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第二部
極悪成金お嬢さま編-3
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公爵家の客間は、絵画や壺など品の良い調度品で調和していた。
テーブルも職人が作った丁寧なもので、公爵家で代々大事に使われていた。ソファもそう。ふかふかで座る心地は良いものだが、意匠がつまっている。
そこの堂々と座るフローラは、公爵夫人として調和していた。過ぎるほどだ。ドレスやアクセサリーは決して派手ではないが、背筋をピンと伸ばし、穏やかに微笑むフローラは貴族社会で揉まれてきた月日が滲んでいた。
一方、そんなフローラの目の前にいる泥棒猫ことパティは、背も猫背、脚も閉じず、歯並びも悪かった。
「泥棒猫ちゃん、なんの用かしら?」
フローラは怒っていない。むしろ公爵夫人らしく穏やかに笑っているだけだが、パティは息を呑んでいた。二人の間に沈黙が落ちる。
その時、フィリスが紅茶と蒸しケーキを持ってきた。さすがに今は落ち着きがあり、足音も静かだった。こうしてパティと比べると、フィリスの姿勢はまだマシだ。確かに田舎者だが、パティほど背が丸くない。泥棒猫だけに、不倫女の背は丸くなっていくのだろうか。
「で、では、失礼します!」
「ええ、フィリスありがとう」
この重い空気に耐えかねたのかフィリスはさっさと退散していったが、フローラは逃げるわけにはいかない。
テーブルの上にある紅茶をゆっくりと啜りながら、目の前にいる泥棒猫を見つめた。
確かのドレスも良いものを着ている。栗色の毛は綺麗に巻かれ、お嬢様風だ。あくまでもお嬢様「風」。アクセサリーもゴテゴテと品がない付け方だし、化粧も濃い。特にブルー系のアイシャドウが絶望的に似合ってるいない。顔立ちも中の下といったところ。自然の花ではなく、造花のように安っぽい雰囲気の女だ。メイクやアクセサリーよりも猫背が一番台無しにしている所だったが。
夫の不倫相手ならもっと見た目が良いと思ったらが、全くそんな事はなかった。年齢も三十過ぎだし、夫は一体どこに惹かれたのか不明だ。
正直、こんな造花よりも自分の方が勝ったと思ってしまうが、泥棒猫に勝ったところで嬉しくない。むしろ虚しい。これがこの国の女王のように気品がある方なら色々納得できるが、よりによって安っぽい造花とは。つまり妻は造花以下なのか。
「あら、紅茶召しあがらないの? ケーキも」
「実は色々アレルギーがあるんです。ピーナッツアレルギーって知ってますか?」
「知らないわね」
「食べたら即死します。万が一奥さんがピーナッツオイル入れてたら、私、死んじゃう」
わざとらしく身を震わせていた。ぶりっ子か。とはいえ、ピーナッツアレルギーとは初めてきいた。後で愛人ノートにも記録しておこう。
「へえ。このケーキにも入ってないわよ。ごめんね、これ、今朝の余り物だけど」
「ふうん、ケーキね」
ここで始めてパティは蒸しケーキに手をつけた。一瞬、ピーナッツオイルでも入れておけば良かったとも思ったが、それは考えない事にした。蒸しケーキだったら混ぜてもさほどバレないかもしれないが。
しかしパティは食べ方もマナーがなっていなかった。手掴みでムシャムシャと齧っていた上、床にカスが落ちていた。
成金お嬢さまというのは、事実だろう。おそらくまともにマナーを仕込まれず、両親に放置されているとみた。
フローラだって厳しくマナーを躾けられた事はないが、両親を見て自然に学んだ所も大きい。修道院でも徹底的にマナーを仕込まれたが、パティの両親も庶民的な人物だったと想像がついた。もしかしたら、貧困層出身だったかもしれない。
そう思うと、パティを見る目も生ぬるくなってきた。こんな格下の女に夫を取られたぐらいで、メンヘラする事もない。
「どう、美味しい?」
フローラは子供でも見るかのような優しい視線を向けた。
「おいら、美味しい!」
「お、おいら?」
たまげた。思わずのけぞった。一人称・おいら。田舎者のフィリスですらこんな一人称は使っていない。
よっぽどの田舎者か貧困層出身なのだろう。フローラはさらに余裕で微笑んでいたが、相手もただでは起きないタイプだった。
「実はおいら、公爵さまに無理矢理犯されててー」
「は?」
パティは急に泣き始めた。嘘泣きかに見えたが、ブルーのアイシャドウは涙で崩れ始めているではないか。下品亜つけまつ毛も剥がれかけていた。
「おいら、公爵さまのファンで出版社で会ったんです。したら、無理矢理別邸に連れていかれて、無理矢理服を脱がされて~。わああああん!」
大声で泣くものだから、フローラの耳もキンキンとした。思わず耳を塞いでしまう。
客間の窓からは、住んだ綺麗な青空が見える。庭の木々にいる小鳥の姿も見えたが、ここはなんという地獄絵か?
