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幕間 探求心、止まることを知らず
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翌朝。
窓から射し込む光に目を覚まし、ジャンはベッドから起き上がった。
日の高さからすると、もう昼近いだろうか。
「んー、よく寝た」
大きく伸びをすると、そのまま部屋を出た。
それから洗面所へ行き、顔を洗う。水で濡れた顔をタオルで拭いていると、なにかが鏡に映った。
「ん?」
その洗面所の鏡に映った茶髪黒目の少女を見て、ジャンは口角を上げた。
「なんだ、結局いるんじゃん」
するとコリーは人差し指を胸の前で合わせながら、「あの……その……」と言いよどんでいた。
「なに?」
振り返ってジャンが聞き返すと、コリーはすまなそうな表情で、
「昨日はごめんなさい。あのあと、マスターに会って言われたの。ジャンは人のことなんてお構いなしのところがあるし、気まぐれな奴だからしかたないって」
「はは……」
ジャンはただ苦笑するだけだった。
(マスターめ、あることないこと吹き込んだな)
そんな思いをよそに、コリーは続けた。
「マスターの話をきいて思ったの。世の中にはいろんな人がいるんだなって」
「そりゃね」
「……でも、そんなすぐには受け入れられない。だって、ジャンの考え方は私の考え方と全く正反対なんだもの」
「……」
ジャンが黙っていると、コリーは振り絞るような声で呟いた。
「だけど、あなたはブイオの手から助けてくれた。遺跡まで来てくれた。その恩は返すわ。じゃなきゃ私の信念に反するもの」
「って言うと?」
それにコリーは小さく笑った。
「少しだけ聞いたの。ジャンがずっと追い求めてる黄金郷の話」
「それじゃあ」
ジャンが呟くと、コリーは手を差し出した。
「協力してあげる。黄金郷を探し出すまでの間だけど、よろしく」
「ああ」
ジャンはその手を取り、握り返した。
とそこで、コリーはなにかを思い出したかのように「あっ」と言って、その手をほどいた。
そしてそのまま洗面所から出て行ってしまう。
わけがわからず首をかしげていると、彼女は手に新聞を持って戻ってきた。
「あの、今朝の新聞なんだけど。ここ、見て」
「んん?」
ジャンはコリーが指さした記事を見る。
そこには見出しでこんなことが書かれていた。
「なりきり詐欺容疑で男性一人逮捕。
ヴァナレイク警察は、詐欺容疑で、イル・アートフル被告(二〇)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は病院近くを歩いていた老人に、身内の振りをし、肩の傷のようなものを見せて負傷者を装い、医療費二万リアンを詐取しようとした疑い。
警備員が不審な動きをするアートフル容疑者を発見、監視していたところ犯行におよんだ模様。
署の生活経済課によると、調べに対して、アートフル容疑者は容疑を認めているという……って、これって」
ジャンがコリーの方を見ると、彼女はゆっくりと頷いた。
「間違いなく、彼よ」
それからほっとしたような表情で、
「無事でよかった」
「って、気にするの、そこ?」
思わず言うと、コリーはきょとんとして首をかしげた。
「他になにがあるの?」
「いや、なにって……」
捕まってよかったとか、これで詐欺に引っかからなくなるとか、いろいろあるだろと言いかけて、ジャンはやめた。
これ以上なにか言ってもめるのも面倒だし、第一空腹でそんなことをする元気もなかった。
ジャンは腹をおさえて、
「ああまあいいや。それよりも腹減ったし、なんか食べる物なかったっけな」
彼女の横を通り過ぎ、台所へと向かった。
「あ、ちょっと!」
コリーが後に続き、台所まで入ってくる。
「食べ物なら、その流しの横にサンドウィッチが置いてあるわ。今朝、ご飯のあとにマスターが持ってきてくれたの」
彼女が指さしたさきには、透明のふたが被された山盛りのサンドウィッチがあった。
「さすがマスター、気が利く」
ジャンはふたをどけてそのサンドウィッチを一つ頬張った。
「ん、うま」
その様子を見ていたコリーが続けた。
「それで、そのときにマスターが、ちょっと話があるから起きたら一階に来てくれって言ってた」
「話?」
冷蔵庫から牛乳を取り出し、ガラスのコップに注ぎながらジャンは聞き返した。
すると、コリーは小さく呟いた。
「うん。なんかスティルトン家の地下迷宮がどうとか言ってたけど」
それに、コップを持った手がとまる。
「……まじで?」
ジャンは彼女をまっすぐ見つめ、問い正した。
コリーは不思議そうな表情のまま頷いた。
「うん」
それを確認すると、ジャンはいっきに牛乳を飲み干し、コップを流しに入れた。
そしてそのまま、台所を足早に出る。
「こうしちゃいられないな。早くマスターのところへ行かないと」
「え、ちょっと。なんなのいったい」
後から小走りでついてきたコリーに、ジャンは笑うと、早口で言った。
