自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

ハの字

文字の大きさ
26 / 344
第三話「基地を襲撃された際の迎撃方法について」

忍び寄る者

しおりを挟む
「ん、山口か?」

 今しがた役目を終えた通信機を胸ポケットにしまう。部隊長がそちらをを見ると、そこには機士用の搭乗服に迷彩柄のジャケットを来た男、山口がいた。

 じくりと痛む指先を振って冷やそうと試みながら、部隊長は思案する。先月から友好がある他の駐屯地から、研修の名目で送られてきた新人が、何故こんな所にいるのか。怪訝に思ったが、今は指が痛むので特に詰問などもせず、自分は自分で目的の場所へ向けて足を動かし始めた。山口の脇をスルーして「こんなとこいないでさっさと待機戻れよ」とだけ言って、その場から離れようとする。

 しかし、山口は尚も「お待ち下さい!」と追いかけてきて、部隊長の後ろをついてきた。
 絡んでこなければ、今はまだ何も聞かないでやったものを……部隊長は若干煩わしく思いながらも「一体どうした」とそちらを向かずに返事をする。

「山口、機士は全員格納庫で待機のはずだぞ。伝令の真似事なら適当なの捕まえてやらせておけばよかったものを」

「あ、いえ、整備員は手が開いてる方がいらっしゃらなくて、それに、整備班長がすることがないなら今すぐに部隊長を呼んで来るようにと、詳細は聞かされていませんが、急ぎの内容みたいで……」

「……ふむ」

 整備班長からの伝言となると、今出撃しているTkー9絡みだろうか、部隊長は少し考える素振りを見せてから、

「……しかたない、先にそっちいくか」

「では一先ず格納庫へ、自分もそのまま待機に戻りますので」

 言って、山口は早足で部隊長を追い越して、先導するように通路を進み始めた。
 その山口の背中を眺めながら、部隊長は「用事」とやらについて考える。

 通信で伝えずに直接呼び出してくるような、気密性がある内容……とすればまずTk-9と現在の状況についてだろう。

 がしかし、今あの機体について緊急で話すことがあっただろうか。先程発生したフォトンドライブの不具合については、Tkー9のカメラからモニタリングしていたから、原因はわかっている。
 相手がフォトンダイトを大量に放出したことによる、動力部への干渉。外付けの装備に出力のほとんどを回している二番機三番機と違い、一番機は内蔵兵装と機体主動力にフォトンドライブが直結している仕様だ。機体への影響がモロに出る。
 比乃が致命傷を受けたのは、まずそれが原因だ。

 そして、その欠陥については整備班長も部隊長も、とっくに承知済み――だから、どうしようもなかったとは言え、一番機を出撃させたことを後悔しているわけだが――今更、それについて報告を受けるようなことはない。

 部隊長は足を止めると、それに気づいて「どうしました?」と山口が振り返る。
 今二人がいるのは、司令室がある本棟と格納庫の間だった。周囲に人気が全くない通路だ。
 一瞬の間の後、部隊長は山口に問う。

「なぁ山口、こんな時になんだがな。お前が居た第六師団の倉山、あいつから何か言われたことはなかったか?」

「倉山一佐がですか? こんな時に何の話です部隊長、そんなことより」

「良いから、ちょっと言ってみろ」

 部隊長に促され、戸惑うように肩を揺らした山口は言い難そうに、後頭部に手をやって、歯切れが悪く答える。

「その……日野辺陸佐によろしく、と倉山陸佐は仰っていました」

「他には? もっとあるだろ」

「……あそこの師団は変人と馬鹿が多いから気をつけろと、すいません」

 見知った仲からの間接的な言葉とは言え、部下の口からストレートに自分の師団の悪口を言われた部隊長だが、そのことで不快になった様子も見せず。ただ山口をじっと観察するように見据えた。
 先程からほとんど無表情と変わらないその表情からは伺えないが、とある場所に確認を取ったことで生まれた懸念が、いや、明確な違和感の正体が、部隊長の中で形になっていた。

「それだけか」

「それだけ、です。はい」

「ふむ」

 部隊長は痛まない方の手で髭を撫でて、宙空へ視線を向けて考え込み始めてしまう。
 ちょうど直線に長い通路の真ん中。人通りもない、もしも万が一、襲われでもしても誰も助けにこないそんな場所。立ち止まってしまった部隊長に、山口が急かすように近づいて来る。

「どうかしましたか部隊長、それより、早く格納庫へ……」

 それを遮るようにして、髭を撫でながら部隊長が、指令所から出てすぐ、山口と会う前にしていたことについて話し始めた。

「……俺さ、今さっき倉山と秘匿回線で連絡取ったんだよ。ここが襲撃を受けた件でな、そしたらあいつ、可笑しなこと言っててな」

 突然そんなことを言い出した部隊長を無視して、山口はなお歩み寄る。
 そしてその右手が、さり気ない動きでジャケットのポケットへと滑り込み――

「“山口にセクハラとかしてないだろうな”って、変だよなぁ……それじゃあこっちに送った機士が女だったみたいな」

 先程までの上官に大してしどろもどろしていた様子とは打って変わった、精鋭された動作で、音も無く、ぎらりと光るそれを取り出した。そして次の瞬間、相手に向かって深く踏み込んだ。
 相手が何か反応するよりも早く、その手に握った鋭く尖った得物を、隙だらけの脇腹目掛けて一直線に突き込んだのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

処理中です...