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第七章 武闘大会(中編)
予備日の過ごし方
しおりを挟むカムリンと付添人を交えて呑んだ日の翌日。
予備日で試合のない今日は宿舎でゆっくり朝食を摂った。
「じゃあ先に行って訓練しとくから」
「うん。俺も午後には行けると思う」
「昼食はどうする?別々でいいのか?」
「そうしよう。午前中に行ければ一緒に食べるけど、昼食時間になっても帰って来ないようなら四人で食べてくれ」
「分かった」
四人は宿舎傍にある訓練棟の一室へ。
俺は西区のみんなが出している店の様子を見に行くから、後で合流する約束をして一階で別れた。
「鍵お願いします」
「はい」
「「あ」」
みんなの分も受け取ったルームキーを預けに受付に行くと、振り返ったのはアルク国の王都ギルドの受付嬢。
「あの時は不快にさせて申し訳なかった」
「そんな。言われて当然ですので。一介の国民が英雄と直接お話をするなんて図々しかったと反省しております」
「いや、俺としては普通に話してくれた方がありがたい。あの時の付添人はもう解任したから咎める人も居ない」
「そうなんですか?」
「君も含め他のスタッフにも迷惑をかけたから解任した。あの日以来ここで会わなかったから遅くなったけど、改めてもう一度謝りたかったんだ。本当に申し訳なかった」
胸にあて謝ると受付嬢は大きく首を横に振る。
あれから受付で見かけなかったから遅くなったけど、ようやくこれで迷惑をかけたスタッフ全員に謝れた。
「カーラ。話が終わったなら受付しないと」
「あ!す、すみません!外出ですか!?」
「うん」
隣のエルフ受付嬢からつつかれ慌てて訊く姿に笑う。
アルクギルドではテキパキ仕事をしていたけど、意外と天然なところもあるようだ。
「こんな所で出会うなんて運命では」
「ただの偶然だ」
背中にピトっと寄り添った体温。
振り返らなくても分かる声と行動にキッパリ答える。
「おはようカムリン」
「おはようございます英雄」
弾力のあるスライム(比喩)の感触を感じながら背後にはりついているカムリンに挨拶をする。
「これから特訓か?」
「いいえ。勝ち進んだみんなはこれから個人戦の訓練をするので、私は店舗会場でも見に行こうかと」
そう話しながら離れたカムリンは受付嬢に「お願いします」とルームキーを渡す。
「ブラジリア集落のカムリン選手ですね。外出ですか?」
「はい」
この子は獣人族相手でも嫌がらないのか。
アルクギルドで依頼を受けた時も人族の俺相手でも嫌な顔をせず受付してくれたし、自称地上の神のエルフ族の中にも種族で態度を変えたりしない人も居るのかと少し意外に思った。
「ご訪問があった際には何とお伝えいたしますか?」
「外出中と伝えてほしいのと急用かを聞いて、もし急用なら訓練棟に居る仲間に連絡を頼む。俺の執事が居るから」
「承知しました」
「私は外出中とだけお願いします」
「承知しました。行ってらっしゃいませ」
「ありがとう。行ってきます」
丁寧に頭を下げる受付嬢にお礼を言って受付前を離れた。
「店舗会場に行くって言ってたよな」
「はい。今まで行く機会がなかったので」
「一緒に行くか?俺の用事も店舗会場だから」
「お誘いくださるのですか?ああ……畏れ多い」
「嫌なら別々に」
「行きます!是非お供させてください!」
慌てて腕を掴むカムリンに笑う。
お互い一人だし行先も同じだから、一緒に行くことにした。
「雨でもないのにフードをかぶるのですか?」
「隠さないと俺だってバレて騒ぎになるから」
「ああ。白銀の髪や瞳を隠すためですか」
「そういうこと。顔は知らなくても特徴は知ってる人も多いから。視界が悪くなるからはぐれないよう掴んでてくれ」
宿舎を出る時はお決まりのフード付きローブ(クローク)。
フードをかぶりながら説明するとカムリンは俺の腕を組む。
「今更だけど、今日も刺激の強い格好してるな」
「そうですか?私には普段通りですが」
「衣装は普通なのかもしれないけど……いや、いいや」
