未来透視

桜田紅葉

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未来透視II

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私の姉は生前あることを言っていた。
「私ね、最近いい夢がその通りになるの、でも最近はそんなことはないけど、でもすごくない?」
私は正直何を言ってるのかはよく分からなかったが、後々思い返せばそれは正夢という現象だということを悟った。なぜか、そう。私は姉が轢かれてしまうことを夢で見ていたからだ。
あまりにも衝撃的だったから、私は今も鮮明に覚えている。正確すぎてどっちが夢でどっちが現実なのか曖昧になってしまっているが、確かに私は見た。
姉がプラスの意味の正夢ならば、私はマイナスの正夢を見ることになる。
ある日、私の家にある一人の男がやってきた。
「あら、わざわざありがとうございます。毎月毎月。」
「いえ。僕が彼女を見ないと気が済まない所とありますので。」
そい良いながら恐る恐ると玄関を跨ぐと、和室にあった姉の写真を眺めながら、両手を合わせていた。
「あ、こんにちは。」
「ど、どうも。」
私と彼はそんなに仲が良いわけではなかったが、別に軽蔑だとか嫌いだとかは一切ない。それ以上でもなくそれ以下でもないということだ。
その夜、また姉の言っていたことを思い出した。
正夢。なんで正夢は存在するのか、なぜ最期を予告するのか。私は不思議に思っていると、いつの間にか眠りについていた。
気がつくと私はいつの間にか学校へと行く道を辿っていた。
するとある家の犬がぐったりとしていた。
どこか見覚えはあったが、特に何の違和感もなくそこが夢であるということを悟ることも出来ずに現実の通学だと思い込んでいた。
はっと気づくと次は下校していた。そうすると、朝まであった犬小屋がなくなっていた。
朝までいた犬はどこへ行ってしまったのだろうか。
そうしていると、アラームが鳴っていた。携帯に三通ほどのメールの通知が来ていて、それを見ながら脱水所へと向かった。昨夜見た夢なんか私は覚えているはずもなく自転車を動かしていた。しかし、そうすると昨夜見た夢を思い出した。夢の中ではそこにぐったりとした犬がいるはずである。
そう思いながら私は自転車で学校へと向かっていると、その場面は現れた。
ある家の犬がぐったりとしていた。
今にでも死んでしまいそうな瞳は、その光を失ってしまうのだろうかと。
しかし私はここで留まることは出来ず、私はそのまま学校へと向かった。
そして数時間後、帰宅の時にまたその家を見てみると、犬小屋の中には花束が置いてあった。きっと旅立ってしまったのだろう。
家の中からは幼い女の子が泣きじゃくる声が聞こえてきた。私は聞いてはいけないものを聞いてしまったかのように、慌ててその場から逃げることになった。
そう慌てながら家に戻ると、姉が言っていた事を思いでした。
正夢。けど、姉とは一つだけ違うことがある。姉は生前までいいことが正夢として見えていたけど、私は不幸な夢を見てしまうんだ。
きっと誰かの悲しい運命を先取りしてしまうんだ。
私はふと確信した。
もしかしたら、私の命も短いのではないか。姉みたいに、自分の最期を見てしまうのではないか。
私は絶望した。明日が見えなくなった。
そしてその日は眠ることが出来なかった。恐怖と絶望に眠るという選択肢はなかった。
そうしてしまうと、やはり授業中に寝てしまう。
そして私はまた見てしまった。
「おい!早く保健室!!」
「足が!!俺の足が!」
はっ!と起きたが、私に よその行動に誰も見向きもしなかった。
次の時間は体育。
バスケットボールだ。さっき見た夢は、私の前の前の席の男子が足を怪我する夢だ。かなり酷そうだった。
すると、ざわざわとしだした。
やはりその事件は起きた。
バスケットボールでスピードに乗ったその人に、ディフェンスしようと足をかけたらしい。
本当に私は不幸な未来が見えてしまうのだ。
姉は幸せな未来が見えたのに、妹の私は不幸を見る。
