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二年目、六歳
第84話 救援要請なの。
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季節は夏真盛り。
レイニィは朝から熱気球のメンテナンスをしていた。
それというのも、そろそろ台風シーズン。
いつ台風が来てもいいように備えてのことであった。
今年こそは暴風龍と仲良くなる!
去年のリベンジにレイニィは燃えていた。
レイニィが燃えていようと、真夏は暑い。
作業をするなら、午前中の涼しい時間に限る。午後からはゆっくりお昼寝だ。
そのためにも、レイニィはさっさと作業を進めていた。
といっても、レイニィは指示をだすだけで、実際に作業をしているのは元勇者だ。
先日、レイニィが悪魔に襲われたのは、元勇者から情報が漏れたためだ。
レイニィは元勇者を呼びつけて文句を言った。
そして、元勇者はレイニィに謝罪し、今は小間使いとしてレイニィに扱き使われている。
熱気球のメンテナンスも済み、次に何を元勇者にやらせようかと屋敷の方を見ると、丁度、早馬がやって来たところだった。
乗っていた男は屋敷に駆け込んでいった。
「何事かしら?」
何やら、屋敷から慌ただしい雰囲気が漂って来た。
レイニィが元勇者に構わず屋敷の方を見ていると、侍女のスノウィがこちらに走って来る。
「レイニィ様。大変です!」
「そんなに慌てて、何事なの?」
「城塞都市セットから救援要請です」
「ウォーミィのところから救援要請? 何があったの?!」
「火山が噴火したようです。詳しくは伝令の方に聞いてください」
「伝令は屋敷の中にいるの?」
「はい、今、応接室で領主様が話を聞いています」
「わかったの。応接室に急ぐの」
レイニィは急ぎ、応接室に向かった。元勇者も後を追った。
応接室では、領主のゲイルが伝令から大体のあらましを聞き終えたところだった。
「お父様、火山が噴火して、救援要請がきたと聞いたの!」
「その通りだ。城塞都市セットから南西にあるクレア火山が噴火した。それで、麓にあった集落の一つが、流れ出た溶岩に囲まれて孤立してしまったそうだ」
「二十人足らずの小さな集落なのですが、溶岩に囲まれてしまい、住民が脱出出来なくなってしまいました。今は小康状態なのですが、また、噴火活動が活発になれば、次は集落ごと溶岩に飲み込まれてしまうかもしれません。どうか、レイニィ様の熱気球で助け出してください」
伝令がレイニィに向かって頭を下げる。
「大体の事情はわかったの。急いだほうが良さそうなの。直ぐに出発するの」
「ありがとうございます。レイニィ様」
レイニィは庭でメンテナンス済みの熱気球を神の封筒に収納すると、裏山に急いだ。
「レイニィ様。熱気球で行くのではないのですか?」
スノウィがレイニィの後を追いながら疑問に思い質問した。
「緊急事態なの。少しでも早く行くために、研究中のあれを使うの」
「おい、まさかあれを使うのか。まだあれは実験も済んでないだろう。第一、人が乗るようには出来ていないぞ」
元勇者が慌ててレイニィを止めようとする。が、レイニィは止める気はないようだ。
「別に座席なんていらないの。壁にへばりついて立っていればすぐ着くの。乗りたくないなら、あなたは留守番で構わないの」
「へばりついてって――。何でこんな時にエルダは屋敷にいないんだ! 俺だけじゃレイニィを止められないぞ」
家庭教師でレイニィのストッパー役のエルダは、姉のミスティと一緒にガラス工房に行っており、ちょうど屋敷を留守にしていた。
「レイニィ様、これって乗り物だったんですか?」
スノウィの目の前には、レイニィが更地にしてしまった森に、何百メートルにわたりレールが敷かれ、その上には流線型の「箱?」が置かれていた。
レイニィは、将来的に気象衛星を打ち上げようと、リニアモーターによる、射出カタパルトの研究をしていた。
これは、その実験装置である。
もちろん、計画、設計したのはレイニィであるが、資材を持って来て、作り上げたのは元勇者である。
「人を乗せるように作っていたわけではないの。でも、人が乗っても大丈夫なの……。たぶん」
「あー! 今、たぶんって言った。やはり危険なんだな。やめようぜ」
「あなたそれでも元勇者なの? 危険に瀕している人々がいるのに、助けないなんてないの。男なら、つべこべ言わずにさっさと乗るの!」
レイニィは流線型の箱の横についた扉を開けてさっさと中に入ってしまった。
続いてスノウィも中に入る。
仕方がないと、元勇者も中に入り、扉を閉めた。
この世界初の有人ロケットが今まさに発射されようとしていた。
レイニィは朝から熱気球のメンテナンスをしていた。
それというのも、そろそろ台風シーズン。
いつ台風が来てもいいように備えてのことであった。
今年こそは暴風龍と仲良くなる!