「何を言いかけたのですか」
「秘密」
「気になる」
たしかに試合の時の衣装と比べると露出は少ない。
ただ、発育具合がけしからんから、平凡なはずの衣装の胸元から見える谷間が必要以上にけしからんことに(語彙力低下)。
ベル以上の巨大スライム(比喩)を飼っているとは何事だ。
「あ。英雄じゃなくて名前のシンで呼んでくれ」
「爵位名でなくていいのですか?」
「爵位名が英雄だから」
「称号がそのまま爵位名なのですか」
「そう。シン・ユウナギ・エローが俺の正式な名前」
俺の爵位名は称号でもある英雄。
英雄伯爵、英雄卿と呼ばれる。
国王のおっさんから賜ったありがたい爵位名とはいえ容姿を隠していても正体がバレてしまうから、礼儀が必要になる正式な場所以外では名前の『シン』で呼んで貰っている。
「シンさまとお呼びすればいいですか?」
「さまは要らない。嫌じゃなければ」
「英雄に憧れる方々から暴力を受けてしまいそうです」
「なんで嬉しそうなんだよ」
腕を組んで隣を歩くカムリンを見て笑い声が洩れる。
とことん変わった奴だ。
「俺は知り合いの店に行くけどカムリンはどうする?」
「私が居るとご迷惑でしたら一人で見て回ります」
「迷惑じゃないけど俺が行く先でいいのか?」
「目的のお店があって行くのではないので」
「そっか。じゃあ用事が終わったら一緒に見て回ろう」
「喜んで。ありがとうございます」
一緒に行くのは問題ない。
人を連れて行けない用事ではないから先に俺の用事を済ませてから店舗会場を回る約束をした。
「シンさま」
「おはようアデライド嬢」
「おはようございます。朝からどうなさったのですか?」
「今日は予備日で試合がないから様子を見に来た」
「お休みでしたか。みなさまも喜ぶと思います」
最初に行ったのはクレープ屋。
まだ開店前だから店にはアデライド嬢しか居ない。
「ロック卿とジョゼット嬢は?」
「デュラン侯爵夫人のお店へ食材を取りに」
「ああ、ハムか」
「はい」
テーブルに置かれてる伝票を確認しながら話していて会話が止まりアデライド嬢を見るとカムリンを見ている。
「悪い、紹介が遅れた。この子は代表騎士のカムリン」
「カムリンと申します。辺境の地の一般国民ですので、知らずご無礼を働きましたら申し訳ございません」
「アデライド・バイエ・シモンと申します。ご丁寧にありがとうございます」
スカートを軽く摘みカーテシーで挨拶を交わす二人。
アデライド嬢は貴族だからお手のものだろうけど、一般国民のカムリンも自然にやっていて内心驚いた。
「私の気の所為でなければ、Ms.カムリンは昨日行われたシンさまの試合の相手選手ではございませんか?」
「そう。昨日の交流会で話して親しくなったんだ」
「そうでしたか。シンさまがエミーリアさまやベルティーユさま以外の女性と二人で居るところを初めて見ました」
エミーやベル以外の女と居るのが意外だったらしく、見上げるアデライド嬢に苦笑する。
「そもそも異性の知り合いが少ないからな。二人も専属女給と師匠って関係だし」
二人以外と居るのを初めて見たのも当然。
異世界に来てからは女給のベルと師匠のエミー以外で一緒に出掛けるような異性の知り合いが居ないから。
「売れ行きはどうだ?」
「今のところは並んで購入する状況が続いております」
「そっか。多分半月も経てば客足が落ちてくるだろうから、その時は予定通りメニューの変更をしてくれ」
「承知しました」
今は見慣れない食べ物の物珍しさから列になっているけど、様子を見て客足が落ちてきたタイミングでクレープの中身を変更するよう話してある。
「カムリン。甘い物は食べられるか?」
「甘い物……お菓子ですか?」
「一応菓子の分類かな。喰えるなら作るけど」
「お菓子は食べたことがないので分かりません」
「そっか。じゃあ小さ目に作るから試しに喰ってみろ」
「そのような高価な物をいただけません」
「クレープはいうほど高価じゃない」
たしかに地球のクレープの値段に比べたら高い。
