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第57話 祝勝会
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「かんぱ~いっ!!」
きんっ
リーサの音頭と共に、グラスを合わせる。
「やったね!!」
金色のメダルを誇らしげに首に下げているリーサ。
「ユウだけでなく、大魔導士と余が揃っているのだ……当然だな。
ぱくぱくぱく」
リーサ以上にドヤ顔を浮かべたミアが、早速塩から揚げに手を伸ばしている。
「あっ、ずるい!
わたしも食べる!!」
少女たちはメダルよりごはんだ。
さくっ
ミアの犬歯がから揚げを噛みしめ、肉汁が小さな口からこぼれんばかりに溢れでる。
「美味い……ユウよ、お主は本当に天才料理人じゃな!」
「たくさん魔法使ったからね、いくらでも食べられるよ!!」
まったくこの腹ペコ娘たちは。
「……いくらでも食え。
おかわりとポテサラもあるぞ!」
俺はにやりと笑うと、台所から山盛りのから揚げと同じくボールに溢れんばかりに盛ったポテトサラダを運んでくる。
「やたっ! ユウのポテサラだっ!」
これもリーサの大好物。
「えへへ、食べさせて?」
「しょうがないな」
可愛く開いたリーサの口に、たっぷりとポテサラを乗せたスプーンを近づけてやる。
「ぱくっ。
ん~~~っ、美味しい♡」
満面に浮かぶメシ顔がとても魅力的だ。
「ユウも。 あ~ん!」
お返しのあーんをひとくちで食べる。
うむ、世界一美味い。
「えへへ~」
「な、何じゃその魅惑的な行為は!?
フェリナ! 余にも頼むぞ!!」
俺とリーサを見て羨ましくなったのだろう。
ピコピコと尻尾を揺らしながらフェリナの隣に移動するミア。
「ふふふ、それじゃポテサラ・オンザ・塩から揚げで……」
から揚げにポテサラをまぶし、レンゲに乗せてミアの顔の前に持ってくる。
「はむっ!
美味すぎるっ!?」
「た、タマラナイ……!」
愛らしいミアの様子にフェリナの頬も緩みっぱなしだ。
……ふう。
相変わらず我が家の夕食は最高なのだった。
*** ***
料理の大半がリーサとミアの胃袋に消えたころ、テレビをつけるとダンジョンバスター競技大会のハイライトを放送していた。
ちょうど、”タイムアタック”競技を取り扱っている。
『Sランク超部門では、下馬評通りにシロー夫妻が優勝しました。
ウィンストン卿は惜しくも二位、やはり試合勘の差が出たでしょうか?』
『そうですね、ウィンストン卿はオリジナルマインの異変への対応などで、ここ数か月あまりダンジョンに潜ってなかったようですから、少し影響があったかもしれません』
アナウンサーと解説役のダンジョンバスターが、本日行われたタイムアタック競技を振り返っている。
「やはり優勝はシローさんたちでしたね」
「ああ」
テレビではちょうどシローさんたちの攻略風景が映っている。
Sランク超部門では、競技ダンジョン内に出現するモンスターは200体を超える。
ソイツを限られたスキルポイントで倒す必要があるのだが……。
『はいは~い! 鬼さんこちらよ~ん!』
一見無茶苦茶な動きでモンスターを翻弄するレミリアさん。
だがその動きには一定のパターンがあり、モンスターの群れをある地点に集めていく。
『……メガ・バスター!!』
ドオオオンッ!
