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番外編:有村七江は覗かれたい(6)
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実験の様子を語る前に、実験を終えて色々とやらかした後、今となってはあれも良い思い出だよね若気の至りだよねウフフでもブレーキは忘れてもアクセルまで踏まなくてよかったんじゃないかなと思ったりするのは結果論だからあの時はああでもしないと罪悪感や気不味さを振り切って前に進めなかったよねうんうん分かるよでもそれはそれとして反省もしないとね――と冷静に自分を見詰め直して過去を振り返れるぐらいには時の経った未来のわたしから説明をさせてほしい。
恐らくは、前提を共有しておかないとツッコミが追い付かないと思うのだ。
テンパったままのわたしやそんなわたしに引っ張られた佐藤くんは、有り体に言えば「そうはならんやろ」とツッコミ待ちの行動に終止する。
――少しでも冷静になればバカップルの所業だと気付けたのではないか?
至極当然の指摘ではあるけれど、実験中のわたし達に理性を期待してはいけない。それが大前提であると心に刻んでほしい。
それに高校生カップルなんてこういうものだ(独断と偏見)。
麻美ちゃんと荒谷くんの付き合い方を見ても間違いない(サンプル数一個)。
つまりは、わたしと佐藤くんは実験とか検証とか言い訳を用意しただけで、ただ恋人らしくあれこれしたかっただけという話だ。
テンションが振り切れて迷走したけど、佐藤くんは気にしてないしあの時のわたしは気にしてなかったから、くよくよ悩む必要はないのである。
建前を投げ捨てたわたしは興奮冷めやらぬままに佐藤くんとたくさんアレコレを続行……うん、その、ずっと我慢させられたので仕方ないと思う。そういうことにしてほしい。
何が言いたいのか分からなくなってきちゃった。
ええと、ともかく、恥ずかしいとは思うけど、この時はこうだったんだから仕方ない。人生とはそういうものなのだ。
*
実験内容の共有を終えたわたしと佐藤くんは、一階のトイレにやってきていた。
扉を開くと設置型の消臭剤から石鹸の匂いがほのかに香ってくる。
掃除が行き届いており、便器の後ろ側にも汚れは見当たらない。隅々まで清潔に保たれていた。
「こんなこともあろうかと掃除を念入りにしておいてよかった……なんて、そんなわけないけど」
「本当に想定済みだったらビックリしちゃうよ」
「自分の綺麗好きに感謝しておく」
家の人は居ないけど、開けたままにするのは習慣的に気恥ずかしい。
「佐藤くん、扉を閉じてもらってもいい」
「分かった。これは背中に手を回せば、行けるかな」
ガチャリと扉が閉じられる音を聞いて、体を捻って振り返ると、すぐ目の前に佐藤くんの顔があった。
気恥ずかしくて思わず俯いてしまう。
「あはは、流石にちょっと狭いね」
「二人以上が同時に入るのは想定されてる筈もないか」
通学時の満員電車を彷彿とさせる密着具合だ。
都会に比べれば利用客は確かに少ないけど、その分、車両数も少ないのでどうしても通勤・通学ラッシュ時は混雑してしまう。
恋愛作品で、彼氏が体を張って彼女のスペースを確保するシチュエーションをよく見るので少しだけ憧れていた。ここはトイレで二人っきりなのでロマンチック要素はないけど。
「でも有村さんは便座に座るから大丈夫じゃないかな」
「そっか、ちょっと座ってみるね」
わたしが腰を下ろすと、確かに余裕はできたけど窮屈に変わりはなかった。
「……この体勢だと、覗くのは厳しそうだ」
「そ、そうだねっ!」
洋式トイレの構造上、佐藤くんが屈み込んでも便座の内側は陰になってしまう。
肝心の目的を果たせなければ意味がなかった。
今回の実験内容、それは言ってしまえば放尿プレイとなる。
わたしがおしっこをしているところを佐藤くんに直接見てもらい、動画よりも生身の素晴らしさを伝えて、更にはわたしが見せたがりのえっちな女の子だったとしても受け入れてもらえることを確かめるのだ。
今後の恋人関係に対する不安をまとめて払拭する素晴らしい計画である。
もう色々と冷静さを失っているようにも思えるけど、きっと気のせいだ。うん、気のせいに違いない。
「学校にある和式トイレを使う時みたく、便座に足を乗せたら……うーん、これだと汚しちゃうから……」
出だしからアドリブで方向転換した弊害が出てきてしまう。
本来の計画ではトイレであれこれする予定なんて当然なかった。
「直接は見えなくても、とりあえず今日はしているところを見るだけでもいいんじゃないかな。いや! もちろん有村さんが良ければだけど!」
佐藤くんは妙に早口だった。
最後に念押しまでしてきてどうしたのだろうか。
(……ううん、そんなに難しく考えなくてもいいのかも。やっぱりこういうのが好きなんだ。恥ずかしいけど、佐藤くんが見て喜んでくれるならわたしも嬉しいし、相性が良いってことだよね!)
