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アコマコ
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カウンターに座っていた、妙に場にそぐわない派手な服を着た女性が、
「健太、そろそろ貸して!」
とテーブル席に移ってきた。
「マコさん、もうすっか?もうちょっと…」
「早くしないと、ユウ降りてきちゃう。」
仕方ないなぁ、とゾロゾロとみんなが立ち上がる。
俺の正面にマコ姉とユキが呼んでいる麻琴さん、俺の隣に座ったのはユキがアコ姉と呼んでいる彩子さん。
「初めまして。ユウが迷惑掛けてすみませんね。」
から始まった俺達の会話は、初対面とは思えない重たい話のオンパレードになった。
「今ね、病院で、あの子の親と、うちの親と、岸野のおじさん達と、今後のことを話し合ってる。」
あの子ってのはきっと拓郎くんの彼女の事だろう。
「ユキのご両親も?」
「うん、ユウも巻き込まれ当事者だから。」
「なるほど…。」
「3回目だっけ?」
「そう、その時から向こうの主治医にウチの両親も呼ばれるようになった。」
2人の姉達は記憶を摺り合わせながら俺におしえてくれる。
拓郎くんの彼女の治療には優希の存在が大きく関わってくること。
おそらく、拓郎とユキも…共依存関係なのかもしれない、と主治医とご両親は考えていること。
拓郎くんと彼女の乖離の手始めとして同棲を解消し、拓郎くんが実家に戻ってくること。
だからユキは実家を出た方がいいんじゃないかとご家族は思っていること。
そして、
「ウチら近いんだよね。親にとっても拓郎は子供みたいなもんで、岸野のおじさんやおばさんにもユウは子供みたいなもんだから。
私にとっても拓郎は弟みたいなもの。」
「わかります。」
「ウチの親は、2人には幸せでいて欲しいんだよ。
例え2人が一緒になれなくても、ね。」
正直、拓郎が彼女と幸せに暮らせるならそれでもいい。
優希と拓郎が寄り添って幸せになれるならそれでもいい。
「でも、きっとユウは拓郎じゃ、もう幸せにはなれない。
拓郎の為なら自己犠牲を苦にしない。
もうさ、そんなの見てらんないじゃん。
んで、そこに野上さんが現れたって訳。
私達からのお願い。
拓郎との事、許してやってくれないかなぁ。」
「そのつもりです。」
そっかぁ、と2人の姉達は笑顔になった。
漸く肩の荷物が下ろせた、そんな様子にも見えた。
「ユウの荷物送るから住所教えてくれる?」
「いいですよ。」
側にあったコースターにサラサラと住所とついでに携帯番号も書いて渡した。
「あー!マコさんズルい!野上からサイン貰ってる!!」
横から見ていたのか誰かが指摘してきた。
「煩い!違うから!!」
「違わない!見たもん!ズルい!!」
ズルいズルいの大合唱にどうやら麻琴さんは少しキレたらしい。
「違いまーす。これは連絡先でーす!」
「もっとズルい!!」
「いーでしょ?」
と見せびらかすように、渡したコースターをヒラヒラと振ってみせる。
「サインなら書きますよ。」
というと、未使用のコースターがドサッっと目の前に置かれた。
「俺、芳朗。拓郎のアニキみたいなもんで、ユウの兄貴!!」
「逆だろ!!」
容赦ない麻琴さんと綾子さんのツッコミが芳朗さんに放たれた。
「まあ、とりあえずこれからよろしく、陵。」
と麻琴さんは握手を求めてきた。
はっ?いきなり呼び捨て!?
「ここじゃ、野球部員は名前の呼び捨てなの。
ユウ、あんたのマネージャーでしょう?」
はははと、笑うしかない。
「よろしくお願いします。」
とひとりの兄と2人の姉と、握手をさせて貰った。
「健太、そろそろ貸して!」
とテーブル席に移ってきた。
「マコさん、もうすっか?もうちょっと…」
「早くしないと、ユウ降りてきちゃう。」
仕方ないなぁ、とゾロゾロとみんなが立ち上がる。
俺の正面にマコ姉とユキが呼んでいる麻琴さん、俺の隣に座ったのはユキがアコ姉と呼んでいる彩子さん。
「初めまして。ユウが迷惑掛けてすみませんね。」
から始まった俺達の会話は、初対面とは思えない重たい話のオンパレードになった。
「今ね、病院で、あの子の親と、うちの親と、岸野のおじさん達と、今後のことを話し合ってる。」
あの子ってのはきっと拓郎くんの彼女の事だろう。
「ユキのご両親も?」
「うん、ユウも巻き込まれ当事者だから。」
「なるほど…。」
「3回目だっけ?」
「そう、その時から向こうの主治医にウチの両親も呼ばれるようになった。」
2人の姉達は記憶を摺り合わせながら俺におしえてくれる。
拓郎くんの彼女の治療には優希の存在が大きく関わってくること。
おそらく、拓郎とユキも…共依存関係なのかもしれない、と主治医とご両親は考えていること。
拓郎くんと彼女の乖離の手始めとして同棲を解消し、拓郎くんが実家に戻ってくること。
だからユキは実家を出た方がいいんじゃないかとご家族は思っていること。
そして、
「ウチら近いんだよね。親にとっても拓郎は子供みたいなもんで、岸野のおじさんやおばさんにもユウは子供みたいなもんだから。
私にとっても拓郎は弟みたいなもの。」
「わかります。」
「ウチの親は、2人には幸せでいて欲しいんだよ。
例え2人が一緒になれなくても、ね。」
正直、拓郎が彼女と幸せに暮らせるならそれでもいい。
優希と拓郎が寄り添って幸せになれるならそれでもいい。
「でも、きっとユウは拓郎じゃ、もう幸せにはなれない。
拓郎の為なら自己犠牲を苦にしない。
もうさ、そんなの見てらんないじゃん。
んで、そこに野上さんが現れたって訳。
私達からのお願い。
拓郎との事、許してやってくれないかなぁ。」
「そのつもりです。」
そっかぁ、と2人の姉達は笑顔になった。
漸く肩の荷物が下ろせた、そんな様子にも見えた。
「ユウの荷物送るから住所教えてくれる?」
「いいですよ。」
側にあったコースターにサラサラと住所とついでに携帯番号も書いて渡した。
「あー!マコさんズルい!野上からサイン貰ってる!!」
横から見ていたのか誰かが指摘してきた。
「煩い!違うから!!」
「違わない!見たもん!ズルい!!」
ズルいズルいの大合唱にどうやら麻琴さんは少しキレたらしい。
「違いまーす。これは連絡先でーす!」
「もっとズルい!!」
「いーでしょ?」
と見せびらかすように、渡したコースターをヒラヒラと振ってみせる。
「サインなら書きますよ。」
というと、未使用のコースターがドサッっと目の前に置かれた。
「俺、芳朗。拓郎のアニキみたいなもんで、ユウの兄貴!!」
「逆だろ!!」
容赦ない麻琴さんと綾子さんのツッコミが芳朗さんに放たれた。
「まあ、とりあえずこれからよろしく、陵。」
と麻琴さんは握手を求めてきた。
はっ?いきなり呼び捨て!?
「ここじゃ、野球部員は名前の呼び捨てなの。
ユウ、あんたのマネージャーでしょう?」
はははと、笑うしかない。
「よろしくお願いします。」
とひとりの兄と2人の姉と、握手をさせて貰った。
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