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第三部
潜入調査編-4
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再びフローラは学園に潜入し、ララと一緒にトイレ掃除をしていた。
「さあ、フローラ! 今日も綺麗に磨き上げよう!」
「ええ!」
ララと共に宣言し、床や便器、洗面台や鏡も磨いていく。今はまだこの事が事件解決の糸口になるか分からない。何の手がかりにもならない可能性もあるが、とにかく身体を動かしていた。
「そうだ、フローラ。その調子~! 便器も綺麗になってきたぞ」
「そう? ララ、ありがとう!」
トイレがだんだんと綺麗になってくると、二人とも嬉しいものだ。気づくと鼻歌を楽しみながらブラシで床を擦っていた。
二人で歌っているとそれだけで嬉しくもなってきた。まだまだ事件については何の進展もないが、心はだいぶ前向きになってきた。
「そうだよ、フローラ。どんな時でも明るく歌っていなさい。明るくしていればどうにかなる!」
ララにドンと背中を叩かれながら励まされてもしまった。
「そうね。今は何だか楽しいわ」
フローラも笑顔でブラシを擦り続け、トイレ掃除もひと段落だ。
ちょうどその時、トイレの一人の女生徒が入ってきた。確かまだ授業中のはずだったが、彼女は一人洗面台に向かうと、鏡を見ながらため息をつく。
この学園の生徒は紺色の派手な制服を着ていたが、彼女はあまりに会っていない。痩せ型で貧相な体型の為か、スカートもブカブカとしていた。髪の毛も細めで、三つ編みに編んでいても地味。メガネがより地味に見せていた。
「おいおい、ナタリー。今日もサボりか?」
「ええ。ララ。授業退屈なんだよね」
彼女はナタリーという名前らしい。ララとも仲が良さそうで二人でしばらく雑談していた。
「ナタリー、あなた授業はいいの?」
フローラも自己紹介をした。潜入調査中とは言えないので、一応大人として注意しておいたが。
「クラスに何となく馴染めなくて。お高くとまったお嬢様ばっかりなんだ」
苦笑しているナタリーは素朴そうだ。もしかしたらフィリスと同じ田舎出身かもしれない。確かにこの学園の生徒とは少し違うタイプだ。
フィリスと雰囲気もかぶり、フローラはナタリーに悪い印象はもてなかった。そのせいか、ついつい潜入調査しているなどと口も滑らせた。ララはこんなフローラの大笑いし、ナタリーは目を丸くしていた。
「え、もしかして! 『愛人探偵』のモデルになった奥さんですか! 私、あのミステリ作品の大ファンなんです!」
ナタリーは顔を赤くし、興奮気味に「愛人探偵」の中見について語っていた。細かいセリフやシーンについても深く考察しているようで、これにはフローラも目を丸くしてしまう。同時に何か事件の手がかりがないかとも思う。
「ナタリー、家にある夫のサイン本やノベルティを送らせるわ」
「本当ですか!? しかし本当に奥さんが探偵してるんだ。すごーい!」
ただ学校に馴染めないのでダリアについては詳しく知らないと言っていた。他マリオンやモラーナ、セシリーについても知らないという。
「ナタリー、本当に何か知らないか?」
ララもそう言い、協力してくれた。
「そうねぇ」
ナタリーは上を見つつ、考え込んでいた。考える時、上を見るのが癖らしい。
「あ、モラーナって恋愛作家よね? あの人、筆が早過ぎてゴーストライター疑惑の噂が流れてた。地元の友達が噂してた」
「本当?」
モラーナがゴーストライター疑惑? 確か昨日、モラーナ達賀書いた文芸誌などを入手した。特におかしな点はなかったのでそのまま公爵家の書斎で放置していたが。
「まあ、噂よね。証拠はないから」
ナタリーがすぐに話題を変えた。若者らしく頭の回転も早いのだろう。
一方、フローラはゴーストライター疑惑が引っかかる。それが本当だとしたらモラーナは一体誰にゴーストライターをさせているのだろうか。これもパズルのピースの一つらしい。フローラは頭野中にメモをし、あとでフィリス達と共有する事に決心した。
「あとは、噂っていうと、私、見ちゃったんだ。でもマリオンって人の事件に関係あるのか謎だけどね」
ナタリーは声を顰めて勿体ぶっていた。
「いいからナタリー。知ってる事は全部言ってみて。夫のサイン本送らないから」
「わー、言いますよ!」
ナタリーは慌ててはなす。ララも身を乗り出しナタリーの声に耳を澄ませていた。
「事件に関係あるか分からないけど、この学園のマドンナ、キャロルが万引きすているの見ちゃった」
想像以上にナタリーの声は能天気だったが、フローラとララは顔を見合わせた。
「見かけは美人なお嬢様なのに。人って見かけじゃないよね、うん」
「おいおい、ナタリー。そんな事言ってないで、これは先生に言おう」
ララはナタリーを職員室へ連れて行こうとしたが、フローラは止めた。一見マリオンの事件と関係ない事だが、糸口が見えた。上手くいけばこんがらがった系が解けるかもしれない。
「待って、二人とも。キャロルの万引きは私が捕まえるわ」
ララとナタリーは反対してきたが、フローラの意思は固い。すぐにフィリスとも落ち合い、万引きをしていたという店に向かう事に決めた。
もしキャロルが万引きをしていたら。もしそれをネタにダリアが脅していたとしたら? ダリアがマリオンを脅していた可能性も十分にあり得る。だとしたらマリオンを襲った犯人がダリアだとしても不自然ではない。脅しの件で揉めて危害を加えたとなれば筋が通る。
