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14 椿の恋
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最後の登校日を迎えた。
今日を終えれば、これから冬休みを迎える。
天候に恵まれ、この日は雲一つない晴天となった。天気もこの日の為に気を利かせたかのように、今まで崩れた天気が嘘のようだった。
それはどこか、私の心を反映しているのではないかと、思うほどに。
朝から長い校長の話が、体育館で披露される。私たちはそれを黙って静聴しなければならない。けれど、気持ちは既に休みに入っている人間も多く、周囲の生徒の中には眠りこけているものもいる。
長い校長の一人演説も終わり、それをキッカケに学校は終わりを迎える。
束縛から解放されると、途端に祭りのように辺りが騒然となる。私も、思いっきり背を伸ばして、解放された喜びに浸る。
誰もが体育館から外へと、飛び出していく中で、私は一人だけ校内へと向かう。
何時もの場所で待っている人がいるからだ。
図書室へと辿り着く。扉が半開きなのは、もう、馴れた光景だ。
スーッと扉を開くと、そこに寝ている彼がいた。
何時もの場所で、幸せそうに寝ていた。
私は、起こすのがもったいないので、本を棚から取り出しその隣に座る。
彼と話したい事が山ほどあるが、それは起きた時でいいか。
本を片手に、これからの事を考えた。
冬休み、彼は旅行に行くと言っていた。だから旅行から帰ったら一緒にまた遊びに行きたい。
正月は初詣。それから、二月にはバレンタインもある。
考えると、色々あるけど、それらは彼と一緒に過ごす日々と考えれば、嬉しさしかない。
思えば、この図書室は今まで一人だけの世界だった。
それで私は良いと思っていた。
けど、それは違った。ただ、それしか知らなかっただけだった。
あの日、あの時、ここで彼と出会った事で全てが変わった。
この図書室は一人だけじゃなく、二人の世界になっていた。
本を読み進めていく途中、以前彼が言っていた事を思い出した。
「そういえば……」
寝ている柳君の手に私の手を重ねる。きゅっと握りしめる。
きっと起きた時、彼は驚くだろう。いや、もしかしたら覚えていた事を褒めるかもしれない。
そして私は彼の手を握る。
「――――柳君?」
あるべきものが、彼には無かった。
あまりにも突然で、それはまるで、本当に椿の花のように前触れもなく。
「柳君! ねぇ、柳君! 起きてよ!」
無我夢中で彼の体を擦る。
何の反応もない。どんなに強くたたいても、彼は身動き一つしない。
嫌だ。絶対に嫌だ。
携帯を取ると、震えた指で電話を掛けた。
助けて欲しい、その一心で。
『はい、もしもし。藤崎七海ですが?』
「藤崎さん! 藤崎さん! どうしよう! 藤崎さん!」
『――小宮ちゃん? どうしたの?』
「助けて! 彼が、柳君が!」
『落ち着いて、小宮ちゃん。宗ちゃんに何かあったのね?』
「どうしよう、どうすれば良いですか? 目を覚ましてくれないんです」
『場所は? 学校?』
「はい、学校の図書室です……」
『分かった。私が救急車を手配するから、小宮ちゃんはそこで待ってて」
会話を終えると、直ぐに電話を切られる。
彼の手を両手で強く握りしめた。
「起きて、起きてよ柳君。まだ、何もしてないよ? これからだよ?」
返事は無い。ただ、本当に幸せそうな笑みだけを浮かべている。
夢を見ているのだろうか? とても幸せな夢を。
「旅行はどうするの? 初詣いくんでしょ? やる事残ってるよ?」
涙が、止まらなかった。
嗚咽と混じって聞くに堪えない声を出していた。
「起きてくれるまで、手を握ってるからね? だから、早く目を覚ましてよ」
待ってる。
私は彼が起きる事を信じて。ずっと待ってる。
今日を終えれば、これから冬休みを迎える。
天候に恵まれ、この日は雲一つない晴天となった。天気もこの日の為に気を利かせたかのように、今まで崩れた天気が嘘のようだった。
それはどこか、私の心を反映しているのではないかと、思うほどに。
朝から長い校長の話が、体育館で披露される。私たちはそれを黙って静聴しなければならない。けれど、気持ちは既に休みに入っている人間も多く、周囲の生徒の中には眠りこけているものもいる。
長い校長の一人演説も終わり、それをキッカケに学校は終わりを迎える。
束縛から解放されると、途端に祭りのように辺りが騒然となる。私も、思いっきり背を伸ばして、解放された喜びに浸る。
誰もが体育館から外へと、飛び出していく中で、私は一人だけ校内へと向かう。
何時もの場所で待っている人がいるからだ。
図書室へと辿り着く。扉が半開きなのは、もう、馴れた光景だ。
スーッと扉を開くと、そこに寝ている彼がいた。
何時もの場所で、幸せそうに寝ていた。
私は、起こすのがもったいないので、本を棚から取り出しその隣に座る。
彼と話したい事が山ほどあるが、それは起きた時でいいか。
本を片手に、これからの事を考えた。
冬休み、彼は旅行に行くと言っていた。だから旅行から帰ったら一緒にまた遊びに行きたい。
正月は初詣。それから、二月にはバレンタインもある。
考えると、色々あるけど、それらは彼と一緒に過ごす日々と考えれば、嬉しさしかない。
思えば、この図書室は今まで一人だけの世界だった。
それで私は良いと思っていた。
けど、それは違った。ただ、それしか知らなかっただけだった。
あの日、あの時、ここで彼と出会った事で全てが変わった。
この図書室は一人だけじゃなく、二人の世界になっていた。
本を読み進めていく途中、以前彼が言っていた事を思い出した。
「そういえば……」
寝ている柳君の手に私の手を重ねる。きゅっと握りしめる。
きっと起きた時、彼は驚くだろう。いや、もしかしたら覚えていた事を褒めるかもしれない。
そして私は彼の手を握る。
「――――柳君?」
あるべきものが、彼には無かった。
あまりにも突然で、それはまるで、本当に椿の花のように前触れもなく。
「柳君! ねぇ、柳君! 起きてよ!」
無我夢中で彼の体を擦る。
何の反応もない。どんなに強くたたいても、彼は身動き一つしない。
嫌だ。絶対に嫌だ。
携帯を取ると、震えた指で電話を掛けた。
助けて欲しい、その一心で。
『はい、もしもし。藤崎七海ですが?』
「藤崎さん! 藤崎さん! どうしよう! 藤崎さん!」
『――小宮ちゃん? どうしたの?』
「助けて! 彼が、柳君が!」
『落ち着いて、小宮ちゃん。宗ちゃんに何かあったのね?』
「どうしよう、どうすれば良いですか? 目を覚ましてくれないんです」
『場所は? 学校?』
「はい、学校の図書室です……」
『分かった。私が救急車を手配するから、小宮ちゃんはそこで待ってて」
会話を終えると、直ぐに電話を切られる。
彼の手を両手で強く握りしめた。
「起きて、起きてよ柳君。まだ、何もしてないよ? これからだよ?」
返事は無い。ただ、本当に幸せそうな笑みだけを浮かべている。
夢を見ているのだろうか? とても幸せな夢を。
「旅行はどうするの? 初詣いくんでしょ? やる事残ってるよ?」
涙が、止まらなかった。
嗚咽と混じって聞くに堪えない声を出していた。
「起きてくれるまで、手を握ってるからね? だから、早く目を覚ましてよ」
待ってる。
私は彼が起きる事を信じて。ずっと待ってる。
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