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第二章 異世界生活
龍種
しおりを挟む不吉な漆黒の肢体をしたドラゴン。
中二病大歓喜なその姿も実際に対峙すれば巨大な死神。
「高みの見物か。クソが」
こちらは翼が起こす風で立っているのも大変なのに、ゆっくりと高度を落として様子を伺っているとはムカつくヤツだ。
「せめてシンさまだけでも」
「国の軍事力ならあのヤバそうなヤツを撃退できんのか?」
「それは……」
「無理ならいま逃げ帰っても死ぬ場所が変わるだけだ。どうせ死ぬならやるだけやってやる」
勝てる見込みの無い勝負だろうと諦めたら終わり。
日本でも色んな奴と戦って勝利を勝ち取ってきたんだ。
……ドラゴンはさすがに初体験だけど!
「来ます!」
翼で風を送り一度上昇して急降下してきたドラゴン。
……あ。これ、死んだ。
【特殊恩恵〝Dead or Alive〟の効果により守護が発動。特殊恩恵〝カミサマ(笑)〟の効果により加護が発動。特殊恩恵〝不屈の情緒不安定〟の効果により全パラメータのリミット制御を解除、全パラメータを限界突破。ただいまより特殊恩恵〝病みに愛されし遊び人〟の効果、魔神モードに移行します】
障壁を砕いて視界の全てを埋め尽くした黒い巨体。
それを受け止めたのは……俺。
正確には魔刀雅という名の刀。
足元の地面が割れる程のパワーがあるドラゴンの飛翔攻撃を細い刀一本で受け止めた。
「……勝手にべらべらべらべら喋りやがって。早口すぎて理解が追いつかないだろうが!」
中の人への怒り任せに巨体を押し返して弾き、振り下ろした刀の一振りでドラゴンは鳴き声をあげ赤黒い液体を撒き散らす。
「シンさまこれは」
「さあな。分かってるのは俺の特殊恩恵の効果ってことだけ」
エドとベルが驚くのも仕方ない。
加護だか守護だか知らないけど、血の雨が降っているのに俺とエドとベルを包む透明な何かに守られていて濡れもしない。
「考えるのは後。今は目の前のコイツをぶっ殺す」
ついさっき死んだと思ったのに今は勝てる確信がある。
自分の体に何が起きているのか全く分からないけど焦りも恐怖もなくなっていた。
「ごめんな、痛い思いをさせて。でもまだ俺は生きていたいから………死んでくれ」
命を奪う罪悪感がない訳じゃない。
でもこの異世界での戦いは生か死か。
俺はまだ生きていたいから死んでくれ。
あっけない幕切れ。
よく切れる包丁でトマトを切った時のようにスっと切れた漆黒のドラゴンの肢体は斜めに真っ二つになり、ズシンと地面を揺らして倒れた。
「あ、消えた」
「シンさま!」
「団長?」
刀や謎のバリアのような物が消えたと同時に背後から聞こえた声で振り返ると、団長と数人の見知らぬ騎士が馬に乗ってそこに居た。
「……祖龍を三人で?」
「私たちは何も。シンさまのお力です」
「不甲斐なくもシンさまに救われ生き残りました」
ドラゴンの名前は祖龍っていうらしい。
真っ二つになった祖龍を見る騎士たちは不穏な表情。
乗っている馬も怯えているのか前掻きしていて落ち着かない。
「王都へお戻りください。陛下にお目通りを」
「状況説明ってヤツか」
「はい。祖龍の出現を受け王都の門は閉ざしてあります。お疲れのことと存じますが、なにとぞ」
まあそうか。
あの巨体が王都に近付けば気付くだろう。
どう説明したら良いのか分からないけど。
「って、うあぁぁぁぁ!戻ってるぅぅぅう!刀もスンって消えた上に戻ってるぅぅぅう!」
報告に行く前にステータスの確認をしておこうと思ったら、開いた画面に出てる数字はオールセブン。
中の人がリミット制御を解除とか限界突破とか言ってたのに今までと変わらずオールセブン。
あれが夢じゃなかった証拠はこれ。
《特殊恩恵》
病みに愛されし遊び人
不屈の情緒不安定
カミサマ(笑)
Dead or Alive new!
魔刀陣 new!
