ホスト異世界へ行く

REON

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第零章 先代編(後編)

業を背負う者

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とある日の早朝。
場所は緋色カルマン宮殿贖罪エクスピアシオンの塔。
石でできた塔の長い廊下を歩く足音が二つ。

「セルジュ!ドナ!」

鈍い音をたて開いた扉から入って来たのはセルジュとドナ。
牢檻越しに見た二人の姿にアルメルは椅子から立ち上がる。
王家の王子らしく品よく着飾ったセルジュとドナは、監視が置いた椅子に座った。

「お加減いかがですか?母上」

そう問いかけたのはドナ。
以前は気の弱さを表しているかのように長い前髪で顔を隠し猫背気味に小さくなっている印象のドナだったが、今では長い前髪を留めしっかり顔を出して肌ツヤもよく健康的。
猫背気味だった背筋もピンと伸ばし堂々としていて、その姿は王家の者に相応しい品格すらも感じさせる。

「よい暮らしをしているのね。私を監禁しておいて」

眉を顰め厭味を口にするアルメル。
第二王子のセルジュは以前と変わりないが、その隣に居ても王子として何ら遜色ないドナの変貌ぶりが気に入らない。

「監禁ではない。罪人を幽閉しているだけだ」
「母を罪人扱いするの!?」
「事実だろう。自分が勇者に何をしたか忘れたのか」

口を開いたのはドナではなくセルジュ。
相変わらず都合のいい時だけ母親の立場を利用するアルメルをセルジュは鼻で笑う。

「母上が抱えていた男妾や使用人には暇を出した。母上の悪事に協力した者は既に罪を償い旅立ったがな」

主犯のアルメルが王家裁判にかけられないため罪状の割に公開処刑とはならなかったが、宮殿の家令ハウススチュワートでありアルメルの執事バトラーでもあったモルガンを筆頭に、勇者誘拐に協力した男妾や使用人の数十名が極刑となった。

「そんなことどうでも良いから私を塔から出しなさい!」
「自分の所為で極刑になった者たちをどうでも良いとは」

呆れたセルジュは溜息をつく。
勇者保護法を破ることが大罪だと知りながら協力した者の末路としては正当な処罰であったが、今まで散々悪事を手伝わせた諸悪の根源がと切り捨てるとは救いがない。

「私は王妃よ!正妃が居ない今は私が正妃と言っても過言ではないのに、こんなことをして許されると思っているの!?私が言えば二人は極刑になることを忘れないで!」

冷たい鉄の柵を掴んで牢檻の向こうにいる二人に食いかかる勢いで物申すアルメル。

「母上はもう王妃ではありません」

そう話したのはドナ。
精神衰弱した罪人として贖罪エクスピアシオンの塔に幽閉されているアルメルをわざわざ牢檻に移して面会したのは、協力した者の最後の一人の処刑が済んだこととを伝えるため。

「王家会談にて母上は身分と全権限を凍結されました」

国王と王妃、そしてその子供の大公グランドデュークで行われる会談。
例年は王家の者に相応しくない行動は慎むよう互いを諌める目的で開かれていたが、今年は違った。

「取り調べで今まで母上が犯した数々の罪が明らかとなり、満場一致で王家の者に相応しくないと判断されました」

王家裁判とは違い会談で刑罰に処すことや身分を剥奪することはできないが、国王を筆頭に王家に連なる者全員が王家の者として相応しくない人物と判断すれば、例えそれが王妃であっても身分や権限をすることができる。

「ドナ。そのような説明をしても妃教育を受けていない母上では理解できないだろう。もっと分かり易く噛み砕いて説明してやらねば。今の貴女の身分は一般国民以下の罪人だと」

アルメルに対して口元をニヤリとさせるセルジュ。

「まだ取り返しのつく失態であれば一時的な凍結で済ませただろうが、勇者保護法を犯した大罪人に取り返しなどつかない。無期限の身分凍結は身分を剥奪されたことと変わらない」

