亡国の王子に下賜された神子

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祠の村

領主様の迷い

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領主様のお屋敷に入り、領主様に事の経緯を話した。
教授の書庫を見せて欲しいとの願いもアッサリと了承された。

「やっぱり…。おかしいとは思っていたのよ。」
と領主様は呟いた。

「禍を感じていた、そういう事ですか?」
レオの問いに、違うと首を横に振った。

「おそらくだけど、夫があまり近付くなと言ったのは私が女だからよ。女性を護るユレの祠なのになんで?って思ったのよ。」

夏至の日に男子に託宣を与えるハマに対し、ユレは冬至の日に女子に託宣を与えるのだそうだ。

フロー村に嫁いですぐにフローレンス様を身籠った領主様は、懐妊中は祠に近づく事を控える様に夫である前の領主様から言われたそうだ。
過去に幾度か懐妊していた女性が祠に行くと気分が悪くなることが続いて、それを心配したのだった。

出産を終えられてからは儀式へ参加する様になったが、初めての時に不快さを感じてしまった領主様はそれ以後、どうしてもの儀式以外は行かなくなったし、夫もそれを認めていた。

「私は、安産を願ってユレの大地に行く地域の生まれなの。」
「ノースフォーク、ですか?」
「詳しいのね、その通りよ。」

ハマが眠るハマーン湖の様にユレが眠るとされるのがノースフォーク国にあるユレーン山だそうだ。

ご領主様の夫が事故で亡くなったのがフローレンス様が4歳の時、それから12年、女伯爵となりこの村を護ってきたそうだ。

「満足に畑を耕す事も出来ないくせに、何もわからないのに、領主としての務めを死に物狂いでやってきたつもりだったけれど、大切なことが足りてなかったって事よね。
本当私はダメね。

神子様を見つけていただかなければ、きっともっと酷いことになっていたのでしょうね。」

と落ち込まれてしまわれた。

「ねえ、レオ。やっぱりもう一度見に行きたいわ。」

教授が調べ物をしている間、暇だし。
「少しずつ禍を吸収キュイエして結晶ドュシエしながら。限界を感じたらそこで止めるから。お願い、行かせて。」

レオは私を止めなかった。
「ああ、わかった。でも一緒に俺も行く。辛くなったらそこで引き返す。いいね。」

うん、ありがとう。


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