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第二部
エピローグ
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パティの事件も無事解決し、フローラもすっかり元気になった頃だった。
公爵家に白警団のコンラッドがやって来た。あの愛人ノートは証拠品として、しばらく預かると報告にしに来たというが。
コンラッドは客間で紅茶をがぶ飲みしていた。この事件で、自殺と見られる死体も尊重に調査する事になり、コンラッドは上司からこってりと絞られ、始末書も書いたというが。
「ギャ、ギャフンなんて言うわけないだろー! くそ、全部このサレ公爵夫人のせいだ!」
なぜかコンラッドは目の前にいるフローラに八つ当たりをして来る。
「何言ってるのよ。雑に調査したあなたが悪いんでしょ」
「妻の言う通りだよ。って言うか、白警団ってちゃんと仕事してるのか? 素人探偵の方が良いんじゃないか?」
夫にも責められ、コンラッドは顔を真っ赤ににして怒っていた。
「そもそも、あんなノートを書いてたのが事件の発端だ。不倫していた公爵も悪い。元凶だ」
珍しくコンラッドは正論を述べていたが、夫婦ともども呆れ、何も言えない。
「今度こそは俺が事件を解決するからな! 邪魔するなよ、サレ公爵夫人!」
最後にコンラッドは捨て台詞を吐き、内偵の仕事に戻っていった。
客間に残された夫婦は、ため息しか出ない。
「何なの、あのコンラッドは。私が調査しなかったら、余計に白警団で立場悪くなってたでしょうに」
フローラは口を尖らせる。
「まあまあ、コンラッドの事なんて忘れようぜ」
夫は笑顔だったが、仕事は不調だった。あれ以来スランプ続きで、恋愛小説もミステリーも一行も書けないという。
それでも今の夫は余裕らしい。フローラが励まし、作品が書けなくても妻として決して見捨て無いと言ったからだろうか。フローラはこの件で編集部に頭を下げに行き、編集長も何も言えなくなってしまっていた。
「まあ、『愛人探偵』に重版かかれば良かったけどな」
「仕方ないわ。こればっかりはね」
このスキャンダル下でも「愛人探偵」は重版はかからず、編集者のネイトからはシリーズ化は諦めろ言われていたが。
ちょうどその時、フィリスが慌てて客間へ入ってきた。シスター・マリーのおかげで最近は落ち着いてきたが、今日は足音をドタバタさせて、田舎者過ぎる。フローラは頭が痛くなってきた。
「奥さん、公爵さま。編集者のネイトが来ましたよ!」
フィリスに続いてネイトも入ってきた。もう夏は終わりかけていたが、ネイトは汗びっちょりだった。編集部から走ってここまで来たらしい。
「ネイトもフィリスももう少し落ち着いたら?」
呆れつ言ったが、ネイトの言葉に夫婦共々言葉を失った。
「『愛人探偵』が重版かかりました! シリーズ化決定です! あと脚本家のアーロンからの舞台化企画も前向きに進みそうです!」
嬉しいニュースが二つもあった。フィリスはキャキャー騒ぎ、アンジェラが無理矢理回収しに来たぐらいだった。
「あなた、シリーズ化! もうミステリー作家になりましょう!」
「ああ良かった! 嬉しいぞ!」
「私も嬉しい!」
フローラは花が咲いたような笑顔を見せていた。
夫も涙目になりながら、フローラと手を叩きあって喜んだ。
「やっぱり夫婦ですね。まあ、俺は帰ります」
ネイトがそっと客間から出て行った事も気づかないぐらい、二人は共に喜んでいた。
その後、夫は無事にミステリー作家に転向した。一時は打ち切りとされていた「愛人探偵」も舞台化され、夫も仕事も順調そのものだった。妻のフローラは内助の功だと噂されたが、それはまた別の話。
公爵家に白警団のコンラッドがやって来た。あの愛人ノートは証拠品として、しばらく預かると報告にしに来たというが。
コンラッドは客間で紅茶をがぶ飲みしていた。この事件で、自殺と見られる死体も尊重に調査する事になり、コンラッドは上司からこってりと絞られ、始末書も書いたというが。
「ギャ、ギャフンなんて言うわけないだろー! くそ、全部このサレ公爵夫人のせいだ!」
なぜかコンラッドは目の前にいるフローラに八つ当たりをして来る。
「何言ってるのよ。雑に調査したあなたが悪いんでしょ」
「妻の言う通りだよ。って言うか、白警団ってちゃんと仕事してるのか? 素人探偵の方が良いんじゃないか?」
夫にも責められ、コンラッドは顔を真っ赤ににして怒っていた。
「そもそも、あんなノートを書いてたのが事件の発端だ。不倫していた公爵も悪い。元凶だ」
珍しくコンラッドは正論を述べていたが、夫婦ともども呆れ、何も言えない。
「今度こそは俺が事件を解決するからな! 邪魔するなよ、サレ公爵夫人!」
最後にコンラッドは捨て台詞を吐き、内偵の仕事に戻っていった。
客間に残された夫婦は、ため息しか出ない。
「何なの、あのコンラッドは。私が調査しなかったら、余計に白警団で立場悪くなってたでしょうに」
フローラは口を尖らせる。
「まあまあ、コンラッドの事なんて忘れようぜ」
夫は笑顔だったが、仕事は不調だった。あれ以来スランプ続きで、恋愛小説もミステリーも一行も書けないという。
それでも今の夫は余裕らしい。フローラが励まし、作品が書けなくても妻として決して見捨て無いと言ったからだろうか。フローラはこの件で編集部に頭を下げに行き、編集長も何も言えなくなってしまっていた。
「まあ、『愛人探偵』に重版かかれば良かったけどな」
「仕方ないわ。こればっかりはね」
このスキャンダル下でも「愛人探偵」は重版はかからず、編集者のネイトからはシリーズ化は諦めろ言われていたが。
ちょうどその時、フィリスが慌てて客間へ入ってきた。シスター・マリーのおかげで最近は落ち着いてきたが、今日は足音をドタバタさせて、田舎者過ぎる。フローラは頭が痛くなってきた。
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「ネイトもフィリスももう少し落ち着いたら?」
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「私も嬉しい!」
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「やっぱり夫婦ですね。まあ、俺は帰ります」
ネイトがそっと客間から出て行った事も気づかないぐらい、二人は共に喜んでいた。
その後、夫は無事にミステリー作家に転向した。一時は打ち切りとされていた「愛人探偵」も舞台化され、夫も仕事も順調そのものだった。妻のフローラは内助の功だと噂されたが、それはまた別の話。
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