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夜の畑でBBQ! 笑顔!!
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「リヴィ」
そのとき、庭園の舗道の方から声がした。
ブライアンに連れられて、メルが泣きはらした目をして立っていた。
「ごめん、ちょっと、話、聞こえちゃった」
リヴィは硬直した。いつから聞かれていたのだろう。
だが、魔族は黙って頷いた。今は、黙ってろという目配せだと受け取って、リヴィはとりあえず口を噤んだ。
ドキドキした。
「ごめんね。立ち聞きしちゃった事もだけど、インクを倒したのは私が不注意だったし、リヴィの事叩いたり引っ掻いたりしちゃったし、リヴィも私の鯖缶食べたけど、私もリヴィのもの食べたよね。そういうの、本当、悪かったと思ってる。だから、リヴィ、もう、怒らないで欲しいんだ」
「怒ってないよ」
リヴィは、また、鼻を啜り上げながら答えた。
「怒ってないし、……私も酷かったと思ってる」
夜の闇にひそひそと、娘二人の声はかき消えていった。
ブライアンと名無しは、邪魔にならないように、黙って控えてそこに立っていた。
「じゃあ、リヴィ。私、今日も、リヴィの部屋で寝ていい?」
「うん。……私も、メルが急にいなくなったら、寂しいよ」
「本当?」
「うん」
「よかった……」
メルは、胸の奥から深い呼吸を吐いて、その場にしゃがみこんでしまった。
リヴィは、そのメルの隣に行ってしゃがみ、名無しから貰った、まだ青さの残る野菜をメルに分けてやった。
「後で、一緒に食べよ。野菜って、体にいいんだよ」
「うん」
メルは嬉しそうに快活に笑った。
「そっか。それじゃ、久々に、あれをやるか!」
そこで名無しが豪快に声を上げ、魔道の火を畑の脇に起こした。
魔力で制御されている焚き火は、他のものに燃え移る事はない。
その上に、ビニールハウスの倉庫から取り出してきた鉄板のテーブルを乗せる。
名無しは、青野菜の鉄板焼きを始めた。
「後は、酒、酒……っと」
そのまま、時空系魔道を用いて、自宅から酒を持ってこようとする名無し。
「おい、よせ。リヴィもメルも、高校生だぞ」
「お前が大学生だろうが。いける口なんだろ、顔見りゃ分かる。たまには一緒に飲もうぜ」
「おい--」
ブライアンは弱々しく抵抗の意思を示そうと思ったが、それ以上は後が続かなかった。
何しろ、リヴィとメルの泥仕合を見てしまった後である。野菜のバーベキューに、冷えたビール。飲みたくない訳がない。
一方、リヴィとメルは、何やら、きゃいきゃいした雰囲気で、「野菜を使ったスイーツ作るならぁ~」みたいな尻上がりの会話をしていた。
「全く、もう」
ブライアンは、呆れ笑いをしてしまった。
そうしている間に、魔族は魔族だけに伝わる呪文で、自宅へ空間を繋いでよく冷えたビールやジュースを取ってきてしまった。
そういう訳で、急遽、野菜の鉄板焼きパーティが開かれ、リヴィとメルは、無事に和睦を結ぶ事が出来たのである。
大混戦を乗り越えたリヴィとメルは、また、強い友情の絆を得た。
の。
だ。
が。
当たり前だが、霊素呪文は大幅に遅れる事になり、霊素呪文が遅れれば、それだけ他の予定もズレこんで、スケジュール管理は大変な混乱具合になって、涙ぐましい努力の行軍はまだまだ続く事になったのであった。
そんな中で、今日取った青野菜と酒の力が、二人の娘のピチピチお肌にどれぐらいの効力を発揮したかというと……。
うまい野菜と酒は、勿論、立派な効力を発揮するとしか、言いようがなかった。