凍結されている間は王妃を名乗れず権限も使えないというだけで、王家とは無関係の人間となるではないことが残念ではあるが、全権限を奪われた王妃などもう何もできはしない。

「そんなことが許されるはずがないでしょう!」

牢檻の柵を強く握って怒鳴るアルメル。
正妃が亡くなった今は自分が正妃と同じ権力を持つと考えていたアルメルは、自分を罰せる者など居ないと甘く見ていた。

「許されるのです。既に身分を凍結された貴女には私たちを制限する権限がないのですから。王家会談の場にて王家に連なる者全員が身分凍結に合意し陛下と王太子が調印しました」

会談は国の裁判ではない。
王家の者が身内を裁くもので、軽ければ注意や謹慎、王家に相応しくないと判断されれば身分を凍結する。

「国王と王太子の調印というのは強い行使力を持つ」
「マクシムに私の身分を奪う権利などないわ!今すぐ陛下の元に行って私が極刑にするよう言っていたと伝えなさい!」

それを聞きドナは嫌な予感がしてセルジュをチラリと見る。
兄と冗談混じりに王家の階級を分かっていないのではないかと話したことはあったが、まさか本当に?と。

「母上。正妃の居ない今は自分が正妃と言っても過言ではないと申しましたが、それは違います。私どもにも優しかった正妃は志半ばで無念にもご崩御なさいましたが、ご崩御後も父上は正妃の身分を剥奪しておりません。現国王の父上が身分を剥奪しない限り正妃はブランディーヌ妃ただ一人。母上はあくまで第二妃で、国王はもちろん王太子よりも身分は下です」

ドナの話で監視についている数名は大きく頷く。
普段から塔を警備している者たちはアルメルの口から正妃や王太子を見下すような発言を幾度も聞いていて腹立たしく思っていたが、二番目であろうと自分たちよりも上の身分の者の発言を咎めることは許されなかった。

「王妃は全ての子の母よ!マクシムは私の下でしょう!」
「違います。マクシム兄さんは大公グランドデュークの中で最も高い王位継承権を有した王太子ですから。身分を高い順に説明すると、国王、正妃、王太子の順。第二妃の母上はその次。陛下にマクシム兄さんを極刑にするよう伝えろと申されましたが、そのような不敬を口にして極刑に処されるのは母上の方ですよ?」

王妃だからと言って正妃の子の王太子より上の訳はない。
国王を除けば次に身分が高いのは正妃の第一妃で、その次は国王と正妃の間に最初に産まれた男児の王太子。
そんな一般国民でも知っていることを説明しなければならない馬鹿馬鹿しさと虚しさにドナは溜息をついた。

「その考えならば勘違いしているのでしょうが、今まで母上の愚行が許されていたのは母上の方が身分が高いからではなく、マクシム兄さんが問題にしなかったからです。正妃亡きあと継承権を持つ自分やグレースが母上や三妃から様々な妨害を受けるだろうことが分かっていて、せめてグレースには矛先が向かわないよう自分が矢面に立つことを選んだのでしょう」

それに気付いたのは母上が幽閉されたあと。
無能に権力を持たせてはいけないという見本のような母上から解放され兄も私も心に余裕を持てるようになり、初めて自分たちの異母兄妹の様子を見渡せるようになって気付いた。

「マクシムは国王になる者として相応しい器の持ち主だ」
「私が王太后になるのだから次の国王はセルジュよ!」

それを聞いてセルジュはピクリと眉を動かす。

「その言い方は誤解をうむのではないか?王太后というのは国王の母のことだが、継承権を持つ私かドナが国王にならなければ母上も王太后になれはしない。今の言い方ではまるで王太后になった者の子供が国王になるかのように聞こえるぞ?」