でもパラメータはオールセブン。
……夢ならばどれほどよかったでしょう。
「クソ暇神がぁぁぁあ!わざわざ戻すなぁぁ!」
「シンさま落ち着いてください!」
「どうなさったのですか!?」
「ぬか喜びか!やっと赤ちゃん以上になれたって喜ばせといて地獄に落とすのか!弄びやがってクソがぁぁぁあ!」
エドと団長から必死に止められても怒りは冷めやらない。
今回は特に上げて下げてで暇を持て余した神の遊びがすぎる。
「シンさま尻尾です!」
「私のも!」
トゥンク♡
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ
「…………ふぅ。今日のところは勘弁してやろう」
しゃがんでエドとベルの尻尾を堪能させて貰い、今回は二人に免じて暇を持て余した神々の遊びを見逃すことにした。
「団長たちはここに残るのか?」
「はい。魔導師と状況確認を行いますので」
「門は閉じられてるって言ってたけどどうしたらいい?」
「リアムが門前で警備にあたっております」
「分かった」
先に採取クエストを終わらせて良かった。
守護だか加護だかのお蔭で袋も無事だ。
「シンさま。あのお力は一体」
「自分でも分からないんだ。特殊恩恵の効果が色々と発動した状態だったってことくらいしか」
団長たちはその場に残して歩いて戻りながらエドに答える。
「私たちをお守りくださったあの膜のような物も?」
「多分。守護だ加護だって話してたから」
「話す?どなたがですか?」
「ステータスが更新すると喋る中の人」
「え?シンさまのステータス画面には口語機能が?」
「え?普通はないのか?」
「はい」
お互いの話に「え?」。
初めて更新した時から喋ってたからそれが普通なんだと思ってたのに。
「あー……なんか違うのかもな。異世界人のは」
「そのようですね」
異世界なのに言葉が理解できるし相手にも伝わる。
料理人スキルの鑑定画面も日本の味に例えてたりと配慮されてるくらいだから、ステータス画面も召喚される人が異世界の生活に対応し易いよう特別製になってる可能性はある。
「膜のようなあれも私たちの知る守護効果ではありませんでした。加護の効果は能力値の上昇ですので、この世界に存在しない特別な効果なのでなければ加護とも違うと思うのですが」
二人が膜と言うのも分かる。
ベルやエドがかけた障壁はその中(内側)に居る人を守るけど、俺の効果では一人一人が別々の何かに覆われていた。
目には見えない透明な薄い皮で覆われてる感じ。
薄くても守られてる感は凄かったし、急下降してきた祖龍の風圧も感じなければ目の前での咆哮でも耳が痛む事はなかった。
「私の知る恩恵効果には少なくとも存在しませんので、恐らくは誰も知らない特殊恩恵を持つシンさまだけに与えられた特別なお力なのだと思います」
名前だけじゃなくて効果も特殊とは。
暇を持て余した神々は一体、俺を使ってどれだけ遊びを楽しんでいるのか。
「特殊恩恵についてはむやみやたらにお話しにならない方が良いかと。祖龍を二太刀で倒すお力ですので研究材料にされかねませんし、軍事利用を目論む輩も居ないとは限りませんので」
たしかに。
とはいっても自分でもどうやって能力が発動したのか分からないし、中の人が一方的にぺらぺら喋ってただけで俺自身は異世界用語さえ知らないんだけど。
「シンさま!ご無事でしたか!」
「うん。何とか」
団長の話していた通り副団長が門前に居て俺たちの姿を見つけると走って来る。
「もう聞いた?祖龍の件での報告」
「はい。先に一人戻って来ましたので」
「そっか」
今更「俺は倒してないよ」は通らなさそう。
実は赤ちゃん以下の能力値なのに下手に期待されるようになったら困るんだけど。
「シンさまが討伐したことは極秘で扱われるかと」
「国民にはどうするんだ?」
「恐らく去ったとでも。魔導師が到着次第術式をはっての作業になるので片付くまでは何か理由を作って通行させません」
国民に知らされないことは唯一の救いか。
今でさえ勇者と間違われて否定する機会が多いのに、これ以上は勘弁して欲しい。
