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第11話(閑話1)ROAD TO 豪邸

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「リーサ……!」

 手に持ったチラシを、リーサに突きつける。

「俺たちは……ここに引っ越すぞ!!」

「ふっ、ふおおおおおおっ!?」

 大きな瞳を真ん丸にして、耳と尻尾を逆立てて驚くリーサ。

 リーサに見せたのは、新築マンションの案内チラシ。
 今住んでいるボロアパートから川を隔てて対岸に建築中の、35階建ての巨大マンション……いわゆるタワマンである。

「お、お部屋が6つもあるよ!?」

「おう、4LDKだ!」

「なんかこのキラキラしてるおふろは?」

「ジャクジーだ!」

「じゃぐじぃ!?」

 今のボロアパートの部屋がすっぽりと収まりそうな浴室に、興奮しっぱなしのリーサ。
 ……実は俺が狙っている部屋は”ワケアリ”なので、そこまで高くはない。
 まあ、家賃4万のこの部屋に比べれば宮殿のようなお値段だが。

「じゃあっ、じゃあ!
 お部屋が25階という事は……”ふ、人がゴミのようだ”ごっこも出来る!?」

「お、おう?」

 それは最後に成敗されそうだから、やめといたほうがいいな。

「……でも」

「?」

 ひとしきり騒いだ後、ふと寂しそうな表情を浮かべ、部屋の中を見回すリーサ。
 年季の入った土壁の寝室にはリーサの勉強机と布団が二組。

「ユウと一緒に寝れなくなるのは、やだな」

「!!」

 何しろアパートは二部屋しかないので、俺たちは寝室に布団を並べて寝ている。
 寝ぼけたリーサが布団に入ってくることもしょっちゅうだ。

「……く、くうっ!?」

(かわいすぎんだろ!)

 確かに、その一体感とぬくもりを味わえなくなるのは寂しい。

 だが、リーサもそのうち中学生になる。
 リーサの通う学園は一貫校だが中学に上がるときには試験もあるので、集中できる勉強部屋は必要だ。

 それにリーサも大きくなった。
 年頃の女の子として、自分の部屋は与えてやりたい。

『パパはクサいから近づいてこないで!』
『洗濯物は別にしてよ!』

(ぐはっ!?)

 リーサがそういうことを言う子じゃないと分かっていても、思春期全開な彼女を想像して致命傷を負う俺。

「??」

「わたし、高い建物の上より……土の匂いや川のせせらぎが聞こえる場所がすき。
 だから、こっちの方がいいなっ」

 リーサがパンフレットの山から取り出したのは、ここから1㎞程離れた所にある、小山の中腹に建つ1軒屋。

 この辺りが開発される前に造成されたと思われる宅地で、数軒の家が売りに出ていた。

「これは……」

 元は集会所か何かの建物を改築した物件だろう。
 40畳ほどの大きな広間を持ち、仕切りによりいろいろなレイアウトにできるのがアピールポイントだ。

 広い庭があり、たくさんの木々に囲まれている。

「……だめ?」

(まあ、リーサは”そう”だよな)

 大都会より自然に囲まれた場所が好き、なのだ。
 なにより、上目遣いでぴこぴこと耳を動かすリーサの可愛さに抗えるはずもなく。

「よし、それじゃあ……ここに引っ越すことを目標に。
 俺のユニーク、”スキルポイント獲得倍率”の法則を見つけるためにも。
 ダンジョンを、狩りまくるぞっ!!」

「やった~!
 ユウ、がんばろー!!」

 尻尾をぶんぶんと振りながら、両手を上げてポーズを取るリーサ。

 ……実はさっきのタワマンよりお値段が高いというのは黙っておこう。
 こうして、夢の一戸建て生活を実現するために、俺たちの戦いが始まるのだった。
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