辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる

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第29話 対決を終えて

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「ひゅう! ナイスだんきち!」

「すてきよ、だんきち!」

 ぎゅっ!

 クリスタルゴーレムを浄化した鮮やかなフィニッシュブロー。
 左右からゆゆとアリスがだんきちに抱きついてくる。

「もふふっ!」

 フロアボスを倒し、配信対決もいよいよ大詰めである。
 俺は二人に合図を送る。

「うぃ、それじゃあアリスっぴ!」

「ええ。せ~のっ!」

「「だいしょ~りっ!!」」

「もふっ」

 仁王立ちするだんきちの両隣りで、両手を広げ勝利のポーズをとるゆゆとアリス。
 アリスの魔法でぱっと紙吹雪が散る。

 フォロワー数の増加、コメント数まで含めると僅差でゆゆの勝利だが、勝敗なんてもうどうでもよかった。

 ”うおおおお、だんきちのスーパーフィニッシュブロー!!”
 ”本気モードのだんきちってイケボだよね”
 ”相変わらずのチートスキル!”
 ”ゆゆもアリスもカッコよかった! それにかわいい!”
 ”コラボ配信最高!!”
 ”2回目の対戦はよ!”

 物凄い数のコメントが書き込まれ、投げ銭の額は新記録を達成した。

「今日は楽しかったわ、ゆゆ!
 またすぐに再戦しましょう?」

「もち! アリスっぴとの対戦はさいこーだし!」

 固く握手を交わす二人。

 ぽてぽてぽて……みきゅん?

 その時、やけにかわいい足音が聞こえた。

「もふ?」

 何事かと振り向くと、一匹の神獣モンスターが通路の角からこちらを覗き込んでいる。

「あら!」

 ホワくんと同じカーバンクル族で、ふさふさの毛はピンク色で額の宝石は透き通るような蒼。
 右脚を少しケガしており、先ほどのクリスタルゴーレムに追われていたのかもしれない。

「おいで、マジェ!
 癒してあげるわ」

 一目で桃色のカーバンクルが気に入ったらしいアリスが、優しい声色で即興で付けたらしい名前を呼ぶ。

 !!

 ぽてててっ
 みきゅん!

 アリスが優しい子なことが分かったのだろう。
 ぴくんと耳を立てるとアリスに走り寄るマジェ。

「ふふっ、可愛いわね!」

 なでなで

 じゃれつくマジェを撫でるアリス。
 尊み空間で溺れそうだ。

(……はっ! そうだわ!)
(レイニが言ってたモンスターへのめーわく配信、まだしてないじゃない!!)

「もふ?」

 何かを思い出したのか、アリスの両目が大きく見開かれる。
 そのままマジェの背中の毛をごそごそと弄りだし……。

「もふもふモンスターの毛で……ハートマークを作ってみた!」

 みきゅん?

「「かっ、かわえええええええええっ!!」」

 ”可愛すぎるだろ!!”×1000000

 配信の最後に繰り出された攻撃に、ついにサーバーが白旗を上げるのだった。


 ***  ***

「ふう、改めて二人ともお疲れ様!」

 配信が切れたことを確認し、だんきちの頭を脱いだ俺はタオルで流れる汗をぬぐう。

「ふふ、楽しかったわ!
 めーわく配信も出来たし!!」

「??」

 ドヤ顔アリスから放たれた言葉に首をかしげる。
 いくら日本語を勉強しているとはいえ、彼女は日本に来てまだ間もない。
 言葉選びを間違えたのかと思ったが……。


 ビーッ!
 ビーッ!
 ビーッ!


 突然ダンジョン内に警報音が鳴り響き、ダンジョンアプリにもアラートが表示される。

「うえ!? なにこれ?」

 新手のモンスターか!?
 俺は消耗している様子のゆゆを守るように前に出る。

『慌てなくても大丈夫だ。
 先ほど、臨時でゲートダンジョンの使用申請があったようでね』

 即座にマサトさんから通信が入る。

 ゲートダンジョン。
 こちらの世界とヴァナランドを繋ぐ回転式の通路。
 お互いの世界間の貿易や、人間の行き来の為に利用される。

「そういえば、この階層に設置されていましたね」

 ただ、原則的に探索者が入っている時には動かされる事はない。
 その期に乗じて不法に世界を渡る探索者がいないとも限らないからだ。

「なぜ、こんな急に……?」

『ふふ、面白いものが見れるかもしれないぞ?』

「え?」

 なんだろう、やけに意味深なマサトさんの言葉が気になる。

 ふわっ

 その時、ゲートダンジョンが繋がったのか、明らかにこちらの世界とは違う空気が俺たちの頬を撫でる。

「どきどき」

「なにが来るのかしらね」

 興味深くダンジョンの奥を覗き込む俺たちの耳に、涼やかな女性の声が聞こえて来た。

「お騒がせして申し訳ありません。
 どうしても本日中に着任する必要がありまして」

「リアン様、こちらに地上部に通じる自動床《エレベーター》がございます。足元にお気を付けを。先ほど感知したモンスターの反応は消えましたが、念のため偵察してまいります」

 しゅばばばっ!