「失礼します。準備が整いました。謁見の間へ」
「エドとベルも?」
「はい。三人でお願いします」
「分かった。エド、ベル、行こう」
「「はい」」
伝令に来て敬礼をしたのは第一騎士団の一人。
この国には第一騎士団から第三騎士団まであるらしいけど、宿舎の一室を借りてる第一騎士団の人としか話したことがないから知っている顔で少し安心した。
高級感溢れる王城。
祖龍が現れてそれぞれが処理に追われているのか、見かける人の様子はどこか慌ただしい。
それを横目に辿り着いたのは本日二度目のここ。
まさか一日に二度もおっさんと話すことになるとは。
「失礼します!シン殿、エドワード、ベルティーユの三名をお連れしました!」
若い騎士が開けたドアの中。
壁際に居る護衛の他にも何人か椅子に着席していて、事態が事態だけに重々しい空気感がある。
「まずはみな無事で何より。祖龍の討伐大儀であった」
おっさんにどういたしましての意味で礼をする。
国の特殊部隊に属するのエドとベルがした跪いての礼の仕方が正しいんだろうけど、ついこの前まで他所の世界に居た俺がこの世界の正しい礼儀作法を知るはずもない。
「異世界の者よ。国王陛下にその態度は無礼ぞ」
「俺も床に片膝を着いて頭を下げろって?」
「よい。シン殿はこれでよいのだ」
「しかしながら国王陛下」
「俺の居た日本では国で一番偉い人にも片膝を着いての礼はしない。上体を倒してするお辞儀が日本の正しい礼儀作法だ。俺の知る最敬礼はこれだから無礼なことをした覚えはない」
国が違えば礼儀作法も違う。
この世界の人が学んだからこそ知っている作法を何の教えもなく突然やれと言われても出来るはずがない。
「この世界の礼をやれって言うなら練習して出直す」
「よい。必要ない。今は祖龍について訊きたいだけなのだ」
「祖龍についてって言われても突然現れたとしか」
変な話だけど席に着いてる他の偉い人(多分)たちより国王のおっさんが一番柔軟性がある。
おっさんに対してギルドに登録した後キクールの採取クエストに出たことと、ノマスラに遭遇したかったのに出て来ず弱い魔物の気配すらないことにエドとベルが気付いてすぐ祖龍が遥か上空を飛んでいることに気付いたと説明した。
「ではあの祖龍はたまたま通ったと?」
「さあ。ただ散歩してただけかも知れないし目的があってどこかに向かってたのかも知れないけど、それはあの祖龍に訊かないと分からない。もう真っ二つにしちゃったけど」
たまたまかどうかは俺に訊かれても。
寒気がして空を見上げたらもうそこに居たから。
「たまたまかどうかってことがそんなに重要なのか?」
「うむ。祖龍は魔王の配下にある。仮にこの国を目的に来たのであれば魔王や魔族が動き出した可能性があるのでな」
おっさんの話で謁見の間はザワつく。
そういう話ならたしかに『たまたまかどうか』は重要だ。
「エドとベルはどう思う?飛んで来た方向とか見たか?」
「最初に気付いたのはシンさまでしたので」
「探知にかからず肉眼で捉えた時にはもう傍に居りました」
「うーん。じゃあ二人もよく分からないか」
俺も気付いて見上げた時には既にそこに居た。
せめて向かっていた方角が分かれば王都を目指していたのか違う場所を目指していたのかくらいは分かったのに。
「遥か上空に居たと申していたな。それは祖龍が貴殿たちの存在に気付いて止まったということか?」
「あくまで最初に見た時に思ったことだけど、俺たちの上を旋回してるように見えた。その後に風圧を感じる距離まで降りてきて俺たちを見てたから、多分だけど警戒してたんだと思う」
祖龍が攻撃をするまでに間があった。
その間にエドとベルが障壁をはって祖龍の攻撃を迎え撃つ形になった。
「祖龍が警戒をしたと?有り得ない」
「なんで?」
「祖龍にとって人族は赤子も同然。あの巨体ともなればブレス一吹きでこの王都には甚大な被害が出ただろう」
さっきの礼儀作法のオヤジ。
一々突っかかるような物言いなのがムカつく。
っていうかお前は誰だよ。
「シン殿が異世界から来た者と気付いたとすれば?」
おっさんが言うと一斉に声が静まる。