覚悟を決めたわたしはロングスカートの裾を掴んだ。
「うん、わかった。それじゃあ――」
羞恥心を振り払うため、一気にたくし上げて脇に挟み込む。腕からあふれるスカートをお腹の前にかき集めた。
佐藤くんの視線が露わになったショーツに釘付けになっていた。期待通りの反応が見られて、頬が緩んでしまいそうになる。
「――どうかな?」
「ぐふっ」
「ええっ!?」
佐藤くんが急に口元を抑え込んで咳き込んだ。
「だ、だいじょうぶ、ちょっと油断してた」
「油断って一体……?」
「死角から可愛さが強襲してきたから」
「えぇぇ?」
未だにこういう時の佐藤くんはよく分からない。
可愛いと言ってくれるのは嬉しいけど。
「有村さんは自分の可愛さをもっと自覚するべきだよ」
「この流れわたしが悪いの……?」
「いつも可愛いんだから、可愛いことをしたらもっと可愛くなるのは当たり前だよ。こんな至近距離で上目遣いを使った赤面顔なんて可愛いが過ぎる」
「わ、わわっ、恥ずかしいから何度も言うのは禁止!」
「……うん、自分で言ってて恥ずかしいや」
「自爆攻撃だったの!?」
「嘘を言っているつもりはないんだけどね」
「むぅぅ、そうやって後からさらりと言うんだから」
「あれ? この流れは僕が悪いの……?」
「佐藤くんは褒め上手なところを自覚するべきなんだよ」
可愛いって言うよりも、それが嘘じゃないって言うのはそっちのが恥ずかしいと思うんだけど、普段と同じ口調でなんてことないように言うから、正直な気持ちなんだって分かって――嬉しくて、恥ずかしくて、反応に困っちゃう。
「あとね、感想を聞いたのはわたしじゃなくてこっちについてだよ?」
スカートをたくし上げ直して、ショーツがよく見えるように両足を開いた。
少しはしたないけど、これからもっと恥ずかしい姿を見せるんだから、これぐらいで躊躇ってはいられない。
「う、うん……白色がすごく似合ってる。それに、これは悪い意味とかじゃなくて、えっちで可愛いと思う」
「あぅぅ、喜んでもらえて、嬉しいっ」
いわゆる勝負下着だった。
純白のショーツには花柄の刺繍レースがふんだんにあしらわれている。IラインとOラインは確りと覆われているが、Vラインは際どい部分まで布地がカットされており、サイドに至っては透け透けのレースがありがたいぐらいほとんど紐パンのような状態だ。
派手過ぎるかなと買う時は躊躇した。
でもこれまでの佐藤くんの下着への反応を振り返れば、きっと喜んでもらえると思ったので、こうして見せるつもりで着てきたのだ。
初めて結ばれた日にも実はこの純白のショーツを身に着けていた。あの日は結局、下着姿を見せることはなかったので今日は二重の意味でリトライだった。
こうして喜んでもらえると、慣れない派手な下着に挑戦して良かったと思う。
「今度からこういう下着も買うようにするね」
「ありがたいけど、高かったりしない?」
「学校には着ていけないけど、私服のオシャレだと考えれば一緒だよ」
「そっか無理をしてないなら良かった……僕からプレゼントするのも、ちょっと難しいし」
「あはは……それはそうかも」
ランジェリーショップで男女のカップルらしきお客さんが一緒に選んでいる姿を見掛けることはあった。楽しそうに選んでいるカップルも居たが、それ以上に男性側が気不味そうにしていたり、男性を睨み付ける女性客が多かった気がする。
「でも男の人が入れるように配慮したお店とかも都内だとあるみたいだよ。それに……佐藤くんがどういう下着が好きなのか、少し聞いてみたいかも」
「まあ機会があったらね」
流石に佐藤くんも乗り気ではなさそうだ。
自然とそういう方向に持っていけるデートプランを頭の中に浮かべていたけど白紙に戻した。
「感想をもらえたし、下着も脱ぐね」
脇に挟んだスカートを落とさないように気を付けながら前屈みになる。
ショーツのサイドに指を掛けた。
「ちょっと待って」
「どうしたの?」
佐藤くんは頬を掻きながら視線を明後日の方に向けた。
「嫌じゃなければなんだけど、僕が脱がしてもいいかな?」
恐らくは、前提を共有しておかないとツッコミが追い付かないと思うのだ。
テンパったままのわたしやそんなわたしに引っ張られた佐藤くんは、有り体に言えば「そうはならんやろ」とツッコミ待ちの行動に終止する。
――少しでも冷静になればバカップルの所業だと気付けたのではないか?
