8 / 15
8 一歩前進
しおりを挟む
目を覚ます。
ハッキリと今度は彼の顔を認識する。
私が起きたのが分かると、彼は何時もの気さくな笑顔を私に見せてくれる。
当たり前だったことが、改めて掛けがえの無いものだと教えてくれる。
「柳君……」
「おはよう。小宮さんが寝るなんて珍しいね」
その言葉にムッ、とする。
私がどれだけ不満とイライラを募らせていたのか。
未だに繋いでる手に気づいて、パッと離す。
「何で手を繋いでいたんですか」
「繋ぎたかったから……というのもあるけど」
「けど?」
「安心させたかったから」
その言葉に反論は出来なかった。
実際、その効力を私は体験したからだ。
「分かりました。今回は大目に見ます……ただし、どうして昨日来なかったのですか?」
腹が立つ。
嬉しいのと同じぐらい、彼に対して怒りがあった。
私の怒りを感じているのか、珍しく彼がタジタジになっていた。
「いや、どうしても外せない用事があって」
「どういう用事ですか?」
「それは小宮さんにも言えないよ」
気になる。
でも、言えないと言う事は、あんまり深く追求してはいけない気もする。
「それでも、一言くれればよかったのに。待ってたんですよ」
「え? 待っててくれたの?」
「……! まぁ、その、あくまで本を読むついでです」
平静を装っているけれど、内心は鼓動がこれ以上ないぐらい高鳴ってる。
自分でも信じられないぐらい発言が軽い。
しっかりしないと感情が噴き出しそうになる。
「申し訳ない、今度からはするよ」
謝る彼。別にこうやって会うのだって約束してるわけではない。
本当は連絡する必要なんてこれっぽちもないのに、単純に私の我が儘だ。
ただ、今はそれを言われるだけで安堵している自分がいた。
このままでも十分な関係だ。
今もなお、この関係が続けば良いと思っている。
けど、今はもう少し歩み寄りたい気持ちもある。
二つの気持ちがせめぎ合う。
――ほんの少しだけ、勇気をだしてみることにした。
「あ、あの! 柳君! 昨日心配かけた事、本気で申し訳ないとおもってますか」
「うん、勿論思ってるよ」
「し、心配をかけた罰。そう、これは罰です! だから、その……」
兎に角どんなことでも良いから理由が欲しかった。
ただ、単純に聞く方が簡単だったかもしれないと今更思った。
彼は不思議そうに私を見てる。
今、私は口を何度も開いたり、閉じたりしている。声がでない。
だって、こんな事を異性の人に言うの初めてだから。
「で、電話番号……教えてくだ、さい」
消え入りそうな声で私は言った。
いや、言った、というより言えた、だった。
こんなにも大胆な事をした自分に驚いている。
彼から、クス、と驚きと笑いが混じったような声が漏れる。
「な、何がおかしいんですか!」
「ごめん、ごめん。そうだね罰を受けるよ。だから、良かったら交換しよう」
「も、勿論です。罰なんですから……」
お互い携帯を取り出し、相手の番号を確認する。
一度鳴らして、しっかりと間違ってないかを確認する。
「つ、ついでに連絡アプリとか持ってないですか! ラインとか」
「それも罰なの?」
「あ、当たり前です! それだけ心配かけたんですから!」
「どうやら僕の罪はかなり大きかったみたいだね」
そんなやり取りで、ラインなどの連絡系アプリの交換もできる。
アドレス帳に乗る彼の電話番号。
素直に嬉しかった。
直ぐに彼とやり取りできる手段を持つことが出来たというのは大きかった。
そんなことを考えていると、彼が私の方をご機嫌そうに見ていた。
「どうしたんですか? ジロジロ見て」
「いや、今日の小宮さんはやけに感情豊かだなって思って。何かあった?」
何かありました。
そして、その張本人はきっとわかっていない。
「そうですね……自分の胸に聞いてみたらどうですか?」
彼は首をかしげて胸に手を当てていた。
ハッキリと今度は彼の顔を認識する。
私が起きたのが分かると、彼は何時もの気さくな笑顔を私に見せてくれる。
当たり前だったことが、改めて掛けがえの無いものだと教えてくれる。
「柳君……」
「おはよう。小宮さんが寝るなんて珍しいね」
その言葉にムッ、とする。
私がどれだけ不満とイライラを募らせていたのか。
未だに繋いでる手に気づいて、パッと離す。
「何で手を繋いでいたんですか」
「繋ぎたかったから……というのもあるけど」
「けど?」
「安心させたかったから」
その言葉に反論は出来なかった。
実際、その効力を私は体験したからだ。
「分かりました。今回は大目に見ます……ただし、どうして昨日来なかったのですか?」
腹が立つ。
嬉しいのと同じぐらい、彼に対して怒りがあった。
私の怒りを感じているのか、珍しく彼がタジタジになっていた。
