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第三部
サレ公爵夫人編-4
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ラナの部屋は狭く、壁も薄そうだった。隣家から赤ん坊の泣き声や足音も聞こえ、狭い。公爵家のトイレほどの大きさしかないが、そんな事はわざわざ言う必要も無いだろう。
ラナが読書家だという事はよくわかる。本棚には文庫本や図鑑、辞書などがびっしりと詰め込まれ、床にも積み上げられていた。古い貴重な本もあるようで、夫はここにいたら面白がるかもしれない。
本は恋愛小説も多かった。夫の恋愛小説は全冊あったが、「愛人探偵」はない。壁には夫のサイン色紙や新刊時に作ったポスターも貼ってある。少なくとも「愛人探偵」以前は優秀なファンだった事がわかる。
「座れば?」
ラナは不貞腐れてつつも、グラスに入れたアイスティーと菓子を持ってきた。菓子はチョコレートのクッキーだった。バターと甘いチョコレートの香りが狭い部屋に漂っていた。
ラナは小さなテーブルにそれらを置き、それを囲むように座る。テーブルの上に夫の恋愛小説もあった。結婚相談所を舞台にした恋愛小説で、殺された愛人マムをモデルにしたものだ。実物のマムはトンデモ極悪女だったが、作中では可憐な美女として描写され、作品自体は罪がなく、面白くもあった。ラナは何回も読み返しているのか、小口が汚れ、カバーも擦り切っていた。
「ラナ、あなた夫のファンだった?」
「奥さんの言う通りですよ。どう見ても公爵様のファンです」
フローラもフィリスも部屋の様子を眺めながら言う。
一方、ラナは下唇を噛み締め、答えない。黙秘するつもりだ。フィリスと同じ年頃の娘だ。今は不貞腐れてていたが、目や頬は幼く見えるほどだ。悪意があって夫にアンチの手紙を送ってきた様子は感じられない。もしかしたら、若気の至りというものかもしれない。
「ご両親は? お仕事?」
ここで夫の事を聞いても答えないだろう。フローラは別の話題を出した。
「仕事だよ。王都に出稼ぎに出てる。あんたみたいないけ好かない貴族の家で庭師したり、メイドしてたりね」
ようやくラナは口を開いたが、貴族は元々嫌いらしい。その界隈にいるフローラも嫌いだったが、立場が違うとなかなか分かり合えないのかもしれない。
隣家の赤ちゃんの泣き声が耳につく。部屋も薄暗く、本棚の圧に負けそう。フィリスは呑気にクッキーをボリボリしていたので、相変わらずだが。
ふと、本棚を見ていたら、夫以外にも作家買いしていると気づく。モラーナ・ラッセルという作家の本がやけに多い。一冊引き抜き見てみたが、こちらも煌びやかな恋愛小説のようだ。あらすじもお姫様と騎士の禁断のラブストーリーだった。夫の作品よりはターゲット層が若く、どちらといえば少女小説といった雰囲気だ。他にも本棚を見てみたが、モラーナの本は似たような設定のものが多く、胸焼けしそうだ。
「モラーナって作家好きなの?」
そう聞くと、ラナは目を輝かせて魅力を語っていた。
「へー、そんな良い作家なら私も読みたい! ラナ、おすすめ教えてよ!」
フィリスは元々恋愛小説にも肯定的でしばらく二人で盛り上がっていた。タイプが違う二人だったが、同じ趣味では盛り上がれるようだ。
フローラはついていけない。独身時代は恋愛小説も普通の娘らしく好きだったが、夫の不貞のせいで今は無邪気に好きになれなかった。
モラーナの本もざっと見てみたが、人気設定の後追いも多いようだ。おそらく編集部からの指示があったのだろう。夫も編集部のネイトに色々言われているらしい。特に新人の時は売れている作品の二番煎じをリクエストされる事も多いのだとか。そんな裏側を知ってしまうと、ここにある本も商業的な裏側が透けて見える。
フローラはグラスのアイスティーをちびちびと啜りながら、二人を見守った。ここはフィリスに任せた方が良いかもしれない。
「なので、公爵さまの恋愛小説が大好きだったんです。サイン会にだって行くぐらい。平凡でつまらない日常も公爵さまの本を読んだら忘れられたんです」
そう語るラナは本当に単なる読者の一人だったのさろう。
「でも『愛人探偵』なんてミステリー作家に転向しちゃうなんて。もう最低よ。全部サレ公爵夫人のせいだわ」
「それでアンチの手紙を送ってきたわけね?」
フィリスが尋ねると、ラナはコクンと頷いた。意外と素直なものだ。
ラナのような恋愛小説好きの気持ちは不明だが、愛が憎しみに変わる事はあるだろう。マムの事件も動機は愛からの憎しみだった。フローラも夫への苦い気持ちがあった。今は理性でどうにか抑えていたが、いつ愛が憎しみに変わってしまうかは不明。いつも瀬戸際を歩いているような気分だ。