至極当然の指摘ではあるけれど、実験中のわたし達に理性を期待してはいけない。それが大前提であると心に刻んでほしい。
それに高校生カップルなんてこういうものだ(独断と偏見)。
麻美ちゃんと荒谷くんの付き合い方を見ても間違いない(サンプル数一個)。
つまりは、わたしと佐藤くんは実験とか検証とか言い訳を用意しただけで、ただ恋人らしくあれこれしたかっただけという話だ。
テンションが振り切れて迷走したけど、佐藤くんは気にしてないしあの時のわたしは気にしてなかったから、くよくよ悩む必要はないのである。
建前を投げ捨てたわたしは興奮冷めやらぬままに佐藤くんとたくさんアレコレを続行……うん、その、ずっと我慢させられたので仕方ないと思う。そういうことにしてほしい。
何が言いたいのか分からなくなってきちゃった。
ええと、ともかく、恥ずかしいとは思うけど、この時はこうだったんだから仕方ない。人生とはそういうものなのだ。
*
実験内容の共有を終えたわたしと佐藤くんは、一階のトイレにやってきていた。
扉を開くと設置型の消臭剤から石鹸の匂いがほのかに香ってくる。
掃除が行き届いており、便器の後ろ側にも汚れは見当たらない。隅々まで清潔に保たれていた。
「こんなこともあろうかと掃除を念入りにしておいてよかった……なんて、そんなわけないけど」
「本当に想定済みだったらビックリしちゃうよ」
「自分の綺麗好きに感謝しておく」
家の人は居ないけど、開けたままにするのは習慣的に気恥ずかしい。
「佐藤くん、扉を閉じてもらってもいい」
「分かった。これは背中に手を回せば、行けるかな」
ガチャリと扉が閉じられる音を聞いて、体を捻って振り返ると、すぐ目の前に佐藤くんの顔があった。
気恥ずかしくて思わず俯いてしまう。
「あはは、流石にちょっと狭いね」
「二人以上が同時に入るのは想定されてる筈もないか」
通学時の満員電車を彷彿とさせる密着具合だ。
都会に比べれば利用客は確かに少ないけど、その分、車両数も少ないのでどうしても通勤・通学ラッシュ時は混雑してしまう。
恋愛作品で、彼氏が体を張って彼女のスペースを確保するシチュエーションをよく見るので少しだけ憧れていた。ここはトイレで二人っきりなのでロマンチック要素はないけど。
「でも有村さんは便座に座るから大丈夫じゃないかな」
「そっか、ちょっと座ってみるね」
わたしが腰を下ろすと、確かに余裕はできたけど窮屈に変わりはなかった。
「……この体勢だと、覗くのは厳しそうだ」
「そ、そうだねっ!」
洋式トイレの構造上、佐藤くんが屈み込んでも便座の内側は陰になってしまう。
肝心の目的を果たせなければ意味がなかった。
今回の実験内容、それは言ってしまえば放尿プレイとなる。
わたしがおしっこをしているところを佐藤くんに直接見てもらい、動画よりも生身の素晴らしさを伝えて、更にはわたしが見せたがりのえっちな女の子だったとしても受け入れてもらえることを確かめるのだ。
今後の恋人関係に対する不安をまとめて払拭する素晴らしい計画である。
もう色々と冷静さを失っているようにも思えるけど、きっと気のせいだ。うん、気のせいに違いない。
「学校にある和式トイレを使う時みたく、便座に足を乗せたら……うーん、これだと汚しちゃうから……」
出だしからアドリブで方向転換した弊害が出てきてしまう。
本来の計画ではトイレであれこれする予定なんて当然なかった。
「直接は見えなくても、とりあえず今日はしているところを見るだけでもいいんじゃないかな。いや! もちろん有村さんが良ければだけど!」
佐藤くんは妙に早口だった。
最後に念押しまでしてきてどうしたのだろうか。
(……ううん、そんなに難しく考えなくてもいいのかも。やっぱりこういうのが好きなんだ。恥ずかしいけど、佐藤くんが見て喜んでくれるならわたしも嬉しいし、相性が良いってことだよね!)
