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024 アモン

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「アモンー」
「おお、グラシア。ちゃんとマスターに仕えているか?」
「うん!」
「それは重畳」

どうやら犬同士仲が良いようだ。
いや、アモンは狼だけど。悪魔同士と言うべきか?

「ところでマスター。撫ぜて頂けるのはありがたいのですが……ご用命は?
 そこに居る人間を殺せば良いでしょうか?」
「はぇ? ち、違う違う!! 殺しちゃダメだって!」

いきなり怖い事を言わないように。
一瞬何を言ってるか判らずに、うんって言いかけたじゃないか。

「こちらは冒険者ギルドのギルドマスターだよ」
「そうですか。私には関係無いようですね。ではマスター、ご用命を」
「いや、関係あるって。俺が悪魔を呼べるかって話になってるんだから」
「ふん。人間の分際でマスターの言葉を疑うとは! この辺り一帯を焼滅してやろうか!」

脅すな!
俺も怖いわ!
口から火が漏れてるって! お漏ら火してるって!

「こらこら! 大人しくしなさい。
 ギルドマスター、信用してもらえましたか?」
「………………あぁ。信用しよう」

信じてもらえたようだ。
まぁ、信じてなくてもこんなの前に出されたら、そう言うしか無いと思うけど。

「じゃあ続きを話しますね。
 悪魔を召喚する方法ですけど、所有しているカードを利用するんですよ。
 で、このカード。神様がこの世界にバラまいたらしいんですよね~。
 だから回収して回らないといけないんです」
「……何で神はバラまいたんだ?」
「俺が一箇所に留まらないように、って事みたいです。
 集めるにはあちこちに行かなきゃいけないんで」
「神にも捜し物の場所は判らないのか?」
「え~と、他の神が隠したっぽいですね」

運営が隠したとか言っても理解されないだろう。
それどころか、ゲームの舞台にされてるとか、絶対に言えない話だわ。

「それでですね。この奇病?を起こしているのが、そのカードっぽいんですよ」
「はぁ?! マジで言ってんのか?!」
「そういう事だよな、グラシア?」
「うん、そうだよー」
「じゃあ、お前が原因って事か?!」
「違いますよ!! どっちかと言えば、原因は神様でしょ! 俺は被害者です!!」

間接的には俺が原因とも言えなくは無いけど。
この辺はあまり話さない方が良さそうだ。

「グラシア、カードが病気の原因っぽいってのは判ったけど、どうすれば良いんだ?」
「回収ー」
「俺が回収すれば治まるって事?」
「その通りー」
「って事らしいです。協力してもらえます?」

ギルドマスターは唸っている。

「う~ん、穿った見方をすれば、お前がそのカードを使って現状を作っているとも言えるが」
「そんな事しても、俺にメリットが無いですよ」
「事態を収める為に金寄越せとか言えるだろ。後は貴族や王族に取り入るとか。
 何か恨みがあって、復讐の為にしているって事も考えられる」
「そんな事は一つも考えて無いですよ! カードを入手したら街を出ますから」
「マスターを疑うと言うのか! この人間め!
 マスターが真の力を発揮すれば、この街を更地にしてゆっくりとカードを探す事も出来るのだぞ!」

アモンが怖い。
ギルドマスターが怯えているが、俺もビビってる。

「こら、アモン、ステイ!」
「はっ、申し訳ありません!」
「どうですか、ギルドマスター。協力してもらえますか?」
「…………せざるを得ないだろう。しかし街中を探し回るのか?」
「そうなるのかな? グラシア、アモン。カードの場所は判る?」
「なんとなくー」
「すみません、マスター。私の能力では遠いか近いかくらいしか判りません……」

ふ~む。
捜し物をするにはグラシアの方が向いているみたいだ。
でももうすぐ時間切れになるだろうし、ここはアモンに探してもらうか。
あっ、捜し物の得意な悪魔を召喚すれば良いのか。

「……一つ問題がある」
「えっ? 何が問題です? あぁ、アモンがこの姿で探し回る事ですか?」
「それもあるが……言っただろう。今この街に問題解決の為に王太子が来ている事を。
 探し回りカードを発見し解決する、その事を王太子に報告しなければならない」
「そうなんですか? 頑張ってください」
「信用される訳無いだろうが! 今、俺でも半信半疑なのに!」

え~、それって王太子に会って、もう一回説明しろって事だよね。

「呼んでおいてくれれば、一回で済んだのに」
「アホか。俺も最初は与太話だと思ってたから酒場で聞いたんだぞ?
 そんななのに、王太子を呼ぶって物理的に首が飛ぶわっ!」

むむっ、確かに。

「逆に考えろ。お前の言っている事が全て本当だとしてだ。
 王太子、つまりは王族に話が通っていれば、この国内の捜索はしやすくなるだろうが」

なるほど、そういう考えもあるね!
じゃあ、王太子に話をしますか。

って、ギルドマスター。さすがですね。
上手い事、乗せられた気がするわ。
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