ホスト異世界へ行く

REON

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第一章 ホストと勇者達

ホスト異世界に行く

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「よくぞ参られた。伝説の勇者よ」

と宣ったのはご立派な髭を蓄えたおっさん。
バーンと効果音がつきそうな勢いでドヤってるけど、いやいや、誰お前。

「勇者?」
「ここは一体」

ほらな?
偉そうにドヤってたけど、周りの奴らも誰一人として状況が把握できてない。天然ちゃんかよ。
仕方なしに自分で現状を確認するために辺りを見渡す。

俺の周囲に居るのは男二人と女二人。

男の一人は竹刀とスクールバッグを持った学ラン姿の子。
恐らく高校生くらいだろう。
もう一人は黒いパーカーを着たメガネ君。
紅い絨毯にペタリと座って唖然としてる。

女の方の一人はリクルートスーツ姿のメガネちゃん。
お固い感じが嫌いじゃない。
もう一人はセーラー服のJK。
突然の出来事にプルプル震える小鹿になっている。

天井の高いだだっ広い部屋に赤い絨毯。
その絨毯の左右に並ぶのは鎧を身につけた人物たち。
赤い絨毯の行き着く先の玉座に座ってるのは、王冠を頭に乗せたさっきのおっさん、その隣には派手なドレス姿のマダム、マダムの隣には淡いピンクのドレスを着た娘っ子。

少なくとも俺が居た日本では有り得ない光景。
そしてその有り得ない光景に居る自分の姿は赤ん坊でも子供でも魂でもなく、寸分変わらずいつも通りの俺。

把握した。

「異世界召喚か」
『異世界召喚!?』
「その通りです!」

俺の呟きに四人が口を揃えて驚くと、さっきのおっさんは満足気に微笑む。

「どうぞ勇者になってこの世界をお救いください」

はい、来ましたチート世界。
俺TUEEEEで無双出来る素晴らしき世界。
そうとわかれば話は早い。

「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」
『ェェエエ工!?』

当たり前だろ。
俺TUEEEE出来るのは魅力的だけど、クソ強いモンスターとか極悪非道な魔王とか討伐するんだろ?
いのち大事に!
この世界を救って俺になんのメリットがあるんだ。

「お待ちください。せめてお話を」
「無理。これから同伴だから」
「……同伴?」
「客を連れて店に出勤すること。まあその前に日帰り温泉に付き合わなきゃいけないんだけど。待ち合わせ場所で客を待ってる最中だったんだ。女性を待たせたら悪いだろ?帰らせろ」

長くなるだろう異世界のすったもんだを聞く暇はない。
今日は極太客と日帰り温泉へ行ってそのまま同伴する約束だったのに、遅刻して担当おりられたらどうしてくれる。

「……ホストですか?」
「正解。真(シン)と申します。刺激が欲しくなった時は是非」

言い当てたリクルートスーツのメガネちゃんへ常に携帯している店の名刺を渡す。

「この世界の文献によると魔王復活の年に勇者一行が」
「やりたくない( ˙-˙ )スンッ」
「秀でた才能をお持ちの異世界の住に」
「やりたくない( ˙-˙ )スンッ」

おっさん、意地でも話を聞かせようとしてやがる。
この強引さは俺が働く店のオーナーに通ずるものがある。

「しかし文献では黒曜石のような美しい黒髪と瞳を持つ伝説の勇者一行がこの世界の救世主であると」
「ん?なにを持つって?」
「ですから、黒曜石のような黒髪と瞳」
「俺は白銀プラチナ ブロンドの髪とシルバーの目だけど?」
「……ですね」

ザワザワし始めた玉座の間。
勇者一行は黒髪黒目。
今のこの姿はヘアカラーとカラコンの色だけど、おっさんが言うそれが正しいならそもそもの俺の特徴とも当てはまらない。つまり完全に誤召喚。

「さあ帰らせろ。今すぐ、即」
「そ、その前にステータスをお聞かせください」
「ステータス?」
「ステータスオープンと口にすればパネルが出ます。この世界では罪人以外の者のステータスを他人が無断で見ることを禁じておりますので、ご自身で確認のうえご協力を」
「んじゃ、ステータスオープン」

黒いローブを着た男が説明したそれを聞いて、一緒に異世界に飛ばされた四人もステータスを開く。

「へぇ。便利だな」

空中に浮かぶPC画面。
と言えば良いのか、ゲームや異世界系の漫画でよく見るアレ。

名前 夕凪 真ユウナギ シン (人族)
国籍 地球 (日本)
年齢 21

本名出ちゃってるよ!
まあ名前くらい良いけど。
多分異世界から地球に悪戯なんか出来ないだろうし。

「特殊恩恵の項目に書かれている事をお聞かせください」
「恩恵と特殊恩恵は別のものなんですか?」
「はい。詳細は後ほどご説明いたしますが、特殊恩恵というのは勇者さま方のように極一部の者にのみ与えられた特別な能力とお考えいただければわかり易いかと」
「分かりました。僕は騎士と勇者一行と書かれてます」

最初から一人冷静な高校生が黒いローブの男に答えたを聞いて玉座の間はさっきまでとは違うザワツキがおこる。

「私は黒魔術師と勇者一行です」
「わ、私は白魔術師と勇者一行です」

リクルートスーツのメガネちゃんは魔女っ子、JKは回復役の聖女さまらしい。

「引きこもりニート君は?」
「だ、誰が引きこもりニートだ」
「ぽいから。異世界系の鉄板だと君が勇者じゃないか?」
「えっと俺のは……ん?勇者としか書いてない」

黒パーカーの引きこもりニート君がそう言うと玉座の間は歓喜に溢れる。

「貴殿が勇者!どうかこの世界をお救いください!」
「え、え!俺が!?二年間家に引きこもってたのに突然勇者って言われても!」

よし!勇者免れた!
Good Job!引きこもり二年ニート君!
やっぱ異世界では引きこもりニートTUEEEE!