 数人の人間がダンジョンの奥から飛び出してきた。
 ダークスーツを着込んでいる男性もいれば、魔法使いのローブを身に着けている女性もいる。

 共通しているのはこちら側の人間には存在しないケモノ耳。

「うわ、タクミっち……ヴァナランドの人だよね」

「あ、ああ」

 芸能活動をしている少数のヴァナランド人を除くと、日常生活の中で彼ら彼女らを見かけることはほとんどない。
 ヴァナランド企業の進出が多いここ関西でも、1か月に1度あるかどうか。

「アリスのプロデューサーはだーくえるふだけどね!」

 そういえば、アリスの担当であるレイニさんはヴァナランド人だったか。
 ともかく、これだけ一度にヴァナランド人を見かけるのは異例と言えた。

「お初にお目にかかります、日本の方々。
 間もなく高貴な方が通られますので、大変失礼ながら道を開けて頂けないでしょうか?」

 周囲の安全を確認したのだろう。
 リーダーらしきネコミミ族?の女性が、俺たちに声を掛けてくる。
 物腰は柔らかだが、目つきは鋭い。

「ろ、ろいやる!?」

「へぇ」

 慌てるゆゆに対して余裕のあるアリス。
 そういえば、アリスの実家はかなり上流な家柄だったような。

「下がっておこう」

 エルフの女性の言葉に従い、壁際に下がる俺たち。
 ……俺は着ぐるみを着たままでいいのだろうか?

「ふふ、わたしはあくまで”協定”により所属しているだけ。
 ここまでの敬意を払ってもらうには値しませんよ?」

 ようやく声の主の姿が見えて来た。

「わ!!」

 思わず歓声を上げるゆゆだがそれも無理はない。
 照明の暗いダンジョンの中でもはっきりとわかる銀髪。

 透き通るような白い肌に金色の瞳。
 何より目立つのは髪の色と同じ大きな狐耳と尻尾。

「わたしはリアン・フェルニオス三世と申します。
 このたび、日本国のヴァナランド大使館へ赴任する事になりました。
 以後、お見知りおきくださいね、可愛き皆様がた」

 見た目の年齢は18~19歳だろうか。
 リアンと名乗った女性は洗練された所作でにっこりとお辞儀をする。

「わ、わわっ! ダンジョン配信者の緩樹 悠奈(ゆるき ゆうな)ことゆゆです!」

「おなじく、アリス・ブラックシップですわ」

「……だんきちです」

(しまった!?)

(ちょいちょい、タクミおにいちゃん!)
(さすがに、だんきちです、はヤバいってば!)

 あまりの美しさと圧倒的な雰囲気に、思わずだんきちと名乗ってしまった俺。

「まぁ!」

 それなのに、リアン様は大きく目を見開くと、俺の前に立つ。

「珍しいお名前ですね。
 しかも、逞しいお身体……」

 さわさわ

「……ふえ?」

「このお姉さん、天然さんなのかしら?」

 い、いや……真に受けられても困るんですが。

 困惑する俺の前で、リアン様は興味深そうにだんきちの着ぐるみを撫でると。

「それに、素晴らしい”スキル”をお持ちのようです」

「!!」

 全てを見透かすような黄金の目。

(ご、ごくっ)

「そう、これも何かのご縁ですね」

 息をのむ俺の前で、リアン様はごそごそと上着のポケットを探ると……。

「改めまして、わたしこういうものです」

 何故かキラキラと光輝く”名刺”を取り出した。

「あ、ご丁寧にどうも。
 頂戴いたします」

 沁みついた社会人の習性。
 俺は反射的に名刺を交換していた。

「それでは皆様、またお会いできる日を楽しみにしています」

 それだけ言うと、リアン様はお付きの人たちと共に地上へ上がっていった。

「えーっと」

 あまりの出来事に固まる俺。

「ヴァ、ヴァナランドの人も名刺交換するんだね?」

「ねえタクミ、なんて書いてあるのかしら?」

「そ、そうだな」

 俺は彼女から受け取った名刺を見る。
 名前はリアン・フェルニオス三世。
 在日本ヴァナランド大使館の全権大使と書かれている。

「……え?」

 だが、何より目を引いたのはその下に書かれていた「種族名」というヴァナランドならではの項目で……。

 種族名:魔王

「「「ま、魔王ううううううううっ!?」」」

 俺たち三人の叫びが、綺麗にハモったのだった。

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