【魔法翻訳付与】の価値を理解しない脳筋ギルドから望んで追放された青年、魔法学院の教官になり最強クラスを作る ~僕は学院でチヤホヤ充実生活!~

なっくる

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第5章 特A科クラスの期末試験

第5-1話 試験勉強と家庭教師

 
「やべえっ! さっぱり分からない……助けてルイえもん~~」

「……誰がルイえもんですか」

「クレアさんがちゃんと予習・復習をしないのが悪いんです」

「ううっ……大変ごもっともですが……!」
「ルイ、頼むから教えて~~」

 ここは学院の学生食堂。

 特A科クラスの魔法拳闘士として一定の評価を得つつあるクレア・バンフィールドはしかし、彼女の格闘スキルが通用しない煉獄の強敵、期末試験を目の前に沈没寸前だった。

 季節は梅雨を過ぎ7月に入り、気温もぐんぐん上がる中……魔法士官学院も夏季休暇を前に試験シーズンを迎えていた。

 帝国では成人扱いとなる16歳の女性が、背丈のちんまい13歳の少女に勉強を教えてと泣きつく光景はなかなかに情けない姿であるが、当の本人はいたって真剣である。

「……しかたないですね、ティラミス1か月分で手を打ちますから、今日の放課後……教科書を持って寮のわたしの部屋まで来てください」

「ほんとっ!? ありがとうルイ!!」

「むぎゅっ」

 ため息をつきながら教師役を承諾するルイに、感極まって抱きつくクレア。

 顔に押し付けられる豊かな胸の感触、自分との格差に腹を立てつつも、この柔らかさは嫌いじゃないルイなのだった。


 ***  ***

「おお、ネコのぬいぐるみが沢山……へへっ、ルイったらクールなふりして可愛いもの好きなんだから♪」

 放課後、ルイの部屋を訪れたクレアは、意外に女の子している彼女の部屋に少し驚いていた。

 今度なにかぬいぐるみでもプレゼントしようかな……そう考えるクレアに、厳しい教師ルイの叱咤が響く。


「なにをニヤニヤしているんですかクレアさん!」
「ここに来た時点でアナタの学力は最下層のウジ虫なのです!」

「えええっ!? ウジ虫とか酷くないっ!?」

「おや、このウジ虫は人間の言葉を話すようですね……今の貴様に口答えは許されない!」
「言葉の最初と最後にサーをつけろっ!」

「さ、サーイエッサー!」

「声が小さい!」

「サーイエッサー!!!」


 困ったことに、特殊部隊出身の彼女の教育は海兵隊式なのだった。
 お決まりの通過儀礼のあと、ようやく勉強が始まったのだが。

「と、いうことで”魔導術式”は、こうバババっと展開され、クラシックの旋律のように繊細なのです」

「……はい?」

「だから、爆炎系の術式はこうコントラバスのように低音で力強く……回復系の術式はトランペットのように華やかに、です」

「わかりましたか、クレアさん?」

「……全然わかんにゃい」

 ルイの感覚的な教えに、まったくついていけないクレア。

「むむ……クレアさんは習うより慣れろかもしれません……それでは、魔力を込めずに、術式だけの展開を練習しましょう」

「雷撃系の術式は……こう! びりびりっと!」

「能力アップの術式は、優しく包み込む感じでぐいっっと……さあ、どうぞ!」


「やだ……この子、天才過ぎ!?」


 直感的な天才少女の教えは、クレアには早すぎたようだ。


 ***  ***

「ううっ……このままだと補習どころか留年も……両親にシバかれる……」

 ルイに教えてもらうというたくらみは夢破れ、とぼとぼと学院の廊下を歩くクレア。

「あれ、そんなにしょげてどうしたの?」

 その時、目の前の教官室から現れたのは、彼女たちの教官のセシルだった。


 ***  ***

「なるほど……特に魔導系の教科を教えて欲しいと」

「はいぃ……魔法を使うのはともかく、理論はさっぱりで……」

 教官室前をトボトボと歩くクレア。
 何があったのかと話しかけてみれば、期末試験を前に魔導系の教科がどうしても理解できなくて大ピンチとのことだった。

 ふむ……格闘メインで自分の感覚を頼りに動くクレアには、理論は難しいのか。

 魔導概論の担当教官として、あまり1人の生徒に時間を割くわけにはいかないが、僕もいまだ新任教師。
 座学が出来ない生徒に教えるのも、いい経験になるだろう……。

「今日の夜なら時間取れると思うから……クレアが大丈夫なら教えるよ」

「ほんとですか! やった! それじゃ、魔導通信端末に連絡しますんで、寮のっ!」

「……えっ?」

 彼女はそれだけ言うと、元気よく駆けて行ってしまった。
 いま彼女、とんでもないことを言わなかった?


 ***  ***

(おおう……どうしてこんなことに)
(うっ、女の子のいい匂いがする……)

 その日の夜、僕は内心冷や汗をかいていた。

 ここは学院の女子寮、クレアの部屋だ。

 魔導概論について教えることをクレアと約束し、先ほど彼女から入った連絡は、やっぱり”あたしの部屋に来てください”だった。

 言われるがままに来てしまったが、教官が教え子の部屋に夜一人で来るとか、もしかしなくてもマズいのでは?

 念のため隠密魔法をつかって気配を隠しながら来たが……。
 いやいや、これは教師と生徒の尊い教育活動である……決してやましいものでは……。

「ふぅ、待たせてしまってスミマセン、セシル教官……午後の授業で汗かいてたんで、ついでにシャワーを浴びさせてもらいましたぁ!」

「!!」

 そう言ってシャワールームから出てきたクレアは、胸の谷間がくっきりと見える薄手のTシャツに、惜しげもなく生足を晒すショートパンツという格好だった。

 ……無自覚お嬢様と言うのは本当に罪作りなモノである。


 ***  ***

「……それで、攻撃魔法の術式と回復魔法の術式では基礎となる共通術式が異なっていて、基本は教科書の37ページにある帝国共通術式が……」

「ふんふん、そうだったんですね」

 モモにペンを刺しまくってなんとか心の平穏を保った僕は、クレアへの特別授業(意味深じゃない)を続けていた。

 クレアは感覚的に魔導を理解しようとして上手く行っていないようだった。
 基礎の基礎からきっちり体系的に教えてやると、彼女はみるみる理解を深めていった。

「……よし、これで今回の試験範囲は8割がたカバーできたな。 いったん休憩にしようか」

「ふう、ありがとうございます! じゃあ、あたしお茶入れますねっ!」

 僕が休憩を提案すると、彼女はぴょんっと元気に立ち上がり、戸棚からティーセットを取り出して
 優雅な手つきで紅茶を淹れ始める

 ……普段は元気な爆裂娘でも、こういう仕草を見てると貴族の娘なのだなと思わせてくれる。

「……あたし、領主である両親とは忙しくてなかなか遊ぶ機会もなかったので」
「執事の爺やとおじいちゃんに遊んでもらうことが多かったんですけど……」

 お茶受けを準備しながらクレアが語りだす。
 そういえば、彼女の事をクレアの口から話してくれるのは珍しいな。

「昔から身体を動かすことが好きて、勉強が苦手だったあたしに辛抱強く勉強を教えてくれたのが爺やで……その穏やかな時間があたしは大好きで」

「少し昔を思い出しちゃいました♪」
「あらためてありがとうございます、セシル教官っ!」

 にぱっ、と満面の笑みを浮かべるクレアの頭を撫でてやりつつ、穏やかな勉強時間が過ぎていくのであった。

 その後、ぐんぐん成績を伸ばしたクレアは、無事追試を回避することができた。
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