覚悟を決めたわたしはロングスカートの裾を掴んだ。
「うん、わかった。それじゃあ――」
羞恥心を振り払うため、一気にたくし上げて脇に挟み込む。腕からあふれるスカートをお腹の前にかき集めた。
佐藤くんの視線が露わになったショーツに釘付けになっていた。期待通りの反応が見られて、頬が緩んでしまいそうになる。
「――どうかな?」
「ぐふっ」
「ええっ!?」
佐藤くんが急に口元を抑え込んで咳き込んだ。
「だ、だいじょうぶ、ちょっと油断してた」
「油断って一体……?」
「死角から可愛さが強襲してきたから」
「えぇぇ?」
未だにこういう時の佐藤くんはよく分からない。
可愛いと言ってくれるのは嬉しいけど。
「有村さんは自分の可愛さをもっと自覚するべきだよ」
「この流れわたしが悪いの……?」
「いつも可愛いんだから、可愛いことをしたらもっと可愛くなるのは当たり前だよ。こんな至近距離で上目遣いを使った赤面顔なんて可愛いが過ぎる」
「わ、わわっ、恥ずかしいから何度も言うのは禁止!」
「……うん、自分で言ってて恥ずかしいや」
「自爆攻撃だったの!?」
「嘘を言っているつもりはないんだけどね」
「むぅぅ、そうやって後からさらりと言うんだから」
「あれ? この流れは僕が悪いの……?」
「佐藤くんは褒め上手なところを自覚するべきなんだよ」
可愛いって言うよりも、それが嘘じゃないって言うのはそっちのが恥ずかしいと思うんだけど、普段と同じ口調でなんてことないように言うから、正直な気持ちなんだって分かって――嬉しくて、恥ずかしくて、反応に困っちゃう。
「あとね、感想を聞いたのはわたしじゃなくてこっちについてだよ?」
スカートをたくし上げ直して、ショーツがよく見えるように両足を開いた。
少しはしたないけど、これからもっと恥ずかしい姿を見せるんだから、これぐらいで躊躇ってはいられない。
「う、うん……白色がすごく似合ってる。それに、これは悪い意味とかじゃなくて、えっちで可愛いと思う」
「あぅぅ、喜んでもらえて、嬉しいっ」
いわゆる勝負下着だった。
純白のショーツには花柄の刺繍レースがふんだんにあしらわれている。IラインとOラインは確りと覆われているが、Vラインは際どい部分まで布地がカットされており、サイドに至っては透け透けのレースがありがたいぐらいほとんど紐パンのような状態だ。
派手過ぎるかなと買う時は躊躇した。
でもこれまでの佐藤くんの下着への反応を振り返れば、きっと喜んでもらえると思ったので、こうして見せるつもりで着てきたのだ。
初めて結ばれた日にも実はこの純白のショーツを身に着けていた。あの日は結局、下着姿を見せることはなかったので今日は二重の意味でリトライだった。
こうして喜んでもらえると、慣れない派手な下着に挑戦して良かったと思う。
「今度からこういう下着も買うようにするね」
「ありがたいけど、高かったりしない?」
「学校には着ていけないけど、私服のオシャレだと考えれば一緒だよ」
「そっか無理をしてないなら良かった……僕からプレゼントするのも、ちょっと難しいし」
「あはは……それはそうかも」
ランジェリーショップで男女のカップルらしきお客さんが一緒に選んでいる姿を見掛けることはあった。楽しそうに選んでいるカップルも居たが、それ以上に男性側が気不味そうにしていたり、男性を睨み付ける女性客が多かった気がする。
「でも男の人が入れるように配慮したお店とかも都内だとあるみたいだよ。それに……佐藤くんがどういう下着が好きなのか、少し聞いてみたいかも」
「まあ機会があったらね」
流石に佐藤くんも乗り気ではなさそうだ。
自然とそういう方向に持っていけるデートプランを頭の中に浮かべていたけど白紙に戻した。
「感想をもらえたし、下着も脱ぐね」
脇に挟んだスカートを落とさないように気を付けながら前屈みになる。
ショーツのサイドに指を掛けた。
「ちょっと待って」
「どうしたの?」
佐藤くんは頬を掻きながら視線を明後日の方に向けた。
「嫌じゃなければなんだけど、僕が脱がしてもいいかな?」
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