国王となった者の母が王太后と呼ばれる存在。
どちらにせよそれは叶うことがない世迷いごとではあるが、まるで自分が王太后になることが先かのような常識の欠片もない言い方を監視たちの前でするのは控えて欲しい。

「王太后は王太后でしょ!王太后の子が国王になるのよ!」
「……まさか本当に?」
「そのようですね」
「驚くほど頭が悪いな」

やはり『国王の母が王太后になる』ではなく『王太后の子供が国王になる』と訴えるアルメルにセルジュは深く眉根を顰め、ドナはこめかみを押える。

「母上は妃教育以前に一般教育を受けたのか?王太后がどのような存在かなど一般国民でも知っていること。貴族であれば尚のこと訓練校に通い習うだろう。元は侯爵家の娘でありながらフォークとナイフの握り方しか教わらなかったのか?」

まさか面会でこのような恥をかかされることになるとは。
そもそも監視も母上が賢いとは思っていなかっただろうが、自分たちが護る国の王妃がこれとは嘸かし呆れただろう。

「母上を妃に選んだ者は有識者とは名ばかりの無能だな」
「国家転覆でも狙っていたのかと疑いたくなりますね」

こめかみを押さえて大きな溜息をつくセルジュとドナ。
二人が優秀な王子であることはもう監視たちも分かっているだけに、よくこの母から優秀な子供が育ったなという気分。
尤もそんな本音を顔に出すことはできないが。

息子二人に呆れられてアルメルの顔は真っ赤。
無知な自分に恥ずかしくなったのではなく、人前で恥をかかされたという盛大なで。
ワガママ放題に育てられたアルメルはそんな性格。

「私が居なくては王妃の務めもままならないでしょう!」
「いえ?グレースやフレデリクが代行しておりますが、国民は喜んでおります。フレデリクは視野が広いので様々な改善が進んでいますし、心優しいグレースは人気がありますから」

王妃の務めは二人が立派にやり遂げている。
むしろ母上が正妃の代行をしていた時より遥かに国民のためになっている。

「そんな馬鹿な」
「当然だろう?民ではなく己が不満に思う部分しか改善しようとせず、その改善すら実際に見ていないドナに丸投げするだけの無能な王妃と、自分たちに寄り添い声を聞いてくれるフレデリクやグレース。どちらが民に必要な人物かは明らかだ」

見てもいないことを改善するという無茶ぶりでしかないそれが何とか形になっていたのはドナが優秀だったから。

「優秀なドナだから成し遂げられたことを自分の手柄として横取りしていただけで、実際には派手に着飾り民に顔を見せることしか出来なかった無能なお飾り王妃が、自分が居なければ王妃の務めもままならないと思っていたとは笑わせる」
「生意気な!」

嘲笑うセルジュにアルメルは怒り心頭。
牢檻の柵を両手で叩くことで怒りを表現している。

「人格者であったブランディーヌ妃がご存命でないことが悔やまれる。もしご存命であれば王妃の存在が民にとって居ても居なくとも変わらない存在にはならなかったのだろうが」

この国の民にとって王妃はお飾り。
本来であれば次の国王となる世継ぎを遺す大役を務めて民に寄り添う王妃は国母として敬われる存在なのに。

けれど今の王妃たちはどうだ。
第二王妃が療養中と聞いても貴族たちが形ばかりの見舞いの品を贈る程度で、民に至っては気にとめてもいない。
第三王妃が宮殿にこもり王妃の務めに出なくとも行事以外で見かけないことが当たり前になっていて気にもとめない。

「王妃の存在価値とはなんだろうな」

民たちの血税で贅沢をするだけの王妃。
世継ぎは遺したからもう要らない、が民の本音だろう。
そうなっても民を責めることはできない。
それほどに王妃とは名ばかりのお飾りでしかないのだから。