フローラは耳から手を離し、咳払いをした。これでパティも落ち着くかと思ったが、メソメソと湿っぽく泣き始めた。
「ショックでした。公爵さまがあんな乱暴な人だったなんて」
「で、証拠はある?」
フローラはこんな時でも冷静だった。おそらくパティは脅しに来たのだろうが、こんな事は一度や二度ではなかった。妊娠したと嘘を言った女もいた。
「ひっどーい。おいらが言う事疑うんですか。私は被害者なのに!」
また耳がキンキンしそう。
「疑うなんて酷い!」
その上、予想通りに金を要求してきた。金額はこの国の一般的な年収ほど。公爵家としては痛くも痒くない金額だったが、フローラはため息しかでない。
夫もとんだ地雷女をつかまされてしまったらしい。一人称・おいらで地雷だって分かるだろうに。夫の女のみる目の無さに涙が出そう。特大ブーメラン刺さっているのに、夫の悪趣味さを責めたくなる。
夫は腐っても後者家の男だ。女の扱いも慣れすぎている上、不自由もしていない。あの夫が無理矢理女を扱う事は考えられない。そもそも猜疑心が強いあの男は、そんな野生のような行動もできない。
それに無理矢理別邸に行かされたという証言も無理がある。そこの立地上、いくらでも助けを呼べる。本当に夫がやった事なら、貴族社会でもっと噂もたち、呑気にこんな事もしてられない。
つまりパティの狂言だ。お金の為に脅しに来たのだろう。成金ゆえに下品な行動をとっているのかもしれないが、あまりにも相入れない。少なくともフローラのいる貴族社会では見たことのない人種だった。
「偉そうに」
「は?」
「今、奥さん、私の事馬鹿にしたでしょ。生まれた家がすごいからって何なの?」
弱々しく泣いていたパティだったっが、お金をむしり取れないと察すると、反撃してきた。
ガチャガチャと質の悪い歯並びを見せていたが、妙な生命力も満ちていた。夫はこの女を「おもしれー女」と思ったのか。悔しいが、今は夫の趣味の割さも笑えない。
「貴族だからって成金一家をバカにしていいの? ねえ? 差別じゃない?」
「馬鹿になんて……」
そうは言ってもこのままパティに好き放題させる訳にもいかない。
「さっさと帰りなさい。ここはあなたのような成金娘がいる場所じゃないのよ?」
フローラは再びピンと背筋を伸ばし、睨みつけた。
「泥棒猫ちゃん? 大人しく貧困街におかえりなさいよ?」
パシャっと紅茶をかけてやった。少々やりすぎかと思ったが、これで崩れているメイクも洗われただろう。
「ひっどーい! おいら、絶対にゆるさないから!」
これで負けを悟ったのか、パティは遠吠えしながら帰って行ってしまった。
「あぁ、疲れたわ……」
テーブルの上はパティが食い散らかした跡で酷い状態だった。
「奥さん……」
「奥さん! 大丈夫ですか? アンジェラも帰って来ましたよ」
そこのアンジェラとフィリスも入ってきた。いつもち違い、二人ともフローラを案じていた。おそらく客間の様子を二人で聞き耳たてていたのだろうが、怒る気にもなれない。
「大丈夫じゃないわ。つ、疲れた……」
「サレ妻も楽じゃないですね!」
フィリスにも涙目で同情されたが、フローラはこの件だけで疲れ切ってしまった。
「それにしても被害者ぶって脅しなんて。こんな事してたら、いつか本当の被害者になるかもしれないのに」
アンジェラはテーブルの上を片付けながら、不吉な事を呟いていた。
「殺人事件の被害者にならなきゃいいけど」
「ちょっとアンジェラ、また事件です!?」
「ああ、憎たらしい女よ。一人称おいらとかってないわー」
アンジェラとフィリスは二人で盛り上がっていたが、フローラは黙ったままだった。とにかく今日はパティのせいで疲れて何も言えない。
テーブルも職人が作った丁寧なもので、公爵家で代々大事に使われていた。ソファもそう。ふかふかで座る心地は良いものだが、意匠がつまっている。
そこの堂々と座るフローラは、公爵夫人として調和していた。過ぎるほどだ。ドレスやアクセサリーは決して派手ではないが、背筋をピンと伸ばし、穏やかに微笑むフローラは貴族社会で揉まれてきた月日が滲んでいた。