ただ、俺が使ってるのは砂糖に似た植物から作った砂糖もどきだから、この異世界で売っている菓子より安く提供できる。
「すぐに出来ますので座ってお待ちください」
「はい。ありがとうございます」
アデライド嬢が置いた椅子に座るカムリンは不安げ。
見返りをくれと押せ押せキャラの割に、それ以外では常識人らしい。
「「シンさま」」
「おはよう。ロック卿、ジョゼット嬢」
「おはようございます」
「今日はお休みですか?」
「うん。後で訓練はするけど」
クレープの皮を焼いている最中に戻って来た二人。
俺のかわりにアデライド嬢がカムリンを紹介してくれて三人で挨拶を交わす。
「シンさまとカムリンさまは恋仲なのですか?」
「ジョゼット。そのようなプライベートな質問を」
「御無礼ですよ」
アデライド嬢もロック卿も内心では思いつつ避けただろう質問をジョゼット嬢からハッキリ訊かれて笑う。
「カムリンも代表騎士。昨日話して親しくなったばっか」
「そうなのですか。シンさまが女性をお連れになるのは初めてですので好い仲の方なのかと思ったのですが」
「残念ながら外れ。偶然宿舎の受付で会って話したらカムリンも店舗会場に行くって言うから、お互い一人だし一緒に行こうかって誘っただけ」
ただそれだけ。
恋仲でもなければ出掛ける約束をした訳でもない。
お互い出かけようとしていたところで偶然会って行く先も同じだったから誘ったというだけ。
「シンさまから誘ったのでしたら逢瀬ですわね」
「異性と出掛けることを全て逢瀬って言うならそうだな」
焼き終えた皮にホイップクリームやバナナや苺(もどき)などの果物を乗せながら、カムリンと俺の関係に興味津々のジョゼット嬢に笑って答えた。
「出来た。これがクレープ」
「可愛いですね。本当にいただいてもいいのですか?」
「うん。好みじゃないかも知れないから小さくしてある」
「ありがとうございます。初めてなので緊張します」
「苦手なら俺が食べるから一口食べてみろ」
「はい」
初めてという割に躊躇なくカプと齧りついたカムリン。
モグモグ口を動かし表情を笑みに変える。
「とっても美味しいです。初めて見るこの白くてふわっとした甘いものと果物のほのかな酸味がちょうどいいですね」
「そっか。口に合って良かった」
「美味しい。幸せ」
ここまで喜んでくれるなら連れて来て良かったと思う。
菓子が高級品のこの異世界ではカムリンのように甘いもの自体を食べたことがない人も少なくないんだろう。
「ごちそうさまでした」
「朝食は摂ったはずなのに綺麗に食べきったな」
「残すのが正しい作法でしたか?」
「作法なんてない。腹が苦しくないのかと思っただけ」
「ああ、量を食べる方なので」
「量を?宿舎の食事じゃ足りないんじゃないか?」
「足りない時はお部屋の果物を食べてます」
宿舎の朝食は量が少ない。
俺は普段から朝食を食べない派だからコーヒー(もどき)だけあれば充分だけど、普段から朝食を摂るロイズやドニは量を増やして貰っている。
「スタッフに言えば増やしてくれるぞ?」
「食事を用意していただけるだけで幸せです。集落では自分たちで狩ったお肉や田畑で作ったお野菜を食べてますから。充分なほど贅沢をさせていただいてます」
「なるほど」
普段は質素な生活をしているということ。
獣人だけで集落を作り閉鎖的な生活をしているから、王都に暮らしていれば珍しくもない食材でも見たことのない物になってしまうんだろう。
「集落……カムリンさまは獣人族なのですか?」
「はい。ブラジリア集落の獣人です」
「全く気付きませんでした」
「獣人を見るのは初めてですか?」
「エドワードさまとベルティーユさま以外の獣人の方にお会いするのは初めてですが、もしかしたら耳と尾を仕舞っている獣人の方とはどこかですれ違ったことがあるかもしれませんわ。こうして間近で拝見しても分かりませんもの」
お。意外にもジョゼット嬢も平気そう。
普段エドやベルで獣人族の姿は見慣れてるからか、逆に耳や尻尾を隠しているカムリンの方が興味が湧くらしい。
「カムリンさまも発育が……羨ましいですわ」
