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第一部
疑惑編-2
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フローラ達は、都にある五つ星ホテルに滞在していた。しかも部屋は一番良い所で、最上階の四階にあった。
「奥さん、風呂がすごいいい香りだった!」
風呂から出てきたフィリスが、昇天しそうなほど顔がふやけていた。田舎娘のフィリスにはバスローブ姿は全く似合っていないが、高級ホテルの滞在を心から楽しんでいるようだ。
アンジェラもそう。アンジェラも風呂を楽しんだ後、ワインを開け、クラッカーやクッキーをつまみながら、リラックスした表情を浮かべていた。先程、フローラが白警団に家宅捜索をされた経緯、マムが殺された状況を説明したわけだが、二人ともホテル滞在に浮かれ、全くショックは受けていないようだった。
このホテルはフローラの親戚が経営していた。予約もとらず、急に行っても最高級の部屋に泊まらせてくれたのは、貴族コネクションの賜物だろう。
フローラも久々のホテル滞在を楽しみたい所だった。風呂に入り、バスローブを着こみ、アンジェラやフィリスと一緒にワインを飲んでいたが、少しは気分も晴れてきた。ホテルに向かう途中も白警団につけられ、今も監視されている気配も感じるが、もう疲れた。今はフィリスやアンジェラ達と酒を飲みつつ、リラックスしても良いだろう。
久々にワインを飲んだ。修道院で躾られていた時は、酒に溺れるなと言われていたので、ワインも滅多に飲まなかったが、今は少しの酔いも心地よい。
「それにしてもマムが殺されたなんてね。やっぱり敵を作るような事をしてたら、ろくな死に方しないんだな」
アンジェラはそう言い、クラッカーをボリボリ噛み砕いた。マムが死んだと聞かされても、アンジェラは冷静そのものだった。笑いを堪えているような口元を見ると、彼女こそ「せいせいした」と思っているような。
「そうね。悪いけど、全く可哀想じゃないな。恨んでいる人も多いでしょうし!」
フィリスもそうらしい。一ミリもマムが死んだ事を悲しんでいない。それよりホテルの大きなシャンデリアを見上げて目を丸くしたり、窓の外の夜空が綺麗だとはしゃいだり、田舎娘っぷりを発揮していた。側で見ているフローラは呆れるほどだったが、気が抜けてくるのも事実。ワインをグラスに入れ、赤くて甘美な飲み物をちびちびと飲んでいた。
「でも、奥さん、いいんですか? この状況は限りなくヤバいです。疑われてるっていう事は、白警団も容赦しませんよ。濡れ衣着せるスキャンダルだってあったでしょ?」
アンジェラは再びクラッカーを噛み砕き、助言してきた。確かに数年前、白警団が無実のホームレスに濡れ衣を着せ、事件解決が遅れたスキャンダルも思い出した。あの時は白警団の無能っぷりを見下げていたが、今は笑えない。濡れ衣を着せられる可能性もあるし、このまま公爵家に帰れない可能性だってある。
それに、夫の事も心配だ。猜疑心が強い夫が、もし疑われてるいる事を知ったら? おそらく冷静ではいられないだろう。仕事にも影響があるはずだ。その事を考えると鬱になりそうで、再びワインを口に含んだ。
「そうね。このまま放っておく事はできないわ」
今は束の間、仲間とワインを飲みながら、リラックスはしていたが、明日もずっと酒浸りになる訳にいかな。
「奥さん、犯人を見つけたら?」
フィリスはニコニコ顔で言ってきた。まるで良いアイディアが思いついたと子供のように無邪気。
「そうですよ。少なくとも奥さんは、白警団よりマムが恨まれている事を知ってます。白警団が奥さんを疑っているうちに、犯人を見つけしまえばいいんじゃないない?」
アンジェラもフィリスのアイディアに同意。酔いながら、またクラッカーをボリボリしていた。
「そう?」
おそらく自分が犯人を見つけてしまう事が一番良いのだろう。それが出来ればの話だが、どうも自信がない。白警団のような資金、人脈、権威、人手もない。そんな状況で犯人を探すなんて、無理ではないか。
フローラは、白警団のコンラッドの嫌味な顔を思い出す。
「そうですよ。今、奥さんを疑っているなんて白警団は無能です! 私だったらもっとマムを恨んでいる人を調べますよ」
フィリスまでけしかけてきた。
「奥さん、この事件にだって負けちゃダメですよ。必ず犯人が見つかります。悪事は必ず、表に全部出ますよ!」
フィリスも酔っているのだろうか。顔を真っ赤にしながら、フローラを励ましてきた。
「まあ、確かに今の段階で奥さんを疑っている白警団は、無能だな。おかしい。そのコンラッドっていう白警団、コネで出世したんじゃ?」
あもはやアンジェラは言いたい放題だ。酒のせいか、三人とも気が大きくなっていた。
「そうね……」
確かに第一発見者のフローラをすぐに疑っている白警団は、早計な気もした。同時にそんな白警団に屈する事を選ぶフローラも、早過ぎる?
