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しおりを挟む「坂井ィー、何だったの、おまえ。あの一年坊主に愛の告白でもされた?」
部室に戻ると、まだ残っていた同学年の部員が、からかうように声をかけてくる。
制服とカバンを押し込んである自分のロッカーを開けながら、修史は肩をすくめた。
「いや。その、逆」
イライラとそう答えて、修史は汗で冷えたTシャツを脱ぎ捨てる。
「……ケンカ売られた」
いったい何なのだ、と修史は首を傾げる。桂に告白するなら、さっさとすればいい。なぜわざわざ修史に宣戦布告して、煽るような真似をするのかがわからない。
……明日、放課後の放送が終わった後で。
勝手にしろ、と修史は思った。桂は別に、修史の所有物ではないのだ。それが桂の意志であるかぎり、桂が誰と一緒にいようが、何をしようが、修史にあれこれ言う権利はない。
制服に入れっぱなしだった携帯に手を伸ばす。電話してやろうかなと思ったが、結局やめた。明日おまえ後輩に告白されるぞ、なんて予告するのも何だか間抜けだ。
今の桂なら、投げやりに誰かを受け入れることはしないだろう。言い寄られるのには慣れているだろうから、別に修史があれこれ気を回す必要もない。
桂が翔太をどう思っているかは知らなかったが……どちらにせよ、修史の出る幕ではないのだ。
桂が誰を、選ぼうと。
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