ふわふわまるまる飛車角

きんちゃん

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33話

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 俺はそうした昨日のミーティングの内容を太一が弁当を食べ終える前に急いで話した。
 弁当を食べ終えてしまっては太一の電源が落ちることが容易に想像出来たからだ。
 俺の話を聞いている間も太一が箸と咀嚼を止めることはなかったが、首振りと眼とで一応の反応は示してくれた。太一なら理解していないことはないだろう。



「あれ川田君、お弁当今日はいつもよりすごいね!」

 太一の昼食が最終盤のフルーツに差しかかった頃、後ろを通った朝川が声を掛けてきた。

「お、おう、朝川」

 返事をしつつも俺は一瞬ビクッとした。
 太一がサッカー部と揉めて2年生と対決をするようになったこと……それを朝川の兄である翔先輩から聞いていないだろうか?ということが頭をよぎったからだ。それを知ったら彼女はどう思うのだろうか?

「そうなんだよ、朝川さん!あのね僕、サッカー部に入ったんだよ!」

「え、川田君が?……何で?大丈夫なの?サッカーなんて出来るの?」

 みるみるうちに朝川は眉をひそめた。心配性の母親かよ。

「いやあ、実は正洋たちと2年の先輩たちが揉めてる所に僕がたまたま通りかかったんだけどね、先輩たちの態度がひどくて思わずケンカ売っちゃったんだよね」
「おい、太一!」

 あまりにあけすけに語る太一が流石に怖くなったので止めようと思ったが、時はすでに遅かった。朝川はもう太一の言葉に目を丸くして次の説明を待っていたのだ。
 結局太一は全てを実にあっけらかんと朝川に語ってしまった。
 ……コイツは朝川の微妙な立場とかを考えないのだろうか?
 太一の説明を聞き終えると、朝川は大きくため息を一つついた。

「まったくウチのバカ兄貴ときたら……2年のそういう雰囲気を作ってるのは間違いなくアイツだと思うわ。……でも、対決なんて大丈夫なの?何だかんだ言ってアイツ、中学の時には選抜にも選ばれてたわよ。1年生ばかりのチームで勝てそうなの?」

 彼女は兄よりも俺たち1年チームを応援してくれている、と考えて良いのだろうか?と少し嬉しくなった俺が、嬉々として太一の加入によって戦う目途が出来たことを語ろうとしたところで先に太一の方が口を開いた。コイツがこんなに饒舌になるのは珍しい。

「いやぁ、多分勝てないよ……」

「……え?」「え、そうなの?」

 それまでの言葉から一気にトーンダウンした太一の言葉には、朝川よりもむしろ俺の方が驚いた。昨日あれだけの活躍を見せておいて太一は自信がないのだろうか?……それとも自分以外の1年チームの実力を見切った上で勝ち目がないと判断したのだろうか?

「いやぁ、昨日僕も始めて練習に参加したんだけどね、実力がないのももちろんだけどチームとして全然まとまってないんだよね……。だから多分2週間程度練習してもこっちのチームじゃ勝てないよ。今のうちに何とか先輩たちに謝って許してもらう方法はないか?ってさっき正洋と話してたところなんだよね……ね、正洋!」

 何言ってんだ、コイツ?と考えていると、太一に机の下で足を蹴られた。


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