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発端
導き
しおりを挟む「さてと、こんなもんかな」
あの後、倒した盗賊達を道から少し奥まった所に埋めた佐久真。一通り終わると
「予定外の時間を食ったな。急ぐとするか」
軽く身仕度をして、森を目指した。その後、森に入ってからはさしたる問題も無く進んだ。途中、鳥のさえずりや虫の鳴き声が聞こえたり、小動物が戯れたりして賑やかだった。道中、猪に襲われるが、難なく仕留めると休憩も兼ねて、川岸で食事の支度を始める佐久真
「(どんな経験が役に立つか分からないものだな。代々伝わる無地流槍術の海外で行う特訓の1つ。野生の動植物を捕獲から調理まで、1人で熟せるようになるもの。あの時は、使う時はないだろうと思っていたが、まさかな。盗賊相手も特訓の時、襲って来たテロなどを相手にしたことが役に立つとは……)」
血抜きから分割まで行い、あぶり焼きにしていく佐久真
「(今の所まだ虎には出会していない。一応は虎との特訓をしたことあるが、あの時は後ろに麻酔銃を持った専門の人達が居た。大きいとしか、分からないから何とも言えないが……まてよ、今までの特訓はこれらの事を想定したような……フッ、それはないか)」
考えすぎかと、頭を軽く振りながら、焼けた猪肉をおにぎりと一緒に食べようとして、動きを止める。静かに顔を上げ木々の奥を見つめた。
ゆっくりと、木々の影から表れたのは白い虎だった。高さはゆうに、2mあり体長は5~6mを越える体躯をしている。そして、今にも噛み殺さんとした表情で唸り声をあげ、佐久真を睨んでいる。
普通の人間ならば裸足で逃げ出す所が、佐久真は表情は変えずに落ち着いて居た。それどころか、猪肉の1番大きい部位を、白虎の前に投げた。
「食うか?」
一瞬身構えて、匂いを嗅いぐとすぐ顔をあげ佐久真を睨み付ける。
「そう、睨むな。俺はただ、この森に俺を呼んだ何かがあると思い、来ただけだ(不思議と恐怖は、感じないな。)」
すると、言葉が通じたのか、唸り声が止んで表情が落ち着く白虎。佐久真はそれを、見て少し笑うと
「そうだな。では、事の始まりから話すかな」
全てを話す佐久真。何故か夏侯惇達よりも、落ち着いて話せている。何時しか、白虎は座っていて静かに話を聞いていた。全てを話し終えると、白虎は少し考える仕草を見せ、それから目の前にある肉をゆっくりと食べ出した。
「まずは、腹ごしらえだな」
暫くの間、静かに食事をする1人と1頭。途中、白虎がおかわりをせがんで来て、少し佐久真が驚いたりする場面があった。結果、猪肉は全て無くなった。
「(肉が多かったから、全部食べてくれて助かったな。んっ?)」
佐久真が後片付けをしていると、白虎は森の奥に向きをかえ、顔だけ佐久真に向けていた
「着いてこいってか? 分かった、すぐ準備する」
白虎の意図を察して、準備を急ぐ佐久真。準備が終わると、白虎はゆっくりと歩き出した。その後を、着いて行く佐久真。進むにつれて、あれだけ賑やかだった鳴き声は一切無くなり、何時しか静寂が支配していた。そして
「これは……?!」
白虎が案内した場所。それは、この世界に来る前に入った洞窟があった。
目を瞑り1つ深呼吸をする佐久真。ゆっくり目を開けて
「よし、行くか」
洞窟を静かに見据えていたが、覚悟を決めて中に入って行った。
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