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第28話 決着
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「やった~~!!」
「大魔導士リーサちゃんにしてはしょぼい魔法だけど……。
コブリンさんくらいなら余裕だね!」
ゴブリンロードを倒したことを確認すると、満面の笑みを浮かべたリーサがキャットウォークから降りてくる。
「リーサ……」
「ユウ、無理しちゃダメって言ったでしょ……!」
ぎゅっ!
一人でこんな危ない場所に来ちゃダメじゃないか……そう叱る間もなく抱きついてくるリーサ。
「あの時……本当に怖かったんだから」
「う……」
俺が剣技スキルを使い、重傷を負ったのはリーサが3歳の時。
ユウが死んじゃう!と泣きじゃくっていた彼女の姿を思い出す。
「……ごめん」
ぽろぽろと涙をこぼすリーサの姿に、罪悪感にさいなまれた俺はリーサを優しく抱き返す。
「え、あの……リーサたん、魔法?」
「…………(唖然)」
「あ……」
シローさんとレミリアさんにもばっちり見られてしまった。
「実は……」
リーサの事、魔法の事……ふたりにもちゃんと説明した方がよさそうだ。
*** ***
「……なるほど、リーサたんは向こうの世界での”魔法構成言語”を思い出したってワケね。それで一部の魔法が使えるようになったと」
レミリアさんも元の世界では魔法使いだったそうだ。
「……レミリアお姉ちゃんは使えないの?」
おでこを押さえながらレミリアさんに問いかけるリーサ。
黙って事務棟を抜け出したこと、約束を破って魔法を使ったこと。
厳しい父親として、教育的指導(ほっぺむにむにとデコピン一発)はちゃんと施しておいた!
「ほうっ!? 涙目のリーサたん、萌える!!」
「……レミリア」
「こほんっ……あたしは元の世界の魔術理論は覚えてるけど。
こっちの世界じゃ使えないわね。
なにより、”エーテル”が満ちてないから」
「そっかぁ……」
リーサの言うマナもエミリアさんの言うエーテルも同じようなモノだろう。
それら魔法元素に術者の魔力が反応し魔法を発動させるのだ。
「もしかしてリーサたんはエーテルを自分で生成できるタイプ?
そんなの激レアじゃん!」
「昔のわたしはそれを研究してたっぽいんですけど……」
「可愛くて天才!! 推せる!!」
「ふにぃ!?」
「……それにしても”剣技”に”魔法”か、君たちは相当にイレギュラーな存在みたいだね。なんで隠してたんだい?」
またもやリーサを抱きしめているエミリアさんに呆れた視線を投げると、こちらに向き直るシローさん。
「そのスキルがあれば”対怪異特殊部隊”でも働けたろう?」
異世界帰りで構成された、あふれ出したモンスターを討伐する政府直轄の特殊部隊。
仕事内容が内容だけに、報酬も破格である。
「いえ、実は……怖くて」
「怖い?」
俺は両手で自分の肩を抱く。
転生した異世界で。
リーサと共に育ち、強くなった俺。
魔王が出現して最初は英雄気取りだった。
元の世界の知識と合わせ、俺は無双できると。
だが、魔王軍との血みどろの戦いの中で仲間は斃れ、住んでいた街は焼かれた。
最後の戦いのさなか、魔王を背後から操っていた邪神の攻撃でリーサは……。
戻って来たばかりの俺は、戦うことがトラウマになっていた。
ある程度の安全が担保されているダンジョンバスターの仕事と、現実は違うのだ。
「なるほどね。
こちらの世界に戻ってきた時のユウ君はまだ15歳……仕方ない事だと思うよ」
ぽん
「シローさん……」
シローさんの大きな手が俺の頭に置かれる。
その暖かさに、ふいに涙がこぼれそうになる。
「リーサちゃんのことは、私とエミリアにも協力させてくれ。
君たちの立場を守ることもできるだろう」
「!! リーサたんといつでも会えるってこと!?!?」
「……お前は少し黙ってなさい」
ごん!
「ふぎゅ!?」
鼻血を垂らすレミリアさんに拳骨を落とすシローさん。
「……いいんですか?」
「ああ、君たちが思っているより最近のダンバス界隈はキナ臭いものでね。
同じ異世界帰りのパートナーを持つ私としては、放っておけないんだよ」
きらり、と白い歯を見せて微笑むシローさん。
日本トップのダンジョンバスターが協力してくれるのはとてもありがたい。
『ゆ、ゆゆゆゆ、ユウさんっ!?
シローさんとレミリアさんから、ウチのギルドに加入申請があったんですがっ!!』
「……へ?」
俺のスマホにフェリナから着信があり、慌てた様子の彼女が画面に映る。
「これからよろしく~、フェリたーん!
