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肝が据わった女編-3
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お弁当と水筒、クッキーをカバンに詰めて、佳苗と外に出た。まだ春だが日差しが強く、玄関から出ると思わず目を細めた。
お弁当はおにぎりや唐揚げ、卵焼きと漬物を入れた。子供が好むかどうかは不明だが、シンプルな弁当だった。夫には置き手紙を残し、冷蔵庫に弁当と同じ中身の食事を入れておいた。昼食に困る事はないだろう。
佳苗は外に出ると機嫌が良くなり、鼻歌を歌っていた。駅までの距離、相変わらず近所の白い目を感じたが、文花は慣れたものだと気にならなかった。
船橋方面の電車に乗り、新船橋で降りた。
駅周辺にはマンション多く立ち並び、もショッピングモールがあり、人も多い。
秋子の夫のSNSによると駅のマンションの側の公園に毎週来ているらしい。
文花は佳苗の手を引いて、公園に向かった。
「おばちゃん、公園で絵書いていい?」
「遊ばないの?」
「だって、動くのきらーい」
子供らしく頬を膨らませて、佳苗はつぶやいた。
「おばちゃん、後でアイスかってね?」
佳苗なりに今日ここで公園に文花が行きたがっているのを察しているようだった。
「わかってるわよ。帰りのね、モールのアイス屋で」
「わーい」
アイスの話を聞き、佳苗は笑顔を見せた。
駅から数分あるき、マンションの側にある公園にたどり着いた。
滑り台などあったが佳苗は目もくれず、木陰にあるベンチに行きカバンから画用紙を出して絵を描き始めてしまった。
文花が佳苗の隣に座り、公園の様子を伺った。
親子連れが何組と犬を散歩させている老人が1人、散歩中らしき中年男性がいる。秋子の旦那と思われる人物はいないようだ。そう簡単にみるかるわけじゃないだろう。
カバンから今日焼いたクッキーを取り出し、2、3枚齧った。
こうしていると佳苗と文花はどう見ても親子連れにしか見えないだろう。まさか殺人事件に纏わる人物を調べているようには見えない筈だ。
「おばちゃん、おばちゃんってママと仲悪いの?」
佳苗は色鉛筆で女の子の髪の毛を描きながら尋ねた。
「どうして?」
佳苗は妙に鋭い所があった。そこは文花とも似ていない所かもそれない。
「何となく? ママって学級委員みたいじゃない」
佳苗の言うとおりだった。文花が妹のしっかりとした所が苦手だった。中学の時、学校の先輩と付き合いはじねたときは両親に告げ口され結局別れるハメになった。両親曰く文花のようなのめり込めやすい人間に恋愛などさせると勉強が手につかなくなる。
両親の指摘はもっともで、あのまま恋愛していたら高校受験に合格できるか怪しいところだった。しかし妹の告げ口した事にはしこりが残った。麗香は子供の頃から「母さんに言いつけてやる」口癖だった。お陰で母に叱られる事も多かった。家だけでがなく佳苗は学校でも「先生に言いつけてやる」が口癖でクラスメイト達を取り締まっていた。
お陰で軽くいじめられていたようだが、自業自得だと思って放っておいた。可哀想だとは思えない。正義感でやっているというより自分が優位に立ちたいからやってるようにしか思えなかったからだ。文花は麗香のもつ奇妙な正義感が苦手だった。
「学校の委員長が、ママみたいのタイプなんだよねぇ」
「それはお気の毒」
心底佳苗に同情した。学校生活において「先生に言いつけてやる」優等生タイプのちくり魔ほど迷惑な存在はない。
そうこうしているうちに時計は昼になり、弁当を食べることにした。