珍しく表情を曇らせるセルジュに監視たちは胸を痛める。
王妃という以前に血の繋がった肉親であるはずの人の存在価値を疑問に思うほど親子の関係性は希薄だったのだろう。

「身分を永久凍結された母上が今後ご公務に出る機会はありませんのでお心静かに療養してください。僭越ながら私たちが陛下にお力添え出来るよう尽力して参ります」

母上の役目は子供を遺した時点で終わっていた。
私たち三兄妹にとっても国民にとっても害悪でしかない。
そう思われる道を選んだのは他でもない母上自身。

「もう行きましょう兄さん。あまり長居をしては母上のお体に触りますので。母上には一日も早く正常な精神を取り戻して罪を償うという大役がまだ残っているのですから」

目の前に居るのは王妃ではなく大罪人。
王妃として成すべきことはもう無いけれど、大罪人として成すべきことは残っている。

「母親にそんなことを言っていいと思ってるの!?」
「都合が悪くなった時だけ母を名乗るのは辞めろ。貴様は王家の王子と王女という存在の私たちを利用して陛下へ男遊びと贅沢をするための金をせびっていただけで、ただの一度もその腕で抱いたこともなければ愛したこともないだろうに。貴様と血が繋がっているというだけで虫唾が走る」

殺気すら感じさせるセルジュの冷たい目。
母子としての僅かな情すらなくなったのだと監視たちもその殺気に自然と背筋が伸びる。

「こうなったら全て話してやるわ!」

鬼のような形相で口を開いたアルメル。
その言葉にセルジュとドナの動きが止まる。

「ドナ!貴方は陛下の子じゃないわ!王家を名乗る資格も国王になる資格もないの!処刑人との間に出来た子なんだから!沢山の人を殺した処刑人の子が王子なんて笑っちゃうわ!」

そう言ってアルメルは大笑いする。

それにぎょっとしたのは監視たち。
ミシェルには全く似ていないドナが実の子ではないことは察していたが、まさかそれを自分の口から暴露するとは。
このことが民に知られれば大変なことになる。

「母上は王妃でありながら不貞行為を働いたと?」
「そうよ?美しい男性から引く手数多だった私が幼い子供と成婚したのは、王妃になれば好きなだけ欲しい物が手に入ると思ったからだもの。それなのに生意気にも私に制限をつけたり説教したり。セルジュを産んであげただけ感謝して欲しいわ」

なんという愚弄の数々。
国王のミシェルを崇拝する監視たちはつい剣を握る。

「その方は母上が王妃だと知っていたのですか?」
「当然でしょう?」
「では母上が王妃だから拒絶できなかったのですか?」
「いいえ?最初は拒否したわ。でも王妃に逆らうなんて許されるはずないでしょう?だから選ばせてあげたの」
「選ばせた?」
「愛する者の命か忠誠を誓う陛下か」

それを聞いたセルジュは壁を殴る。
王妃や母どころかヒトですらない鬼畜の所業に。

「それでその方は愛する者の命を選んだのですね」
「ええ。それまで沢山の命を奪った処刑人がただの庶民の女の命を選ぶなんて笑えるでしょう?最中にもその場に居ない庶民にずっと謝っているからおかしくて仕方なかったわ」

酷いことを。
罪人を処罰する処刑人は心を病む者が多いであって、この女のように人の命を弄んで楽しむ下衆とは違う。
むしろ命を奪う職だからこそ命を尊ぶ者が多い。
まして天秤にかけられたのが愛する者の命ならば、国王への忠誠や国仕えの正義感を捨てても守りたかったのだろう。
それを責めることはできない。

「勇者にも同じように選ばせるつもりだったのですか?」

怒りの伝わるセルジュの袖を軽く摘み落ち着くよう促したドナは話題を勇者のことに変える。

「いいえ?彼は反抗しなかったもの」
「はい?」
「彼を天地戦で死なせるのは惜しいわ。この世の者とは思えないほど美しいのだから。顔が美しいだけではなく体も雪のように真っ白で、潤んだ目とほんのり色づいた頬が愛らしくて」

