強欲御曹司の溺愛

水城ひさぎ

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強欲な甘い結婚

佑磨の申し出(1)

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 珍しく、父は私よりも先に帰宅していた。

 リビングテーブルで新聞を広げる父と、キッチンで夕食の準備をする母は、立ち尽くす私を同時に見る。

「どうした、つばさ」

 新聞をたたみ、父が言う。いつもと違う雰囲気を感じ取ったのだろう。

 テーブルに近づいた私は、思い切って切り出す。

「お父さんたちに会ってほしい人がいるんだけど、いい?」

 緊張ぎみに言うと、何事かと驚くように、両親は顔を見合わせる。そして、父が先に口を開いた。

「なんだ、つばさ、彼氏でも連れてきたのか」
「つばさちゃん、そうなの?」
「違うよ、違う。長野の土地の話を海堂さんにしたら、ぜひ、ご両親と話がしたいって言われて」

 あわてて否定するが、父は眉をひそめる。

「つばさ、そんな話、外でやすやすとするもんじゃないよ」
「うん、でもね、彼は海堂さんだから。知ってる? 海堂さん。海堂リゾートの海堂さん」
「海堂リゾートって? 母さんは知ってるか?」

 首をひねって、父は母に尋ねる。

「つばさちゃん、もしかして、海堂さんって、あの? あの、リージェスホテルの社長さん?」
「社長さんじゃないんだけど、うん、リージェスホテルの海堂さん。リトルグレイスのお客さんで、それで知り合ったの」
「なんだって? リージェスホテルの社長さんが来てるのかっ?」

 さすがに父も、リージェスホテルの名前は知っている。驚きのあまり腰を抜かして、大きな体がテーブルにつっかえるぐらい、いすからずり落ちる。

「社長さんじゃなくて、社長の息子さんなんだけど。外の車で待ってる」
「つばさちゃん、それをはやく言いなさい。すぐに海堂さんをお呼びして」

 母もキッチンから飛び出してくると、急いでテーブルの上を片付け始める。

「お父さん、土地に関する書類、見せてほしいって。彼にいい案があるみたい」
「いい案? まあ、とにかく、用意するから、海堂さんを呼んできなさい」

 こうしちゃいられないと立ち上がった父は、チェストの引き出しを開いて、私を急かす。話は聞いてくれるみたい。

 かかとをひるがえすとリビングを出て、玄関ドアを開ける。天ヶ瀬さんを連れた佑磨さんがアプローチを歩いてきている。

「海堂さん、両親が話を聞きますって」

 さらに大きくドアを開いて、うなずく佑磨さんと、アタッシュケースを持って付き従う天ヶ瀬さんを招き入れる。

 急いで玄関先へやってくる母を見て、佑磨さんは丁寧に頭を下げた。

 いつも私をからかって、大仰な態度を取る彼とは違って、それは見惚れてしまうような美しい所作だった。

 本当にこんな素敵な人が私を好きだというのだから、困惑してしまう。

 簡単なあいさつを交わして、母は佑磨さんたちをリビングに案内した。

 父は佑磨さんと名刺を交換すると、彼にいすを勧めた。

 両親は並んで腰かけ、母の向かいに私、隣に佑磨さんが座った。天ヶ瀬さんは当然というように、いすを勧められても座らず、佑磨さんの後ろに控えていた。

「失礼ですが、本当に海堂リゾートの海堂さんなんですね。つばさがお世話になっているようですが、余計な話をしたそうで、ご足労いただいてすみません」

 父は名刺と佑磨さんを交互に見やって、いまだに信じられないとばかりの顔をしたが、申し訳なさそうに謝罪した。

「いえ、ご無理を言ったのは、私どもの方ですので。早速ですが、本題に入らせていただいてもよろしいでしょうか」
「ああ、はい。長野の土地の件ですね……」
「書類、見せていただけますか? 少々、気になる点がございまして」

 佑磨さんは父の手もとにある書類へ視線を移す。

 父は迷うように母と目を合わせたが、佑磨さんに気圧されているのか、おずおずと書類を差し出した。

「失礼します」

 不安げに私たちが見守る中、頭を下げた佑磨さんは書類を引き寄せ、中身をじっくりと確認していく。どうやら、土地の図面のようだ。

 しばらくして、佑磨さんは顔を上げると、緊張を和らげるような笑みを見せた。

「ありがとうございます。こちらの土地でしたら、間違いなく、私どもの会社で売却の手続きを取らせていただけます」
「というと?」
「買い手のつかない土地の相続に困っていると、事情はつばささんからうかがいました。早急に我が社で検討した結果、空港に近い土地ですし、じゅうぶんに我が社で活用できると考え、適正価格での取引を望んでおります」
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