カムリンの胸元を見て自分の胸元を押さえるジョゼット嬢につい吹き出して笑う。
「失礼ですわ。シンさま」
「悪い。女性がそこを気にするのは世界共通かと思って」
「それはそうです。アデライド姉さまの大きさですら羨ましいのに、普段から何を召し上がったらこんなにも大きく」
「私を引き合いに出さないでください」
アデライド嬢まで少し赤くなりながら胸元を押さえ、ロック卿は胸の話題だけに照れて困ったような表情をしている。
「心配しなくても小さいのも大きいのも良さはある」
「小さくていいことって何ですの?」
「触った時の感度がいい」
「破廉恥ですわ」
「ジョゼット嬢が訊いたんだろ」
侯爵令嬢の割に結構オープンなジョゼット嬢。
侯爵令嬢らしくないところは姉のアデライド嬢と似ている。
「さてと。冗談はこのくらいにして、そろそろ司祭さまのところに行くかな。客も並び始めたし」
「お手伝いに来てくれたのではないのですか?」
「俺はオーナー。接客はジョゼット嬢たちの仕事」
ぷくーっと頬を膨らませるジョゼット嬢は年相応。
ロック卿もジョゼット嬢のこういう女の子らしいところを好きになったのかもしれない。
「ロック卿。今日も代理人の仕事頼むな」
「お任せください」
「アデライド嬢とジョゼット嬢もゴミ捨てについての注意は忘れないでくれ。変な客がいたらすぐ警備兵を呼ぶこと」
「「承知いたしました」」
もうそろそろ開店の時間。
長く居ると邪魔になってしまうから、後のことは三人に任せてカムリンと店を後にした。
「貴族さまなのに話し易い方々ですね」
「うん。三人とも正式な場ではしっかり貴族だけど、それ以外の時には砕けた対応をしてくれるから助かってる」
「シンも貴族さまなのに」
「俺は所詮異世界から来た成り上がり貴族だから」
代々受け継がれてきた爵位じゃなく俺が初代。
元々はホストなんだから優雅で上品な貴族には向いてない。
「シンがあのお店を出しているのですか?」
「うん。会場で異世界の食べ物を四店舗出してる」
「四店舗も?」
「一応これでも王都で領主をやってるんだ。ただ、問題が多い地区だからやらなきゃいけないことが山積み。本当は武闘大会に出てる場合じゃないんだけど」
王命だから出場しただけ。
言われる前に武闘大会のことを知ったとしても自分から参加をすることはなかった。
「最初から分かっていたつもりですが、やはり英雄で貴族さまなのですよね。気軽にお話してくださるので私が親しくするには畏れ多い方だと忘れてしまいそうでした」
今まで組んでいた手を離そうとしたカムリンの手を掴む。
「身分は上等だろうと俺は俺だ。こう見えて親しく接する相手は選んでる。選ぶ基準は直感だけど、俺の直感は割と当たるんだぞ?こうやって触られても嫌に思わない時点で仲良くやれると思うんだけど、カムリンは俺と親しくするのは嫌か?」
身分で畏れ多いと引かれるのは辛い。
離れようとした手を掴んだのと同じく距離を置こうとするのを引き留める質問をするとカムリンは大きく首を横に振る。
「私がシンに望むのは見返りですが、それ以外にも親しくしていただけるのは嬉しいです。白銀の髪と白銀の瞳を持つ強く美しい英雄。そのお話を聞いてからずっとお会いしてみたいと思っていました」
そう話すカムリンに少しドキっとさせられる。
元々見た目が好みだったのもあるけど、見返りをくれとはりついてくる時のカムリンとのギャップが凄い。
何人もの女性客を相手にしてきた俺をドキっとさせられるのは中々の強者。
『シン兄ちゃーん!』
声のすぐあと背後からドスと体当たりして来た体。
「シン兄ちゃんが女の子と手を繋いでる!」
「彼女!?彼女できたの!?私って女が居るのに!」
「お前たち空気を読め。空気を」
『空気?』
体当たりして来たのは孤児院の子供たち。
今イイ感じになってたのにコイツらは本当に……いや、道の真ん中でイイ感じになったところでどうもこうもないけど。
「買い物に行ってたのか?」
「ううん。パンを取りに行ってたの」
「司祭さまと修道女は?」
