辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる

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第26話 ゆゆとアリスの配信対決(前編)

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「にひ♪ ゆゆちゃん準備万端だし!」

 愛用の高分子ガラスブレードを構え、ポーズを取るゆゆ。

 左腕には今日デビューのハート形の丸盾(ゆゆ曰く”映えシールド”)を装着している。
 コイツは表面と裏面にLEDモニターが埋め込まれており、俺のスキル、クリーナー・ドライのガイドを表示したり、コメントを流したりできる配信対応防具だ。

「ひと狩り行くぜ☆」

 ここはダンジョンポータルの第51層。
 碁盤の目のように通路が縦横に走る迷路タイプのダンジョンだ。
 中層の入り口、と言ったフロアでLV25に到達したゆゆにとっては少々物足りない舞台だが、それには理由がある。

「マルチドローンカメラのテスト問題なし……機材の準備も整ったね」

 いつもより多い3機のドローンカメラを使い、余すことなくダンジョン攻略の様子を捉える。

「あ、向こうも来たみたいですね」

 ザッ

「お待たせしたわね、ゆゆ!
 ようやくダンジョンに潜れるわ!!」

 青を基調とした魔法使い風の制服をきっちりと着込み、エメラルドが埋め込まれたマジックロッドを頭上に掲げながら一人の少女がダンジョンフロアに入ってくる。

 昨日12歳の誕生日を迎えたばかりのアリス・ブラックシップだ。

「うぃ、アリスっぴ誕生日おめ~☆」

 ぽぽん!

 隠していたクラッカーを取り出し、アリスの誕生日を祝うゆゆ。

 ”おめでとうアリス!!”
 ”ゆゆのギャルJKコスも最高だけど、アリスのUKJCファッションもかわいいな~”
 ”アリスは魔法使い系なんかね?”
 ”なんでも上位探索者並の適正値を出したらしいよ”
 ”はえ~”

 ゆゆ公式ちゃんねると「ぶらありす。」のコラボダンジョン対決配信と銘打たれたライブへの入室者は200万人を超え、コメントを追うのも一苦労だ。

「!! ありがとうゆゆ!!」

 ぱああっ、と輝くような笑顔を浮かべるアリス。

「……じゃなくって!!
 今日はタイケツなんだから、ばちばちいくわよばちばち!」

「へいへい」

 なでなで

「なでるな~!」

 ”アリスかわよ”
 ”尊み秀吉”
 ”姉属性ゆゆとか最高ですか?”

 どうしてもほのぼのするふたりに大盛り上がりのコメント欄。

「もふもふ」

 その様子をだんきちの中から微笑ましく鑑賞しながら、俺は配信動画に字幕を出す。
 今日の「対決配信」のルールを視聴者さんに説明しないとね。

 <<PM2:15分開始、パーティはソロ限定>>
 <<フロアボスのいる部屋に入るまでの時間を競う>>
 <<最終的にコメント数、フォロワーの増加数を加味して勝敗を決める>>
 <<攻略ルートは自由、相手の邪魔をしなければ何をしてもOK>>

 俺は二人のサポートと、いざという時の救助役として後をついていく。
 ふたりの位置は発信機で常に把握しているし、回復アイテムもたっぷり着ぐるみの中に入れている。

 ”たのむぞだんきち!”

「もふっ!」

 フォロワーさんのコメントに手をあげて答える。
 いつもより競技性の強いルールだと言えるだろう。

「もふもふ」

 俺は赤い旗を持ち、ゆゆとアリスの間に立つ。

「もふ~~(位置について)」

「にひっ☆」

「ふっ」

 構えをとる二人。

「もふふっ!(スタート)」

 だんっ!

 旗を振り下ろすと、一斉にダッシュするゆゆとアリス。

 こうして二人の初対決が開始された。


 ***  ***

「アリスっぴ、おっさき~☆」

 身体能力は圧倒的にゆゆの方が上だ。

 ばっ、ばっ、ばっ!

 ゆゆが選んだのは右ルート。
 壁を蹴り、反動を使ってどんどん奥に進んでいく。

 ゴ、ゴブゴブ!

「へへっ、隙だらけだしっ!」

 立ちはだかるゴブリンの群れの頭上をひらりと飛び越え、背後を取る。

 ザンッ!

 最後尾の一匹を横薙ぎ一閃で両断すると、仲間の死骸が邪魔をして前に出れない他のゴブリンを尻目に先を急ぐ。

 ”上手い!”
 ”こりゃゆゆの圧勝じゃね?”

 コメントの通り、左ルートを選んだアリスはまだ迷路の入り口にすらついていない。

 とてとてとて

 一生懸命走るアリスは微笑ましいが、ゆゆのスピードに追い付けるとは思えない。

 ゴブゴブ!

 右ルートと同じく、5匹ほどのゴブリンがアリスの前に出現する。

 上位Aランクの探索者に匹敵する魔法の使い手とは聞いているが、モンスターと対峙するのは今日が初めてのはず。

 醜悪なゴブリンの姿を見て泣いちゃうかもしれない。
 いざとなれば飛び出せるように俺はだんきちの中で構えるのだが……。

(えっと、ダンジョンを破壊するのよね!)
(でもあまり壊し過ぎるのは悪い子だから……)

「えいっ!」

 ギュウウウウウウンッ

「……もふ!?」

 可愛く突き出されたアリスの右手にとんでもない魔力が収束していく。

「へるふぁいや!!」

 ズッドオオオオオオオオオンッ!!

 高密度に圧縮された魔力が大爆発を起こし、左ルートのダンジョンの一部ごと、ゴブリンの群れを吹き飛ばしたのだった。

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