次の瞬間、シローさんの剣技が炸裂し、モンスターをまとめて吹き飛ばす。
『シロー夫妻はスキルポイントを5000以上残して攻略完了……圧倒的なスコアで優勝です』
「うーん、さすがSSランク……人外だな」
「ですね」
映し出される攻略風景に苦笑する俺とフェリナ。
スキルポイントをぜいたくに使えばステータスは盛れるとはいえ、高ランクのダンバスは戦い方が上手い。
ステータスに頼ったごり押しの戦闘スタイルでは、最上位ダンジョンではすぐ電池切れしてしまう。
「参考になるな」
『続きまして先日行われたBランク部門ですが……』
「おっ」
テレビの映像は、俺たちが出場したBランク部門へと切り替わる。
『地元関西出身であるユウ選手が優勝したBランク部門。
彼が使いこなすリアルスキルと、リーサ選手ミア選手が使うオリジナル魔法については先日特集したばかりですが』
『今日は銀メダルを獲得したサトウ選手に注目しましょう!』
「…………」
画面は俺たちに続いて二位になったダンジョンバスターを映し出す。
20代前半の中肉中背の男性……特に目立った風貌ではない。
『サトウ選手はノーツ財閥が設立したダンジョンバスター育成機関の1期生という事で、ダンジョンを本格的に攻略するのはこれが初めてという事でしたが……見事な手際で二位に滑り込みました!!』
「……なあ、フェリナ。
コイツらに心当たりあるか?」
最終競技者として登場したサトウ選手。
ダンバスランクはBであるものの、協会の広報やダンバスランキングでは見たことのない名前。
「いえ」
ノートPCを操作していたフェリナが首を横に振る。
「協会の情報によると、大会の直前にダンジョンバスターとして登録されたようです。この競技大会限定のランクとして”B”が付与されています」
「おそらく大会スポンサーとなったノーツの差し金でしょうね」
「ふむ……」
ダンバスランクは一部の特別報酬を除くとスキルポイントを消費して上げるものだ。
無名のサトウ選手がBなのはおかしいと思っていたが、大会限定のランクアップなら出来ない事ではないのか?
「”ダンジョンバスター育成機関”についてはどうだ?」
もう一つの気になる点を、フェリナに聞いてみる。
「数年前にマクライドが群馬県にそれに類するものを設立したことは知っていましたが……わたくしのいた部門とは全く違いましたので」
「成果が芳しくないため、閉鎖されると噂されていたのですが……。
最近なにか進展があったのでしょうか」
これもマクライドの”仕込み”の一つなのか?
無表情に銀メダルを受け取るサトウ選手の映像を見ながら、疑問に思う俺なのだった。
きんっ
リーサの音頭と共に、グラスを合わせる。
「やったね!!」
金色のメダルを誇らしげに首に下げているリーサ。
「ユウだけでなく、大魔導士と余が揃っているのだ……当然だな。
ぱくぱくぱく」
リーサ以上にドヤ顔を浮かべたミアが、早速塩から揚げに手を伸ばしている。
「あっ、ずるい!
わたしも食べる!!」
少女たちはメダルよりごはんだ。
さくっ
ミアの犬歯がから揚げを噛みしめ、肉汁が小さな口からこぼれんばかりに溢れでる。
「美味い……ユウよ、お主は本当に天才料理人じゃな!」
「たくさん魔法使ったからね、いくらでも食べられるよ!!」
まったくこの腹ペコ娘たちは。
「……いくらでも食え。
おかわりとポテサラもあるぞ!」
俺はにやりと笑うと、台所から山盛りのから揚げと同じくボールに溢れんばかりに盛ったポテトサラダを運んでくる。
「やたっ! ユウのポテサラだっ!」
これもリーサの大好物。
「えへへ、食べさせて?」
「しょうがないな」
可愛く開いたリーサの口に、たっぷりとポテサラを乗せたスプーンを近づけてやる。
「ぱくっ。
ん~~~っ、美味しい♡」
満面に浮かぶメシ顔がとても魅力的だ。
「ユウも。 あ~ん!」
お返しのあーんをひとくちで食べる。
うむ、世界一美味い。
「えへへ~」
「な、何じゃその魅惑的な行為は!?
フェリナ! 余にも頼むぞ!!」
俺とリーサを見て羨ましくなったのだろう。
ピコピコと尻尾を揺らしながらフェリナの隣に移動するミア。
「ふふふ、それじゃポテサラ・オンザ・塩から揚げで……」
から揚げにポテサラをまぶし、レンゲに乗せてミアの顔の前に持ってくる。
「はむっ!
