あんまり、色気がある所を見せたくないんだけどな」
それはあまりにも身勝手な、子供じみた独占欲。
俺は少し頬を膨らませたが、モニター越しに聞こえたきた歓声に思わず顔を上げた。
『かなたさまー!』
『キャー!素敵ー!』
そんな歓声に向け、笑顔で手を振る奏多。
少し嫉妬してモニターを睨んでいたが、まるでこちらの様子が見えているかのようなタイミングでカメラ目線の投げキッスを貰ってしまい、俺は驚きに目を丸くした。
(…まさか盗聴されてるのか?)
…いや、さすがにライブ中でそれは無いだろう。
俺は首を横に振り、またモニターを注視した。
…………
……………………
数時間にも及ぶライブを無事に終えた奏多は少し疲れた様子で控え室へと戻ってきた。
「お疲れ様です、奏多。素晴らしいライブでしたよ」
「ありがとう佐原。…拓磨は?僕のライブ、どうだった?」
「えっ、あ…そ、の…よ、良かったぞ?」
佐原さんから水を受け取りながら話を振ってきた奏多に、俺は挙動不審になりながらも適当に返事を返す。
するとそれを見た佐原さんが小さく溜息をつき、呆れた様子で口を開く。
「はぁ…社さん、素直になったらどうです?私の口から言ってもいいのですが」
「ま、待って待って!…自分で、言うから」
「?」
少し深呼吸をして、ライブ終わりの奏多を見つめる。
うぅ、やっぱり恥ずかしい…
「…すごい、カッコよかった」
「拓磨…!」
「で、でも!…ちょっとだけ、嫉妬した」
「えっ?」
俺に抱きつこうとした奏多を制し、さらに言葉を続ける。
「あんな大勢のファンに愛されて…奏多は俺の『恋人』なのに、って…もごもご」
「……………」
(…邪魔者は退散しますか)
無言で控え室を出ていく佐原さんを視界の端に捉えながらも、俺は奏多の方を見つめた。
「…奏多?」
「……拓磨…もしかして、誘ってる?」
「は…?」
気付いた時にはもう遅かった。
奏多は素早く俺の肩を掴むと、そのまま噛み付くようなキスを落とす。
「んんっ!?」
「ん…あんな可愛いこと言って、僕を誘うならベッドの中だけにしてくれないかな?」
「ぷはっ…ば、ばかっ…」
『どこのスケベオヤジだよ』と悪態をつけば、『拓磨だけだから』と謎の返しをされてしまった。
「拓磨、拓磨。…ライブも終わったから、続きしよ?」
「つ、続きって…また他のスタッフが外にいるのに…」
「1回だけでいいから。ね?」
「………」
甘えるように小首を傾げる奏多に、俺は諦めたようにため息をつく。
「…本当に1回だけだからな」
「うん。…残りは今夜、ベッドの中で…♡」
そして俺たちはゆっくりと、互いを求め合うように唇を重ね…そのまま秘密の蜜事を始めた。
ー完ー
………………………………………………………
EDアイドル×ドルオタAD
長くなってしまいましたがこれにて完結です。
個人的にはもっとえちえち要素を盛り込みたかったのですが…たまにはライト(?)なBLもいいよね!
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はぁぁ。何度読んでも良いです。こちらの作品を知ったのはつい最近(ごめんなさい。そもそもアルファポリス自体も最近知りました)なのですが6周位してる気がする…。アイドル☓AD。かなた君カッコ良すぎるし、たくま君もなんのかんのいってかっこいい。お互いがお互いに大切な人というシチュ最高すぎる。まれに公開を非公開にされる作者さんがいらっしゃいますがお願いですから非公開にはしないで下さい!!
私の癒しなのです!!お願いします🙇