地味なおにぎり弁当は意外と佳苗に好評だった。普段ご飯何を食べているのかと佳苗に聞くと、菓子パンやスーパーの惣菜が多いと言う。しっかり者の麗香だが、フルタイムで働いているよなると料理も時短でやっているのだろうと想像がついた。菓子パンやスーパーの惣菜は、身体に良いとは言えず、麗香に忠告すべきだろうか。
しかし妹といえど他人の家庭。うっかり者の姉の忠告など聞く耳は持たないだろうし、よその家庭のことに正義感を振り回してもうざったい学級委員と同じことではないか。
そんな事を考えている時、子供の泣き声が耳に届いた。
「ママぁ」
父親らしく男に手を引かれていたが、涙で顔がびしょ濡れで鼻水を垂らしていた。まだ幼稚園生ぐらいの小さな男の子だった。
「あ!」
思わず文花の唇から声が漏れた。男の子の側にいる男は、秋子の旦那だ。SNSに載っていた写真と同一人物だ。
文花は冷静を装いつつ、秋子の旦那と子供を観察した。
「ママに会いたいよぉ」
「だから、ママは病気で会えないんだってば」
「うわぁーん」
子供は秋子の旦那の腕を掴み、振り回していた。泣き止むどころか、涙は滝のようにあふれていた。
秋子の旦那はすっかり参ってしまい、額についた汗をハンカチで拭いながら、どうする事も出来ないようだった。
事情を知っている文花は、自業自得だと思う。怒りも感じる。もとはといえば原因を作ったのはミイなのである。文花がさほど気に留めていなかったが、普通の女性が脅迫状や嫌がらせを受けたらノイローゼにもなるだろう。文花とてさすがに週刊誌の記者に追いかけ回られた時は抑うつ状態になり、外出もできない日が続いたが。
怒りはふつふつと上昇していく。こんな小さな子供を傷つけ、懲りずに不倫をし、嫌がらせも妻に続けた。その上仕事上でも決して品行方正でなく、炎上して敵を作り、クライアントに「このブス!」と言う。
「文花おばちゃん、どうしたの?」
「あの子ずっと泣いてるねぇ」
「放っておきなよ。子供はだいたいそんなもんだよ?」
佳苗の言葉にだんだん冷静さを取り戻す。
確かに自分の怒りはピントがズレているかもしれない。秋子の事情もよく知らないのだ。それに赤の他人が怒る問題では無い。
「あー、クッキー!」
泣いてた子供は、こちらに近づいてきて佳苗がかじっているクッキーを指さした。
「クッキー食べたいぃー」
「すみません」
秋子の旦那は、子供の腕を引っ張りつつ頭を下げた。
この男は第一印象では自分の夫と違い軽薄な女好きのような雰囲気はなかった。どこにでもいる変哲もない中年男性。ただ子供の扱いに心底困っている事は伝わってきて、他人ながら気の毒にはなった。
「クッキー食べる?おばちゃんの手作りなんだよ」
佳苗は一枚子供に差し出した。
「え、いいの」
子供の涙が一瞬止まった。
「手作り何で味は保証しませんよ」
「すみません」
文花が言うと秋子の旦那は再び頭を下げた。
「わーい」
子供はクッキーを佳苗から貰いと、ぽりぽりと食べはじめた。
「わー美味しい」
だんだん子供の機嫌もなおってきたようだ。
「こら、お礼言わないとダメだろ」
「お姉ちゃんとおばちゃん?ありがと」
「よかったらクッキー持ってきます?いっぱい作りすぎて困ってるんですよ」
文花はカバンからラッピング済みで箱に入れたクッキーを秋子の夫に見せた。
「いえ、それは」
「えー、欲しい! クッキー欲しい!」
子供の機嫌がまた悪くなりそうだった。佳苗は少々呆れたようにため息をついた。
「じゃあ、あの。すみません」
秋子の夫は非常に申し訳無さそうにクッキーを受け取った。
「ありがとう、お姉ちゃんとおばちゃん?」
子供はすっかり泣いてた事など忘れていたようだ。さっき一瞬感じた怒りは、本当に的外れだったのかもしれない。