少なくとも、二人の顔には、若さ弾ける眩しい笑顔が戻ったのであるから。
そのとき、庭園の舗道の方から声がした。
ブライアンに連れられて、メルが泣きはらした目をして立っていた。
「ごめん、ちょっと、話、聞こえちゃった」
リヴィは硬直した。いつから聞かれていたのだろう。
だが、魔族は黙って頷いた。今は、黙ってろという目配せだと受け取って、リヴィはとりあえず口を噤んだ。
ドキドキした。
「ごめんね。立ち聞きしちゃった事もだけど、インクを倒したのは私が不注意だったし、リヴィの事叩いたり引っ掻いたりしちゃったし、リヴィも私の鯖缶食べたけど、私もリヴィのもの食べたよね。そういうの、本当、悪かったと思ってる。だから、リヴィ、もう、怒らないで欲しいんだ」
「怒ってないよ」
リヴィは、また、鼻を啜り上げながら答えた。
「怒ってないし、……私も酷かったと思ってる」
夜の闇にひそひそと、娘二人の声はかき消えていった。
ブライアンと名無しは、邪魔にならないように、黙って控えてそこに立っていた。
「じゃあ、リヴィ。私、今日も、リヴィの部屋で寝ていい?」
「うん。……私も、メルが急にいなくなったら、寂しいよ」
「本当?」
「うん」
「よかった……」
メルは、胸の奥から深い呼吸を吐いて、その場にしゃがみこんでしまった。
リヴィは、そのメルの隣に行ってしゃがみ、名無しから貰った、まだ青さの残る野菜をメルに分けてやった。
「後で、一緒に食べよ。野菜って、体にいいんだよ」
「うん」
メルは嬉しそうに快活に笑った。
「そっか。それじゃ、久々に、あれをやるか!」
そこで名無しが豪快に声を上げ、魔道の火を畑の脇に起こした。
魔力で制御されている焚き火は、他のものに燃え移る事はない。
その上に、ビニールハウスの倉庫から取り出してきた鉄板のテーブルを乗せる。
名無しは、青野菜の鉄板焼きを始めた。
「後は、酒、酒……っと」
そのまま、時空系魔道を用いて、自宅から酒を持ってこようとする名無し。
「おい、よせ。リヴィもメルも、高校生だぞ」
「お前が大学生だろうが。いける口なんだろ、顔見りゃ分かる。たまには一緒に飲もうぜ」
「おい--」
ブライアンは弱々しく抵抗の意思を示そうと思ったが、それ以上は後が続かなかった。
何しろ、リヴィとメルの泥仕合を見てしまった後である。野菜のバーベキューに、冷えたビール。飲みたくない訳がない。
一方、リヴィとメルは、何やら、きゃいきゃいした雰囲気で、「野菜を使ったスイーツ作るならぁ~」みたいな尻上がりの会話をしていた。
「全く、もう」
ブライアンは、呆れ笑いをしてしまった。
そうしている間に、魔族は魔族だけに伝わる呪文で、自宅へ空間を繋いでよく冷えたビールやジュースを取ってきてしまった。
そういう訳で、急遽、野菜の鉄板焼きパーティが開かれ、リヴィとメルは、無事に和睦を結ぶ事が出来たのである。
大混戦を乗り越えたリヴィとメルは、また、強い友情の絆を得た。
の。
だ。
が。
当たり前だが、霊素呪文は大幅に遅れる事になり、霊素呪文が遅れれば、それだけ他の予定もズレこんで、スケジュール管理は大変な混乱具合になって、涙ぐましい努力の行軍はまだまだ続く事になったのであった。
そんな中で、今日取った青野菜と酒の力が、二人の娘のピチピチお肌にどれぐらいの効力を発揮したかというと……。
うまい野菜と酒は、勿論、立派な効力を発揮するとしか、言いようがなかった。
少なくとも、二人の顔には、若さ弾ける眩しい笑顔が戻ったのであるから。
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