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21話
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「おーし、じゃあ一回水飲んだら。鳥かごやろうぜ!」
今井キャプテンの声掛けで、最初のボールタッチの練習は終わった。
「どうだった、やってみて?」
俺は太一に声を掛けた。
「いやぁ、難しいね!見ているのとやってみるのとでは大違いだよ。……みんなスゴイね!」
太一は目を丸くして答えた。
確かに胸トラップやヘディングなどはほとんど出来なかったが、基本的なインサイドキックやインステップキックに関しては悪くなかった。
「いや、お前センスあると思うよ。全くのサッカー未経験どころか特に運動経験もないんだろ?全然問題ないよ」
仲良しとしてのお世辞ではなく本心で俺はそう言った。先輩たちとの対決が2週間後ではなく、もう少し先だったら太一も本当に戦力になったんじゃないだろうか。
「次は鳥かごって言って、中の鬼にボールを取られないようにパスを回していく練習だ」
俺は太一に説明した。
これも基本的な練習だが、さっきの基本練習に比べるともう少し実戦的だ。
今回は4人一組となり、その内の1人が鬼となりそれ以外の3人でパスを回す。鬼にボールを触られたら、ミスをした人間と鬼とが交代してゆくという練習だ。守備側のプレッシャーが掛かる中で正確にパスを回せるか、鬼はパスコースを読んでカットが出来るか……単純だが攻守両方の練習を兼ねたものだ。
俺たちの組は、俺、太一、今井キャプテン、安東の4人でやることになった。
「いいぞ、太一」
鳥かごの練習が始まった。
最初の鬼は今井キャプテンだった。ちなみにキャプテンは本来ゴールキーパーだが、こうして普通のフィールドプレーヤーの練習にも参加する。キャプテン自身がフィールドの練習をやりたがるし、そもそも人数の関係上仕方ないという理由もある。
太一、俺、安東という3人でパスを回していたのだが、鳥かごで回す側が3人しかいない……というのは結構難しい。パスの選択肢が2つしかないからだ。
太一に対しては少し気を遣いながらのプレーだった。俺もキャプテンも露骨にプレッシャーを緩めていた。
太一のパス回しはまだまだスムーズなものとは言えなかったからだ。ミスキックはほとんどなかったが、トラップをしてからパスを出すまでがあたふたしていてコースも簡単に読めてしまう。未経験者だから仕方ないとは言え、本気で守備をすれば容易くボールを取れてしまうケースがほとんどだった。
だがそこで本気で守備をしてしまってはパスをつないで感覚は養われない。多少プレッシャーを緩くしてでも太一にそれを養ってもらおうというのが、俺とキャプテンとの暗黙の了解だった。
だが安東はそうではないようだった。太一にも遠慮することなくプレッシャーを掛けボールを取っていたし、太一が鬼の時にはフェイントを入れては容赦なくパスを回していた。
(……まあ、そうだよな)
俺には安東の気持ちも理解出来た。
先輩たちとの対決は2週間後なのだ。未経験の人間を戦力として受け入れようとしている方がおかしいだろう。太一に気を遣って身の入らない練習をやっているヒマは無い、というのは普通が感覚だろう。
(でもな……太一は普通の人間じゃないんだよ)
直接は戦力にならないかもしれないけど、きっと俺たちにプラスをもたらしてくれる。
もちろん俺のそんな想いには多分に贔屓目が含まれていたのかもしれない。
今井キャプテンの声掛けで、最初のボールタッチの練習は終わった。
「どうだった、やってみて?」
俺は太一に声を掛けた。
「いやぁ、難しいね!見ているのとやってみるのとでは大違いだよ。……みんなスゴイね!」
太一は目を丸くして答えた。
確かに胸トラップやヘディングなどはほとんど出来なかったが、基本的なインサイドキックやインステップキックに関しては悪くなかった。
「いや、お前センスあると思うよ。全くのサッカー未経験どころか特に運動経験もないんだろ?全然問題ないよ」
仲良しとしてのお世辞ではなく本心で俺はそう言った。先輩たちとの対決が2週間後ではなく、もう少し先だったら太一も本当に戦力になったんじゃないだろうか。
「次は鳥かごって言って、中の鬼にボールを取られないようにパスを回していく練習だ」
俺は太一に説明した。
これも基本的な練習だが、さっきの基本練習に比べるともう少し実戦的だ。
今回は4人一組となり、その内の1人が鬼となりそれ以外の3人でパスを回す。鬼にボールを触られたら、ミスをした人間と鬼とが交代してゆくという練習だ。守備側のプレッシャーが掛かる中で正確にパスを回せるか、鬼はパスコースを読んでカットが出来るか……単純だが攻守両方の練習を兼ねたものだ。
俺たちの組は、俺、太一、今井キャプテン、安東の4人でやることになった。
「いいぞ、太一」
鳥かごの練習が始まった。
最初の鬼は今井キャプテンだった。ちなみにキャプテンは本来ゴールキーパーだが、こうして普通のフィールドプレーヤーの練習にも参加する。キャプテン自身がフィールドの練習をやりたがるし、そもそも人数の関係上仕方ないという理由もある。
太一、俺、安東という3人でパスを回していたのだが、鳥かごで回す側が3人しかいない……というのは結構難しい。パスの選択肢が2つしかないからだ。
太一に対しては少し気を遣いながらのプレーだった。俺もキャプテンも露骨にプレッシャーを緩めていた。
太一のパス回しはまだまだスムーズなものとは言えなかったからだ。ミスキックはほとんどなかったが、トラップをしてからパスを出すまでがあたふたしていてコースも簡単に読めてしまう。未経験者だから仕方ないとは言え、本気で守備をすれば容易くボールを取れてしまうケースがほとんどだった。
だがそこで本気で守備をしてしまってはパスをつないで感覚は養われない。多少プレッシャーを緩くしてでも太一にそれを養ってもらおうというのが、俺とキャプテンとの暗黙の了解だった。
だが安東はそうではないようだった。太一にも遠慮することなくプレッシャーを掛けボールを取っていたし、太一が鬼の時にはフェイントを入れては容赦なくパスを回していた。
(……まあ、そうだよな)
俺には安東の気持ちも理解出来た。
先輩たちとの対決は2週間後なのだ。未経験の人間を戦力として受け入れようとしている方がおかしいだろう。太一に気を遣って身の入らない練習をやっているヒマは無い、というのは普通が感覚だろう。
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直接は戦力にならないかもしれないけど、きっと俺たちにプラスをもたらしてくれる。
もちろん俺のそんな想いには多分に贔屓目が含まれていたのかもしれない。
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