「いや、どうしても外せない用事があって」
「どういう用事ですか?」
「それは小宮さんにも言えないよ」
気になる。
でも、言えないと言う事は、あんまり深く追求してはいけない気もする。
「それでも、一言くれればよかったのに。待ってたんですよ」
「え? 待っててくれたの?」
「……! まぁ、その、あくまで本を読むついでです」
平静を装っているけれど、内心は鼓動がこれ以上ないぐらい高鳴ってる。
自分でも信じられないぐらい発言が軽い。
しっかりしないと感情が噴き出しそうになる。
「申し訳ない、今度からはするよ」
謝る彼。別にこうやって会うのだって約束してるわけではない。
本当は連絡する必要なんてこれっぽちもないのに、単純に私の我が儘だ。
ただ、今はそれを言われるだけで安堵している自分がいた。
このままでも十分な関係だ。
今もなお、この関係が続けば良いと思っている。
けど、今はもう少し歩み寄りたい気持ちもある。
二つの気持ちがせめぎ合う。
――ほんの少しだけ、勇気をだしてみることにした。
「あ、あの! 柳君! 昨日心配かけた事、本気で申し訳ないとおもってますか」
「うん、勿論思ってるよ」
「し、心配をかけた罰。そう、これは罰です! だから、その……」
兎に角どんなことでも良いから理由が欲しかった。
ただ、単純に聞く方が簡単だったかもしれないと今更思った。
彼は不思議そうに私を見てる。
今、私は口を何度も開いたり、閉じたりしている。声がでない。
だって、こんな事を異性の人に言うの初めてだから。
「で、電話番号……教えてくだ、さい」
消え入りそうな声で私は言った。
いや、言った、というより言えた、だった。
こんなにも大胆な事をした自分に驚いている。
彼から、クス、と驚きと笑いが混じったような声が漏れる。
「な、何がおかしいんですか!」
「ごめん、ごめん。そうだね罰を受けるよ。だから、良かったら交換しよう」
「も、勿論です。罰なんですから……」
お互い携帯を取り出し、相手の番号を確認する。
一度鳴らして、しっかりと間違ってないかを確認する。
「つ、ついでに連絡アプリとか持ってないですか! ラインとか」
「それも罰なの?」
「あ、当たり前です! それだけ心配かけたんですから!」
「どうやら僕の罪はかなり大きかったみたいだね」
そんなやり取りで、ラインなどの連絡系アプリの交換もできる。
アドレス帳に乗る彼の電話番号。
素直に嬉しかった。
直ぐに彼とやり取りできる手段を持つことが出来たというのは大きかった。
そんなことを考えていると、彼が私の方をご機嫌そうに見ていた。
「どうしたんですか? ジロジロ見て」
「いや、今日の小宮さんはやけに感情豊かだなって思って。何かあった?」
何かありました。
そして、その張本人はきっとわかっていない。
「そうですね……自分の胸に聞いてみたらどうですか?」
彼は首をかしげて胸に手を当てていた。
0
あなたにおすすめの小説
それぞれの愛のカタチ
ひとみん
恋愛
妹はいつも人のものを欲しがった。
姉が持つものは、何が何でも欲しかった。
姉からまんまと奪ったと思っていた、その人は・・・
大切なものを守るために策を巡らせる姉と、簡単な罠に自ら嵌っていくバカな妹のお話。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
櫻井音衣
恋愛
会社は賃金を得るために
労働する場所であって、
異性との出会いや恋愛を求めて
来る場所ではない。
そこにあるのは
仕事としがらみと
お節介な優しい人たちとの
ちょっと面倒な人間関係だけだ。
『オフィスにはラブなんて落ちていない』
それが持論。
ある保険会社の支部内勤事務員で
社内では評判の
“明るく優しく仕事の速い内勤さん”
菅谷 愛美 、もうすぐ27歳、独身。
過去のつらい恋愛経験で心が荒み、
顔で笑っていつも心で毒を吐く。
好みのタイプは
真面目で優しくて性格の穏やかな
草食系眼鏡男子。
とにかく俺様男は大嫌い!!
……だったはず。
社内でも評判の長身イケメンエリートで
仏頂面で無茶な仕事を押し付ける
無愛想な俺様支部長
緒川 政弘、33歳、独身。
実は偽装俺様の彼は仕事を離れると
従順な人懐こい大型犬のように可愛く、
とびきり甘くて優しい愛美の恋人。
愛美と“政弘さん”が付き合い始めて4か月。
仕事で忙しい“政弘さん”に
無理をさせたくない愛美と
愛美にもっとわがままを言って
甘えて欲しい“政弘さん”は
お互いを気遣い遠慮して
言いたい事がなかなか言えない。
そんなある日、
二人の関係を揺るがす人物が現れて……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる