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今世 第一章 平凡に生きるまでの非凡 

グラドーさんって言うらしい。

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とりあえず風魔法を駆使してここまで運んできたはいいのだが、ここにいつまでもおいておくわけにもいかない。

(どうするべきかリュミエルさんにでも聞いてこようかなぁ。でも起きたらまずいし。この部屋をいろいろ調べられるのはちょっとよろしくない。)

藁のベッドでグオォと鼾をたてる男性をみる。よく考えると、この世界で人の姿をした男性を見るのは始めてだった。ウォーバード(♂)なら見たことあったが……。

……年は14くらいだろうか、無精髭が何となく似合わない。イケメンとは……言えない気がするが、あのビビり様から想像できるような顔つきだ。幼さが残っている。小さなリーゼントが本当に似合わない。何でこんな髪型してんの?この人。……と思える。

クリスタがまじまじと男性を見ていると、男性が目を覚ましそうになった。あわあわと急いで距離をとる。しかし、囲炉裏に足をとられ、しりもちをついてしまった。

「っいててて……」

ドテンと大きな音がなり、男性が目を覚ました。

「……んん、あ、あれ?ここは……。」

男性が周囲を確認し、クリスタを見た。なにか言わなければ、そう思ったクリスタは、

「あ、あなたは何をしたんだ!?」

動揺しすぎて咄嗟にそう出てしまった。男性はポカンとしていた。……やってしまった。そう思い、もう一言。

「ぼ、ボクはクリスタ!あなたは……えっと……な、何者だい!」

動揺を隠しきれていない口調でクリスタが言うと、ポカンとしながらも、男性は笑顔で返した。

「えっと、私はグラドーと申します。先ほどは助けていただき、ありがとうございました。」

グラドーがペコリと頭を下げると、クリスタをまじまじと見てから聞いてきた。

「あの、ここはあなたの家でしょうか?」

返しの質問をされ、逆に冷静になったクリスタは、一呼吸置くと、

「いえ、ここは植物栽培用の掘っ建て小屋です。ちょっと寝泊まりができる程度の……です。」

やはりちょっと動揺しているようで、何やら口調が定まらない。……何とかバレないように繕わなくては。クリスタの頭はほとんどその事だけを考えていた。
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