【魔法翻訳付与】の価値を理解しない脳筋ギルドから望んで追放された青年、魔法学院の教官になり最強クラスを作る ~僕は学院でチヤホヤ充実生活!~

なっくる

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第4章 特A科クラス、遠征します

第4-5話 特A科クラスと領主の陰謀(後編)

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「あれが”半月の塔”か……一見ただの廃墟に見えるけど……僕たちの目はごまかせないね」

「はい、セシルさん……! 魔導波と魔力がビンビンです」

 半月の塔の近くまで移動してきた僕たち。
 近くの森に身を隠し、慎重に様子をうかがう。


 塔の地上部分は5層くらいか……レンガ造りの塔が夜空に向けてそびえている。

 1階部分の入り口は崩壊し、外壁も所々で崩れているなど、ぱっと見は立ち入り禁止の古代遺跡という言葉に偽りが無いように見える。

 だがよく観察すると、塔の脇から地下に続く斜面の下草が剥げており、定期的に何らかの人間の移動がある事がうかがい知れる。

「セシル教官、あそこから地下に降りれそうじゃないですか?」

「ここは、クレアちゃんスペシャルフィニッシュブロゥで外壁に穴を……」

「まずは隠密行動って言ってるだろ!」

「あうっ」

 盗撮犯は成敗します、と気合を入れるクレアにチョップを入れ、いったん落ち着かせる。

 ちなみに”クレアちゃんスペシャルフィニッシュブロゥ”とは、彼女の魔力を込めた拳に、先日正式に習得した魔獣魔法”ドラゴンブレス”をまとわせた彼女の必殺技である。

 その威力は岩をも砕く……が、威力が大きすぎるので隠密行動に向かないことは言うまでもない。
 まずは気配を消す幻惑魔法で潜入するのが無難だろう。

「”バニシング・シール”!」

 僕は先日習得した幻惑魔法を発動させる。
 光の屈折を利用して姿を隠す、隠密行動に適した魔法である。

「それではわたしも……」

 ルイのオプションビットが空中に浮かび、遮蔽フィールドを展開する。

 このフィールドは魔導的な探査を遮断する効果があり、僕の幻惑魔法と組み合わせて完璧な隠密行動を約束する。

「ぶーぶー」

「まあまあクレア、オレたちの出番は最後の荒事っすから」

 出番が無いことにぶーたれているクレアをなだめるカイ。
 僕たちは慎重に塔の地下に歩みを進めた。


 ***  ***

「塔の地下に大きな広間があるな……魔導の揺らぎが大きい……まさか”上位魔獣”が巣くっているのか?」

 ”絶対魔導感覚”を駆使し、広間の様子を探る僕。

 先日の上位魔獣退治クエストの時もそうだったが、僕のスキル”絶対魔導感覚”は、魔力の流れや魔導……魔法を発動させる術式の動きのようなものを感覚的に知覚できる。

 そのため、上位魔獣のような魔法的に強力な力を持つ魔獣の動きを、離れた所から感じることができるのだ。

「わたしの遮蔽フィールドは正常に動作しています……少し覗いてみましょう」

「なっ……これはっ!?」

 そっと広間の様子をうかがう。
 そこに広がっている光景に思わず驚きの声が漏れる。

 広場を埋め尽くしているのは100匹を超える上位魔獣。
 オーガ型、ワイバーン型、魔犬型などよりどりみどりだ。

 奇妙な事に、どの魔獣も地面に座り込んでおり、おとなしくしている。

 それに、この広場に満ちる術式は……。

「これは、傀儡系の術式? 何のために……」

「むむっ……奇妙な魔力の流れがあります……それぞれの魔獣から強い反応を感じます」

 奇妙な魔導の流れに首をかしげる僕とルイ。

「セシル教官! それぞれの魔獣の頭に、おかしな板のようなものが付いてます……なにか、赤く輝いているような……」

 目の良いクレアが何かを見つけたようだ。

 広間に満ちる傀儡系の術式、魔獣に取り付けられ魔導器具と思われるアイテム……まさか!


「上位魔獣を、操っている!?」

「テイマー系の魔法ですか……!」

「先ほどわたしたちを盗撮していたカエル型魔獣はともかく、あんな上位魔獣を操れるティム魔法なんで、聞いたことがありませんが……」

「僕はしばらく術式の”翻訳”に専念する……ルイ、遮蔽フィールドを……」

 強化してくれ、僕がそうルイに頼もうとした瞬間……!


「そうだ、上位魔獣を操り帝都へ侵攻する……それがワシの目的なのさ!」

 広間の奥から取り巻きを連れて現れた太った男……アイツは、依頼書で見た自治領主レナード!