とばっちりもふざけるな。そうあの世にいる姉の胸ぐらを掴みたくなるくらい悲しい思いを抱いた。最悪、私も姉のように死んでしまうのではないか。
不幸な姉妹になってしまうのか。私は咄嗟にこの体育館から逃げたくなったが、横でその足を間近で見てしまった友達が、半泣き状態で私に抱きついていた。
何の感情も抱いていなかった私は、既に心が死んでいるのではないかと失望した。
その日の夜、私は寝る前に姉に話しかけた。
「ねぇ。なんでお姉ちゃんは幸せな未来を見れたのに、私は不幸な未来を見ないといけないの?私、嫌だよ。」
私は姉の笑顔の写真の前で泣きそうになっていた。その後、私は動かしたくない体を無理矢理自分の部屋へと帰って行った。
そして深夜、私はまた学校にいた。いつも通りの授業を受けている最中、私はふと外の窓から外を覗いた。すると、スっと一瞬音がした。窓の光が影て覆われた。一瞬不気味な笑顔が見えた。
やっと死ねる。一瞬そんなことを囁きながら落ちていった。しかし、そこで私の夢は終わっていた。
朝目が覚めた。ついにこんなことが起きてしまうのかと思った。
私はその夢を打ち切るために学校を休むことにした。
しかし母にはすぐバレた。もちろん姉も私も正夢を見ることは母は知らない。そんなことを言ったら私が姉の死を受け入れずにそんなことをほざいてると泣きながら怒るだろう。私は泣く泣く学校に向かった。
授業が始まった。そして始まりのチャイムが鳴り、しばらくすれば終わりのチャイムが鳴る。そんなことを繰り返していた。そしてその時が来た。確かこの時間だった。夢で見た先生がやって来た。そこを見るとまだ穏やかなそよ風がすっと入っていた。私はある行動に出た。
「先生。ちょっとお腹が痛いので保健室行ってきます。」
「なんだ腹痛か?まぁ無理はするなよ。」
その先生はあっさりと私を保健室に送った。しかし、私の行先は保健室ではなかった。私は階段をのぼり、立ち入り禁止の表札を無視し、屋上のドアを開いた。
そこには一人の少女が遠くを見ながら突っ立っていた。
「なにやってるんですか?」
私がそう声をかけると、その少女はビクッと反応した。
「なんでここにいるんですか?授業中ですよ?」
「そんなこと言ったらあなたも同じですが?」
「私はいいんです。もうここで終わるので。」
「何馬鹿なこと言ってるんですか?」
「馬鹿なこと?私を何も知らないのに正義感ぶつけないで!」
このままだと彼女は死ぬ。じゃぁ早く落ちろよと言っても、結果的に彼女は落ちて死ぬくらいの覚悟があることは知っていた。
「あなたが死んで、何が変わるんですか?」
「は?」
「信じられないのはわかってますが、私はあなたがここから飛び降りる夢を見ました。」
「夢?」
「だから私はここにいるんです。何が変わるとか、あなたの何かを誰かに証明したいのはわかりますが、それをしたら悲しむ人はそう少なくはないんじゃないんですか?」
矛盾に矛盾を重ねながらも、何とか説得に成功した。
最後は彼女が他の方法でやつの心を壊すと言って去っていった。学年も名前も知らないが。
教室に帰ると、先生は随分長かったなと言った。
一つの想定として保健室に行ってないことが知られたのかと思ったが、その件については触れられることは無かった。
私はその日から夢を見ることが無くなった。一旦は嬉しいと思ったが、それは一瞬にして恐怖へとなった。私はしばらく夢を見なかった姉を思い出した。このまま姉とおなじ道を辿るのならば、私が死ぬ夢を見て、私は死ぬ。いつそれが来てしまうのかと思うだけで、震えが止まらなかった。
しかし人の記憶というのは愚かなもので、私は他のことに目をとられ、夢のことに関して少し忘れていた。姉の写真を見る度思い出すのだか、今は目の前にある試練を乗り越えることで精一杯だった。
そして屋上の一件が起きてから一ヶ月後の夜、私は久しぶりに夢を見た。痛い。苦しい。笑ってる。やつが。あいつだ。報復だ。復讐だ。私の意思を止めたあなたが代わりになって。
そんな言葉を殴り聞かされた後に私は目を覚ました。