騒いだり沈黙したりお偉いさんたち(多分)も忙しい。
「私もその可能性が高いと思うよ。登録手続きをした時に見せて貰ったけど、異世界人特有なのか彼の魔力は凄まじいものだった。すぐ済むはずの光がなかなか収まらなかったくらいだからね。賢い祖龍であれば感じ取っても不思議じゃない」
おっさんの近くに座っていたローブ姿の人物。
どっかで聞いた声……
「……エミーか!」
「正解。数時間ぶりだね、異世界人」
聞き覚えがあったのも当然。
フードを外して笑ったのは数時間前に王宮ギルドで会ったばかりのエミーだった。
「数時間前に散歩に出掛けたかと思えばまさかその後すぐ祖龍が現れるとはね。各地への伝達と国の軍事レベルを最大にあげて警報を鳴らす話をしていた最中に祖龍の禍々しい気配がすっと消えた。君が討伐したって報告を受けて笑ったよ」
隣まで歩いて来たエミーはケラケラ笑う。
この場で席についてたってことはお偉いさんなんだろう。
見た目だけで言えば1ミリも偉い人には見えないけど。
「エミーリア席に戻れ。国王陛下に無礼だろう」
「うるさいなぁ。無礼無礼ってそれしか言えないのかい?これだから魔導系の奴は頭が固くて嫌いなんだよ。礼儀作法も必要だけど、今大事なのは彼に少しでも多く情報を貰うことだよ」
やるな小娘。
礼儀作法のオヤジと同等の立場なのかズバっと言うのが気持ちいい。
「誰も気付いてないのか?この子はずっと国王にしか説明してない。異界にある彼の国の礼儀作法も知らず文句を言ったり、威圧感のある喋り方をするような奴はお嫌いなんだろうね。国王がいなければ彼は何も話してくれなかったと思うよ?」
エミーの言う通り。
たしかに俺は言葉遣いも良くないし礼儀作法に関しても勉強不足だと思うけど、この国の礼儀作法と違うからって日本の最敬礼を『無礼』と言われたことにはムカついたし、思ったことを話したら突っかかるように返されたのも気に入らなかったから礼儀作法のオヤジとは話したくなかった。
「シン殿。もう一つお聞かせ願いたい」
「うん」
「どのようにして祖龍を討伐したのか聞かせて欲しい」
「ああ、やっぱそれ訊かれるよな」
祖龍が現れたのは大問題だけど、その大問題の祖龍を倒した方法が気になるのも当然だ。
「信じて貰えないかも知れないけど分からないんだ」
「分からない?貴殿が討伐したと報告を受けたが」
「倒したのは俺。でも特殊恩恵の効果が発動して運良く倒せただけで、発動する条件も分からないし魔法みたく自発的に発動させることもできない。だからこうやって倒せばいいって方法を聞きたいならごめん。そこは役に立てない」
嘘偽りなく、それが事実。
祖龍を倒せたのはたまたま。
「元々特殊恩恵とは自発的にどうにかできる物ではない」
「え?そうなのか」
「例えば私は〝盾の王〟という特殊恩恵を持っていて、常に全防御が上昇する加護効果と王都に障壁をはる〖護りの盾〗という守護効果があるが、自らの意思で発動することはできない」
えぇぇぇぇ〝盾の王〟とか何そのイケメン。
俺の特殊恩恵なんて〝遊び人〟なのに。
暇を持て余した神々がもう付ける名前のネタが切れたんじゃないかと疑うような落差だ。
「勇者方もそう。特殊恩恵〝勇者〟の効果は精霊王の加護。常に全能力が特大で上昇しているのと〖精霊王召喚〗というものを発動する。が、やはり自らの意思では発動できない」
精霊王とか……凄そう(小並感)。
全能力が特大で上昇って時点でパラメータオールセブンの俺は涙目。
「自分で発動させられないならどうやって戦うんだ?」
「勇者にしか装備できない武器や防具、スキルや魔法も勇者にしか覚えられない能力がある。戦うのはそれらを用いてで、私や勇者の特殊恩恵は常に能力値を上げる効果と緊急時に自動で発動する効果の二種類があると言えばわかり易いだろうか」
なるほど。
戦う方法は物理・魔法・魔術・スキルと色々あるけど、その力を底上げするのが特殊恩恵の効果の一つということか。
俺の特殊恩恵には常に能力値を上げる効果はなさそうだけど。
上がっててオールセブンなら洒落にならない。