「お店で準備してる」
「そっか。手伝いしてて偉いな」
子供たちが抱えているのは紙袋。
抱きつき攻撃でなく体当たりだったのは紙袋を抱えていたからかと納得しながら子供たちの頭を撫でる。
「カムリン。この子たちは俺の領地にある孤児院の子」
「孤児院?」
「あれ?孤児院って知らないか?」
「はい」
子供たちを紹介すると首を傾げられる。
獣人族の集落には孤児院がないってことなんだろう。
「親が居ない子供が暮らす家のことだよ?」
「ではみなさまも親が居ないのですか?」
「うん。司祭さまが私たちのお父さん」
「そうでしたか。私も両親が居ないので同じですね」
「お姉ちゃんも居ないの?」
「はい。顔も覚えておりません」
クロエの説明を聞いて子供たちの目線に合わせてしゃがんでそんなことを話すカムリン。
俺もまだ聞かされてなかったことをまさか子供たちとの会話で知ることになるとは。
「司祭さまたちが心配するから店に行こう」
『はーい』
子供たちの元気な返事にカムリンはフフと笑う。
「お姉ちゃんも行こ?」
「ありがとうございます。お荷物お持ちしますよ?」
「大丈夫!私強いんだから!」
「そうですか。失礼しました」
あっという間に人気者。
女の子たちはカムリンのスカートを掴んだり足に手を添えたりしながら一緒に歩き出す。
最初は警戒心の強い子供たちなのに珍しい。
「クロエたちに彼女とられちゃったな」
「彼女じゃなくて友達」
「誤魔化さなくていいのに」
「生意気」
カルロたち男の子集団は俺と一緒に。
どの商品が売れているかやどんな人たちが買って行くかなど店のことを話して聞かせる子供たちと、司祭さまや修道女の居るホットドッグの店に向かった。
「おはよう、司祭さま。修道女」
「シンさん。おはようございます」
「おはようございます。お休みですか?」
「うん、予備日。訓練の前に様子を見ておこうと思って」
こちらもまだ準備中。
司祭さまと修道女はホットドッグ用のソース(トッピング)の用意をしていた。
「この子はカムリン。代表騎士」
「ブラジリア集落のカムリンと申します」
「ガルディアン教会で司祭をしておりますボニートです」
「修道女のコレットです」
「はじめまして」
一旦手を止めてカムリンに挨拶をする司祭さまと修道女。
ここでもカムリンはカーテシーで挨拶をする。
「シン兄ちゃんの彼女だって」
「友達だって言ってるだろ」
「絶対嘘だ。大人の事情で秘密なんだろ?」
「どこで覚えてきたんだ。そんな言葉」
司祭さまに紙袋を渡しながら話すカルロは生意気盛り。
「シンさんの予選のお相手ですよね?」
「当たり。あの後の交流会で話して親しくなった」
放映で観たのか修道女はすぐに気付き、まだ子供たちに囲まれているカムリンを見る。
「シン兄ちゃんと難しい話をしてた獣人族の選手?」
「難しい……うん。子供には難しいって認識で良かった」
カルロには俺とカムリンの会話が理解できなかったようで内心ホッとした。
「子供たちが懐いていますね」
「あっという間に人気者になって俺も驚いた」
「シンさんと同じく子供たちが親しみ易い雰囲気をお持ちの方なのでしょう」
司祭さまもまずそれに気付いたらしい。
俺も警戒心の強い子供たち(特に女の子)があっという間にカムリンに懐いたのは意外だった。
「あ。準備をしないと」
「少し手伝う。今パンを運んで来たみたいだし」
「半分は今朝の内に受け取っていたのですが、調理施設のオーブンの調子が悪かったらしくて」
「ああ。それで開店ギリギリになったのか」
「はい。後は焼き上がり次第届けてくださるそうです」
「そっか。焼けるなら良かった」
ホットドッグ用のパンは王都で雇ったパン職人に頼んで店舗会場に用意されてる調理施設で毎日焼いて貰っている。
異世界に元々あったパンでは固くてホットドッグには向かないから、俺が作り方を教えた特別製のパンを。
「カムリン。少し手伝うから待っててくれるか?」
「私にもできることがあればお手伝いいたします」
「せっかくの休みなんだから座ってていい」