あの時のことを思い出して興奮気味に話すアルメル。
今まで見た誰よりも愛らしく美しかったと。

「……拐っただけで未遂に終わったのではないのですか?」
「貴方たちが邪魔をしたのよ。いいところだったのに」
「拒否されなかったのですか?」
「拒否なんてされなかったわ。大人しくしてたもの」
「香の名は忘れましたがその所為で動けなかっただけでは」
「ふふ。媚薬香で動けなくとも良さそうにしてたわよ?肌は絹のように滑らかで唇も柔らかかったわ」

ミシリと軋む音のした牢檻。
表情をなくしたドナが柵を掴んでアルメルに顔を寄せる。

「香で動けなくして勇者の肌に触れたのですか?」
「……あら?ドナは彼に好意があるの?」
「答えてください。勇者に触れたのですか?」

初めて見るそのドナの姿にアルメルは笑う。
自分には逆らえずヘラヘラと笑って従っていたドナでもこんな表情をするのかと。

「ええ。体に触れて口付けもしたわ。彼は脱がせても美しかったわよ?でも残念だったわね。幾ら美しいからと言って同性では妃にはできないもの。叶わないのに可哀想に」

柵越しにドナの頬に手を寄せてくすくすと笑うアルメル。
それを聞いてドナの体からフッと力が抜ける。

「最後までは至らなかったようで安心しました」

最後まで行為に及んだのであれば気付かないはずがない。
勇者が半陰陽エルマフロディットであることに。
衣装を脱がせ肌に触れ口付けた事は事実だろうがそこまで。
彼の純潔は穢されていない。

「処刑人に勇者。宮殿に囲った寵臣ちょうしんだけでは飽き足らず、母上は今までどれほどの数の民の命を弄んだのでしょう」
「あら。私はこの国の王妃よ?何か問題があって?」
「王妃ならば命を弄んでもいいと?容姿が美しいからと監禁して恥辱の限りを尽くし捨てる。それが悪事ではないと?」

眉根を顰めるドナにアルメルは笑う。

「ドナ。幾ら偽りの王子でも今日まで王家の一人として生きてきたでしょう?王妃の私の命と平民の命のどちらに価値があると思っているの?民の命は国母の私のもの。私が望んでいるのだから体でも命でもお金でも喜んで差し出すのが当然よ」

国母とは思えないその言葉。
いや、元から国母などではなかったな。

「精神を病み発狂してしまった者、脚や腕や目や舌といった体の一部を失った者、生殖器を失い二度と子宝に恵まれることのなくなった者、体内まで傷付けられ医療具なしには生きられなくなった者、命すらも失った者。母上の愚行により人生を狂わされたその者たちに対しての罪悪感は一切ないと?」

監禁され行為を強要され精神を病むだけでは済まされず、生殖器をズタズタにされ二度と使い物にならなくなった者や子宮を失った者、体の美しい部分を切り取られて捨てられた者や命を奪われ事故として処理された者もいた。
それでも王妃だからと逆らえず被害者は口を閉ざし、宮殿に仕える母の腰巾着どもに悪事の数々を隠蔽された。

「罪悪感?面白いことを言うのね。末路はどうでもみな快楽に浸り楽しんでいたのに何が悪いのかしら」

心から楽しんでいた者など母上と一部の男妾だけだろうに。
その男妾たちは既に罪を償わされたが。

「そうですか。母上のお考えはよく分かりました。色々とお聞かせいただいたので私も少しお応えしましょう」

牢檻の前からスっと離れたドナはくすりと笑う。

「私はドナ・ヴェルデ。正統な王家の血を継ぐ王子です」
「いいえ。ニコラ・ダリエ・エクスピアシオンの子よ」

その名前を聞いて驚いたのは監視たち。
返り血の狂人と呼ばれた処刑人で、数少ない賢者の一人。
真面目な彼は処刑人を続けたがため心を病んで自ら命を絶ったと噂されていたが、まさか命を絶った本当の理由が王妃から不貞行為を強要されたからだったとは。

