空の瞳 2/stalemate

萩香

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 だから別に、関係ないのだ。瀧川が誰と何をしようと、自分には。
 悠哉はそう思いながら、足早に廊下を歩いていた。

 2Dの教室に人影があるのに気づいて、ちらっと視線を向けてしまったのがそもそも失敗だった。ことさら目を凝らしたわけでもないのに、開いたドアの前を通過する一瞬で、中で何が起こっているかがわかってしまった。

 細い腕を掴んで机の上に押し付けている、その後ろ姿には、見覚えがあった。

『駄、目……』

 かすかに届いた色っぽい声が、まだ耳に残っている。それを振り払うように軽く首を振って、悠哉はようやくたどり着いた昇降口で、靴を履きかえる。

 瀧川が組み敷いていた相手が、誰なのかは知っていた。
 …山崎桂。……この学園では、けっこうな有名人だ。
 校内ですれ違えば、自然に目がいく。悠哉の目から見ても、綺麗な人だと思った。

「おい、誤解すんなよ」

 不躾な声が後ろからかけられる。悠哉は振り返らず、上履きを無造作に下駄箱に押し込んだ。

「誤解? ……別に、誤解なんてしてません」

「さっきのは……」

「だから、別に、言い訳なんてしてくれなくていい。俺は別に、気にしてないから」

「オレが、気にしてんだよ。……いいか、あれは別に、何でもないんだ。おまえが通ったのを知ってて、あいつがわざと……」

 瀧川の言い訳を適当に聞き流しながら、悠哉は呆れたように肩をすくめてみせる。

「人のせいにするなんて最悪ですね。山崎さんもお気の毒に」

「……おまえなあ」

「失礼します。俺、部活いくので。瀧川先輩は、教室戻った方がいいんじゃないですか」

 冷ややかに言い捨てて、悠哉は鞄を担いで部室棟の方へ歩いていく。取り残された瀧川は、がっくりと下駄箱の簀の子の上に座り込んだ。
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