一方、そんなフローラの目の前にいる泥棒猫ことパティは、背も猫背、脚も閉じず、歯並びも悪かった。
「泥棒猫ちゃん、なんの用かしら?」
フローラは怒っていない。むしろ公爵夫人らしく穏やかに笑っているだけだが、パティは息を呑んでいた。二人の間に沈黙が落ちる。
その時、フィリスが紅茶と蒸しケーキを持ってきた。さすがに今は落ち着きがあり、足音も静かだった。こうしてパティと比べると、フィリスの姿勢はまだマシだ。確かに田舎者だが、パティほど背が丸くない。泥棒猫だけに、不倫女の背は丸くなっていくのだろうか。
「で、では、失礼します!」
「ええ、フィリスありがとう」
この重い空気に耐えかねたのかフィリスはさっさと退散していったが、フローラは逃げるわけにはいかない。
テーブルの上にある紅茶をゆっくりと啜りながら、目の前にいる泥棒猫を見つめた。
確かのドレスも良いものを着ている。栗色の毛は綺麗に巻かれ、お嬢様風だ。あくまでもお嬢様「風」。アクセサリーもゴテゴテと品がない付け方だし、化粧も濃い。特にブルー系のアイシャドウが絶望的に似合ってるいない。顔立ちも中の下といったところ。自然の花ではなく、造花のように安っぽい雰囲気の女だ。メイクやアクセサリーよりも猫背が一番台無しにしている所だったが。
夫の不倫相手ならもっと見た目が良いと思ったらが、全くそんな事はなかった。年齢も三十過ぎだし、夫は一体どこに惹かれたのか不明だ。
正直、こんな造花よりも自分の方が勝ったと思ってしまうが、泥棒猫に勝ったところで嬉しくない。むしろ虚しい。これがこの国の女王のように気品がある方なら色々納得できるが、よりによって安っぽい造花とは。つまり妻は造花以下なのか。
「あら、紅茶召しあがらないの? ケーキも」
「実は色々アレルギーがあるんです。ピーナッツアレルギーって知ってますか?」
「知らないわね」
「食べたら即死します。万が一奥さんがピーナッツオイル入れてたら、私、死んじゃう」
わざとらしく身を震わせていた。ぶりっ子か。とはいえ、ピーナッツアレルギーとは初めてきいた。後で愛人ノートにも記録しておこう。
「へえ。このケーキにも入ってないわよ。ごめんね、これ、今朝の余り物だけど」
「ふうん、ケーキね」
ここで始めてパティは蒸しケーキに手をつけた。一瞬、ピーナッツオイルでも入れておけば良かったとも思ったが、それは考えない事にした。蒸しケーキだったら混ぜてもさほどバレないかもしれないが。
しかしパティは食べ方もマナーがなっていなかった。手掴みでムシャムシャと齧っていた上、床にカスが落ちていた。
成金お嬢さまというのは、事実だろう。おそらくまともにマナーを仕込まれず、両親に放置されているとみた。
フローラだって厳しくマナーを躾けられた事はないが、両親を見て自然に学んだ所も大きい。修道院でも徹底的にマナーを仕込まれたが、パティの両親も庶民的な人物だったと想像がついた。もしかしたら、貧困層出身だったかもしれない。
そう思うと、パティを見る目も生ぬるくなってきた。こんな格下の女に夫を取られたぐらいで、メンヘラする事もない。
「どう、美味しい?」
フローラは子供でも見るかのような優しい視線を向けた。
「おいら、美味しい!」
「お、おいら?」
たまげた。思わずのけぞった。一人称・おいら。田舎者のフィリスですらこんな一人称は使っていない。
よっぽどの田舎者か貧困層出身なのだろう。フローラはさらに余裕で微笑んでいたが、相手もただでは起きないタイプだった。
「実はおいら、公爵さまに無理矢理犯されててー」
「は?」
パティは急に泣き始めた。嘘泣きかに見えたが、ブルーのアイシャドウは涙で崩れ始めているではないか。下品亜つけまつ毛も剥がれかけていた。
「おいら、公爵さまのファンで出版社で会ったんです。したら、無理矢理別邸に連れていかれて、無理矢理服を脱がされて~。わああああん!」
大声で泣くものだから、フローラの耳もキンキンとした。思わず耳を塞いでしまう。
客間の窓からは、住んだ綺麗な青空が見える。庭の木々にいる小鳥の姿も見えたが、ここはなんという地獄絵か?
