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二年目、六歳
第76話 再び、温度計を作るの。
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レイニィは、城塞都市セットから、首都シャインで一泊して港町ライズに帰って来ていた。
首都シャインでは、雷神鳥の卵を取ってきたことに、国主のファインがとても喜び、遠慮したのに卵を高額で買い取ってくれた。
レイニィはそれをパーティーで狩ったのだからと、三等分したのだった。
当然、その場にいたサニィは、倒したのはレイニィだからと受け取ろうとしなかったが、パーティーなら受け取って当然だとレイニィが主張し、ファインもその方がいいだろうとレイニィに賛同したため、サニィも折れる形となった。
なお、ウォーミィにはファインが送金してくれることになった。
港町ライズに戻って、レイニィが始めたのは温度計作りであった。
「ミスティお姉ちゃん。温度計を作るから材料頂戴なの」
「なんですか藪から棒に。ガラスならそこにありますよ」
「今度は、ガラスじゃなくて金属が二種類欲しいの」
「金属ですか。何がいいの。ミスリル?」
「温度によって膨張するものと、膨張しないものの二種類なの」
「どれも温度によって膨張すると思うけど、その差が大きければいいのかしら?」
「その通りなの!」
「そうなると、膨張するのがオリハルコンで膨張しないのがヒヒイロカネかしら――」
(ファンタジー、来たー! ミスリルに続いてオリハルコンにヒヒイロカネか。これならアダマンタイトもありそうね)
「オリハルコンとヒヒイロカネがあるの」
「残念ながらそんな貴重なもの手元にないわよ」
「やっぱり希少なの?」
「そうね。なかなか手に入らないわ」
「そうなの。他の物でどうにかならないの?」
「他の物ね――。黄銅と不変鋼(インバー)でどうかしら」
(真鍮はともかく、なんでインバーがあるのよ。どういう発展の仕方をしたのかしら?)
インバーは鉄とニッケルの合金で、日本語では不変鋼とも呼ばれ、熱膨張率が小さいことが特徴である。これを発見した物理学者はノーベル賞を受賞している。
「それでお願いなの」
「はいはい。黄銅と不変鋼ね」
ミスティは、その辺のみるからにゴミの山を漁って金属の塊を二つ見つけ出す。
「それじゃあこれね」
「ありがとうなの」
レイニィは、その二つを受け取ると魔法で加工していく。
「いつ見ても魔法って便利ねー」
「お姉ちゃんも、先生に教わっているはずなの」
「なかなかうまくいかないのよ。肩凝りは良くなったけど……」
「肩凝り?」
「レイニィには、まだ関係ないことよ――。それより集中しないと危ないわよ」
「おっと。集中、集中。二つの金属を薄く伸ばして、長い板状にして、それを貼り合わせるの」
「貼り合わせるのね――」
「そうなの。バイメタルといって、温度によって反るようになるの」
「へー。その反り具合で温度がわかるようになるのね?」
「一方を固定し、もう片方に針を付けておけば、わかりやすいの」
「なるほどねー」
「でも今回はこれで終わりではないの」
「まだ続きがあるの?」
「この針の先にインクを付けて、そこを紙が時間と共に移動するようにするの」
「まあ凄い。自動で温度の変化を記録できるのね!」
「そうなの。これで時間毎の温度の変化も確認できるようになるの」
レイニィは時計を改造して、紙を送る装置を完成させ、自記温度計を作り上げたのだった。
首都シャインでは、雷神鳥の卵を取ってきたことに、国主のファインがとても喜び、遠慮したのに卵を高額で買い取ってくれた。
レイニィはそれをパーティーで狩ったのだからと、三等分したのだった。
当然、その場にいたサニィは、倒したのはレイニィだからと受け取ろうとしなかったが、パーティーなら受け取って当然だとレイニィが主張し、ファインもその方がいいだろうとレイニィに賛同したため、サニィも折れる形となった。
なお、ウォーミィにはファインが送金してくれることになった。
港町ライズに戻って、レイニィが始めたのは温度計作りであった。
「ミスティお姉ちゃん。温度計を作るから材料頂戴なの」
「なんですか藪から棒に。ガラスならそこにありますよ」
「今度は、ガラスじゃなくて金属が二種類欲しいの」
「金属ですか。何がいいの。ミスリル?」
「温度によって膨張するものと、膨張しないものの二種類なの」
「どれも温度によって膨張すると思うけど、その差が大きければいいのかしら?」
「その通りなの!」
「そうなると、膨張するのがオリハルコンで膨張しないのがヒヒイロカネかしら――」
(ファンタジー、来たー! ミスリルに続いてオリハルコンにヒヒイロカネか。これならアダマンタイトもありそうね)
「オリハルコンとヒヒイロカネがあるの」
「残念ながらそんな貴重なもの手元にないわよ」
「やっぱり希少なの?」
「そうね。なかなか手に入らないわ」
「そうなの。他の物でどうにかならないの?」
「他の物ね――。黄銅と不変鋼(インバー)でどうかしら」
(真鍮はともかく、なんでインバーがあるのよ。どういう発展の仕方をしたのかしら?)
インバーは鉄とニッケルの合金で、日本語では不変鋼とも呼ばれ、熱膨張率が小さいことが特徴である。これを発見した物理学者はノーベル賞を受賞している。
「それでお願いなの」
「はいはい。黄銅と不変鋼ね」
ミスティは、その辺のみるからにゴミの山を漁って金属の塊を二つ見つけ出す。
「それじゃあこれね」
「ありがとうなの」
レイニィは、その二つを受け取ると魔法で加工していく。
「いつ見ても魔法って便利ねー」
「お姉ちゃんも、先生に教わっているはずなの」
「なかなかうまくいかないのよ。肩凝りは良くなったけど……」
「肩凝り?」
「レイニィには、まだ関係ないことよ――。それより集中しないと危ないわよ」
「おっと。集中、集中。二つの金属を薄く伸ばして、長い板状にして、それを貼り合わせるの」
「貼り合わせるのね――」
「そうなの。バイメタルといって、温度によって反るようになるの」
「へー。その反り具合で温度がわかるようになるのね?」
「一方を固定し、もう片方に針を付けておけば、わかりやすいの」
「なるほどねー」
「でも今回はこれで終わりではないの」
「まだ続きがあるの?」
「この針の先にインクを付けて、そこを紙が時間と共に移動するようにするの」
「まあ凄い。自動で温度の変化を記録できるのね!」
「そうなの。これで時間毎の温度の変化も確認できるようになるの」
レイニィは時計を改造して、紙を送る装置を完成させ、自記温度計を作り上げたのだった。
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