「お姉ちゃんも私たちとお客さまに渡すのやろうよ」
「お客さまに渡すの?」
「おい。俺の気遣いを無視するな」
手を洗いながら言った俺の話は完全無視。
まるで妹でもできたかのように女の子たちはカムリンに仕事を教えている。
「シン兄ちゃん諦めなよ。集団になった女子に喧嘩は売るなって言ってただろ?口では勝てないから一歩引けって」
「ご尤も」
そう言えばカルロたちが男女で口喧嘩をしてた時にそんな話をしたなと思い出して笑った。
「時間ですので開店してしまいますね」
「頼んだ。俺は司祭さまと作るから」
「お願いいたします」
パンに切れ目を入れている間に開店時間。
カムリンや女の子たちが道行く人に声をかけて既に人が並び始めていた。
「司祭さまはウインナー挟んでいってくれるか?」
「はい。こちらはお願いします」
「うん」
俺がパンに切れ目を入れてカルロたち年長組が野菜を挟み、最後に司祭さまが焼いたウインナーを挟む。
後は客が注文したメニューによって修道女や年長組の女の子たちがトッピングするという流れ。
「ホットドッグはいかがですかー!」
「作りたて熱々ですよー!」
そんな声をかけるのは小さな子供たち。
みんなで手分けして稼いだお金は孤児院の遊具などに遣う。
地球なら子供に労働なんてと批判を受けそうだけど、この異世界は子供にも甘い世界ではない。
こうして子供たちにも役目を与え店に立たせて仕事をさせているのは、将来自分たちの力で稼ぐ術を教えるため。
肉親の保護下に置かれた子供と違って孤児院の子供たちは成人すると同時に自分の力で生きていかなくてはいけないから。
「お待たせしました。お熱いのでお気をつけて」
「ありがとう」
「食べ終えた包装紙はゴミ箱へお願いします」
「分かった」
「ご協力ありがとうございます」
これは……野郎ホイホイ。
下心丸出しな男性客たちが鼻の下を伸ばしながらカムリンから受け取っている。
「次のお客さまどうぞ」
カムリンを売り子にした女の子たちの作戦勝ち。
手を止める暇がないくらい次から次へと男性客が並んで待っていた。
「悪いけど一旦抜ける。ポーラさんに書類を渡さないと」
「もしかしてお話しになっていたあれですか?」
「うん。まだ仮登録だけど申請が通った」
「ここは私たちで大丈夫ですので行ってください」
「ありがとう。シモン侯爵夫人の店にも少し顔を出したら戻ってくるから」
並んでいた客が少し減ったところで司祭さまに声をかける。
今日来た一番の目的はポーラさんに開発権の仮登録証明を渡すためだったから、一旦抜けさせて貰うことにした。
「カムリン。一度抜けて他の店に行くけどどうする?」
「戻ってくるのでしたらこのままお手伝いしてます」
「分かった。頼むな」
「はい。お気を付けて」
「男性客も多いから触られないよう気を付けろよ?」
「脚が出ないよう気を付けます」
そっちか。
このまま売り子を続けてくれるカムリンに笑って俺一人でカレー屋に向かった。
カレー屋の前にも長い列。
どんな人たちが並んでいるのかと少し確認しながら通りすぎて店のドアを開ける。
「申し訳ありません。順番にお呼びしますので外で」
「客じゃない」
「あ、シンさん」
今日はフードをすっぽり被っているから気付いて貰えず、声をかけてきたスタッフに少しだけ顔を見せて答える。
「ポーラさんは厨房か?」
「はい。パトリスさんと一緒に」
「分かった。仕事の邪魔して悪かった」
「いいえ」
混んでいるからポーラさんも厨房に入っているらしくスタッフから話を聞いて厨房に行く。
「お疲れさま」
「「シンさん」」
ドアを開けて中を覗くと大忙しの様子が伝わる光景。
厨房の人数はそれなりに揃えているけどそれでも慌ただしいようだ。
「忙しいのにごめん。これだけ渡しておきたくて」
中まで行くと不衛生だから厨房の出入口付近でポーラさんを呼んで封筒を渡す。
「もう通ったんですか!?」
「まだ仮登録だけどな。申請は通った」
「もっと時間がかかるものかと」
「似た商品がある物だと確認のために時間がかかるけど、ポーラさんのスパイスは王宮料理人も使ってるからすぐに仮登録の証明を発行してくれた」