去年のリベンジにレイニィは燃えていた。
レイニィが燃えていようと、真夏は暑い。
作業をするなら、午前中の涼しい時間に限る。午後からはゆっくりお昼寝だ。
そのためにも、レイニィはさっさと作業を進めていた。
といっても、レイニィは指示をだすだけで、実際に作業をしているのは元勇者だ。
先日、レイニィが悪魔に襲われたのは、元勇者から情報が漏れたためだ。
レイニィは元勇者を呼びつけて文句を言った。
そして、元勇者はレイニィに謝罪し、今は小間使いとしてレイニィに扱き使われている。
熱気球のメンテナンスも済み、次に何を元勇者にやらせようかと屋敷の方を見ると、丁度、早馬がやって来たところだった。
乗っていた男は屋敷に駆け込んでいった。
「何事かしら?」
何やら、屋敷から慌ただしい雰囲気が漂って来た。
レイニィが元勇者に構わず屋敷の方を見ていると、侍女のスノウィがこちらに走って来る。
「レイニィ様。大変です!」
「そんなに慌てて、何事なの?」
「城塞都市セットから救援要請です」
「ウォーミィのところから救援要請? 何があったの?!」
「火山が噴火したようです。詳しくは伝令の方に聞いてください」
「伝令は屋敷の中にいるの?」
「はい、今、応接室で領主様が話を聞いています」
「わかったの。応接室に急ぐの」
レイニィは急ぎ、応接室に向かった。元勇者も後を追った。
応接室では、領主のゲイルが伝令から大体のあらましを聞き終えたところだった。
「お父様、火山が噴火して、救援要請がきたと聞いたの!」
「その通りだ。城塞都市セットから南西にあるクレア火山が噴火した。それで、麓にあった集落の一つが、流れ出た溶岩に囲まれて孤立してしまったそうだ」
「二十人足らずの小さな集落なのですが、溶岩に囲まれてしまい、住民が脱出出来なくなってしまいました。今は小康状態なのですが、また、噴火活動が活発になれば、次は集落ごと溶岩に飲み込まれてしまうかもしれません。どうか、レイニィ様の熱気球で助け出してください」
伝令がレイニィに向かって頭を下げる。
「大体の事情はわかったの。急いだほうが良さそうなの。直ぐに出発するの」
「ありがとうございます。レイニィ様」
レイニィは庭でメンテナンス済みの熱気球を神の封筒に収納すると、裏山に急いだ。
「レイニィ様。熱気球で行くのではないのですか?」
スノウィがレイニィの後を追いながら疑問に思い質問した。
「緊急事態なの。少しでも早く行くために、研究中のあれを使うの」
「おい、まさかあれを使うのか。まだあれは実験も済んでないだろう。第一、人が乗るようには出来ていないぞ」
元勇者が慌ててレイニィを止めようとする。が、レイニィは止める気はないようだ。
「別に座席なんていらないの。壁にへばりついて立っていればすぐ着くの。乗りたくないなら、あなたは留守番で構わないの」
「へばりついてって――。何でこんな時にエルダは屋敷にいないんだ! 俺だけじゃレイニィを止められないぞ」
家庭教師でレイニィのストッパー役のエルダは、姉のミスティと一緒にガラス工房に行っており、ちょうど屋敷を留守にしていた。
「レイニィ様、これって乗り物だったんですか?」
スノウィの目の前には、レイニィが更地にしてしまった森に、何百メートルにわたりレールが敷かれ、その上には流線型の「箱?」が置かれていた。
レイニィは、将来的に気象衛星を打ち上げようと、リニアモーターによる、射出カタパルトの研究をしていた。
これは、その実験装置である。
もちろん、計画、設計したのはレイニィであるが、資材を持って来て、作り上げたのは元勇者である。
「人を乗せるように作っていたわけではないの。でも、人が乗っても大丈夫なの……。たぶん」
「あー! 今、たぶんって言った。やはり危険なんだな。やめようぜ」
「あなたそれでも元勇者なの? 危険に瀕している人々がいるのに、助けないなんてないの。男なら、つべこべ言わずにさっさと乗るの!」
レイニィは流線型の箱の横についた扉を開けてさっさと中に入ってしまった。
続いてスノウィも中に入る。
仕方がないと、元勇者も中に入り、扉を閉めた。
この世界初の有人ロケットが今まさに発射されようとしていた。
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