こんどモフモフさせてね~」
『え、えええええええっ!?』
「は、ははは……」
「楽しい仲間が増えたね!」
シローさんたちの事にリーサの魔法の事。
フェリナにも説明する必要があるだろう。
思わず頭痛を感じる俺なのだった。
「大魔導士リーサちゃんにしてはしょぼい魔法だけど……。
コブリンさんくらいなら余裕だね!」
ゴブリンロードを倒したことを確認すると、満面の笑みを浮かべたリーサがキャットウォークから降りてくる。
「リーサ……」
「ユウ、無理しちゃダメって言ったでしょ……!」
ぎゅっ!
一人でこんな危ない場所に来ちゃダメじゃないか……そう叱る間もなく抱きついてくるリーサ。
「あの時……本当に怖かったんだから」
「う……」
俺が剣技スキルを使い、重傷を負ったのはリーサが3歳の時。
ユウが死んじゃう!と泣きじゃくっていた彼女の姿を思い出す。
「……ごめん」
ぽろぽろと涙をこぼすリーサの姿に、罪悪感にさいなまれた俺はリーサを優しく抱き返す。
「え、あの……リーサたん、魔法?」
「…………(唖然)」
「あ……」
シローさんとレミリアさんにもばっちり見られてしまった。
「実は……」
リーサの事、魔法の事……ふたりにもちゃんと説明した方がよさそうだ。
*** ***
「……なるほど、リーサたんは向こうの世界での”魔法構成言語”を思い出したってワケね。それで一部の魔法が使えるようになったと」
レミリアさんも元の世界では魔法使いだったそうだ。
「……レミリアお姉ちゃんは使えないの?」
おでこを押さえながらレミリアさんに問いかけるリーサ。
黙って事務棟を抜け出したこと、約束を破って魔法を使ったこと。
厳しい父親として、教育的指導(ほっぺむにむにとデコピン一発)はちゃんと施しておいた!
「ほうっ!? 涙目のリーサたん、萌える!!」
「……レミリア」
「こほんっ……あたしは元の世界の魔術理論は覚えてるけど。
こっちの世界じゃ使えないわね。
なにより、”エーテル”が満ちてないから」
「そっかぁ……」
リーサの言うマナもエミリアさんの言うエーテルも同じようなモノだろう。
それら魔法元素に術者の魔力が反応し魔法を発動させるのだ。
「もしかしてリーサたんはエーテルを自分で生成できるタイプ?
そんなの激レアじゃん!」
「昔のわたしはそれを研究してたっぽいんですけど……」
「可愛くて天才!! 推せる!!」
「ふにぃ!?」
「……それにしても”剣技”に”魔法”か、君たちは相当にイレギュラーな存在みたいだね。なんで隠してたんだい?」
またもやリーサを抱きしめているエミリアさんに呆れた視線を投げると、こちらに向き直るシローさん。
「そのスキルがあれば”対怪異特殊部隊”でも働けたろう?」
異世界帰りで構成された、あふれ出したモンスターを討伐する政府直轄の特殊部隊。
仕事内容が内容だけに、報酬も破格である。
「いえ、実は……怖くて」
「怖い?」
俺は両手で自分の肩を抱く。
転生した異世界で。
リーサと共に育ち、強くなった俺。
魔王が出現して最初は英雄気取りだった。
元の世界の知識と合わせ、俺は無双できると。
だが、魔王軍との血みどろの戦いの中で仲間は斃れ、住んでいた街は焼かれた。
最後の戦いのさなか、魔王を背後から操っていた邪神の攻撃でリーサは……。
戻って来たばかりの俺は、戦うことがトラウマになっていた。
ある程度の安全が担保されているダンジョンバスターの仕事と、現実は違うのだ。
「なるほどね。
こちらの世界に戻ってきた時のユウ君はまだ15歳……仕方ない事だと思うよ」
ぽん
「シローさん……」
シローさんの大きな手が俺の頭に置かれる。
その暖かさに、ふいに涙がこぼれそうになる。
「リーサちゃんのことは、私とエミリアにも協力させてくれ。
君たちの立場を守ることもできるだろう」
「!! リーサたんといつでも会えるってこと!?!?」
「……お前は少し黙ってなさい」
ごん!
「ふぎゅ!?」
鼻血を垂らすレミリアさんに拳骨を落とすシローさん。
「……いいんですか?」
「ああ、君たちが思っているより最近のダンバス界隈はキナ臭いものでね。
同じ異世界帰りのパートナーを持つ私としては、放っておけないんだよ」
きらり、と白い歯を見せて微笑むシローさん。
日本トップのダンジョンバスターが協力してくれるのはとてもありがたい。
『ゆ、ゆゆゆゆ、ユウさんっ!?
シローさんとレミリアさんから、ウチのギルドに加入申請があったんですがっ!!』
「……へ?」
俺のスマホにフェリナから着信があり、慌てた様子の彼女が画面に映る。
「これからよろしく~、フェリたーん!
こんどモフモフさせてね~」
『え、えええええええっ!?』
「は、ははは……」
「楽しい仲間が増えたね!」
シローさんたちの事にリーサの魔法の事。
フェリナにも説明する必要があるだろう。
思わず頭痛を感じる俺なのだった。
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