「話はあとあと。早くしないと、お宝が逃げちゃうからな」
そして、ジャンとコリーは家をあとにした。
窓から射し込む光に目を覚まし、ジャンはベッドから起き上がった。
日の高さからすると、もう昼近いだろうか。
「んー、よく寝た」
大きく伸びをすると、そのまま部屋を出た。
それから洗面所へ行き、顔を洗う。水で濡れた顔をタオルで拭いていると、なにかが鏡に映った。
「ん?」
その洗面所の鏡に映った茶髪黒目の少女を見て、ジャンは口角を上げた。
「なんだ、結局いるんじゃん」
するとコリーは人差し指を胸の前で合わせながら、「あの……その……」と言いよどんでいた。
「なに?」
振り返ってジャンが聞き返すと、コリーはすまなそうな表情で、
「昨日はごめんなさい。あのあと、マスターに会って言われたの。ジャンは人のことなんてお構いなしのところがあるし、気まぐれな奴だからしかたないって」
「はは……」
ジャンはただ苦笑するだけだった。
(マスターめ、あることないこと吹き込んだな)
そんな思いをよそに、コリーは続けた。
「マスターの話をきいて思ったの。世の中にはいろんな人がいるんだなって」
「そりゃね」
「……でも、そんなすぐには受け入れられない。だって、ジャンの考え方は私の考え方と全く正反対なんだもの」
「……」
ジャンが黙っていると、コリーは振り絞るような声で呟いた。
「だけど、あなたはブイオの手から助けてくれた。遺跡まで来てくれた。その恩は返すわ。じゃなきゃ私の信念に反するもの」
「って言うと?」
それにコリーは小さく笑った。
「少しだけ聞いたの。ジャンがずっと追い求めてる黄金郷の話」
「それじゃあ」
ジャンが呟くと、コリーは手を差し出した。
「協力してあげる。黄金郷を探し出すまでの間だけど、よろしく」
「ああ」
ジャンはその手を取り、握り返した。
とそこで、コリーはなにかを思い出したかのように「あっ」と言って、その手をほどいた。
そしてそのまま洗面所から出て行ってしまう。
わけがわからず首をかしげていると、彼女は手に新聞を持って戻ってきた。
「あの、今朝の新聞なんだけど。ここ、見て」
「んん?」
ジャンはコリーが指さした記事を見る。
そこには見出しでこんなことが書かれていた。
「なりきり詐欺容疑で男性一人逮捕。
ヴァナレイク警察は、詐欺容疑で、イル・アートフル被告(二〇)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は病院近くを歩いていた老人に、身内の振りをし、肩の傷のようなものを見せて負傷者を装い、医療費二万リアンを詐取しようとした疑い。
警備員が不審な動きをするアートフル容疑者を発見、監視していたところ犯行におよんだ模様。
署の生活経済課によると、調べに対して、アートフル容疑者は容疑を認めているという……って、これって」
ジャンがコリーの方を見ると、彼女はゆっくりと頷いた。
「間違いなく、彼よ」
それからほっとしたような表情で、
「無事でよかった」
「って、気にするの、そこ?」
思わず言うと、コリーはきょとんとして首をかしげた。
「他になにがあるの?」
「いや、なにって……」
捕まってよかったとか、これで詐欺に引っかからなくなるとか、いろいろあるだろと言いかけて、ジャンはやめた。
これ以上なにか言ってもめるのも面倒だし、第一空腹でそんなことをする元気もなかった。
ジャンは腹をおさえて、
「ああまあいいや。それよりも腹減ったし、なんか食べる物なかったっけな」
彼女の横を通り過ぎ、台所へと向かった。
「あ、ちょっと!」
コリーが後に続き、台所まで入ってくる。
「食べ物なら、その流しの横にサンドウィッチが置いてあるわ。今朝、ご飯のあとにマスターが持ってきてくれたの」
彼女が指さしたさきには、透明のふたが被された山盛りのサンドウィッチがあった。
「さすがマスター、気が利く」
ジャンはふたをどけてそのサンドウィッチを一つ頬張った。
「ん、うま」
その様子を見ていたコリーが続けた。
「それで、そのときにマスターが、ちょっと話があるから起きたら一階に来てくれって言ってた」
「話?」
冷蔵庫から牛乳を取り出し、ガラスのコップに注ぎながらジャンは聞き返した。
すると、コリーは小さく呟いた。
「うん。なんかスティルトン家の地下迷宮がどうとか言ってたけど」
それに、コップを持った手がとまる。
「……まじで?」
ジャンは彼女をまっすぐ見つめ、問い正した。
コリーは不思議そうな表情のまま頷いた。
「うん」
それを確認すると、ジャンはいっきに牛乳を飲み干し、コップを流しに入れた。
そしてそのまま、台所を足早に出る。
「こうしちゃいられないな。早くマスターのところへ行かないと」
「え、ちょっと。なんなのいったい」
後から小走りでついてきたコリーに、ジャンは笑うと、早口で言った。
「話はあとあと。早くしないと、お宝が逃げちゃうからな」
そして、ジャンとコリーは家をあとにした。
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