美味すぎるっ!?」
「た、タマラナイ……!」
愛らしいミアの様子にフェリナの頬も緩みっぱなしだ。
……ふう。
相変わらず我が家の夕食は最高なのだった。
*** ***
料理の大半がリーサとミアの胃袋に消えたころ、テレビをつけるとダンジョンバスター競技大会のハイライトを放送していた。
ちょうど、”タイムアタック”競技を取り扱っている。
『Sランク超部門では、下馬評通りにシロー夫妻が優勝しました。
ウィンストン卿は惜しくも二位、やはり試合勘の差が出たでしょうか?』
『そうですね、ウィンストン卿はオリジナルマインの異変への対応などで、ここ数か月あまりダンジョンに潜ってなかったようですから、少し影響があったかもしれません』
アナウンサーと解説役のダンジョンバスターが、本日行われたタイムアタック競技を振り返っている。
「やはり優勝はシローさんたちでしたね」
「ああ」
テレビではちょうどシローさんたちの攻略風景が映っている。
Sランク超部門では、競技ダンジョン内に出現するモンスターは200体を超える。
ソイツを限られたスキルポイントで倒す必要があるのだが……。
『はいは~い! 鬼さんこちらよ~ん!』
一見無茶苦茶な動きでモンスターを翻弄するレミリアさん。
だがその動きには一定のパターンがあり、モンスターの群れをある地点に集めていく。
『……メガ・バスター!!』
ドオオオンッ!
次の瞬間、シローさんの剣技が炸裂し、モンスターをまとめて吹き飛ばす。
『シロー夫妻はスキルポイントを5000以上残して攻略完了……圧倒的なスコアで優勝です』
「うーん、さすがSSランク……人外だな」
「ですね」
映し出される攻略風景に苦笑する俺とフェリナ。
スキルポイントをぜいたくに使えばステータスは盛れるとはいえ、高ランクのダンバスは戦い方が上手い。
ステータスに頼ったごり押しの戦闘スタイルでは、最上位ダンジョンではすぐ電池切れしてしまう。
「参考になるな」
『続きまして先日行われたBランク部門ですが……』
「おっ」
テレビの映像は、俺たちが出場したBランク部門へと切り替わる。
『地元関西出身であるユウ選手が優勝したBランク部門。
彼が使いこなすリアルスキルと、リーサ選手ミア選手が使うオリジナル魔法については先日特集したばかりですが』
『今日は銀メダルを獲得したサトウ選手に注目しましょう!』
「…………」
画面は俺たちに続いて二位になったダンジョンバスターを映し出す。
20代前半の中肉中背の男性……特に目立った風貌ではない。
『サトウ選手はノーツ財閥が設立したダンジョンバスター育成機関の1期生という事で、ダンジョンを本格的に攻略するのはこれが初めてという事でしたが……見事な手際で二位に滑り込みました!!』
「……なあ、フェリナ。
コイツらに心当たりあるか?」
最終競技者として登場したサトウ選手。
ダンバスランクはBであるものの、協会の広報やダンバスランキングでは見たことのない名前。
「いえ」
ノートPCを操作していたフェリナが首を横に振る。
「協会の情報によると、大会の直前にダンジョンバスターとして登録されたようです。この競技大会限定のランクとして”B”が付与されています」
「おそらく大会スポンサーとなったノーツの差し金でしょうね」
「ふむ……」
ダンバスランクは一部の特別報酬を除くとスキルポイントを消費して上げるものだ。
無名のサトウ選手がBなのはおかしいと思っていたが、大会限定のランクアップなら出来ない事ではないのか?
「”ダンジョンバスター育成機関”についてはどうだ?」
もう一つの気になる点を、フェリナに聞いてみる。
「数年前にマクライドが群馬県にそれに類するものを設立したことは知っていましたが……わたくしのいた部門とは全く違いましたので」
「成果が芳しくないため、閉鎖されると噂されていたのですが……。
最近なにか進展があったのでしょうか」
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無表情に銀メダルを受け取るサトウ選手の映像を見ながら、疑問に思う俺なのだった。
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