封筒の中を見たポーラさんは驚く。
俺も時間がかかると思っていたけど推薦人の俺以外に王宮料理人たちも知っていたから早かった。
「ポーラ?何を驚いてるんだ?」
「貴方。開発権の申請が通ったみたい」
「本当に?凄いじゃないか」
「まさか本当に申請が通るなんて」
一度手を止めて見に来たパトリスさんも証明を見て喜ぶ。
「シンさんのお蔭です」
「なんとお礼を言えばいいのか」
「俺は俺で打算があってしたことだから。あとで店内の見える場所に提示しておいてくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
これで他の人はポーラさんと同じスパイスで開発権の申請はできなくなる。
それより以前に申請をしている人が居たら却下されるけど、王宮料理人でさえポーラさんオリジナルのスパイスを知らなかったんだからその可能性は低いだろう。
「じゃあ今日はこれで」
「もうお帰りですか?」
「まだ宿舎には戻らないけど司祭さまのところの手伝いしてるんだ。手が足りてないからすぐに戻らないと」
「そうでしたか。お忙しいのにありがとうございます」
「そもそもの今日の目的はこれを渡すことだったから。また予備日に様子を見に来るから後は頼んだ」
この店もゆっくり話していられる状況じゃない。
外には並んで待っている客も居るから、これ以上営業の邪魔にならないようすぐに店を後にした。
「これは……やめとくか」
シモン侯爵夫人に任せてる店に行ってガラス越しに店内を見るといかにも貴族というような服装のご婦人たちが居たから、中には入らずその場を去る。
貴婦人の話は長い。
もし顔見知りなら長話に付き合わされるから、土産物屋として営業しているその店だけは次の予備日に様子を見に来ることにした。
「シン兄ちゃん!」
「カルロ」
さっさと司祭さまのところに戻ろうと歩いていると前からカルロが走って来る。
「どうした。息切らせて」
「あのお姉ちゃんが」
「カムリンに何かあったのか?」
「執拗い男の人がお姉ちゃんに。今警備兵が来てて」
「落ち着け。とにかく戻ろう」
カムリンに何かあったのを報せに来てくれたらしく息切れしているカルロを抱えて人を避けながら店に走る。
ホットドッグ屋の周りには人集り。
すみませんと声をかけて人集りの中に入って行く。
「シン兄ちゃん!」
「みんな大丈夫か?どこか怪我したりしてないか?」
「大丈夫。警備兵さんが来てくれたから」
「いま司祭さまが警備兵さんとお話ししてる」
「そっか。みんな無事で良かった」
俺を見つけて抱きついて来た子供たちの頭を撫でる。
何があったのか分からないけど子供たちに怪我はないようだ。
「司祭さま。カムリン」
「シンさん」
「大丈夫か?怪我は?」
「大丈夫です」
「私も怪我はありません」
「良かった」
修道女に子供たちを任せて警備兵と居る司祭さまとカムリンのところへ行くと、二人にも怪我はないらしく安心した。
「ご苦労さま」
「英雄」
警備兵が呼んだ名前で出歯亀をしていた人集りがザワつく。
「あ……まずかったですか?」
「いや。それより何が」
警備兵を呼ぶようなことがあったんだから出歯亀を気にしている余裕はない。
「こちらの女性にこの者たちが言い寄っていたようです。腕を引いたり背中を押して連れて行こうとしたとのことで、子供たちが警備棟へ報せに来てくれました」
バインドをかけられ道に座らされている三人の男。
警備兵や司祭さまから詳しく話を聞くと、客の列に割り込んで来たこの男たちがカムリンを口説きはじめたらしく、何度カムリンが断っても執拗く声をかけて最終的には強引に連れて行こうとしたのを司祭さまが間に入って止めてくれたらしい。
「良かったなお前ら。怪我がなくて」
怪我一つない男たちを見て口を衝いたのはそれ。
よく無事で居られたものだ。
「本当に脚は出さなかったのか」
「周りに人がおりましたので。無関係の方々を巻き込んで怪我をさせる訳にはまいりません」