「母上はその方を脅して不貞行為に及んだのですね」
「貴方の父よ」
「私の父はミシェル・ヴェルデ・ブークリエです」
「強がっても無駄よ。民にこのことが知られたら王家は笑い者になるでしょうね。今まで王子だと思っていた子が実は処刑人の子だったんだもの。浮気をされた国王と処刑人の血を継いだ偽物の王子なんてどんな反応を見れるか楽しみだわ」

心底楽しそうに笑うアルメル。
それを見てドナも笑う。

「……なによ」
「いえ。母上が単純で頭の悪い愚者で良かったと思いまして。私と兄さんの狙い通り面白いくらい煽りに乗って全てを自供してくれたのですから。王家裁判にかける必要もなく」

本来なら王家裁判で聞き出すところを自供してくれた。
勇者を拐ったことも、勇者に媚薬香を使って体の自由を奪ったことも、動けない状態にして手を出したことも。
そのうえ王妃でありながら国王でも男妾でもない者と不貞に及んだことも、その者との子を国王の子として偽ったことも。

「父上や王家が笑いものになる日は来ません。もう一度言いますが、私はヴェルデ王家の血を継ぐ第五王子ですので」
「だから違うと言って」
「その証拠に私は神眼を使えます」
「嘘よ!使える訳ないわ!」
「ではお見せしましょう」

くすりと笑って瞼を閉じたドナ。
その後すぐにゆっくりと瞼をあげる。

「……黄金神眼」

ぽつりと呟いたのは監視の一人。
国仕えでもある彼らは普段話しかけられでもしない限り王家の前で言葉を発することはないが、今回ばかりは仕方ない。
思わず言葉が漏れてしまうほどのことが判明したのだから。

「訓練校へ遊びに行っていただけの母上でも黄金神眼はご存知ですよね?兄さんと私は覚醒して黄金神眼を授かりました」

ヴェルデ王家の血族だけが持つ神眼。
その上の黄金神眼を持つ者はこの国の歴史の中でも極稀。
現国王が覚醒して授かるまで黄金神眼を持つ者は長らく現れていなかったと言うのに。

「信用していただけましたか?私が王家の者だと言うことを。母上は愚かにも父上を裏切り不貞行為に及んだようですが、私はその方との間に出来た子供ではなかったようですね」

その黄金色の瞳は紛れもなヴェルデ王家の血族の証。
監視たちは二妃の戯言を信じた自分を恥じた。

「……そんな馬鹿なことが」

膝から崩れ落ちるアルメル。
王妃予算を増やしてくれないミシェルへの最後の切り札として使うつもりで不貞行為に及びドナを産んだのに。

「違うわ。似てないもの。ドナは陛下と似てない」
「母上の特徴の方が強く出たのでしょうね」
「私にも似てないわよ!」
「ご自身がお腹を痛めて産んだのでは?母上が産んだのではないなら私はどこから来たのでしょう。取り上げた産科医療師の子供ですか?付き添っていた助産師の子供ですか?」

王妃の出産は子を取り上げる女性医療師が二名と助産師三名が付いた状態で王城の一室にて行われ、隣室には万が一の時のために魔法医療師や有識者や護衛たちが控えているのだから、その中で他人の子と入れ替えることなどできない。

「どう見てもドナは母上の子だろうに。髪や瞳の色が母上のそれだ。顔は父上より先代や先々代に似ているように思う」

ああ、言われてみればたしかに。
セルジュの言葉で納得する監視たち。
世の中には容姿の全く似ていない親子は居るし、親には似ず祖父や祖母に似ている子も居る。
違いがあっても何らおかしくない容姿より、何よりの証拠である黄金神眼を持つドナ殿下は国王の御子で間違いない。

