記憶をなくしても君は忘れない

水城ひさぎ

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禁じられた恋

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「あたりさわりなく……か」

 表と裏の顔を使い分けるのが上手な理乃らしいと言えば、らしいか。しかし、光莉と仲良くしていた美帆や拓海とトラブルなく過ごしていたというのは、どうもしっくり来ない。

「ねー、光莉はどうしてここにいるの?」
「あっ、それはね……」

 光莉は理乃が行方不明になったと知ってから拓海に再会するまでの出来事を簡単に話す。それから、たびたび彼に会っていると。

 拓海と一緒に暮らしてるとまでは言えなかったのは、逃げるようにアメリカへ行き、拓海と別れた事実を知る美帆にそれを知られるのは、なんだか気まずかったからかもしれない。

「そっかぁ。本当にたまたまだったんだね……」
「うん。美帆こそ、どうしてここで拓海が暮らしてるって知ったの?」

 彼は転落事故に遭ってからペンタプリズムに引っ越してきたのだ。ここで暮らしてることを知ってる人は限られているだろう。

「月島くんの実家で聞いたよ。光莉、覚えてるかな? 月島くんと仲良かった真中くんと杉谷くん。ふたりとは私、まだ連絡取り合う仲でさ、今回のこと三人で相談して、月島くんに会ってみようって話になったの。でも、連絡先知らないし、それで、私が代表して実家に行くことになったんだよね」
「連絡先、知らなかったんだ?」
「そうっ。月島くん、就職したら、スマホ変えちゃったみたいでさ。ひどいでしょー? 真中くんたちにぐらい教えておいてほしいよね」

 わざとらしく腰に手を当てて、美帆は唇を尖らせる。水くさいって思ってるのだろう。

「拓海って、真中くんと杉谷くんとは最近、仲良くしてなかったのかな?」
「年賀状のやりとりぐらいはあったみたいだよ。真中くんはお医者さんだし、杉谷くんは転勤で県外暮らしだから、連絡先がわかっててもなかなか会えなかったんじゃないかな?」

 詳しくはよく知らないと美帆は言うが、やはり、年始の挨拶ぐらいしかしない関係だったのだろう。

「就職すると忙しいから、疎遠になりがちだよね」
「だよねー。月島くんなんて特に。あのドックスに就職したんだもんね。営業成績もダントツらしくて、休みなく働くような社畜みたい。らしいって言えばらしいけど、恋人もいないし、友だちとも遊ばないような暮らししてるみたいだよ。ペンタプリズムなんて名前のアパートに住んでる時点で、カメラオタクは変わらないんだって笑っちゃった」

 言った先から、美帆はおかしそうに笑う。

「そんなに優秀なんだね」
「そうみたい。杉谷くんから聞いただけなんだけどね。ほら、杉谷くんもカメラ関係の会社に就職したから、そっち絡みで月島くんのうわさは聞くみたい」
「有名人だね」

 そっと笑うと、美帆はどことなく誇らしげにうなずいて、アパートを指差す。

「月島くん、今日も仕事? 日曜日だから、いるかなって思ったんだけど」
「それが……拓海ね、警察に行ってる」
「えっ、警察? なんで?」
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