「なるほど」
列に並んでいた人や出歯亀も居たのか分からないけど、カムリンが蹴ったら吹っ飛びそうな男たちだから周りに迷惑をかけないよう堪えたんだろう。
「この子から生身で蹴られてたら骨の二・三本は逝ってたと思うぞ?防御魔法をかけてた俺でさえ骨が軋んだから」
昨日の試合では覚醒する前の最初の蹴りから痛かった。
防御力を上げて受けた状態でさえ痛かったんだから、生身のこの男たちは漏れなく骨折していたと思う。
「こちらの女性は」
「武闘大会の代表騎士。昨日俺と戦った選手」
「ああ!獣人族の!」
「そう」
「……子供たちが呼びに来て助かったのはこちらの三人だったようですね」
警備兵は昨日の試合を観たようで、無傷で済んだ男三人を見て苦笑いする。
「獣人かよ。騙された」
「獣人に売り子なんてさせるな」
「お前らやめろ。英雄の前で」
捕まっても態度の悪い二人。
一人は今の状況を理解しているようだけど。
「獣人に売り子させると何か問題なのか?」
フードを外してふてぶてしい男二人の前にしゃがむ。
「可愛いと思ったから口説いたんだろ?自分たちが勝手に気に入って口説いたのに、騙されたって被害者ヅラすんのか?好みの女性一人口説ききれず力技で連れ去ろうとするクズが。二度と盛れないよう俺が直々に去勢してやるよ」
局部を掴んで少し力を入れると悲鳴に似た声を洩らす二人。
「嘘に決まってんだろ。情けない声だすな」
強引に連れ去ろうとした割にダサい。
とことんダサい。
「俺はお前らみたいに身分や種族で人を差別する奴も、力技で女性をどうにかしようとする奴も嫌いだ。この人たちにまた絡むようなことしてみろ。次は本当に潰すぞ」
許すのは今回限り。
それだけ忠告して立ち上がる。
「この者たちの処分はどうしますか?」
「カムリンはどうしたい?」
「英雄が忠告してくださいましたので私からは何も。他の女性に同じことをしないよう注意だけお願いします」
「そういうことらしいから警備団に処分は任せる」
「分かりました。警備棟へ連れて行って処分いたします」
本人が事を荒立てる気がないから処分は厳重注意。
ただ、未遂とはいえ大会の敷地内でも禁止されている迷惑行為をしたから罰金処分にはなるだろう。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「はい。警備兵を呼んでくれてありがとうございます」
「悪い人が来たら呼ぶようシン兄ちゃんに言われてる」
「そうですか。シンから大切にされてるのですね」
「シン兄ちゃんは俺たちの兄ちゃんだからな。沢山の国民を守ってくれる強くてカッコイイ英雄で領主さまなんだ」
ドヤるカルロにカムリンはフフと笑う。
周りに人がいなければあの程度の男三人くらいカムリンなら余裕でどうにかできただろうけど……何にしてもみんなが無事で良かった。
「司祭さま、修道女。手伝いの途中だったけど俺がここに居るとまた別の騒ぎになるだろうからもう行く」
「分かりました。これから訓練ですか?」
「カムリンが行きたい所を少し回ったら。手伝って貰った礼はしておきたい」
俺がここに居たら人集りがなくならない。
今の騒動で並ぶのをやめた人も居るだろうし、手伝いはここまでにして店を離れることを話した。
「カムリン。そろそろ行こう」
「もう宿舎に帰っちゃうの?」
「俺が居るとまた悪い人が来るかも知れないから」
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「年長組のみんなは年少組の面倒を頼む。年少組のみんなは年長組のお兄さんお姉さん、司祭さまや修道女の言うことを聞くように。言わなくてもみんななら大丈夫だと思うけど」
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しゃがんでいる俺に抱き着いてくる子供たちの頭を撫でながら自分自身に誓った。
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