「もう公爵様には恋愛小説家に戻って欲しいよ。
『愛人探偵』だって立ち読みしたけど、あんなの全然先生の作風じゃないから」
そう語るラナの横顔を見ながらも、フローラはこのまま帰るわけにはいかないと思う。
「夫はね、恋愛小説書くために不貞をしていたの。確かに作品には罪がないけれど、不倫される私の心は死んでいくわ。不倫は心の殺人みたいなものだから」
素直に自分の気持ちを語る。ここで嘘をついたり、逃げたとしてもラナに伝わらないだろう。
「ごめんなさい。夫が恋愛小説のために不倫するのは、もう妻としても耐えられない」
ラナは無言だった。もう不貞腐れてはいないが、この場でフローラに本心を語られるのは、居心地が悪そうだ。
「理解してくれなくてもいいから。アンチの手紙だけは辞めてくれないかしら?」
「う、わかったよ……」
素直に頭を下げてお願いすると、ラナも分かってくれたようでホッとする。これで事件の火種は消せたかもしれない。フローラは再びグラスのアイスティーを啜りながらホッとした。
「ラナちゃんは、推しをモラーナにすればいいじゃん? 推しを変えたってバチは当たらないって」
重い空気が漂っていたが、フィリの明るい声が響く。
「そうよね。推しはモラーナ先生にしようかな。なんだかんだで既刊は全部持ってるし。モラーナって筆も早くて、二か月に一回新刊出るし」
ラナは少し笑っていた。もうアンチの手紙は送ってはこないだろう。
「それに公爵さま、合コンして女の子達とイチャイチャしてるって聞いちゃったし」
これで何となくハッピーエンドという雰囲気だったが、ラナは最後に爆弾を落としてきた。
「え?」
フローラは驚きで目が点になった。フィリスも目が丸くなっていた。
「うち親、王都に出稼ぎに行ってるじゃん? 肉バルで公爵さまが合コンしてるの見たって。女も三人もいたらしい。それ聞いたらちょっと覚めるよなぁ」
ラナは他人事のように語っていたが、フローラの目が吊り上がる。フィリスは面白がり、口元がニヤついてうたが、今はどうでも良い。
「ラナ、その話を詳しく聞かせてくれない? 教えてくれたら、うちにある夫のサイン本を全部発送してあげるから」
「本当ですか!?」
ラナは目を輝かせて知っている事を全部教えてくれた。
どうやら新たな火種が生まれているらしかった。この火種も早めに潰さなければ。さっそく夫に女の影だ。これも徹底的に調査する必要があるだろう。フローラには平和な日常は無縁かもしれない。もっとも今は暇よりはマシだ。
ラナが読書家だという事はよくわかる。本棚には文庫本や図鑑、辞書などがびっしりと詰め込まれ、床にも積み上げられていた。古い貴重な本もあるようで、夫はここにいたら面白がるかもしれない。
本は恋愛小説も多かった。夫の恋愛小説は全冊あったが、「愛人探偵」はない。壁には夫のサイン色紙や新刊時に作ったポスターも貼ってある。少なくとも「愛人探偵」以前は優秀なファンだった事がわかる。
「座れば?」
ラナは不貞腐れてつつも、グラスに入れたアイスティーと菓子を持ってきた。菓子はチョコレートのクッキーだった。バターと甘いチョコレートの香りが狭い部屋に漂っていた。
ラナは小さなテーブルにそれらを置き、それを囲むように座る。テーブルの上に夫の恋愛小説もあった。結婚相談所を舞台にした恋愛小説で、殺された愛人マムをモデルにしたものだ。実物のマムはトンデモ極悪女だったが、作中では可憐な美女として描写され、作品自体は罪がなく、面白くもあった。ラナは何回も読み返しているのか、小口が汚れ、カバーも擦り切っていた。
「ラナ、あなた夫のファンだった?」
「奥さんの言う通りですよ。どう見ても公爵様のファンです」
フローラもフィリスも部屋の様子を眺めながら言う。
一方、ラナは下唇を噛み締め、答えない。黙秘するつもりだ。フィリスと同じ年頃の娘だ。今は不貞腐れてていたが、目や頬は幼く見えるほどだ。悪意があって夫にアンチの手紙を送ってきた様子は感じられない。もしかしたら、若気の至りというものかもしれない。
「ご両親は? お仕事?」
ここで夫の事を聞いても答えないだろう。フローラは別の話題を出した。
「仕事だよ。王都に出稼ぎに出てる。あんたみたいないけ好かない貴族の家で庭師したり、メイドしてたりね」
ようやくラナは口を開いたが、貴族は元々嫌いらしい。その界隈にいるフローラも嫌いだったが、立場が違うとなかなか分かり合えないのかもしれない。
隣家の赤ちゃんの泣き声が耳につく。部屋も薄暗く、本棚の圧に負けそう。フィリスは呑気にクッキーをボリボリしていたので、相変わらずだが。