今日だ。今日が私の命日だ。私は震えが止まらない。
しかし、私は彼女と戦わなくてはならない。そんなことを思いながら、姉の前に座った。お姉ちゃん。私を守って。いつも都合のいい時ばかりでごめん。そう言いながら、私は姉のつけていたネックレスを付けた。姉がいる気がした。校則ではネックレスは禁止だが、私はそんなことは考えていなかった。
そして私は教室へと向かい授業を受けた。まだあの女はいない。休み時間や昼休みにも現れない。私は常に警戒をしていた。
「え、大丈夫?なんか今日変だよ?」
「え?あ、気にしないで。」
「ほんとに?」
「うん。」
「わかった。でね、」
その時だった。明らかにおかしい足音がした。全速力で走っているような音がした。私は咄嗟に後ろを向くと、あの女が私に向かって言った。
「ねぇ、ちょっと来て。」
「この人は?」
「え、いや、まぁ。」
私は言葉を濁らせながら、屋上へと連れてかれた。屋上には何も無い殺風景だと思ってたのに、その予想は外れた。
そこにはぐったりとした男女二人がいた。
「大丈夫。死んでない。」
「え?」
「こいつらはね、私の人生を壊したの。だからこんな目に遭って当然。私がどれだけ静かに過ごそうと思っても、こいつらは私を罵倒して、侮辱して笑いものにした。だから死んでそれを後悔させてやろうと思ったのに、あなたが言った言葉。覚えてるわ。あなたが死んで何が変わるんですか。変わるわ、この二人に私の姿が一生この頭に刻まれる。」
そういいながら彼女は向かってきた。
「次はお前だ。」
そういいながらどんどんと近づいてくる。殺される。終わる。逃げようと思ったが、屋上のドアには少し届かなかった。逃げ場はない。
そうして私が刺される。そう思った時、私は姉のネックレスをギュッと握りしめた。願った。そうした途端、振りかかろうとしていたナイフが見えた。やっぱり変えることが出来ないのか。そう思った。
しかし、さっきまでぐったりしていた男が後ろから彼女の両腕を抑えた。
「やめろ!」
「離せ!」
私はその隙にドアを開けて、逃げうとした。しかし、うっ!と声が聞こえ振り向くと再び男は腹部を刺されていた。そうしてペースを取り戻しした彼女が追いかけて来た。私はさっき開けたドアを突破し走った途端に躓いた。そして彼女が私にナイフを刺そうとした途端、真っ直ぐ向かってきたナイフを一回避けると、姉のネックレスにナイフが引っかかった。
そしてたまたま私の足が彼女の足に引っかかり、彼女はドタドタと階段から落ちてしまった。
あれから一週間くらいの後の事だった。私に入ってきた情報は実に少ないものだった。屋上で倒れていた二人は女性の方はなとか無事だったらしいが、男の人の方は亡くなってしまったらしい。二回目に刺された傷が致命的だという。そしてあの女について。彼女はこの学校の三年生で大人しい性格だったらしいが、あることをきっかけに一部の生徒から嫌がらせをされていたという。倒れていた二人も、その一部の中の一人らしい。
そして彼女階段から落ちた後、今でと目を覚まさないらしい。
しかし私は無傷ではない。わたしがつけていた姉のネックレスはあの時ちぎれてしまった。姉は私のことを守ってくれたのだろうか、もしかの時引っかかっていなかったら。私は刺されていたのか。
私は家に戻ると、姉の墓へと向かった。そこには花を添えると、お姉ちゃんありがとうと一言だけ告げ、その場を後にした。
それからしばらく私の見る夢は正夢になることは無かった。どんなに起こりうる幸福も不幸も、私はその時にならないとわからなくなった。
未来を見るとこが出来たら、いいことがある未来を見たいか、不幸なことが起きる未来を見たいか、今知ったら結局どっちも不幸になってしまうのではないか、分かっていたから出来なかった。運命を知ってしまったら、変えることはできるのか、私はそう考えた。
そして半年後。
「もう朝か。」
繋げ直した姉のネックレスは、いつもよりまして光っているような気がした。
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