「本来ならば私たち王家の者は容易く能力を明かしませんが、見なければ信用できないようでしたので今回だけ。居合わせたことで巻き込んですまないが、諸君には口外を禁ずる」
『はっ』

胸に手をあてドナに頭を垂れる監視たち。
言われずとも王家について他者に口外しないことは国仕えの鉄則だが、居合わせた自分たちを巻き込んですまないと気遣ってくださるドナ殿下はなんとお優しい方なのかと。

「ドナ。話を終えたのなら下がれ」
「はい」

ドナと入れ替わって牢檻の前に立ったセルジュ。

「母上、いや、大罪人アルメル」
「無礼な!王妃の私になんて言い草なの!」
「もう忘れたようだな。一般国民以下の大罪人が王妃を名乗るとは王家への侮辱である。幾つ罪を重ねるつもりだ」

身分を偽ることは罪となる。
それが王家ともなれば罪は重い。

「地上で最も尊き御方である勇者を拐い、卑怯にも薬を用いて純潔を奪おうとしたことが大罪だとの自覚はあるのか?」
「地上で最も尊いなんて大袈裟ね。ただの異界人よ?」

アルメルが鼻で笑うと途端に室内は寒くなる。

「ドナ、鎮まれ。監視にも被害が及ぶ」
「……申し訳ございません」

セルジュの指摘で寒さはなくなる。
ただそれは室内が冷気で寒くなったのではない。
怒りで漏れたドナの強い魔力を肌で感じとってのこと。

「ではその異界人より貴様の方が身分が低いとの自覚は」
「何を言ってるの?私は王妃よ?」
「それは本気で言っているのか?王妃の中で勇者より階級が高いのは正妃のみ。二妃の貴様は身分を凍結される以前から勇者よりも階級が低かった。そんなことも知らないとは」

王妃は国王の一つ下の階級。
そうとしか知識がないのだろう。

「愚かな貴様でも理解できるよう階級順に教えてやろう。この国で定められた身分階級は勇者が召喚された日から変化し、国王、正妃、王太子、勇者の順となる。つまり貴様は自分より階級が高い者を拐い手篭めにしようとしたのだ」

国王以外の王家を大公グランデュークと一纏めにすれば特級国民は一つ下。
けれど実際には国王と正妃と王太子以外は勇者の下になる。
尊さで言えば勇者は国王以上だ。

「そして勇者春雪さまは此度ブークリエ国とアルク国の両陛下の連名にて英雄勲章を賜り初代英雄エローとなられた。学のない貴様は知らないだろうが、地上で唯一両国の陛下より賜る英雄勲章保持者の上の階級はもう両国王陛下しか居ない」

アルメルが幽閉されて時が経った。
その間にも地上は目まぐるしく変わり続けている。

「理解出来ているか?貴様の今の立場が。地上層に生きる全種族共通の保護法に守られた勇者であり英雄でもある人物を拐っただけでなく、卑怯にも薬を用いて手篭めにしようとした。もしそのことが民やアルク国王の耳に入れば、貴様や貴様の一族の処刑は最も残酷で惨たらしい死に様を求められる」

ブークリエ国にとって勇者保護法に違反したアルメルの存在は革命の火種やアルク国との戦の火種でしかない。
だからこそ精神の衰弱が罪人を裁けない理由となってしまう王家裁判以外で裁くために自供が欲しかった。

本人が自供したのであれば裁判に立たせる必要はない。
後は裁くのみ。

「自供は全て記録した。大罪人を前へ」
「はい」

ピリッとした空気。
監視はセルジュとドナが何をしようとしているのか察する。

「鍵を」
「……ドナ殿下、本当にご自分たちの手で」

目の前まで来たドナは監視の言葉に答えず真っ直ぐに見る。
セルジュも同じく背筋を伸ばして牢檻の中を見たまま。
二人のその姿を見て覚悟は決まっているのだと伝わった監視は牢檻の鍵を渡した。