フローラは耳から手を離し、咳払いをした。これでパティも落ち着くかと思ったが、メソメソと湿っぽく泣き始めた。
「ショックでした。公爵さまがあんな乱暴な人だったなんて」
「で、証拠はある?」
フローラはこんな時でも冷静だった。おそらくパティは脅しに来たのだろうが、こんな事は一度や二度ではなかった。妊娠したと嘘を言った女もいた。
「ひっどーい。おいらが言う事疑うんですか。私は被害者なのに!」
また耳がキンキンしそう。
「疑うなんて酷い!」
その上、予想通りに金を要求してきた。金額はこの国の一般的な年収ほど。公爵家としては痛くも痒くない金額だったが、フローラはため息しかでない。
夫もとんだ地雷女をつかまされてしまったらしい。一人称・おいらで地雷だって分かるだろうに。夫の女のみる目の無さに涙が出そう。特大ブーメラン刺さっているのに、夫の悪趣味さを責めたくなる。
夫は腐っても後者家の男だ。女の扱いも慣れすぎている上、不自由もしていない。あの夫が無理矢理女を扱う事は考えられない。そもそも猜疑心が強いあの男は、そんな野生のような行動もできない。
それに無理矢理別邸に行かされたという証言も無理がある。そこの立地上、いくらでも助けを呼べる。本当に夫がやった事なら、貴族社会でもっと噂もたち、呑気にこんな事もしてられない。
つまりパティの狂言だ。お金の為に脅しに来たのだろう。成金ゆえに下品な行動をとっているのかもしれないが、あまりにも相入れない。少なくともフローラのいる貴族社会では見たことのない人種だった。
「偉そうに」
「は?」
「今、奥さん、私の事馬鹿にしたでしょ。生まれた家がすごいからって何なの?」
弱々しく泣いていたパティだったっが、お金をむしり取れないと察すると、反撃してきた。
ガチャガチャと質の悪い歯並びを見せていたが、妙な生命力も満ちていた。夫はこの女を「おもしれー女」と思ったのか。悔しいが、今は夫の趣味の割さも笑えない。
「貴族だからって成金一家をバカにしていいの? ねえ? 差別じゃない?」
「馬鹿になんて……」
そうは言ってもこのままパティに好き放題させる訳にもいかない。
「さっさと帰りなさい。ここはあなたのような成金娘がいる場所じゃないのよ?」
フローラは再びピンと背筋を伸ばし、睨みつけた。
「泥棒猫ちゃん? 大人しく貧困街におかえりなさいよ?」
パシャっと紅茶をかけてやった。少々やりすぎかと思ったが、これで崩れているメイクも洗われただろう。
「ひっどーい! おいら、絶対にゆるさないから!」
これで負けを悟ったのか、パティは遠吠えしながら帰って行ってしまった。
「あぁ、疲れたわ……」
テーブルの上はパティが食い散らかした跡で酷い状態だった。
「奥さん……」
「奥さん! 大丈夫ですか? アンジェラも帰って来ましたよ」
そこのアンジェラとフィリスも入ってきた。いつもち違い、二人ともフローラを案じていた。おそらく客間の様子を二人で聞き耳たてていたのだろうが、怒る気にもなれない。
「大丈夫じゃないわ。つ、疲れた……」
「サレ妻も楽じゃないですね!」
フィリスにも涙目で同情されたが、フローラはこの件だけで疲れ切ってしまった。
「それにしても被害者ぶって脅しなんて。こんな事してたら、いつか本当の被害者になるかもしれないのに」
アンジェラはテーブルの上を片付けながら、不吉な事を呟いていた。
「殺人事件の被害者にならなきゃいいけど」
「ちょっとアンジェラ、また事件です!?」
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