ふと、本棚を見ていたら、夫以外にも作家買いしていると気づく。モラーナ・ラッセルという作家の本がやけに多い。一冊引き抜き見てみたが、こちらも煌びやかな恋愛小説のようだ。あらすじもお姫様と騎士の禁断のラブストーリーだった。夫の作品よりはターゲット層が若く、どちらといえば少女小説といった雰囲気だ。他にも本棚を見てみたが、モラーナの本は似たような設定のものが多く、胸焼けしそうだ。
「モラーナって作家好きなの?」
そう聞くと、ラナは目を輝かせて魅力を語っていた。
「へー、そんな良い作家なら私も読みたい! ラナ、おすすめ教えてよ!」
フィリスは元々恋愛小説にも肯定的でしばらく二人で盛り上がっていた。タイプが違う二人だったが、同じ趣味では盛り上がれるようだ。
フローラはついていけない。独身時代は恋愛小説も普通の娘らしく好きだったが、夫の不貞のせいで今は無邪気に好きになれなかった。
モラーナの本もざっと見てみたが、人気設定の後追いも多いようだ。おそらく編集部からの指示があったのだろう。夫も編集部のネイトに色々言われているらしい。特に新人の時は売れている作品の二番煎じをリクエストされる事も多いのだとか。そんな裏側を知ってしまうと、ここにある本も商業的な裏側が透けて見える。
フローラはグラスのアイスティーをちびちびと啜りながら、二人を見守った。ここはフィリスに任せた方が良いかもしれない。
「なので、公爵さまの恋愛小説が大好きだったんです。サイン会にだって行くぐらい。平凡でつまらない日常も公爵さまの本を読んだら忘れられたんです」
そう語るラナは本当に単なる読者の一人だったのさろう。
「でも『愛人探偵』なんてミステリー作家に転向しちゃうなんて。もう最低よ。全部サレ公爵夫人のせいだわ」
「それでアンチの手紙を送ってきたわけね?」
フィリスが尋ねると、ラナはコクンと頷いた。意外と素直なものだ。
ラナのような恋愛小説好きの気持ちは不明だが、愛が憎しみに変わる事はあるだろう。マムの事件も動機は愛からの憎しみだった。フローラも夫への苦い気持ちがあった。今は理性でどうにか抑えていたが、いつ愛が憎しみに変わってしまうかは不明。いつも瀬戸際を歩いているような気分だ。
「もう公爵様には恋愛小説家に戻って欲しいよ。
『愛人探偵』だって立ち読みしたけど、あんなの全然先生の作風じゃないから」
そう語るラナの横顔を見ながらも、フローラはこのまま帰るわけにはいかないと思う。
「夫はね、恋愛小説書くために不貞をしていたの。確かに作品には罪がないけれど、不倫される私の心は死んでいくわ。不倫は心の殺人みたいなものだから」
素直に自分の気持ちを語る。ここで嘘をついたり、逃げたとしてもラナに伝わらないだろう。
「ごめんなさい。夫が恋愛小説のために不倫するのは、もう妻としても耐えられない」
ラナは無言だった。もう不貞腐れてはいないが、この場でフローラに本心を語られるのは、居心地が悪そうだ。
「理解してくれなくてもいいから。アンチの手紙だけは辞めてくれないかしら?」
「う、わかったよ……」
素直に頭を下げてお願いすると、ラナも分かってくれたようでホッとする。これで事件の火種は消せたかもしれない。フローラは再びグラスのアイスティーを啜りながらホッとした。
「ラナちゃんは、推しをモラーナにすればいいじゃん? 推しを変えたってバチは当たらないって」
重い空気が漂っていたが、フィリの明るい声が響く。
「そうよね。推しはモラーナ先生にしようかな。なんだかんだで既刊は全部持ってるし。モラーナって筆も早くて、二か月に一回新刊出るし」
ラナは少し笑っていた。もうアンチの手紙は送ってはこないだろう。
「それに公爵さま、合コンして女の子達とイチャイチャしてるって聞いちゃったし」
これで何となくハッピーエンドという雰囲気だったが、ラナは最後に爆弾を落としてきた。
「え?」
フローラは驚きで目が点になった。フィリスも目が丸くなっていた。
「うち親、王都に出稼ぎに行ってるじゃん? 肉バルで公爵さまが合コンしてるの見たって。女も三人もいたらしい。それ聞いたらちょっと覚めるよなぁ」
ラナは他人事のように語っていたが、フローラの目が吊り上がる。フィリスは面白がり、口元がニヤついてうたが、今はどうでも良い。
「ラナ、その話を詳しく聞かせてくれない? 教えてくれたら、うちにある夫のサイン本を全部発送してあげるから」
「本当ですか!?」
ラナは目を輝かせて知っている事を全部教えてくれた。
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