「こ、来ないで!」

監視から受け取った鍵で牢檻を開けて入って来たドナ。
愚かなアルメルでも幽閉をとくためにドナが牢檻に入って来たのではないことくらいは分かる。
壁際に逃げたアルメルに拘束魔法をかけたドナは動けなくなったその体をそっと抱擁する。

「私の実父が母上のような愚かな淫女の誘惑にのってしまう愚者ではなかったことを知れて安心しました」

抱擁したままドナはアルメルの耳元でそう囁く。
監視から見ればそれは親と子の最期の抱擁。
胸が締め付けられるような光景。

「どうやって神眼を手に入れたの!?」
「望めば手に入るような能力ではありません」
「どんな卑怯な手を使ったの!」
「私がヴェルデ王家の者だから得られたというだけです」
「そんなはずない!貴方は陛下の子じゃない!」

ドナに抱えられて牢檻から出されるアルメルは怒鳴る。

アルメルが言う通り。
ドナはミシェルの子ではない。
先々代国王の落胤らくいんであるニコラの子。

けれどそれに気付く者は居ない。
崩御後に成婚したアルメルと先々代国王は繋がりがない。
ニコラという落胤らくいんの存在を知らなければ兄も亡くしたミシェルしかヴェルデ王家の者は居ないのだから気付きようもない。

「元ブークリエ国第二王妃アルメル」
「離しなさい!私は王妃よ!」

セルジュの前に座らせられたアルメルはまだ王妃を名乗る。
それもそのはず。
王妃という身分がなければアルメルには何もないのだから。

「王妃や国母という身分にありながら陛下や寵臣以外と不貞行為に及び、結果的に思い違いではあったが、その際に身篭ったと思っていた赤子を陛下の御子と偽った。陛下のみならず王家や民までも謀った行為は決して許されるものではない」

床に押し付けられたアルメルの頭上から聞こえる言葉。
一切の感情が伝わらない淡々としたその声はまるで他人から発されている言葉のよう。

「また、王太子の目を欺き宮殿から療養中の勇者を拐い、下劣な手段を用いて監禁し心と体に傷をおわせた。これも王位継承権第一位の王太子と勇者保護法で守られた勇者への侮辱行為である」

アルメルの罪は一つだけではない。
一つでも充分極刑となる罪を重ねてきた。

「そして王妃の強い権力を悪用し本来ならば王家の者が守るべき罪のない民を蹂躙して命すらも奪った。たった今語ったばかりの陛下への愚弄の数々も許されない。数々の罪を犯した大罪人に王家はもちろん王妃を名乗る資格などない」

腰に帯刀した剣のグリップを握ったセルジュ。
剣帯ソードフォルダから引き抜かれる剣の鈍い輝きにアルメルは顔を引き攣らせる。

「じ、冗談よね?私は貴方たちの母親よ?」
「大罪人アルメル。貴様にとって最も残酷で惨たらしい死に様は盾や駒でしかなかった我が子の手で葬られることだろう。私とドナは大罪人の子として生まれたことを償い親殺しの業を背負おう。貴様はその身で全精霊族への罪を償え」

押さえつけていた手を離してその手をアルメルに翳すドナ。
セルジュもアルメルに向け剣を構える。

「ブークリエ国第二王子セルジュ・ヴェルデ」
「ブークリエ国第五王子ドナ・ヴェルデ」
「王位継承者権限を行使し貴殿の処刑を執行する」

静かな静かな贖罪エクスピアシオンの塔。

冷たい床に横たわる元王妃と返り血に濡れた王子が二人。
国王や王太子を欺き、自らの子供を盾や駒として扱い、勇者の御身や民の命までも弄んだ非道な王妃はもう居ない。

国のため、王家のため、勇者のため、民のため。
親殺しの業を背負い刑を執行した二人に、監視たちは胸に手をあて深く深く頭を垂れた。
 
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旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

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部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
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不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

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16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

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新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

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「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

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