「教えてくれてありがとう。自分で発動できないことを理解して貰った上で話すと、祖龍を真っ二つに斬った武器は俺の特殊恩恵の〝魔刀陣〟ってやつから召喚された刀。特殊恩恵の効果でどうやって斬ったんだって訊かれそうだから先に話しとく」
これだけは隠しておけない。
特殊恩恵が発動して倒せたと言っても、どうやって真っ二つに斬れたと疑問に思うだろうから。
「国王、人払いを」
「うむ。今ここで耳にしたことは全て口外を禁ずる」
『はっ』
部屋に残ったのはおっさんとエミーとエドとベルと俺。
圧迫感のある雰囲気がなくなって少しホッとした。
「いま一度確認したい。貴殿が祖龍の討伐に用いたのは刀という武器で、その武器は特殊恩恵の〝魔刀陣〟というものから召喚されたということで間違いないか?」
「うん。合ってる」
おっさんの今の言い方だと刀を知らないんだろう。
召喚される勇者が黒髪黒目の日本人も多いからか日本文化を微妙に感じられる世界なのに刀を知らなかったのは少し意外。
「一体君は何者なんだろうね」
「ん?」
「勇者じゃないのに規格外すぎるよ」
そう言ってエミーは苦笑する。
「この世界に武器を召喚できる者はいない」
「へー。そうなのか」
「良いかい?ちょっとこれ見て?」
エミーが空中に描いた魔法陣、いや、術式。
その中心にズボっと手を突っ込んで剣を取り出した。
「出せるんじゃん」
「出せるよ?でもこれは召喚したんじゃない。時空魔法を使った異空間で、自分で収納していた物をただ取り出しただけ」
異世界系名物アイテムボックス来たぁぁ!
俺もその能力は欲しい!
「君はこれじゃなくて武器を召喚したんだよね?」
「うん。空に今の二倍くらいのサイズの魔法陣、いや、術式?が勝手に現れて中心からニューって刀が出てきた」
説明するとおっさんとエミーは顔を見合わせる。
「エドとベルはそれを見たのかい?」
「はい。シンさまのお傍におりましたので」
「生命を感じたか?」
「生命というより気配のようなものは」
「気配?」
「こうであると説明ができず申し訳ないのですが、術式から出てくる際の武器からは禍々しい気配を感じました。ですがシンさまがお手にとってからはその気配もなくなりました」
エドの説明でますます首を傾げる二人。
どんなに悩まれても実際にそうだったんだけど。
「現時点ではお手上げだね。特殊恩恵ならこの場で出して貰うこともできないから確認のしようがない」
「うむ。シン殿だけが使える武器ということなのだろう」
「勇者の聖剣と同じか。もっとも聖剣は召喚しないけど」
首を竦めたエミーは俺を見あげてまた苦笑いする。
「聖剣っていうのはどうやって手に入れるんだ?」
「祠に封印されてる。魔王を討伐した後は封印するんだ」
「へー。じゃあヒカルがその剣の封印を解くのか」
「そういうこと。勇者以外に封印は解けない」
勇者しか抜けない石に突き刺さった剣的な話があった気がしたけど……あのヒカルが抜くのか。
「特殊恩恵を持った君にしか扱えそうにないから悪用されることもないだろうけどこれだけは言っておく。この世界にある数少ない召喚で呼び出せるのは意識を持ったものだけ。つまり君の武器はただの鉄の塊じゃない。武器なのに意識を持ってる」
うん、多分そう。
さっきエドも言ってたけど、俺もあの魔刀が召喚されてきた時にヤバそうな気配を感じたから。
「訊きたいことは他にもあるが本日はここまでにしよう。祖龍や魔王の動向を考えるのが先だ。現時点で動かれては困る」
「これだけ聞かせてくれ。魔王が動いたら分かるのか?」
「この世界には魔界層と繋がる魔層と言うものが数ヶ所あって各地で監視している。ただ、今はまだどこからも魔物が活発化した話は出ていない。今回の祖龍は偶然だったと思いたいが」
それなら良いけど。
今魔王が現れてもアイツらは戦えない。
武器も力も手に入れて今後は強くなっていくんだろうけど、今はまだ知識を学んでる段階だからただの生贄になってしまう。
突然姿を見せた漆黒の祖龍。
俺も偶然であったと思いたい。
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