毒妻探偵〜サレ公爵夫人、夫の愛人を調べていたら殺人事件に巻き込まれました〜

地野千塩

文字の大きさ
100 / 157
第二部

番外編短編・悪役女優フローラ

しおりを挟む
「泥棒猫ちゃん、あんたに王子は相応しく無いわ。妃になるのは、この私! オホホホ!」

 舞台上にフローラの高笑いが響く。もちろん、素のフローラではない。今は悪役女優として舞台に立っていた。

 ヒロイン役はケイシーだ。パティの事件解決後、すっかり人気女優となり、たくさんの舞台に引っ張りダコだ。

 フローラもそんなケイシーの舞台を客として楽しむつもりだったが、悪役女優が急遽体調不良となり、また代役をする事になってしまった。

 舞台でのフローラは悪役女優がハマりすぎていた。背も高く、ツンとキツい目つきや黒髪はさらに悪役女優らしさを演出し、客席からは歓声の上がるほどだ。

 舞台メイクも濃く、ドレスも派手なものなので、誰も公爵夫人のフローラである事に気づかれていたのが救いだろう。こんな事をしている公爵夫人はかなり珍しい。殺人事件を調査する事もそうだが。

「ふふふ、薄汚いメス豚ね! 私の前に現れないでちょうだい!」
「そんなお姉様! 私を虐げないでください!」
「だまらっしゃい!」

 劇は順調続き、フローラの出番も無事終了した。楽屋に戻ると、濃い舞台メイを落としたい。メイク係のマリオンは手つきが雑で、あの極悪恋愛カウンセラーのマムのファンだという変わり者の女。おかげで印象が悪い。

「公爵夫人ー、頬にシミがありますよ!」

 しかもメイクを落とす時にマリオンはいちいち肌へツッコミを入れてきて、微妙にイライラとする。

 メイクを完全に落とし、マリオンを楽屋から追い払い、一人になると、笑顔になってしまう。

 すっぴんの顔を鏡で見ながら、舞台にいる時は夫や事件の事もすっかり忘れる。

 舞台監督や脚本家のアーロン、劇場の主であるクララからは悪役女優になる事も勧められていたし、こんな副業をするのも面白いかもしれない。

 そんな事を考えていたせいか。楽屋にクララとアーロンが尋ねにきた。

 予想通りというべきか、悪役女優としてもオファーもしてきた。しかも夫の『愛人探偵』を舞台化する時、被害者のマム役をやって貰いたいとまで言ってきた。

「えー、私がマム役? あの極悪女の役です?」
「ピッタリよ、フローラ!」
「おお、舞台の悪役にこれ以上ピッタリの存在はないぞ!」

 クララにもアーロンにも押されてしまい、極悪女の役をする事になってしまった……。

「まあ、良いじゃないの。これで少しは事件や旦那の事も忘れて気晴らしになるでしょ?」

 確かにクララの言う通りだ。実は舞台で悪役するのは、そこまで嫌いでもない。

「そうね、これも使命かもね。やって見るわ!」

 その後、フローラの悪役が板につき、さらに評判になる事は、まだ知らなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

処理中です...