「すみません」
秋子の夫は再び頭を下げて、子供の手を引き去っていった。
そういえば彼の指にも薬指には指輪がはまったままだった。事情はわからない。わからないが、旦那の方も離婚の意思はないのかもしれない。
お弁当はおにぎりや唐揚げ、卵焼きと漬物を入れた。子供が好むかどうかは不明だが、シンプルな弁当だった。夫には置き手紙を残し、冷蔵庫に弁当と同じ中身の食事を入れておいた。昼食に困る事はないだろう。
佳苗は外に出ると機嫌が良くなり、鼻歌を歌っていた。駅までの距離、相変わらず近所の白い目を感じたが、文花は慣れたものだと気にならなかった。
船橋方面の電車に乗り、新船橋で降りた。
駅周辺にはマンション多く立ち並び、もショッピングモールがあり、人も多い。
秋子の夫のSNSによると駅のマンションの側の公園に毎週来ているらしい。
文花は佳苗の手を引いて、公園に向かった。
「おばちゃん、公園で絵書いていい?」
「遊ばないの?」
「だって、動くのきらーい」
子供らしく頬を膨らませて、佳苗はつぶやいた。
「おばちゃん、後でアイスかってね?」
佳苗なりに今日ここで公園に文花が行きたがっているのを察しているようだった。
「わかってるわよ。帰りのね、モールのアイス屋で」
「わーい」
アイスの話を聞き、佳苗は笑顔を見せた。
駅から数分あるき、マンションの側にある公園にたどり着いた。
滑り台などあったが佳苗は目もくれず、木陰にあるベンチに行きカバンから画用紙を出して絵を描き始めてしまった。
文花が佳苗の隣に座り、公園の様子を伺った。
親子連れが何組と犬を散歩させている老人が1人、散歩中らしき中年男性がいる。秋子の旦那と思われる人物はいないようだ。そう簡単にみるかるわけじゃないだろう。
カバンから今日焼いたクッキーを取り出し、2、3枚齧った。
こうしていると佳苗と文花はどう見ても親子連れにしか見えないだろう。まさか殺人事件に纏わる人物を調べているようには見えない筈だ。
「おばちゃん、おばちゃんってママと仲悪いの?」
佳苗は色鉛筆で女の子の髪の毛を描きながら尋ねた。
「どうして?」
佳苗は妙に鋭い所があった。そこは文花とも似ていない所かもそれない。
「何となく? ママって学級委員みたいじゃない」
佳苗の言うとおりだった。文花が妹のしっかりとした所が苦手だった。中学の時、学校の先輩と付き合いはじねたときは両親に告げ口され結局別れるハメになった。両親曰く文花のようなのめり込めやすい人間に恋愛などさせると勉強が手につかなくなる。
両親の指摘はもっともで、あのまま恋愛していたら高校受験に合格できるか怪しいところだった。しかし妹の告げ口した事にはしこりが残った。麗香は子供の頃から「母さんに言いつけてやる」口癖だった。お陰で母に叱られる事も多かった。家だけでがなく佳苗は学校でも「先生に言いつけてやる」が口癖でクラスメイト達を取り締まっていた。
お陰で軽くいじめられていたようだが、自業自得だと思って放っておいた。可哀想だとは思えない。正義感でやっているというより自分が優位に立ちたいからやってるようにしか思えなかったからだ。文花は麗香のもつ奇妙な正義感が苦手だった。
「学校の委員長が、ママみたいのタイプなんだよねぇ」
「それはお気の毒」
心底佳苗に同情した。学校生活において「先生に言いつけてやる」優等生タイプのちくり魔ほど迷惑な存在はない。
そうこうしているうちに時計は昼になり、弁当を食べることにした。
地味なおにぎり弁当は意外と佳苗に好評だった。普段ご飯何を食べているのかと佳苗に聞くと、菓子パンやスーパーの惣菜が多いと言う。しっかり者の麗香だが、フルタイムで働いているよなると料理も時短でやっているのだろうと想像がついた。菓子パンやスーパーの惣菜は、身体に良いとは言えず、麗香に忠告すべきだろうか。