「そうね、犯人を見つけても良いかもしれない」
酔ってるせいか、そんな言葉が溢れていた。身体も熱くなり、頭もふわふわしている。ちょっと馬鹿になっている今は、犯人を探す事にゴーサインを送っていた。
「やった、犯人探してコンラッドも公爵さまもギャフンと言わせましょう!」
「だから、フィリス、今時ギャフンなんて言う人はいないわよ?」
フローラは苦笑してしまうが、肩の力が抜けてきた。
フローラ達は、ワインボトルを開け、酔いながらもこれからするべき事を話し合っていた。
こうなったら犯人を見つけだすしかない。フローラはぎゅっと拳を握り、覚悟を決めた。
「奥さん、風呂がすごいいい香りだった!」
風呂から出てきたフィリスが、昇天しそうなほど顔がふやけていた。田舎娘のフィリスにはバスローブ姿は全く似合っていないが、高級ホテルの滞在を心から楽しんでいるようだ。
アンジェラもそう。アンジェラも風呂を楽しんだ後、ワインを開け、クラッカーやクッキーをつまみながら、リラックスした表情を浮かべていた。先程、フローラが白警団に家宅捜索をされた経緯、マムが殺された状況を説明したわけだが、二人ともホテル滞在に浮かれ、全くショックは受けていないようだった。
このホテルはフローラの親戚が経営していた。予約もとらず、急に行っても最高級の部屋に泊まらせてくれたのは、貴族コネクションの賜物だろう。
フローラも久々のホテル滞在を楽しみたい所だった。風呂に入り、バスローブを着こみ、アンジェラやフィリスと一緒にワインを飲んでいたが、少しは気分も晴れてきた。ホテルに向かう途中も白警団につけられ、今も監視されている気配も感じるが、もう疲れた。今はフィリスやアンジェラ達と酒を飲みつつ、リラックスしても良いだろう。
久々にワインを飲んだ。修道院で躾られていた時は、酒に溺れるなと言われていたので、ワインも滅多に飲まなかったが、今は少しの酔いも心地よい。
「それにしてもマムが殺されたなんてね。やっぱり敵を作るような事をしてたら、ろくな死に方しないんだな」
アンジェラはそう言い、クラッカーをボリボリ噛み砕いた。マムが死んだと聞かされても、アンジェラは冷静そのものだった。笑いを堪えているような口元を見ると、彼女こそ「せいせいした」と思っているような。
「そうね。悪いけど、全く可哀想じゃないな。恨んでいる人も多いでしょうし!」
フィリスもそうらしい。一ミリもマムが死んだ事を悲しんでいない。それよりホテルの大きなシャンデリアを見上げて目を丸くしたり、窓の外の夜空が綺麗だとはしゃいだり、田舎娘っぷりを発揮していた。側で見ているフローラは呆れるほどだったが、気が抜けてくるのも事実。ワインをグラスに入れ、赤くて甘美な飲み物をちびちびと飲んでいた。
「でも、奥さん、いいんですか? この状況は限りなくヤバいです。疑われてるっていう事は、白警団も容赦しませんよ。濡れ衣着せるスキャンダルだってあったでしょ?」
アンジェラは再びクラッカーを噛み砕き、助言してきた。確かに数年前、白警団が無実のホームレスに濡れ衣を着せ、事件解決が遅れたスキャンダルも思い出した。あの時は白警団の無能っぷりを見下げていたが、今は笑えない。濡れ衣を着せられる可能性もあるし、このまま公爵家に帰れない可能性だってある。
それに、夫の事も心配だ。猜疑心が強い夫が、もし疑われてるいる事を知ったら? おそらく冷静ではいられないだろう。仕事にも影響があるはずだ。その事を考えると鬱になりそうで、再びワインを口に含んだ。
「そうね。このまま放っておく事はできないわ」
今は束の間、仲間とワインを飲みながら、リラックスはしていたが、明日もずっと酒浸りになる訳にいかな。
「奥さん、犯人を見つけたら?」
フィリスはニコニコ顔で言ってきた。まるで良いアイディアが思いついたと子供のように無邪気。
「そうですよ。少なくとも奥さんは、白警団よりマムが恨まれている事を知ってます。白警団が奥さんを疑っているうちに、犯人を見つけしまえばいいんじゃないない?」
アンジェラもフィリスのアイディアに同意。酔いながら、またクラッカーをボリボリしていた。
「そう?」
おそらく自分が犯人を見つけてしまう事が一番良いのだろう。それが出来ればの話だが、どうも自信がない。白警団のような資金、人脈、権威、人手もない。そんな状況で犯人を探すなんて、無理ではないか。
フローラは、白警団のコンラッドの嫌味な顔を思い出す。
「そうですよ。今、奥さんを疑っているなんて白警団は無能です! 私だったらもっとマムを恨んでいる人を調べますよ」
フィリスまでけしかけてきた。
「奥さん、この事件にだって負けちゃダメですよ。必ず犯人が見つかります。悪事は必ず、表に全部出ますよ!」
フィリスも酔っているのだろうか。顔を真っ赤にしながら、フローラを励ましてきた。
「まあ、確かに今の段階で奥さんを疑っている白警団は、無能だな。おかしい。そのコンラッドっていう白警団、コネで出世したんじゃ?」
あもはやアンジェラは言いたい放題だ。酒のせいか、三人とも気が大きくなっていた。
「そうね……」
確かに第一発見者のフローラをすぐに疑っている白警団は、早計な気もした。同時にそんな白警団に屈する事を選ぶフローラも、早過ぎる?
「そうね、犯人を見つけても良いかもしれない」
酔ってるせいか、そんな言葉が溢れていた。身体も熱くなり、頭もふわふわしている。ちょっと馬鹿になっている今は、犯人を探す事にゴーサインを送っていた。
「やった、犯人探してコンラッドも公爵さまもギャフンと言わせましょう!」
「だから、フィリス、今時ギャフンなんて言う人はいないわよ?」
フローラは苦笑してしまうが、肩の力が抜けてきた。
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