進展も何も無いように見えた潜入調査。どうにか重要な手がかりが見つかり、フローラの口元に笑みが浮かんでいた。事件解決までもう少しかもしれない。希望が出て来た。
「さあ、フローラ! 今日も綺麗に磨き上げよう!」
「ええ!」
ララと共に宣言し、床や便器、洗面台や鏡も磨いていく。今はまだこの事が事件解決の糸口になるか分からない。何の手がかりにもならない可能性もあるが、とにかく身体を動かしていた。
「そうだ、フローラ。その調子~! 便器も綺麗になってきたぞ」
「そう? ララ、ありがとう!」
トイレがだんだんと綺麗になってくると、二人とも嬉しいものだ。気づくと鼻歌を楽しみながらブラシで床を擦っていた。
二人で歌っているとそれだけで嬉しくもなってきた。まだまだ事件については何の進展もないが、心はだいぶ前向きになってきた。
「そうだよ、フローラ。どんな時でも明るく歌っていなさい。明るくしていればどうにかなる!」
ララにドンと背中を叩かれながら励まされてもしまった。
「そうね。今は何だか楽しいわ」
フローラも笑顔でブラシを擦り続け、トイレ掃除もひと段落だ。
ちょうどその時、トイレの一人の女生徒が入ってきた。確かまだ授業中のはずだったが、彼女は一人洗面台に向かうと、鏡を見ながらため息をつく。
この学園の生徒は紺色の派手な制服を着ていたが、彼女はあまりに会っていない。痩せ型で貧相な体型の為か、スカートもブカブカとしていた。髪の毛も細めで、三つ編みに編んでいても地味。メガネがより地味に見せていた。
「おいおい、ナタリー。今日もサボりか?」
「ええ。ララ。授業退屈なんだよね」
彼女はナタリーという名前らしい。ララとも仲が良さそうで二人でしばらく雑談していた。
「ナタリー、あなた授業はいいの?」
フローラも自己紹介をした。潜入調査中とは言えないので、一応大人として注意しておいたが。
「クラスに何となく馴染めなくて。お高くとまったお嬢様ばっかりなんだ」
苦笑しているナタリーは素朴そうだ。もしかしたらフィリスと同じ田舎出身かもしれない。確かにこの学園の生徒とは少し違うタイプだ。
フィリスと雰囲気もかぶり、フローラはナタリーに悪い印象はもてなかった。そのせいか、ついつい潜入調査しているなどと口も滑らせた。ララはこんなフローラの大笑いし、ナタリーは目を丸くしていた。
「え、もしかして! 『愛人探偵』のモデルになった奥さんですか! 私、あのミステリ作品の大ファンなんです!」
ナタリーは顔を赤くし、興奮気味に「愛人探偵」の中見について語っていた。細かいセリフやシーンについても深く考察しているようで、これにはフローラも目を丸くしてしまう。同時に何か事件の手がかりがないかとも思う。
「ナタリー、家にある夫のサイン本やノベルティを送らせるわ」
「本当ですか!? しかし本当に奥さんが探偵してるんだ。すごーい!」
ただ学校に馴染めないのでダリアについては詳しく知らないと言っていた。他マリオンやモラーナ、セシリーについても知らないという。
「ナタリー、本当に何か知らないか?」
ララもそう言い、協力してくれた。
「そうねぇ」
ナタリーは上を見つつ、考え込んでいた。考える時、上を見るのが癖らしい。
「あ、モラーナって恋愛作家よね? あの人、筆が早過ぎてゴーストライター疑惑の噂が流れてた。地元の友達が噂してた」
「本当?」
モラーナがゴーストライター疑惑? 確か昨日、モラーナ達賀書いた文芸誌などを入手した。特におかしな点はなかったのでそのまま公爵家の書斎で放置していたが。
「まあ、噂よね。証拠はないから」
ナタリーがすぐに話題を変えた。若者らしく頭の回転も早いのだろう。
一方、フローラはゴーストライター疑惑が引っかかる。それが本当だとしたらモラーナは一体誰にゴーストライターをさせているのだろうか。これもパズルのピースの一つらしい。フローラは頭野中にメモをし、あとでフィリス達と共有する事に決心した。
「あとは、噂っていうと、私、見ちゃったんだ。でもマリオンって人の事件に関係あるのか謎だけどね」
ナタリーは声を顰めて勿体ぶっていた。
「いいからナタリー。知ってる事は全部言ってみて。夫のサイン本送らないから」
「わー、言いますよ!」
ナタリーは慌ててはなす。ララも身を乗り出しナタリーの声に耳を澄ませていた。
「事件に関係あるか分からないけど、この学園のマドンナ、キャロルが万引きすているの見ちゃった」
想像以上にナタリーの声は能天気だったが、フローラとララは顔を見合わせた。
「見かけは美人なお嬢様なのに。人って見かけじゃないよね、うん」
「おいおい、ナタリー。そんな事言ってないで、これは先生に言おう」
ララはナタリーを職員室へ連れて行こうとしたが、フローラは止めた。一見マリオンの事件と関係ない事だが、糸口が見えた。上手くいけばこんがらがった系が解けるかもしれない。
「待って、二人とも。キャロルの万引きは私が捕まえるわ」
ララとナタリーは反対してきたが、フローラの意思は固い。すぐにフィリスとも落ち合い、万引きをしていたという店に向かう事に決めた。
もしキャロルが万引きをしていたら。もしそれをネタにダリアが脅していたとしたら? ダリアがマリオンを脅していた可能性も十分にあり得る。だとしたらマリオンを襲った犯人がダリアだとしても不自然ではない。脅しの件で揉めて危害を加えたとなれば筋が通る。
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