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後輩くんに壁ドンで告られる
言わぬが花
しおりを挟むきまり悪そうに老婦人を眺めている彼に向き直る。
「どうして本当のことを言ってくれなかったの?」
「…すみません」
「女の子をナンパしていたなんて嘘を言ってさ」
「本当のことを言うのは何だかこっぱずかしいじゃないですか」
「こっぱずかしいって、黒崎くん、人助けは立派な行為だよ」
「でも、そういうことは言わないのが花です」
"言わぬが花"か。
ふーん。
見かけによらずしゃれたことを言うじゃない。
「先輩。俺に惚れました?」
「はい?なにそれ」
「いや。ギャップ萌えというか。その、普段のクールな俺の素顔を知って惚れてくれたかな、なんて」
「それ以上は言わぬが花よ」
「すみません」
くだらないジョークを言わなければカッコいいのに。どうしてこの子は普段はキリッとして締まった雰囲気なのに、今日は…わたしの前ではこんなに無防備な顔をするのかな。
こんな…無邪気な笑い方をして。
「とりあえずこのご婦人をスタバまで送って行こうよ」
「ああ!そうですね」
わたしたちは遠慮している老婦人をエスコートして、駅構内にあるスタバまで一緒に行った。しかし、ご高齢の上品なご婦人の口から「スタバ」というモダンでキャッチ―な言葉が出た時はちょっと驚いた。
俺たちもコーヒーを飲んでいきましょうと言う、呑気な彼を急き立て、とりあえず今日の目的である初詣を済ませることにする。
「遅くなっちゃうからね」
「すみません」
「もう謝らなくていいよ。事情がわかったから」
平日ほどではないが空いているとはいえない地下鉄に乗る。和装の黒崎くんは電車の中で目立つようで、やたらと視線を感じる。
「きみ、目立つみたいね」
「最近は着物姿の人が少ないから」
彼の言うとおりだ。和服の男性などお正月でも滅多に見かけたことはないけど、着物姿の女性だってめっきり減ってしまった。かく言うわたしも、コートとスカートに真新しいハイヒールという洋服だ。
「目立つのは俺じゃなくて俺たちじゃないかな」
「それはどういう意味?」
「さっきのご婦人が言ってたじゃないですか。お似合いのカップルだって。美男美女カップル」
「ああ、それで思い出した。ねえ、わたしきみの彼女じゃないんだけど」
美女なんて言葉では、もう誤魔化されないわ。危うく彼の失言を見逃すところだった。こういうことはハッキリきっちり注意しておかなくてはいけない。
「まあ、いいじゃないですか」
「良くない!」
吊り革に掴まりわたしを見下ろしている目に笑みが浮かんでいる。
何がおかしいの?
「嘘を言っちゃだめでしょう」
「今は嘘でも…」
「えっ、今はって?」
「その先は言わぬが花です」
言い返そうとしたら、降りる駅に到着したことを告げる車内アナウンスと共に、ガーっと電車のドアが開いた。
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