 奴の目は、幻惑魔法で姿を隠しているはずの僕たちを完全にとらえていて……。

「そんな! このレベルの幻惑魔法をただの一般人が見抜くなんて!?」

 ルイの目が驚愕に見開かれている……確かにあり得ない。レナードは特にスキルを持っていなかったはず!

「くくく……帝国軍の犬どもか、この場所を見たからには生かして返さんぞ!」

 レナードがそう叫んだ瞬間、奴の目が金色に輝き……!


 ウオオオオオオオンンッ!


 広間に控えていた、100体以上の魔獣が一斉に咆哮を上げる!

「くっ……術式の翻訳にはもう少しかかる……クレア、ルイ、カイ! 申し訳ないけど、翻訳完了まで時間稼ぎを頼める?」

「へへっ、もちろんですよセシル教官!」

「よっしゃ~、ようやく出番だっ! あのデブオヤジが盗撮犯だよね、10発殴るっ!」

「問題ありません。 わたしの”オプションビット”でかく乱すれば容易かと」

「クレア、ルイ! ヤバくなったらオレの後ろに来るっす! どんな攻撃でも止めるっすよ~」

「助かる! くれぐれも気を付けてね!」

 僕の無茶なお願いに答えてくれる生徒たち。

 焦らず、確実に翻訳を……僕は一度深呼吸をし、精神を集中させる。

 そうすると複雑怪奇な術式の流れが網のように知覚でき……それを解きほぐす”鍵”のようなものまで見えてくる。

「くらえ、クレアちゃんスペシャルフィニッシュブロゥ!!」

「オプションビット! 魔獣の足を止めます」

「みんなの防御力を上げるっすよ、”マジック・シールド”!」

 教え子たちが奮闘しているのが見える……大丈夫だ。

 彼女たちは強い……集中して、正確に……次の瞬間、かちりと……!

 翻訳、完了!

「待たせたね、みんな!」
「後は任せてくれ!」

「発動……”魔導改変”(クラッキング)」

 ”翻訳”が完了した傀儡魔法の術式に干渉し、異物を紛れ込ませる……そうすれば!


 グガッ!?

 グオオオオン!?

 ウガアアッ!

 ドガッ!!


「魔獣が、同士討ちを!?」

 今まで統率の取れた動きをしていた魔獣達が咆哮し、混乱したように好き勝手な動きを始める。

 本来ならこれほどの密度でいるはずのない上位魔獣達は怒り狂い、同士討ちを始め……。

「えぇ……セシル教官、凄い……」

 あまりの光景にポツリとクレアが漏らしたとき、広間にいた100体以上の上位魔獣はすべて動かなくなっていた。


「馬鹿な! 馬鹿なああああっ! ”商社”の魔導器具は完ぺきではなかったのか!」

「こんな、こんな意味の分からない連中にぃぃぃぃ!?」

 頼みの魔獣達がすべて倒れ、絶望の声を上げる自治領主レナード。

 その眼前にしゅたっと降り立ったのはクレアだ。

「こんのエロオヤジ……乙女の柔肌を盗み見た罪は海より深いのよっ!」

「ま、まて! 話せばわかる!」

「問答無用! 成敗っ!」

「ふごおうっ!?」

 クレア怒りの拳が、レナードの巨体を吹っ飛ばしたのだった。


 ***  ***

「このこのっ……撮影したデータを出しなさい……チリにしてあげますっ(げしげしっ)」

 倒れ込んだレナードをルイがブーツで踏みつけている。

「むほおおおぉぉぉ!? 銀髪ロリっ子の踏みつけ気持ちいいっっ!?」

「……超絶不愉快です」


 レナードとその部下たちを捕縛した僕たち特A科クラス。

 部下の話では、魔獣を操っていた”魔導器具”は、自治領主であるレナードが調達して来たらしい。

 だが奇妙な事に、レナードはそのことをほとんど覚えていないようだった。
 それどころか、なぜこのような野心にとらわれていたかも分からないようで。

 ルイに踏まれて喜んでいるその変態性だけは生来のモノだったようだが……。

 レナードが上位魔獣に付けていた魔導器具も全てが跡形もなく崩れ去っており……レナードが最後に発言した”商社”と言う言葉も含め、全てが謎に包まれた反乱未遂事件は、こうして幕を閉じたのだった。

「ふぅ、もう夜が明けるな……予定より早く解決したから、残りの日程は遊んでいくか! 飯ならおごるぞ~!」

「マジですかセシル教官! クレアちゃん、リミッター解除します!」

「なるほど……特殊部隊でスイーツ魔人と呼ばれた私の実力を見せる時が来たようですね」

「ふっふっふっ……毎食キロ単位で食うっすよ~」

「……あの、皆さん多少は遠慮して?」

 不用意な一言で、僕の財布が大破することになりそうだった。
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