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不幸な女編-3
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その日、文花は朝早く起きて、キッチンにこもっていた。
小麦粉を測り、ふるいにかける。これからクッキーを焼くつもりだった。
華を通してミイがアパレルメーカーに勤めていた時の不倫の奥さんに今日会える事になった。
その手土産の為にクッキーを焼く事に決めた。クッキーなら嫌いな人も少ないだろうと判断した。
オーブンに入れ、焼き上がるまで待つ。
文花は食卓に座り少し休みながら考え込む。
ここ数日はミイの事件については、動きはなかった。
近所では白い目を向けられ、記者も張り付いているようだったが、警察からの連絡はない。脅迫状について聞きたかったが、こちらから連絡するのも躊躇われた。
夫は相変わらず仕事が出来ない様で、一日中離れでぼんやりとしていた。
昼出版に行った時、藍沢に会った。おそらくアリバイや自分の評判について調べているのだろう。アリバイはともかく、自分の評判は最悪だろう。
ミイを殺した疑いを持たれても仕方がない。常盤には一応夫が書けなくなった事を伝えたが、反応は実にあっさりとしたものだった。
少しぐらいは編集者として動揺し怒ってもいいじゃないとも思った。それにあの男は事件について何も聞いてこなかった。おそらく犯人だと決めつけて恐れているだろう。あの時の常盤は少し怖がっているように見えた。
そうこうしているうちにバターの香ばしい匂いが広がった。
もう少しで焼ける様だ。
クッキークーラーを食卓の上の用意してミトンをはめ、オーブンからクッキーを取り出した。
たっぷりバターを使ったので、さらにいい匂いがキッチンに広がった。
星型やハート型にくりぬいたクッキーを一枚一枚、クッキークーラーの上に置いて冷やす。生焼けや焦げたところもなく、よく焼き上がっている。一枚味見すると、熱々のクッキーはほろほろと口の中で砕けた。味も問題無さそうだ。
「うわー、なんかいい匂いするんだけど」
そこへ寝癖をつけた夫がやってきた。
「あっつ!」
夫はクッキークーラーから熱々のクッキーを勝手に一枚とって食べてしまった。
「あれ? 文花ちゃんの料理の割に普通に美味い」
ぼろぼろクッキーの粉をこぼしながら夫が言った。実に行儀が悪いし、口も悪い。
「なんで朝っぱらクッキーなんて焼いてるのさ」
「ちょっと」
文花は言葉を濁す。
ミイの不倫の関係者に会う為に焼いていると正直に言えなかった。友達というのも違うし、ミイの事件を調べているなどと言えない。
「ふーん、まあいいけど」
夫はまた一枚クッキーを勝手にとって口に放り込んでいた。
「あ、ちょっと食べないでよ」
「うまいんだもん。こういうお菓子だったら毎日食べたいなぁ」
「やめてよ、太るわよ」
文花はため息をついて、夫のための朝食の準備に取り掛かった。
ミイが死んでから離れではなく家にいる時間も長くなったが、それはそれで嬉しい気もしない。
食事の準備が面倒なのではなく、すっかり芯が抜けてしまったように見えた。愛人の死体を発見するというショッキングな場面に遭遇したのだから当然でがあるが、いつまでも腑抜けでいられても困る。やはり早々に犯人を見つけて、この状況を脱しなければ。
「やっぱり美味いよ、文花ちゃん」
「あー、もう食べないでよ!」
夫は寝ぼけた顔でもう一枚クッキーを口に入れた。
小麦粉を測り、ふるいにかける。これからクッキーを焼くつもりだった。
華を通してミイがアパレルメーカーに勤めていた時の不倫の奥さんに今日会える事になった。
その手土産の為にクッキーを焼く事に決めた。クッキーなら嫌いな人も少ないだろうと判断した。
オーブンに入れ、焼き上がるまで待つ。
文花は食卓に座り少し休みながら考え込む。
ここ数日はミイの事件については、動きはなかった。
近所では白い目を向けられ、記者も張り付いているようだったが、警察からの連絡はない。脅迫状について聞きたかったが、こちらから連絡するのも躊躇われた。
夫は相変わらず仕事が出来ない様で、一日中離れでぼんやりとしていた。
昼出版に行った時、藍沢に会った。おそらくアリバイや自分の評判について調べているのだろう。アリバイはともかく、自分の評判は最悪だろう。
ミイを殺した疑いを持たれても仕方がない。常盤には一応夫が書けなくなった事を伝えたが、反応は実にあっさりとしたものだった。
少しぐらいは編集者として動揺し怒ってもいいじゃないとも思った。それにあの男は事件について何も聞いてこなかった。おそらく犯人だと決めつけて恐れているだろう。あの時の常盤は少し怖がっているように見えた。
そうこうしているうちにバターの香ばしい匂いが広がった。
もう少しで焼ける様だ。
クッキークーラーを食卓の上の用意してミトンをはめ、オーブンからクッキーを取り出した。
たっぷりバターを使ったので、さらにいい匂いがキッチンに広がった。
星型やハート型にくりぬいたクッキーを一枚一枚、クッキークーラーの上に置いて冷やす。生焼けや焦げたところもなく、よく焼き上がっている。一枚味見すると、熱々のクッキーはほろほろと口の中で砕けた。味も問題無さそうだ。
「うわー、なんかいい匂いするんだけど」
そこへ寝癖をつけた夫がやってきた。
「あっつ!」
夫はクッキークーラーから熱々のクッキーを勝手に一枚とって食べてしまった。
「あれ? 文花ちゃんの料理の割に普通に美味い」
ぼろぼろクッキーの粉をこぼしながら夫が言った。実に行儀が悪いし、口も悪い。
「なんで朝っぱらクッキーなんて焼いてるのさ」
「ちょっと」
文花は言葉を濁す。
ミイの不倫の関係者に会う為に焼いていると正直に言えなかった。友達というのも違うし、ミイの事件を調べているなどと言えない。
「ふーん、まあいいけど」
夫はまた一枚クッキーを勝手にとって口に放り込んでいた。
「あ、ちょっと食べないでよ」
「うまいんだもん。こういうお菓子だったら毎日食べたいなぁ」
「やめてよ、太るわよ」
文花はため息をついて、夫のための朝食の準備に取り掛かった。
ミイが死んでから離れではなく家にいる時間も長くなったが、それはそれで嬉しい気もしない。
食事の準備が面倒なのではなく、すっかり芯が抜けてしまったように見えた。愛人の死体を発見するというショッキングな場面に遭遇したのだから当然でがあるが、いつまでも腑抜けでいられても困る。やはり早々に犯人を見つけて、この状況を脱しなければ。
「やっぱり美味いよ、文花ちゃん」
「あー、もう食べないでよ!」
夫は寝ぼけた顔でもう一枚クッキーを口に入れた。
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