しかし妹といえど他人の家庭。うっかり者の姉の忠告など聞く耳は持たないだろうし、よその家庭のことに正義感を振り回してもうざったい学級委員と同じことではないか。
そんな事を考えている時、子供の泣き声が耳に届いた。
「ママぁ」
父親らしく男に手を引かれていたが、涙で顔がびしょ濡れで鼻水を垂らしていた。まだ幼稚園生ぐらいの小さな男の子だった。
「あ!」
思わず文花の唇から声が漏れた。男の子の側にいる男は、秋子の旦那だ。SNSに載っていた写真と同一人物だ。
文花は冷静を装いつつ、秋子の旦那と子供を観察した。
「ママに会いたいよぉ」
「だから、ママは病気で会えないんだってば」
「うわぁーん」
子供は秋子の旦那の腕を掴み、振り回していた。泣き止むどころか、涙は滝のようにあふれていた。
秋子の旦那はすっかり参ってしまい、額についた汗をハンカチで拭いながら、どうする事も出来ないようだった。
事情を知っている文花は、自業自得だと思う。怒りも感じる。もとはといえば原因を作ったのはミイなのである。文花がさほど気に留めていなかったが、普通の女性が脅迫状や嫌がらせを受けたらノイローゼにもなるだろう。文花とてさすがに週刊誌の記者に追いかけ回られた時は抑うつ状態になり、外出もできない日が続いたが。
怒りはふつふつと上昇していく。こんな小さな子供を傷つけ、懲りずに不倫をし、嫌がらせも妻に続けた。その上仕事上でも決して品行方正でなく、炎上して敵を作り、クライアントに「このブス!」と言う。
「文花おばちゃん、どうしたの?」
「あの子ずっと泣いてるねぇ」
「放っておきなよ。子供はだいたいそんなもんだよ?」
佳苗の言葉にだんだん冷静さを取り戻す。
確かに自分の怒りはピントがズレているかもしれない。秋子の事情もよく知らないのだ。それに赤の他人が怒る問題では無い。
「あー、クッキー!」
泣いてた子供は、こちらに近づいてきて佳苗がかじっているクッキーを指さした。
「クッキー食べたいぃー」
「すみません」
秋子の旦那は、子供の腕を引っ張りつつ頭を下げた。
この男は第一印象では自分の夫と違い軽薄な女好きのような雰囲気はなかった。どこにでもいる変哲もない中年男性。ただ子供の扱いに心底困っている事は伝わってきて、他人ながら気の毒にはなった。
「クッキー食べる?おばちゃんの手作りなんだよ」
佳苗は一枚子供に差し出した。
「え、いいの」
子供の涙が一瞬止まった。
「手作り何で味は保証しませんよ」
「すみません」
文花が言うと秋子の旦那は再び頭を下げた。
「わーい」
子供はクッキーを佳苗から貰いと、ぽりぽりと食べはじめた。
「わー美味しい」
だんだん子供の機嫌もなおってきたようだ。
「こら、お礼言わないとダメだろ」
「お姉ちゃんとおばちゃん?ありがと」
「よかったらクッキー持ってきます?いっぱい作りすぎて困ってるんですよ」
文花はカバンからラッピング済みで箱に入れたクッキーを秋子の夫に見せた。
「いえ、それは」
「えー、欲しい! クッキー欲しい!」
子供の機嫌がまた悪くなりそうだった。佳苗は少々呆れたようにため息をついた。
「じゃあ、あの。すみません」
秋子の夫は非常に申し訳無さそうにクッキーを受け取った。
「ありがとう、お姉ちゃんとおばちゃん?」
子供はすっかり泣いてた事など忘れていたようだ。さっき一瞬感じた怒りは、本当に的外れだったのかもしれない。
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