「プラチナブロンドの方の特殊恩恵をお聞きしても?」
「俺?遊び人」
「遊び、はい?」
「遊び人って書いてある」

勇者が決定して左右を陣取る騎士やおっさんが晴れやかな顔をしてる中、淡いピンクのドレス姿の娘っ子に聞かれて正直に答える。

「お母さま、遊び人とは」
「聞いたことのない特殊恩恵ですね」
「勇者の文字がないということは特殊能力ユニークスキルか」

ユニークスキルって聞いたことがあるな。
異世界系のアニメで。
名前の通り面白い(要は変な)スキル。

「ホストで遊び人……そのままですね」
「心外だなぁ。よし、五年後君が大人になってから会おうか。その頃には俺みたいな男が必要になってるかもよ?」

JKにダニでも見るような目で言われて笑う。
俺も自分のステータスを見て「まんまかよ!」って吹きそうになったけど。

「では……プラチナブロンドの方は勇者さまのご一行では」
「ないな。勇者に関係する者は必ず勇者の二文字が入る」
「そんな……」

おっさんに聞いた娘っ子は勇者じゃない奴が召喚されて目眩がしたのか、ご立派な椅子で項垂れる。
黒ローブの男たちが隣に行って脈を測ったりと忙しそうだ。

「ってことで。俺はただの手違いで召喚されただけみたいだから元の世界に帰してくれ」
「そ、それが」
「同伴に遅れるって言ってんだろ。終わったなら早く」
「う、うむ。手違いだったのであればそうしてあげたいのは山々なのだが」

いやーな予感がする。
バイクに乗ってて顔面にカナブンがぶち当たった時のようなおっさんの顔も、高級そうな扇子で口元を隠すマダムの仕草も、何かを訴えるような娘っ子の目も。

「……まさか帰れない?」

そう聞くと、おっさんは大きく一度頷いた。

「よし分かった。俺たちを召喚したのは誰だ」
「そちらに居る王宮魔導師たちが勇者召喚の儀を」
「全員並べ。一発ずつ殴らせろ」

仮にも〝王宮〟と神々しい名のつく魔導師がこの為体ていたらく
許すまじ。

「遊び人ホスト!駄目だから!」
「気持ちは分かるけど落ち着け遊び人ホスト!」
「遊び人ホストでも大人なんですから堪えてください!」
「国際問題になったらどうするの!もう女の子誑かして遊んでる場合じゃなくなるのよ!?」

一緒に異世界召喚された四人に必死で止められる。
お前ら俺の〝遊び人〟って特殊恩恵を弄りすぎだろ。
大好きか。

「まあいいや( ˙-˙ )スンッ」

余りにも必死に止められすっと力を抜くと、四人も俺が落ち着いたのを確認してゆっくりと手を離す。

「おっさん。お手あてちょうだい」
「お手あてとは?」
「俺この世界でおっさんのヒモになる」
『ェェエエ工!?』

玉座の間に響く勇者たちの驚きの声。
え?勇者?
俺はヒモになるよ( ˙-˙ )スンッ

「まあヒモって言うか侘び料?突然異世界に召喚された奴が金も住む家も働き口もナシに生きて行けると思う?どうせ向こうの金は役立たずなんだろ?手違いだろうと召喚したのはそっちなのに寒空の下に放り出す気か?城下町で泣きながらおっさんに弄ばれたって触れ回るよ?」

さあ寄越せ。
はよ寄越せ。
異世界生活でハードモードは御免だ。

「相応の金貨はもちろん渡そう。それで、ヒモとは?」
「ん?買う?買うなら二度と忘れられないくらいの甘い夢を見させてやるよ」

左から引きこもり二年ニートに後頭部を叩かれ、右からリクルートスーツメガネちゃんに肩を殴られる。
ただの冗談なのに。

「それからもう一つ」
「な、なんだろうか」

おっさん大丈夫か?
若造の冗談に動揺しすぎだぞ。

「この四人の生活は一生面倒見てくれるんだよな?」
「無論。勇者さまはこの世界の救世主なのだから」
「そっか。んじゃいいや。あんたらの世界も色々と大変なんだろうけど、あんたらのその都合がコイツらの今までの平和な生活を奪ったことはもちろん、家族や恋人や友人のような大切な人までも失う結果になったことを生涯忘れるな」

俺から言わせれば異世界召喚なんてクソだ。
亡くなったあとの魂を異世界に転生させる『異世界転生系』の方がよほど優しい。

「ってことで早くお手あてちょうだい」

おっさんに可愛く「ちょうだい♡」と手を出すと隣のマダムが笑いを誤魔化しながら数回咳払いをした。
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