自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

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第四十二話「自衛官の反撃について」

フロント攻防戦

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 ホテルの一室、修学旅行生達が持ち込んだ人生ゲームで盛り上がっていると、外からズシン、という何か重量物が歩いたような音が聞こえてきた。

「ん?  なんか今、すごい音しなかったか?」

 一人の男子生徒がそう言って立ち上がる。窓の閉まっているカーテンを横にスライドさせて外を見た。そして、

「……わお」

 短くそう声を漏らして硬まった。その様子を怪訝に思った同室の生徒たちも窓際に寄って、街灯の他に光源がない、真っ暗闇以外何もないはずの外を見た。

「おいおいどうしたよ……うわお」
「すげぇな、なんかの撮影か?」
「それにしちゃあ、人がいないな」

 四人の男子生徒が目撃したのは、住宅地を縫うようにしてこちらに向かってきている、背丈八メートルの鉄の巨人だった。それも、一機や二機ではない。闇の中で動いている巨大な人型は、ここから見える限りだけで五機はいた。
 詳しい人間が見れば、それらがロシア製AMWのトレーヴォとペーチルだと言うことがわかっただろう。だが、この学生たちはミリタリーオタクでもなかったので、とりあえずあれがAMWだということしかわからなかった。

 一人が「くそ、暗くて上手く撮れない」と携帯端末のカメラを向けて四苦八苦し始めたとき、ホテル内の放送スピーカーが電子音を鳴らし、続けて落ち着いた男性の声が流れてきた。

『宿泊中の皆様、現在、当ホテル近郊にて重武装テロが発生致しました。自衛隊の方から、外への避難は大変危険であると連絡を受けましたので、皆様はどうか外へは出ず、二階大食堂に避難してください。繰り返します――』

「おいおい、テロだってよ」
「どうしてこう立て続けに巻き込まれるかなぁ……森羅案件か?」
「とりあえず食堂いこうぜ、ここに居て流れ弾に当たったなんていったら嫌だしな」
「そうだな」

 と、生徒らは特に騒ぎ立てたりパニックを起こすこともなく、貴重品を素早くまとめ、ついでに人生ゲームを収納して小脇に抱えると、さっさと部屋から出て行った。
 歓天喜地高等学校の学生、特に彼ら二年A組の生徒は、普段から騒ぎを起こしたり巻き込まれたりしていた。なので、こういう時は慌てずに冷静に行動した方が良いと、身に染みて理解しているのだ。

 そうして、食堂に集まった歓天喜地高等学校の生徒たちは、それぞれ持ち寄ったゲームなどで、思い思いに暇潰しを始めたのだった。
 その姿を見た一般客たちは「最近の高校生は肝が座ってるなぁ」と、関心したりしていた。

 なお、その中に比乃ら自衛隊組の姿はなかった。

 一人、姿を消した三人を思って心配そうな顔をしていた晃だったが、それに紫蘭やメアリが目敏く気付いて、尋問された。そして事の次第を聞いて紫蘭は激昂していたが、時既に遅しである。

 ***

「で、外に来てる不届き者、どうしますか部隊長?」

「迎撃は可能ですが、流石にこの人数差と装備の差で銃撃戦は避けたい状況であると愚考します」

「そうさな……」

 ホテルの一階、すでにホテルマンも避難した受付カウンターの裏では、部隊長、宇佐美、安久の三人が、持ち込んだ武器を抱えて隠れていた。

 安久がカウンター脇から鏡だけを僅かに露出させ、外の様子を探る。ホテルのロータリーに急停止して止まったのは、スモークガラスの白いハイエースが三台。その中から、銃を持った黒づくめの男たちが降りて来ていた。

 一刻の猶予もない。一分以内には、この建物に突入してくるだろう。

 その間に、部隊長は自分たちが隠れているカウンターの材質を確認した。とりあえず、銃弾は防げると判断すると、二人に告げた。

「よし、遅延作戦を開始する。安久、弾薬は?」

 安久は服の裏に入れてあった大量の予備マガジンを手早く床に並べ、小銃を構えた。

「十分に用意してあります。銃は一丁しかありませんが」

「では牽制は任せる。宇佐美は……流石に遮蔽物がないときついか」

 言われ、宇佐美は肩をすくめて、至極残念そうに、

「そうですね、流石に無策で突撃して蜂の巣にはなりたくないですわ」

「じゃあお前は俺と一緒にグレネーダーな」

 そう言って、部隊長は持ち込んだケースから、掌大サイズの円筒を数個取り出す。
 威力の調整された手榴弾各種であった。通常の爆発物から閃光手榴弾や煙幕弾、何故か焼夷手榴弾まであった。

 宇佐美の目が、面白そうな玩具を見つけたように輝いた。

「とても素敵な物を持ってきてたんですね、部隊長」

「こんなこともあろうとな。相手が踏み込んできたらこいつをしこたま投げつける。安久は一発お見舞いしたら後は奴らがエレベータや階段に近づかないようにしろ。さっき他の班に連絡入れたから、数分耐えれば挟み撃ちにできる」

「了解」
「了解でーす」

 作戦が定まり、二人が返事をした直後。ホテルの自動ドアが開き、物々しい集団が駆け足で突入してきた。目出し帽をつけているので安久たちにはわからなかったが、全員、油断しきっている表情をしている。

 そんな顔をしていた先頭の一人の眉間に、安久がカウンターから素早く身を出して照準。引鉄を引いた瞬間、その男は額に穴を開けて倒れた。

「っ、待ち伏せだ!」

「反撃しろ!」

 流石に訓練を受けているだけあって、不意打ちを受けたにも関わらず、男たちの反応は早かった。間一髪で身を低くして隠れた安久の頭上を、反撃の弾丸がかすめて行く。

 カウンターにもしこたま銃弾が撃ち込まれたが、貫通する気配は全く無かった。

「どういう材質で出来てるんですか、これ」

「ああ、ここのオーナーとは知り合いでな。ホテル建てるなら入り口のカウンターは防弾にしとけって言っといたんだ。アドバイスを素直に聞く奴で助かったな」

 言いながら、部隊長はカウンターから身を乗り出さないように、器用に手榴弾を投擲した。投げつけられた物の正体に気付いた黒づくめの何人かは、慌ててその場から離れたが、射撃に集中していた何人かが爆発に巻き込まれ、吹っ飛ばされて床に倒れた。

「なんてもん持ってやがるんだこのホテルの従業員は?!」

「違う、奴ら自衛隊だ!  こっちの動きが察知されてる!」

「ご名答~」

 宇佐美が部隊長に続いて放り投げたスタングレネードが空中で炸裂、相手が怯んだ内に安久がまた身を乗り出して素早く三点射。二人の敵兵が倒れる。

「数はこっちが上だ!  押せ押せ!」

 ホテル一階のエントランスは、自衛隊とテロリストの攻防戦によって、銃弾と爆発物が飛び交う危険地帯と化した。
 オーナーが見ていたら、修繕費にどれだけの資金が必要かを考えて、頭を抱えていただろう。
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